#657 【川を流れた農家登場】借金で農業を始めるのはセンスゼロ?米農家が教える新規就農の過酷な現実と生存戦略 くさひろ氏(2026.4.16)

(深田)
皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム プロデューサーの深田萌絵です。今回は島根県の米農家、くさひろさんにお越しいただきました。くさひろさん、よろしくお願いします。

(くさひろ)
よろしくお願いします、くさひろです。

(深田)
くさひろさんのことはSNSでよく拝見していて、「川から流れてくる変わった農家の方がいるな」と思っていましたが、先日「借金で農業を始めるやつはセンスゼロ」とかなり強い発言をされていて、この人はどういう方なのだろうと改めて興味を持ちました。それで著書『川を流れたら人生大逆転:絶望から復活した農家の』を読ませていただいて、3回泣きました。

『川を流れたら人生大逆転: 絶望から復活した農家の話』 くさひろ著

(くさひろ)
それは嬉しいです。

(深田)
ただ、お米農家は経営が難しいですよね。私も昨年、2反分の米に投資して農家さんに作っていただき、すべて受託で通信販売したのですが、利益は数百円程度でした(笑)。

(くさひろ)
どのくらいの単価で販売されたのですか?

(深田)
コシヒカリが5キロ4,800円、みねはるかは除草剤不使用で6,000円、いずれも送料込みで販売しましたが「これは続けられない」と感じました。本当は利益を元に増産したかったのですが、その余裕がなく、農家さんに追加で依頼できる利益も確保できませんでした。「農家はどうやっているのか」と絶望していた時に、くさひろさんの川を流れる動画が流れてきたのです。

(くさひろ)
なるほど、そうだったのですね。

(深田)
米農家として苦労され、最後は販売も難しくなり追い詰められた中で、川に流れた動画がSNSで大きな話題になり、お米が売れるようになったというエピソードには本当に驚き、感動しました。一方で、先日SNSで「借金で農業を始めるのはセンスゼロ」と喧嘩を仕掛けたのはどういうことなのでしょうか?

(くさひろ)
あの発言は強めではありましたが、問題提起の意図があります。農業を始めるには様々なパターンがあり、私の場合は父と一緒に始め、土地や農機具を借りながら徐々に拡大してきました。しかし最近は「5,000万円借りて新規就農しました」「1億円の借入で農業を開始しました」といった話が増えており、非常に危険だと感じていました。

(深田)
一般的な経営でも、最初に大きな借金をするのは大きなリスクですよね。

(くさひろ)
その通りです。なぜなら農業は価格変動も大きく、安定しません。あえて強い言い方をしたのは、危機感を共有したかったのです。現実には高齢の農家が引退しており、そうした農地を手伝いながら副業的に始めるなど、リスクを抑えながら始める方法もあります。しかし派手に借金をして始めてしまうケースが増えており、それが心配なのです。

(深田)
やはり経営はケチケチと進めるのが大切ですね。私もここのスタジオは自分たちで内装を手掛け、家賃も抑えていますが、以前は銀座で家賃50万円のオフィスを借りていて、経営的にかなり厳しい状況で首をくくりそうになりました(笑)。

(くさひろ)
固定費を抑えないと、借金がある場合は特に厳しくなりますね。

(深田)
借金を抱えて農業を始めるというのは、やはり危険なのでしょうか?

(くさひろ)
借金をして奮起して成功できた人の話が強調されがちですが、実際には借金を抱えたまま廃業する人が多いのが現実です。

(深田)
廃業してしまうのですか。借金はどうなるのでしょう?

(くさひろ)
自己破産するか、サラリーマンとして働きながら返済するかになります。私が農業を始めた17年前、仮に10人いたとすると、現在残っているのは3〜4割程度です。

(深田)
えっ!?つまり10人中7人が消えているということですか?

(くさひろ)
そうです。彼らに借金がなければまだよいのですが、借金を抱えたまま離脱するとなると、家族も含めて非常に厳しい状況になりますよね。可哀想ですよ。

(深田)
確かに深刻ですね。

(くさひろ)
本来はリスクを抑えて始める方法もあるのですが、行政の相談などでは「ピーマンやナス、トマトをやりたいなら施設で約3,000万円からスタートですね」といった形で、比較的簡単に大きな投資を前提に話が進むことも多いのです。

(深田)
農業はそんなに簡単に資金を借りられるものなのですか?

(くさひろ)
制度資金や2年間の研修制度を経て新規就農する場合、計画が整っていれば比較的融資の審査は通りやすい傾向があります。

(深田)
そうなのですか。一般の中小企業では、創業時に融資を受けるのは非常に難しく、担保も求められます。それに比べると、農業は若者や脱サラした人にとっては、かなり恵まれているようにも見えますね。

(くさひろ)
日本政策金融公庫や農協などを通じて、2年の準備期間と計画があれば融資は受けやすい仕組みになっていますね。

(深田)
ただ、私も経営に失敗して借金を背負ったことがあります。経営経験のないただのサラリーマンがいきなり事業を始め、売上の作り方、借り入れの返済、固定費と変動費の違いもわからないような状態で起業してしまい、多額の借金を抱えるのは、やはりリスクが大きいのではないでしょうか。

(くさひろ)
その通りで、実際にやってみて初めて分かることも多く、当初の計画から事業内容が変わることもよくあります。その際、大きな借金があると柔軟に方向転換できないという点が、大きなリスクになります。

(深田)
そうですよね。私もまさかこのような動画をやるとは思っていませんでした(笑)。それで「借金で農業を始めるやつはセンスゼロ」と発言された後、反響はいかがでしたか?

(くさひろ)
かなり厳しい反応もあり、農家の方々から批判も多く受けました。ただ、意見は半々で「その通りだ」「うちは第三者継承で始めたんだ」「軌道に乗ってから借金を始めたよ」という声もあれば、「大きな借金をしたからこそ今の成功がある」という意見もありました。

(深田)
確かに、うまくいく人は何をやっても成功するタイプでもありますよね。

(くさひろ)
そういうことですね。例えば3,000万円を借りても、10年で返済すると考えれば年間300万円程度ですし、金利も低いので現実的ではあります。その前提で努力して成功する方も確かにいます。ただ今はハウスや田んぼ、農機具が余っている時代なので、無理に借金をしなくても始められる環境があるのです。

(深田)
「余っている」というのはどういう意味でしょうか?

(くさひろ)
現在は離農率が上がっており、10年後には担い手が決まっていない農地が半分程度まで増えるとされています。つまり、使われない農地や設備が出てくることが分かっているのです。

(深田)
では、農地も空き、さらに農機具も残るということですか?

(くさひろ)
そうです。もちろん地域の人々とのネットワーク構築は必要ですが、離農が進めば土地も機械も活用できるものが増えます。そうした資源を借りながら、時間をかけて始めるのはいいと思うのです。

(深田)
確かに、いきなり借金を背負うよりも、小さく始める方が安全ですよね。

(くさひろ)
間違いなく大事なことだと思います。ただ一方で、大きく成功した人の中には「借入があったから生活費が成り立った」という意見もあります。粘り勝ちタイプの人だと思います。

(深田)
最初の1~2年の収益が出ない期間の生活費として使うということですね。

(くさひろ)
現在の新規就農制度では、5年間ほど一定額の支援を受けながら農業に取り組むことができます。月に十数万円程度の支援があり、その間に経営基盤を整える仕組みです。

(深田)
えっ、国から毎月支援が出るのですか?それは大きいですね。私も始めてみますか(笑)。

(くさひろ)
国も新規就農者を増やしたいという政策意図があり、制度自体はよく整っています。ただ、その一方で派手に始めてしまい、途中でつまずく人を多く見てきました。

(深田)
それは胸が痛みますね。

(くさひろ)
本当にそうです。相談を受ければ大きな借入は勧めませんが、多額の資金でスタートすると、事業計画をそのまま実現しようと無理をしてしまいます。最初は誰もが成功を信じている分、熱量・勢いが強いですからね。

(深田)
いわば夢物語ですね。

(くさひろ)
ええ、そのような部分もあります。その段階でリスクを正確に把握することは難しいです。

(深田)
確かに、経験がないからリスクは分かりませんよ。

(くさひろ)
だから、小さく始めるべきなのだ、というのが持論です。

(深田)
そうですね。ところで、以前はおにぎり屋さんもされていましたよね。合鴨農法なども取り入れていたそうですね?

(くさひろ)
はい。お米を売りたいと思い、付加価値を高めるために有機的な栽培として合鴨農法に取り組み、その流れでおにぎり屋も始めました。

(深田)
おにぎり屋さんは現在は続けていないのですか?

(くさひろ)
はい、1年もたたずに潰れました。

(深田)
そうでしたか。ただ、そうした経験があるからこそ、経営における固定費や変動費の重要性を実感されたのですよね。

(くさひろ)
まさにその通りで、小さく失敗できることには大きな価値があります。

(深田)
確かにそうですね。

(くさひろ)
小さな失敗を積み重ねることで学べますが、大きな失敗だと立て直しが難しくなります。

(深田)
私も2014年に会社を畳んだ際、約3,000万円の借金を抱え、完済までに2年かかりました。

(くさひろ)
それはかなり早いですね。

(深田)
当時は非常に厳しく、100円程度の缶詰カレーで生活する日々が2年続きました。

(くさひろ)
後から振り返れば美談になりますが、その最中はまさに死に物狂いですよね。

(深田)
ええ、本当に追い詰められていました。

(くさひろ)
その状況で乗り越えられる人と、そうでない人がいます。深田さんは間違いなく乗り越えるタイプだと思います。

(深田)
確かに、やり返してやろうという気持ちは強いですね(笑)。

(くさひろ)
私も同じで、反骨精神で這い上がるタイプです。大きく損をした後に、その分を取り返すように稼いだ経験もあります。

(深田)
やはり、そうした耐性がない方はメンタルを崩してしまいますよね。

(くさひろ)
そう思います。本来、経営者に向いていない人までその中に含まれてしまうと、非常に気の毒です。

(深田)
経営者というのは、多少いい加減なところがないと務まらない仕事でもありますよね。神経質で真面目すぎる方には、あまり向いていない仕事かもしれません。

(くさひろ)
分かります(笑)。本当にその通りで、先のことを考えすぎると不安で眠れなくなってしまいますからね。

(深田)
実際、私も5年ほどまともに給料が入らない時期がありましたし、そういう状況は十分に起こり得ます。

(くさひろ)
私も社長でありながら、3年間は役員報酬を受け取っていませんでした。

(深田)
そうですよ、「社長が一番貧しい」という現実は、意外と知られていないですよね。「社長は領収書を自由に切れていいですね」と言われることもありますが、そのお金はすべて自分で稼いでいるわけですから。

(くさひろ)
そうなんですよ。結局、利益がなければ何もできませんからね。

(深田)
まさにその通りです。利益がなければ自由に使えるお金は一切生まれません。それにもかかわらず、新規就農の際に行政や農協から「数千万円借りられる」「毎月支援も出る」と説明されると、経験のない方はそれで出来そうなイメージを持ってしまいますよね。

(くさひろ)
はい。例えば10年で返済すると考えれば年間500万円程度、売上も1,500万から2,000万円程あれば返せると、事業計画書の上では成立してしまうのです。

(深田)
確かに数字上は可能に見えますが、前提として売上が安定して入るかどうかが重要ですよね。ちなみに、農家で売上を安定させるためには、どのような方法がありますか?

(くさひろ)
いろいろありますが、成功している農家のもとで研修し、そのビジネスモデルをそのまま導入した場合は比較的うまくいくケースが多いです。

(深田)
農業にも明確なビジネスモデルがあるのですね。

(くさひろ)
あります。年商数千万円から億単位を稼ぐ農家には、栽培技術だけでなく販売方法などのノウハウが体系化されています。それを忠実に再現できれば、借入があっても成功する可能性は高まります。

(深田)
うまくいかないときに相談できる相手がいるのも大きいですね。

(くさひろ)
その通りです。適切な指導者がいれば、成功に近づくことができます。この場合は借金も一つの選択肢になりますが、実際にはそのような優れた指導者に出会える人は多くありません。

(深田)
私も起業時に頼れる師匠がおらず、非常に苦労して地獄を見ました。ですから、新規就農を目指す方には、大きな借金を避けて小さく始めることを強くおすすめしたいです。日本では耕作放棄地も増え、離農者も今後さらに増えるため、土地や農機具を活用できる機会は広がり、起業のパラダイスが待っています。低リスクで始められる環境が整いつつあると言えるでしょう。

(くさひろ)
はい、その通りだと思います。

(深田)
今回は島根県から米農家のくさひろさんにお越しいただきました。くさひろさん、ありがとうございました。

(くさひろ)
ありがとうございました。

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