万博をDisり続けた建築専門家が暴露する大阪万博の知られざる見どころ

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【目次】
00:00 1. オープニング
00:36 2. リングは良いけど「森」が邪魔!?
02:30 3. 水上ショーの知られざる問題
05:31 4. 斬新すぎるトイレの洗礼
08:35 5. トイレだってパビリオン!?
14:32 6. 某ラーメン店から学ぶ改善策とは
17:42 7. ついに褒めた!!
20:01 8. “ディスられる方が売れる” 時代!

(深田)

皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム、プロデューサーの深田萌絵です。今回は、建築エコノミストの森山高至先生にお越しいただきました。先生、本日はよろしくお願いいたします。

大阪万博に行かれたそうですが、たまには褒めていただけますか?

(森山)

今回の万博は、あの丸いリングで空間がまとまっているという事実はあります。

(深田)

そうですね。藤本(壮介)先生がデザインで貢献されていますよね。

(森山)

もしもあの丸いリングがなかったら、何だか分からないですよ。建物もきれいに並んでないから、方向も分からないです。

(深田)

まるでスラム街みたいです。なぜリングの中の建物はぐちゃぐちゃに配置されているのですか?

(森山)

リングの中に「静けさの森」という池と木のこんもりとした場所を作りました。まるで古墳のような感じです。現地に行くと感じますが、それは全然要らないものです。あれは、上から見た時に「丸の中に丸ポチがある」というビジュアルには効き目があるけれど、地上面から見るとあの森は邪魔です。

今回行ったのは春先で、葉が芽吹いていないからある程度は見通せましたが、これから夏に向けて葉が茂ってくると全然見えなくなってくると思います。今でも迷路のようなのに。

ですが、緑が増えることで雰囲気は良くなると思います。「あんな埋立地なのに、公園のような空間ができた」と感激するかもしれません。ただし真夏になると、床がコンクリートやアスファルトなので、照り返しがかなりきついと思います。

だから、季節のいい時期なら良い雰囲気が味わえる場所ではあります。

(深田)

夏は灼熱になりそうですね。でも「水上ショー」は結構評判が良かったと聞きました。

(森山)

はい、評判は良かったです。ただ、あれは海水を使っているので、海の塩の混じった水蒸気が飛んできます。

近くには「null2(ヌルヌル)」という建物があります。メタリックな外壁によって建築物が消えてしまうように見える面白い建物なのですが、落合(陽一)さんは「潮が付くからやめてほしい」と思っているでしょう。

(深田)

サビの原因になりますからね。

(森山)

「落合館」は汚れたら終わりです。鏡面であるからこそ、現実と非現実が混じったようなバーチャルリアリティー感を感じられるのですから、そこに塩や錆が付いたら台無しなのですよ。

(深田)

そもそもゴミの埋立地なのに、ゴミのエキスが染み出した海水を使用しても衛生上良いのですか?

(森山)

そこが問題です。元々はあそこに溜まっている水を使う予定だったのですが、「ダイオキシンとかいっぱいあるからやばい」ということになって、地下の水が来ないように1回防水処理をしてから、海水を汲み上げて溜めているのです。だから、一応問題ないようにしているとは思うのですが、1〜3区のうち、海水の近くの1区と2区は海水に繋がっているから、完璧かどうかは分かりません。だから、人によっては気になると思います。

いずれにしても「海風に煽られた海水の霧がパビリオンに押し寄せて錆びるからやめてほしい」という現状です。

(深田)

いや、本当にすごいですね。

(森山)

そうですね。このちぐはぐさを見ると、誰も全体を指揮していなかったのではないでしょうか。

(深田)

「ウォーターショー」で使う水が海水なんてことは普通ありますか?

(森山)

おそらく、あの場所に大量の水道水を持って来ていないからではないでしょうか。だから、海水をポンプで汲み上げて水溜りを作って、下に流したらまたポンプで汲み上げてぐるぐる循環させているのかも知れません。

(深田)

海水を使うと排水管にも良くない気がします。

(森山)

結局、あの場所に水溜りを作ろうという考えはビジュアル狙いでしょう。「安芸の宮島」のように「木の柱が水辺から立ち上がって水面に映っている」というビジュアルが欲しかったのだと思います。

ビジュアルのことしか考えないで、そこから海水や塩が来ることは全然予想していなかったのではないかと思います。海なのに(笑)

(深田)

なるほど(笑)

ところで、会場内のトイレには行かれましたか?

(森山)

みんなが「2億円トイレ」と呼んでいる赤、青、黄色のやつですね。行きました。僕が行った時は使えました。ちょうどリングから降りた所にあったから、もう速攻で行きました。やはり目立ちます。すぐ分かったからあれは良かったです。

他の場所にもトイレやその関係のものもあるのでしょうが、黒いものは目立たないのですよ。

(深田)

おしゃれ過ぎて分からない?

(森山)

脇役に回そうとしているのかも知れませんが、もっと統一的に「ここがトイレですよ」とサインをはっきりさせた方が良かったのではないですかね。

(深田)

「途上国のバラック小屋」スタイルが…

(森山)

目立って良かったです。

行ってみて驚いたことは、ちょうど雨が降り始めていて、濡れてしまうことです。トイレのブロックには屋根がそこにしか架かっていなくて、各々のトイレの間は屋根が抜けているのです。

あのトイレのコンセプトが「積木」ですから、全体を大きな屋根で覆えないのです。屋根も「三角の積み木」という設定なのです。だから「トイレブロック」の間は雨がバンバン降っているのです。

(深田)

トイレの個室の中は大丈夫ですか?

(森山)

個室の中は大丈夫です。

トイレは「大」と「小」の2種類あって、少し不思議な感じなのですが男性用小便器も個室なのですよ。もし、トイレ行こうとする人がどんどん来始めた時に、分からなくて並んでいた女性の人がドアを開けたら「小便器」みたいな現象があるのではないでしょうか。

小さなマークはどこかにあるのですが、「男子」とか「女子」とかはっきりと書いてなくて、全部個室になっているからとても分かりにくいです。

(深田)

それは困ります!

(森山)

更に言うと、待合スペースがないのですよ。

トイレは普通、入り口で「男」「女」が分かるようになっていますね。そして、中に入ると洗面台があります。そこは手を洗うだけではなくて、ちょっとお化粧直しもできますし、ポーチを置けるカウンターのようなものもありますよね?その時点で便器は見えないでしょう?

そこから更に廊下のような箇所を通って行くと便器が並んでいる、これがトイレの構成です。だからプライバシーが守られていく構成になっているわけです。

だけど、あのトイレはダイレクトで外なのですよ。だからトイレの扉を開けたら外なのです。そして手洗いのボウルはないです。

(深田)

えっ!ボウルがない?

(森山)

壁に蛇口がポンとあって、床にジャーと出す。

(深田)

ちょっと待って!跳ね返りますよね?

(森山)

一応、下にゴムみたいなのが敷いてあるけれど跳ね返りますね。何よりも最初に「えっ?」って思いますよね。

(深田)

手を洗う所に荷物を置く場所がないのですか?

(森山)

ないです。だからみんな手を洗う時に、荷物を持っていない方の手で蛇口を開けて片手ずつ洗ったり、もしくは荷物を口で加えて手を洗ったりしていました。「なんだ、これは」と、みんな怒っていましたよ。

(深田)

化粧を直すところがない?

(森山)

ないです。だからもう「パビリオン」として作ったのですよ。トイレじゃない。

(深田)

「トイレ風パビリオン」?

(森山)

そう思っておけばいい(笑)

蛇口も結局、日常的なものが来ないようにした結果ですよ。蛇口だけポンと付けたら遠目には目立たないし立体に見えるでしょう?僕はどこかの取材でも答えたのですが「このままだと『設計者の人が使い勝手を無視して作った』とみんなに言われてしまう。そうではなくて『万博協会が使い勝手を考えないで、アートとしてのトイレを発注したのだ』とアナウンスをしろ」と言っているのです。

(深田)

「あれはトイレじゃないです。アートです。オブジェなのです」と。

(森山)

そうです。それを万博協会で言ってあげないと、設計した人が批判にさらされてしまいます。

(深田)

他にも、トイレの入り口と出口が分からずに、目の前でドアを破壊したというようなXの投稿がありましたね。

(森山)

あれは何かと言うと、最近流行りのエレベーターみたいに、入ったら反対側から出られるというものです。通り抜けできるようにすることで、エレベーターホールを作らなくても良くなり、省スペースでエレベーターが使えるようにしたのです。

それをトイレに採用したのはいいのですが、入っているか入っていないか分からなかったのでしょう。前の人が入って、本当はもう向こう側から出ていたのだけど、見えないから「なかなか出てこない」と思ってしまった。ドンドンドンと扉を叩いて、「まだですか?まだですか?」と言っているうちに、やがて限界に達して強引に明けたのでしょう。そしたら「あ、いない?」という、まるで引田天功みたいになった。

(深田)

イリュージョン!

(森山)

そうです。「この箱に入ったはずなのに消えた!」みたいな、「そして向こうにいる!」(笑)

だから、これも「引田天功さんだ」と思えばいい。「トイレだ」と思うから頭に来るのです。

(深田)

「イリュージョン・スタイル!」

(森山)

そう。「トイレだけど、入った箱で人が消える!!」

(深田)

そういう風に万博がアナウンスしないと…

(森山)

そうしないと、デザイナーが全部の責任を被せられるじゃないですか。

だって、あれは「面白いネタを出せ」と言われて出したものでしょう?「こんなトイレにしろよ」というルールがあまりなくて、「トイレを若手デザイナーにやってもらおう」と藤本さんが言って「面白いのを選ぶ」という、ただそれだけだと思います。

もしそこで「トイレというのはこういうもので、プライバシーもあるし、女性の手洗はお化粧直しもできるようにしてね」、それから「不安にならないようにきちんと中間領域を作って下さい」とか指示をしていたら、あんなものはみんな作ってないはずです。

(深田)

そう言えば、今回プライバシーが全くないトイレがあって、子供用のトイレの便器に大用と小用があって、中国人の子供が「自分は今中国にいるのかと思った」みたいなコメントを出したのが台湾でニュースになっていました。

(森山)

だだっ広いところに全部丸出しのトイレでしょう?

(深田)

あれは幼稚園のトイレなのですか?

(森山)

あれは保育園とか幼稚園で、先生が子供たちにトイレの使い方を教えるとか、先生が1人か2人で大勢の様子を見られるように作っているものです。保育園という一応保護的な空間で、先生もいるという安全な場所でやっていることです。

(深田)

あんな所に小児性愛の人とかが入り込んだら最悪ですよね。

(森山)

あれも「なぜああしたのか」と聞かれた時に、確か万博協会の人が「TOTOの便器のカタログにこういう事例が載っていました」と答えたのですよ。TOTOさんは「保育園で使うとこうですよ」という事例の写真を載せているだけなのですが、「TOTOが決めた」みたいなことを言うのです。だからTOTOもとうとう「自分たちは関わっていません」と発表しましたね。TOTOさんもいいとばっちりなのです。

(深田)

ひどいですよね。

(森山)

だから、あれについては「きちんとそこには女性の係員もいて、子供たちの面倒を見ますから大丈夫ですよ」「保育園的なトイレですよ」と言えばいいのです。そして、「入り口で人の出入りを監視します」と言えば納得してもらえるかも知れません。

それでも、あそこに親子が4組、5組も入った時に、「お母さんと子供たちの荷物をどこに置くのか」や「お隣の子供とどういう風に目線を分けるのか」が全然分からないでしょう?

(深田)

便器が並んでいて、間には手すりしかないですよ。

(森山)

何にも考えないでTOTOの写真をそのまま写したのでしょう。だとすると、発注した時に「これでいいよ」と言った人がいるのです。

(深田)

もしそこに子育てをしたことがあるお母さんが1人でもいたら、「これは違くないですか?」と絶対に言ったはずです。

(森山)

そうなのですよ。例えば兄弟で赤ちゃんもいる人だと、オシメを替えたりもします。そういうことも全然考慮してないです。お母さんの意見はゼロです。

(深田)

お母さんは絶対怒ります。女の子を育てているお母さんは、「変態からいかに娘を守るか」がものすごく念頭にあるわけです。

(森山)

例えば、お父さんが子供の付き添いかもしれないですから、「男の子も女の子も一緒」はちょっとダメですよね。今からでもいいから直した方がいいのではないでしょうか。

(深田)

そう思います。

(森山)

だけど未だに「これでいいんだ」と言っていますよね。「失敗した」と言いたくないのでしょう。

別にみんな失敗していることを断罪しようとしているわけではなくて、「修正した方がいいですよ。大丈夫ですか?」と指摘しているだけです。これに対して「大丈夫だ」とか言うから直せないわけです。

もしこれが会社の製品だったらリコールでしょう?だから早く直した方がいいと思います。

(深田)

でも、出来上がっている子供用のトイレをどう直せばいいのですか?仕切りを入れるのですか?

(森山)

そうです。少し工事をすればいいです。そもそも配管も詰まって使えない所もあるから、それも工事しないといけません。

(深田)

まだ治ってないのですか?

(森山)

そう思います。治っていたらアピールすると思います。

先ほども「なぜ詰まっているのか」と質問されたのですが、トイレは川の流れと一緒で、大きな川の「本管」という排水があって、そこに支流が自然に繋がっていかないとダメなのです。だけどあのトイレは、配置が分散しているから、おそらくその支流の流れをどこかにまとめる必要があるのだと思います。そこに集中することで何か不具合が起きたのだと思います。

(深田)

トイレはなかなかハードルが高いのですね。

(森山)

そうですね。でも絶対に早くやらないといけません。小難しいパビリオンが使えなくてもみんな怒らないですが、やはりトイレはみんなよく分かるものですからね。

(深田)

トイレで待っている時は切羽詰まっていますから、イラつきますよね。

(森山)

だから事態を素直に認めて、トイレを分かり易く案内する必要があるのではないでしょうか。それこそ、インターネットで「会場のどこのトイレが空いているか」を表示させるといいと思います。ラーメン屋の「一蘭」のシステムを導入するのもありかも知れませんね(笑)

つまり総合的に言うと、色々な不具合で人が集中することで、渋滞したり、たどり着けなかったり、時間がかかってみんな怒っているだけなので、もしそれがスムーズだったら、会場内でみんながもっと楽しめると思います。「大きな公園だ」と思えば、全体としては良いですよ。

(深田)

ついに褒めましたね!

(森山)

人が少なければ楽しめる場所、公園だと思えば面白い場所、パビリオンがもう少し覗ければみんな満足するのではないですか。覗けないからみんな怒っているのです。

(深田)

予約したのに入れない…

(森山)

それは本当にかわいそうですね。だから、例えばみんなに「チラ見」をさせてあげればいいのではないでしょうか。そこに長時間滞在する前提だから予約が必要なのでしょう?正直、僕はパッパと見られれば充分なのですよ。

それにしても、アフリカなどの諸国が入っている「COMMONS-C」という四角い箱のところはちょっとかわいそうでした。

(深田)

どうしてですか?

(森山)

まるで「見本市の会場」のような感じで、まだ物が届いていなくて「誰もいないビッグサイト」みたいな感じでした。

(深田)

税関で止まっているのですよね。

(森山)

そうです。展示していないブースがたくさんありました。

(深田)

外務省は早く通してあげてほしいです。

(森山)

それから、もしアフリカ諸国をまとめるのなら、四角い箱じゃなくて「アフリカ館」として日本側がデザイナーを入れて造ってあげれば良かったと思います。そうしたら寂しくないじゃないですか。四角い箱で中身がないから寂しくなるのですよ。

だから、外から見てビジュアル的に面白いパビリオンは、外観を見て楽しんでもらえばいいのです。

その辺を早く改善して、もっとみんなが楽しめるようにしてあげれば、面白いところもたくさんあると思います。「落合館」の「ヌルヌル」は面白いです。あれは中に入らなくても外から見られますからね。

(深田)

大阪万博は見所だらけですね(笑)

(森山)

そうです。こんなにたくさん話題がありますからね(笑)。だから、ぜひ皆さんも行ってみて下さい。真夏になる前に!

(深田)

先生、今度一緒に行きましょうよ。

(森山)

そうですね。もう僕たちが案内しながら中を見せましょう。それも宣伝になりますからね(笑)。しっかり解説と宣伝をしますので、ぜひ万博協会の方は我々に取材許可を出して下さい。よろしくお願いいたします。

(深田)

よろしくお願いします。

今回は、建築エコノミストの森山高至先生に、ついに大阪万博を褒めていただきました。どうもありがとうございました。

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