トップ経済アナリストが語る「トランプ経済政策でドル円は70円に反論」 森永康平氏

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(深田)
皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵です。今回は経済アナリストの森永康平先生にお越しいただきました。先生、よろしくお願いします。
今日の収録が1月14日でこれが放送される頃はもう トランプ政権が始まっているという時期になりますけれども、ドル、円ですとか株式市場について今年の展望はどのようなものか教えていただけますでしょうか。

(森永)
はい。トランプ氏が大統領になると、まず為替ドル円相場がどうなるのかという話がよく聞かれるのですが、結構日本の専門家の話を見ていると、円高ドル安にな るという風に言っている方が多い。
その根拠としてあげているのがトランプ氏が大統領選の時から自身のSNSの中で今のドル高、つまり私たちから見ると円安、これは行き過ぎだと、つまりドル高ということはアメリカ国内の製造業からすると輸出に逆風が吹いてしまう。逆に日本からすると円安なので、日本の輸出産業がアメリカの雇用を奪ってしまう。
そういうことでトランプ氏はドル安円高志向だというのが、主な専門家たちが円高を予想する根拠でした。ただトランプ氏の経済アドバイザーをやっていたスコット・ベッセント氏が、今度財務長官に指名されました。彼の過去のインタビューを見ると、別にトランプ氏はドル安志向でもない、アメリカが正しい経済政策を打てば結果的にドルは高くなってしまうだろうと、そういうような発言をしています。
どうやら日本の専門家たちが根拠としていたトランプ氏はドル安志向だというのが最側近によって崩されてしまったということになります。
トランプ氏がやろうとしていること、いわゆるマニフェスト的なものを見てみると、一つに関税政策があります。関税政策というのは当然海外から入ってくるものに税金が乗る、これが物価上昇の圧力になります、物価が上昇するということはもう利下げができない、何なら利上げするかもしれないということなのでドル高政策です。
もう一つが移民抑制です。これについてトランプ氏が面白いことを言っていました。今まで移民を優遇しすぎていたが、自分が大統領になってからは移民が受けられる唯一の無料サービスは本国に帰るバス代だけだと。
面白いことを言うと思いましたけれども、言い方としてあまり良くないかもしれませんが、移民の人たちは結構安い労働力としてアメリカで使われているケースもあって、彼らを追い返したりとか入ってくるのを止めたりとかすると、逆に今度は人件費の高いアメリカ人だけでビジネスをやらないといけない。コストが上がるとアメリカの会社はすぐ価格転嫁しますから、これもインフレ要因、つまりこれがドル高要因になってしまいます。

もう一つはトランプ減税です。トランプ氏は減税していくと言っているわけですが、当然減税すると需要が高まりますのでこれによってアメリカ国内インフレが加速する可能性がある。そして中には財政不安、減税すると財政がという、これは日本にも大量にいますが、 アメリカにもいっぱいいます。そうすると、減税する、財政が悪くなる、アメリカ国債が売られる、売られるということは金利は上がることをさすので、これもドル高になってしまう。つまりトランプ氏は口ではドル高はダメだと言っているけれども、やろうとしている政策の多くがむしろドル高を招くことになっています。
ですから、私の予想ではトランプ氏は就任してから半年ぐらいは円安ドル高になるのではないかと思っています。

(深田)
その半年後からはどうなるのでしょうか。

(森永)
半年後からが悪魔のシナリオです。これは私の勝手な妄想と言いますか、日銀は全然そのようなことは言ってはいませんが、多分、やはり日銀は円安を止めたい、だからおそらく昨年の7月に利上げをしたと私は思っています。
これからトランプ大統領になってどんどん円安が進行していくと日銀はそれを止めるためにさらに利上げをしたいということで、バシバシ今年は2回、3回と利上げをしていく。
ではトランプ氏はこれを止めるかと言えば止めることはない。なぜなら彼はドル高がいやだと言っているわけだから、日米の金利差を縮めたいので、植田総裁が利上げすることに対してはおそらくやいのやいの言うことはないでしょう。
そうするともうフリーパス状態ですから、円安を止めるためだけに日銀が利上げをしていく。
その結果、年の後半ぐらいから金利差が縮まってきて、為替は無事円安が止まって円高方向にというのが私の予想です。
これはまずい。為替のために金利を上げているので、国内の需要はボロボロに痛んでいるのに、金利はガシガシ円安を止めるためだけに上げていきますから、ただでさえ物価高で買い物が大変とか言っているのに、住宅ローンを組んでいる人は返済がまた増えますし、中小零細企業の方も例えばコロナ融資を受けて借り換えないといけないとなった時に金利が高いわけですからより苦しんでいってしまう。
だから円安は止まるかもしれないですが、国内経済を見ると針のむしろと言うか、ただでさえ状況が悪いのに金利が上がるというのが追い風というか逆風として吹いてくるわけなので、かなり日本経済にとっては良くないと私は思います。

(深田)
ダメージがあると。去年少し利上げをするとなった時に株式市場が暴落しましたね。

(森永)
そうです。いわゆる8月にあった令和のブラックマンデー。正確に言うと、おそらく日銀の利上げだけが原因ではないと思いますが、ただ振り返ってみると例えば2024年は出だしから能登で地震があったりとか、航空機の事故があったりとか、結構すごい始まり方だとみんなが言っていた。
でもそこから日経平均は円安を背景に4万円を超えて4万2千円まで行ってバブル後最高値だというほど株だけはイケイケだった。ところが日本株はそこから頭打ちしてどんど下がって3万9千円前後でずっと揉み合っている。アメリカはどんどん上値を追っていくのに、これは何故だろうか。
やはりまず政局不安です。岸田首相がやめるかも知れない雰囲気もあって、辞めたら辞めたで今度は石破首相になった。石破政権も普通に考えて長期政権ではなさそうだし、日銀は為替のためだけに利上げしているように私には見えてしまう。多分そういうのをみんなから評価されていないので、アメリカ株は上がるけど日本株は途中でもう失速してしまった。そういう流れだと思います。
株式市場が全て正しいとは思いませんが、ただそういう評価を残念ながら日本は受けてしまっている。というのが今の評価であるし、今年のドル円に関しては私は前半円安、後半円高で、株はどうかと言うとやはり為替と同じような動きで、前半はじりじりと上がるけれども、後半は場合によっては結構下がるのではないかと予測します。

(深田)
なるほど。今年はちょっと株式市場が危ない。

(森永)
私の父(森永卓郎)のように2000円とかそういうことを言うつもりはありませんが、10%、20%ぐらい下がるというのは全然あり得る話かなと思います。これはもう本当に普通のシナリオを話しただけで、もう一個怖いのがやはり台湾有事が起きないと断言はできないということです。
先ほどトランプ氏とかベッセント氏のインタビューを引き合いに出しましたが、このインタビューを見ていて少し気にかかったことがあります。昨年の10月にトランプ氏がウォールスリートジャーナルのインタビューを受けて、習近平との付き合い方をどうするのかという話の中で、仮に中国が台湾に侵攻した場合はアメリカは150%から200%の関税を中国にかけるという言い方をした。多分トランプ氏は台湾有事になることを牽制したつもりでそういう話をしたと思いますが、私はこの発言はすごくデジャブだなと思いました。
2021年の12月にバイデン大統領がロシアのウクライナの国境付近にどうやらロシアとベラルーシが軍隊を配備しているのではないかというのが衛星で確認されているという話になった時に、仮にロシアが侵攻したとしてもアメリカは米兵を派兵することはないとバイデン氏が言った。
実は私はその時、2021年の12月後半ぐらいにYouTubeの動画で、ロシアのウクライナ侵攻はあるのではないかと言いました。なぜならロシアが一番嫌なのはアメリカとの対決であって、行く前からアメリカが派兵しないと言ってしまった以上、侵攻してもアメリカは出てこないことが分かってしまったからです。
そういう話をしたのが、確かYouTubeの公開が翌年の2022年の1月ぐらいだったのですが、もうコメント欄でフルボッコにされました。軍事の専門家はみんなロシアのウクライナ侵攻はないと言っている、お前みたいな素人が縁起でもないことを言うなというわけです。
しかし、その一ヶ月後に侵攻はありました。ですから、それが私にとってはデジャブで、さっきのトランプ氏のインタビューを振り返ってみると、習近平が嫌なのは台湾に侵攻した時にアメリカが出てきて戦争になることだと思いますが、さっきのコメントを聞くと関税を上げるだけです。

(深田)
そうですね。武力を持って台湾を守るということは言っていない。

(森永)
となると、もしかしたら、その発言だけがトリガーにはならないと思いますけれども、一つのトリガーになってしまう可能性は全然今年あると言えます。
先ほど話したのはノーマルシナリオですけれども、リスクシナリオとしては台湾有事が起きてしまうことです。
そうするとやはり地理的に日本と台湾は近いですから、全く関係ないということはないと思います。もちろん日本が直接中国とドンパチするかというところはわからないけれども、例えば台湾を海峡封鎖するというようなことになれば当然日本列島の下側のエリアは封鎖されるわけですし、日本は多くのものを外から輸入しているわけですから貿易でも混乱が起きることになるでしょう。

(深田)
台湾と中国の間の台湾海峡を通る貿易の船はそんなに大きな割合は占めていないという風に経産省の方がおっしゃっていて、多分3〜4%ぐらいです。ですから回避して来れるのではないかというような淡い期待はありますが。

(森永)
とはいえ株式市場の観点からすると地政学的リスク以外の何ものでもないので、売り材料にしかなりません。

(深田)
確かにそうですね。

(森永)
ですから株の話でいくとやはりそれがより下がるリスクの一つになるのではないかという風に見ています。もちろんそんな予想は当たってほしくもありませんが。

(深田)
むしろ今韓国ちょっとおしくありませんか。

(森永)
韓国もおかしい。やはり地政学的リスクが東アジアに寄るだろうというのは今年だと思っています。ロシア・ウクライナがいつ終わるか分からないですけれども、ずっともう2年以上やっていてお互い疲弊しているのは間違いない。どこで着地するかというのが見えないから終わらないだけであって、お互いもうちょっといい加減にというのは少なくとも絶対一部の人は思っているはずで、終わるかもしれない。むしろトランプ氏は自分が大統領になったらすぐにでも終わらせることができると言っていたわけですから。
中東の方に目を向けてもイスラエル・ガザが終わる可能性は出てきている。ちょうどこちらに来るとき携帯でニュースを見ていたら、今和平の話が進んでいるかもしれないというニュースがまた出てきたぐらいですから、そうするとその2つの有事が収まるとしても、地政学的リスクが今度は東アジアに寄る可能性がある。
一つは先ほど話した台湾・中国ですけれども、もう一つは朝鮮半島です。やはり北朝鮮がウクライナ侵攻以降、ロシアとすごく結びつきが強くなって、実際今ウクライナの戦争に派兵までしているということですし、一方で韓国があのようなゴタゴタになっている。この朝鮮半島の不安定化プラス中国台湾の緊張感の高まりとなってくると、ほぼ同じ東アジアにいる日本としては関係ないですという話には当然ならない。そういう意味では非常にこの有事のリスクというのは今年高いのではないかと思います。

(深田)
韓国のお友達の話を聞いていると、どうも尹大統領を引きずり降ろそうとしている民主党側のサポーター達というのは北朝鮮系の人たちで、デモに出てきている人 たちは中国人です。中国の方なので韓国語ができないのでデモの間口パクで攻撃している振りをしている様子が動画で流出したりしています。
だから結局朝鮮半島のそのゴタゴタというのも中国が裏で糸を引いているという様子があるので、もしかしたら台湾がどうこうよりも朝鮮半島の方が何かが起こる可能性は高いのではないかと見ています。

(森永)
なるほど。もちろん同時多発は当然あると思います。怖いのはロシアと一緒で アメリカと直接対決はしたくないし、仮になってしまったとしても今のアメリカに多方面の戦う力があるのかと—

(深田)
ないですね。

(森永)
そういうところを考えると、台湾という一つの戦場を考えてやるよりは、朝鮮半島でもなんかゴタゴタが起きていて、台湾中国間でゴタゴタが起きていて、何なら日本も巻き込まれているとなった時に、トランプ氏が自分たちの同盟国はアメリカが守ると言ってやってくれるのかも微妙です。

(深田)
やってくれないような気がします。

(森永)
そもそも最初の一次政権の時でも、結構アジア圏の有事のリスクに関しては武器の提供とかはすれども、やっぱり基本、韓国・日本・台湾が頑張ってくれという雰囲気は当初から出していた。ですからそういう流れが出てくる可能性は全然ある。
中国からすると極力アメリカとの直接対決は避けたいでしょうから、やはり有事のリスクを分散させていってちょっと手に負えないなという状況を作りたいというのは普通に考えたらあるでしょう。そして今の中国国内の経済を見ていると非常に悪い。この間中国の輸出が過去最大になったというような話が出ていましたが、タイトルだけ見ていると中国経済は実はいいのではないかと思うかもしれません。けれども、あれは作った物が国内でさばけないから海外に安値で輸出して、結果的に輸出が伸びているだけの話です。
今までは一党独裁という不自由さはあれど、年間で国が7%とか成長していたからある意味まあまあまあみたいなところがあったわけです。しかし今、自由もないのに成長力は7%ぐらいだったのが3〜4%まで下がって内需もボロボロだし外需もボロボロだし、それをトランプ氏の関税で輸出まで絶たれてしまうと、足元がこんなにボロボロでふざけるなという国内の不満が出てきた時に、常套手段ですが国内の不満を外に向けたい、仮想敵を外に作るという流れになるでしょう。
ですから、中国国内の経済を見ても台湾有事とか、朝鮮半島もそうですけれども、外に何かを作り出した方が彼らにも得なわけです。これが株為替お互い考えてもリスクシナリオです。

(深田)
有事が東アジアで起こると、その時はやはり円とか売られてしまうのではないでしょうか。

(森永)
売るでしょうね、本当に起きてきたら。

(深田)
ではその最悪のシナリオが起こった場合はやはり—

(森永)
トリプル安です。株安、為替安、債権安です。

(深田)
そうですよね。ということはやはりドル高になってしまうかもという—

(森永)
その可能性はあるでしょう。だから実際に有事が起きるかどうかというのは非常に大きい。 ただ株式市場などを見ていると、ろくでもない奴らだなと思うのが、もう有事が起こるかもしれないというのを先回りしていて、昨年の日本株市場など見てみても、例えば三菱重工とかあのような巨大な会社の株価が一年で倍になったりとか、IHIとか川崎重工とか軒並み高くなっている。
これはもう明らかに有事が起こるかもしれないから、いわゆる軍需銘柄という防衛関連、そういうのが上がってきている。だから株式市場では若干織り込んでいるとまでは言えないですけれども、もうそのシナリオもあるかもしれないというお金の動きというのは見えます。

(深田)
なるほど。ということは今年は株式市場全体としてはどうなるか分からないけれども、防衛産業関連株というのは未だに強いだろうと—

(森永)
そう思います。ただそれは実際に起きなければの話で、起きたら株などやっている場合ではないですから。

(深田)
そうですよね、確かに。先日森永卓郎先生がいらっしゃった時は、ドル円は70円まで行くだろうとおっしゃっていましたがどうですか。

(森永)
行かないです。元々円高方向になるとか、株が安くなるとかというのは結構前から言っていたし、別に私の父に限らずそういう予想を立てている専門家は日本にいっぱいいます。しかし、いっぱいいるということはちょっと派手なことを言わないと目立たないわけです。だから父の言葉を借りれば多分バットを振り抜いたんだろうなと、振り抜きすぎて三振したという。

(深田)
私たち庶民はどうしたらいいですか。ドル預金、円預金。

(森永)
私は多少は外貨を持っておいた方がいいとは思っています。なぜなら給料は基本みんな円でもらっているので、何もしないと円に依存しまくる形になる。余剰資金の一部は外貨に振り分けておくというのは全然ありだと思います。

(深田)
なるほど。分かりました。では私は継続してドル預金は持ちっぱなしにすることにします。

今回は経済アナリストの森永康平先生に今年の株式市場と為替の市場の行方を教えていただきました。
先生、どうもありがとう ございました。

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