仕事がどんどん捗る最強チームの作り方 北の達人コーポレーション 木下勝寿社長 木下勝寿×深田萌絵

【目次】
- 00:00 1. オープニング
- 00:41 2. 人付き合いとチーム作りは無関係
- 04:39 3. 成果を可視化する仕組みを作る
- 07:27 4. 仕組み作りと外注を往来させる
- 09:02 5. 職種ごとに向いている人を採用
- 12:33 6. 大きくなるまで社長が頑張る
- 15:46 7. 50人規模になればできる人が揃う
(深田)
皆さんこんにちは、政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵です。今回は北の達人コーポレーションの木下勝寿社長にお越しいただきました。木下社長よろしくお願いします。
前回は、『「悩まない人」の考え方』という本で、私の悩みを救ってくださった。私は会社経営者なので、やはり悩むのですね。それを救っていただいて、次はこの『チームX』です。こちらの本も今読み始めているところですが、私の人生最大の悩みは組織作り、“チームビルディング”なのです。
その悩みについて少し長いですが、背景をお話しします。生まれた時から変人で、友達が全然いない子供でした。とは言っても、高校生、短大生の頃は2、3人ぐらいの友達がいました。しかし、社会に出ると、常に1人か2人しか友達がいない。まず、新卒で会社に入り、下っ端です。転職してまた下っ端で、さらに転職して下っ端です。
そこで色々考えた結果、自分のキャリアのために大学に入り、卒業して就職しました。また下っ端です。それで、32歳になって突然会社を始めました。下っ端人生で友達がいなく、人とのコミュニケーションがうまく取れない状況で、32歳で会社を始めて、人を雇ったのですが、うまく働いてもらう方向に向かわせられないのです。人を雇った時に何が起こったのかと言うと、自分が何をしてもらいたいのか明確に指示が出せないのです。
あとは友達がいなかったので、ずっと働いてもらうためにどうしても媚びてしまい、仲良くしようと努力をする。そうすると今度は舐められて、あまり働かなくなってしまうなど、色々な悩みがありました。自分にはマネジメント能力がない。そういえば人をマネージした経験がなく、チーム作りはどうやるのだろうか。思えば、ずっと個人プレーでやってきて、自分はチームで何かをするという経験がないことに気がついたのです。
そこで、木下社長に質問なのですが、組織作り、チームビルディングで気をつけておられることは何なのでしょうか。
(木下)
今の話をお聞きして思ったのですが、友達付き合いがうまいことと仕事でチーム作りができることとは全く関係ないです。
(深田)
関係ないのですか。
(木下)
友達との遊びの関係と仕事との関係は全く別物です。
(深田)
全く別、ではそこは悩まなくていいのですか。
(木下)
まず悩まなくていい。
(深田)
関係がない、良かったです。
(木下)
経営者、起業するような人間は大体 “変わり者”です。
(深田)
そうですか。ではそこはOKですか。
(木下)
はい、クリアです。そもそも自分にマネジメント能力があると思っている人ほどないです。自分はマネジメント能力があまりない、だからなんとかしようと思っている人が普通なので、今のお話では普通ですね。
(深田)
普通の経営者でしたか。
(木下)
「僕はマネジメントがうまいです」と言っている人は大体ポンコツです。そのように言うと部下が「あああ...」と思うのではないですか。
(深田)
なるほど、なんとなくその顔が思い浮かびます。
(木下)
人と人との付き合いはやはり難しいので「自分はそれができるというのではなく、できていないが頑張る」ということがまずスタートラインなので、そこは(気にしなくても)いいと思います。
チームは動かすことが目的ではなく、成果を出すのが目的です。
(深田)
そうですよね。
(木下)
極端な話をすると、チームが全然動かない、チームの人が全然やる気がない、チームの人に嫌われている、しかし成果が出たらそれはそれでいいのです。
(深田)
そうですよね。
(木下)
チームの人に好かれている、チームの人がやる気に溢れている、チームの人が「ここで働けてよかった」と言っている、しかし成果が全然出ていないことよりも全然いいのですね。
(深田)
居心地のいい赤字の会社はありますよね 。
(木下)
居心地のいい赤字の会社は赤字が続くと居心地が悪くなっていきます。
(深田)
そうですよね。
(木下)
一方で「やる気もない、この上司は嫌い」という職場でも成果が出ているとみんなやる気になってきたりするものです。「なんかいいよね」とか「あの上司はなんか嫌な人だけど、言っていることは正しいよね、だって結果が出ているものね」となってくる。まず最初に向き合うのは人ではなく成果です。
(深田)
人ではなく、成果ですか。
(木下)
マネジメントのやるべきことは2つあって、1つは“人の育成”で、もう1つは“仕事の管理”です。
(深田)
そうですよね。“仕事の管理”ですよね。
(木下)
まず、絶対にやらないといけないのが“仕事の管理”です。ところが大企業は“仕事の管理”の仕組みがすでにできあがっており、その仕組みに乗っていると比較的簡単にできてしまうので、管理職はみんな“人の育成”に行ってしまうのですね。これは大企業ならではの話です。それゆえ世の中のマネジメント論は人の話になっていくのです。しかし、それは大企業の“仕事の管理”の仕組みができている上での話であって、大企業ではないところがまずやらないといけないのは“仕事の管理”です。
(深田)
うちのような零細企業は、人が何をしているのかではなく、仕事の成果がきちんと出ているのかに対してもっとフォーカスしないといけないということですね。
(木下)
成果が出ていると、その人がやる気があろうが、嫌な人であろうが、自分のことを嫌っていても、問題ないですよね。仕事の成果が出ているのかどうかをきちんと可視化できる仕組みを作っていくことが大事です。
(深田)
なるほど、可視ですか。
(木下)
本人が頑張っているのかどうかはどうでもいいのです。要は、何月何日の何時までに納品できているのかとか、クオリティが言ったとおりにできているのか、まずここをやっていきましょうという話です。それができていたら、頑張っていようといまいと「ありがとう、OK」で、できていなければ「ダメですよ」という話になります。ここに明確性を持つことがすごく大事です。
(深田)
はい、確かにそうです。
(木下)
正直に言うと、相手の性格はどうでもいいことですよね。
(深田)
そうです、どうでもいいのです。そう考えると「外注でもよいのでは」とも思います。ただ、長期的に考えると、番組全体のことやコンセプトまで分かって一緒にやってくれる人を育てないといけないと思うのですが、その時はどうしたらいいのですか。
(木下)
外注と内製は行ったり来たりする前提で考える方がいいです。本来は個人である程度ノウハウができてきて、そのノウハウが仕組み化できてから、外注しているわけですね。ここでずっと伸ばしていくのですが、外注は仕組みで回すだけなので、やはりこれだけでは優位性が生まれないです。
(深田)
あっ、そうですよね。
(木下)
外注というものは他の仕事も受けているので、絶対に差別化要因にはならないです。
(深田)
ならないですね。
(木下)
自分のところのUSP(Unique Selling Proposition:自社(自分)の商品・サービスが他と比べて持つ「唯一の強み」を明確に示すための考え方)には絶対にならないので一旦は回すために、これを活用します。しかし、もっとUSPを高めていこうとすると外注では絶対に(USPが)発生しないので、もう一回戻して自分たちの強みを再構築する。これが仕組み化できたらもう一度外注する。行ったり来たりするのが基本なので、それでいいと思います。
(深田)
行ったり来たりしながら自分達の強みとか個性など、そういう部分を構築していくのですね。その次のステージと言いますか、内製化しようとしても、なかなかうまくいかない時はありますか。
(木下)
いっぱいあります。
(深田)
その時はどうされているのですか。1回外に出して、また人を採用するのですか。
(木下)
我々のステージになると、もう外注でも無理なので、採用と教育になってきます。
(深田)
やはり採用と教育ですか。
(木下)
まず教育できちんとできるような仕組みを作るということと、あとは採用の部分です。我々は採用では一つ一つ職種で別々のテストを全部自分たちで作っています。
(深田)
SPI(適性検査)はなく独自試験ですか。
(木下)
独自試験を作っています。
(深田)
それはポジションごとに違うのですか。
(木下)
ポジションごとに違います。例えば、最初にやり始めたものでカスタマーサービスがあります。規模が小さい時は電話もメールも全部1人、2人で対応していました。ところがどんどん増えてきた時に、電話が得意な人とメールが得意な人に別れてくるのです。概ねこれらは相反します。
電話が得意な人はアドリブが得意です。パッと言われてパッと返せるという内容なのですが、一方でこういう人は、瞬発力は高いけれども、思考して理路整然と伝えることはそんなに上手ではない。
メールが得意な人は、相手の問い合せに対して分かりやすい文章を理路整然と書ける。ところが、アドリブでてきぱき話すのは苦手です。こういうことなので、カスタマーとして両方できる人を取ろうとしてもなかなか無理があります。
(深田)
確かにそうですよね。
(木下)
今までの面接はやはり「明るい人がいいよね」と比較的電話対応が得意な人を優先して採っていたのですが、「メール対応する人は明るい必要ないよね」という話になった。
(深田)
確かに必要ないですよね
(木下)
アドリブ力は必要ない、それよりも人に分かりやすい文章を書ける方が大事だという話になってきて、採用する際に今までの基準と少し変えようとなった。理路整然としたメールが書けるかどうかというテストをする。こんなことは面接では絶対にわからないです。
例えば「こういうトラブルが起きて、そのトラブルに対して上乗せでこんなトラブルも起きました。さて、これに対してどういうお詫びメールを送りますか」というテストを作るのですね。
(深田)
面白い試験ですね。
(木下)
このテストは調べてもいいです。自宅で受けてもいいです。きちんとしたメールが書ければ調べてもいいわけです。こういう方法で行うと、大変文章のうまい人が集まるわけですよ。
今までは面接で「私はそんなに明るくないので面接が通らなかったのですが、メールだけの接客だったらできます」という感じですごくいい人がたくさん採れるようになってきた。各職種に向いているセンスを見抜いて「そこだけイケてたら、ええんちゃうか」という採用に切り替えていったのです
ね。
(深田)
個々人の向いているところに当てはめていくということですね。
(木下)
努力しなくても即戦力になります。
(深田)
そうですよね。本当にその通りだと思います。
私は最初の会社では経理補助で入りました。その時に何に悩んだのかと言うと、伝票の書き方が分からない。領収書や伝票を何度も書き間違えるのです。昔はカーボンの複写式だったので、私のところにある伝票だけがものすごい勢いで減っていくのです。そしてコピーミスも多く、月間何千枚という単位のミスコピーでした。
それで、社長のところに直談判に行き「このまま私を経理補助で使うと紙が減りすぎて、紙がもったいないです。営業に回してください」とお願いしました。何も知らないちんぷんかんぷんの新卒でしたが、やる気だけはあって、4か月目から営業を始めたら営業成績がぐんぐん伸びて、首の皮一枚繋がった。そうでなかったら試用期間で首を切られたと思います。
私のケースは極端ですが、人によってはとことんダメなものはありますよね。
(木下)
あると思います。
(深田)
うちの会社は数人しかいないので、一人ひとりがものすごくマルチでないと回らないのですが、木下社長はそういうステージを超えられていますよね。
(木下)
今はそうですね。
(深田)
創業当初の1人に求められる能力がものすごく多い時に、そのような悩みはなかったのですか。
(木下)
多分『「悩まない人」の考え方』に書いていたと思いますが、大きかろうが小さかろうが、仕事には何十種類もあるのですよ。例えば100種類あるとします。そこで全員が得意なことだけやりましょうとなったら、(会社が)小さい時は5人ぐらいでやっても、100種類中5種類しか埋まってないわけですよ。あとの95種類は社長がやるしかないのです。
(深田)
やはりそうなりますか。私は「10分の1しか仕事を頼んでいないのに、なぜパンクしているのだろう」といつも思っていました。
(木下)
そうですよね。人は基本的には得意なことしかやりたがらないです。幹部になるような一部の人が得意かどうかではなく、やるべきことをやる。大半の人はやりたいことしかやらない。この組み合わせでやっていくのですね。
(深田)
私は「どうしてこの人たちはやりたいことしかやらないのだろう。やるべきことをやらないと仕事は終わりませんよ」と思っていました。やりたいことだけをやって、やりたくないことはほったらかしている。
(木下)
自分が従業員の時はそうだったのではないですか。
(深田)
そうですよね。経費の申請では領収書を紙に貼って「いくら使ったのでいくらください」と申請する。これがめちゃくちゃ面倒くさい。経費の申請を全然せずに、気がついたら毎月赤字になっていることがありました。
(木下)
やはり、大半の人、8割の人は基本的にやりたいことしかやらないのですね。ごく一部の1、2割の人がやるべきことやる。本当にやるべきことをやる人だけが集まれば組織は全然回るのですけれど、そういう人はなかなか採用できないです。
(深田)
そういう人は自分で会社を始めますよね。
(木下)
やりたいことしかやらない人を集めて仕事を回していこうとすると、やはり50~60人ぐらいの規模にならないと回らないです。
(深田)
やはりそうですよね。今、一番苦しいところです。
(木下)
50~60人雇えるだけ回せられるのか、そうでない時はそこまで無理やりでも社長が頑張ってやるしかないのです。
(深田)
私は今すごく苦しくて、ものすごく睡眠時間を削っているのですけれど、50~60人になるまではしばらく頑張ります。
(木下)
仕組み的な部分でいうと、なんだかんだ言って創業者は自分ができることでしか会社を作っていないのですね。自分ができないところでは作っていないので100あるとした時に、これは自分ができる100で構成されている。他の人も100の能力があったとしても、100の内容が異なります。そうすると重なっているところは20ぐらいしかなくて、私からすれば、その人は100のうち、20しかできないけれども、他に80できることがある。ただ、うちに必要がないだけの話ですね。
(深田)
ということは、大きくなるまではやはり外注なども活用していくのですか。
(木下)
活用しながら、無理やりでもなんとか50~60人になったら、それぐらいで全ての部署にある程度できる人が揃う。
(深田)
なるほど、チームビルディング、まずは50~60人を雇うところまでいかなければならない。
(木下)
一過性でチームがうまくいくことはありますが、経営のレベルでいくと、本当の意味でのチームビルディングにはならない。組織の中の一員で言うと5人、10人のチームはあるとは思いますが、50~60人にならないと経営レベルの組織とかチームにはならないと思います。
(深田)
今日、私は人生で最も役に立つチームビルディングの話を聞きました。
(木下)
本当ですか、嬉しいです
(深田)
今までGoogleのチームの作り方とか米軍は潜水艦の中でどのようにチームビルディングをしているのかとか、そんな本を読んできたのですが、関係なかったですね。潜水艦の中や超大企業のチームビルディングは我々零細企業に関係ないです。どうして自分ができないのだろうと思っていたのですが、できなくてもよい、当たり前なのですね。
(木下)
全然当たり前で、いかに早い段階でそこに気づくかがすごく重要だと思います。
(深田)
今日のお話をもっと拡張して零細企業の社長のために1冊の本にしていただきたいです。今回は北の達人コーポレーションの木下社長にチームビルディングについてお話をいただきました。木下社長ありがとうございました。