【大胆予測】 小幡績「日経平均は三万円まで暴落する。モリタクは三千円を予想」

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【目次】

(深田)

皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵です。

今回は、慶應義塾大学ビジネス・スクール教授の小幡績先生にお越し頂きました。先生、よろしくお願いいたします。

先生の書かれた記事の中で「日本株は暴落する」、「日経平均は3千円くらいまで下がる」とありました。

(小幡)

「3千円」は森永卓郎氏が言っているだけです。私は「3万円」と言っています。

(深田)

私が1桁読み間違えていたのですね!

(小幡)

「3千円」は森永卓郎先生だけです。

(深田)

積極財政派と緊縮財政派が、どちらも日本株が暴落すると言う理由は何だろうと思って、すごく興味を持ちました。

(小幡)

今の世の中では緊縮財政派になるかも知れませんが、個人的にはニュートラルだと思っています。「上がり過ぎたから下がる」、それだけの事です。

ただ、私は「暴落する」といつも言っていますし、財務省は「財政破綻する」と言っていて、どちらも「オオカミ少年的」なのです。

ここ最近、私は毎年のように「株は暴落する」と言っているので、「暴落詐欺だ」と言われています。

弁明をすると、今年はかなり当たったのです。でも戻ったから、みんなそう言うのです。今年の8月5日、6日の夜間先物取引では、3万円割れ寸前まで行きました。現物ではそこまで下がっていません。

1日で日経平均が4400円も下がるなんて前代未聞ですし、それが一瞬で戻るというのもどうかしています。ですが、たぶんバブル的にはなっていたので、1回アク抜きをするためには暴落が必要だったのです。

最初は「アメリカの雇用統計が悪い」などと言われ出して、1000円くらい下がり始めました。その前には、日銀が予想に反して金利をちょっと上げました。額は小さかったのですが、「このタイミングで上げるのか」とみんな少し驚いて円高になり、既に株価は上がり過ぎていましたから、日経平均が一気に1000円以上も下がったのです。

私は「これはやばいな。暴落する」と思い、「底値は3万円が目処だ」と言ったところ、1日で当たったのです。「すごい!」と思ったのですが、すぐに戻ってしまいました。ワンナイトの出来事だったので、皆さん忘れてしまいました。戻れば関係ないですから。

(深田)

では、「3万円を当てた人」としてメディアからお声が掛かることは?

(小幡)

掛かるわけがないです。

株式市場の常識としては「株は上がる」と言っておいた方が当たります。何故かと言うと、株の構造としては「9年間上がり続けて一気に下がり、1年間調整が続いて、そこからまた戻る」というような動きがリーマン・ショックの時にもありました。

(深田)

バリュー株は基本的にそういう動きですね。

(小幡)

ですから、上がる時には少しずつ上がっていって、バブルで加速して最後は急激に上がります。でも調整は一瞬で起きます。その調整の期間は常に短いです。

景気循環でも同様で、景気拡大期の方が長くて、景気後退期には急に悪くなり、色々な対策を取ることでやがて戻って来ます。

良い時と悪い時を時間で言うと、悪い時は常に短いのです。その代わり急激だから、みんな暴落を恐れるわけです。

暴落局面というのは、最低でも1、2ヶ月続くのが普通なのですが、今回は1日で終わってしまいました。

(深田)

当たった感がないですね。

(小幡)

「今年こそ暴落する」と言っておきながら、暴落しない年が多いので「小幡は嘘つき」と言われるのは認めるのですが、今年は暴落の年に入れて貰いたいです。例え今が4万円近くても。

(深田)

なるほど(笑)。今後はどうなるのでしょうか?

(小幡)

なぜ1回アク抜きをしてから戻るのかと言えば、高過ぎて買っていた人が、抱えていたものを全部投げるので、売る人が居なくなるからです。

そうすると、長期的で売る気のない人の集まりでは売りが出ないため、暴落しにくい状況となります。

その時に、もしも景気の良い企業があれば買う理由になるので、また買いになって戻って行くのです。

(深田)

景気ですが、日本経済は今後どうなるのでしょうか?

(小幡)

それは悪くなるでしょう。

(深田)

なぜ自信満々にそう思われるのですか?

(小幡)

それも同じ理屈で、景気循環だからです。

先ほど申し上げた様に、景気は好況期の方が長くて、やがて調整が起きて下がります。慌ててそれに対して色々な政策を打つから歯止めが効いて、停滞期の後にまた上がって来る。だから、純粋な後退期は短いのです。

日本でも世界でも、景気拡大局面がずっと続いて来ました。ややこしいのは、コロナをどう見るかです。特殊要因なので。

株価もあの時は大暴落をしましたが、その後はコロナバブルで逆に上がっています。

(深田)

そうですよね。各国がコロナ対策をして、日本もアメリカも100何十兆円という予算を付けましたから、結構お金は流れて来たという感じでしょうか?

(小幡)

だから、私のような暴落論者が「景気が悪くなる」と言って心配している理由は、「21世紀に入ってから真面目に調整をしていない」と考えるからです。痛みを本当に社会経済全体でシェアして、痛みを処理してから前に進むのではなく、痛みが出た時に金融財政という痛み止めを注入して、調整せずに尻拭いを先送りにしたまま、もう1回バブルを膨らませて凌ぐという事が続いて来たわけです。

(深田)

バブルで景気を良くして、崩壊したらまた別のバブルを作って、ということを繰り返していますよね。

(小幡)

そうです。21世紀が始まって、2001年にアメリカで9.11という悲劇的なテロがありました。

あの時は、ガバナンス的にはエンロン・ショックというのがあって、アメリカで1番イノベイティブな電力会社と言われたのが全て会計操作だったというものです。

アンダーセンなどの色々な所が巻き込まれた一大スキャンダルでした。

株的にはすごいショックで、景気的にはテロで人の流れも物の流れも止まりました。そこから金融緩和の流れになり、やがてそれがサブプライムバブルを作り、それが崩壊してリーマン・ショックになりましたよね。

その後は、日本が発明した「量的緩和」というものにアメリカも欧州も乗ってきたから、世界大緩和バブルになりました。

そしたら欧州債務危機という国際危機になって、ギリシャ危機が起こりました。今度はそれを救済しようとなりました。

「いつか弾ける、弾ける」と思っていて、途中で一瞬「中国がやばい」とか、バーナンキ・ショックなど色々あったのですが、結局はコロナ・ショックまで先送りされました。

コロナで一気に下がりました。

日本に比べて、アメリカやヨーロッパは本当に死者の数が半端ではなかったので、財政金融をもう1回大出動させて、大バブルが起きて今に至るわけです。

その結果、急にインフレになったから「遂にツケでインフレになり、インフレに対しては利上げして、金融市場もツケを払う時が来た」と感じました。

「アメリカの景気はハードランディングか、ソフトランディングか。どちらのシナリオだ?」とみんなが予想して揉めていたのですが、結局「ノーランディング」となりました。

景気が後退しないまま、このままアメリカの景気は強くなって終わるのではないかという現状なのです。だから私は「嘘つき少年」なのです。

私たちの感覚からすると、「まだ調整が終わってないから、もう1回バブルが崩壊しないと辻妻が合わないはずだ」ということになります。どこかで、今までやってしまったことの処理をみんなで地道にやらなくてはいけないタイミングが来るはずで、「今度こそ来るのではないか」というのが来年の予想です。

(深田)

なるほど。小幡先生の宿敵の原田泰先生というリフレ派の経済学者がいるのですが、原田先生によると「多少お金をばら撒いても金融市場はビクともしないから、10兆、20兆円ぐらいなら大丈夫ですよ」とおっしゃっています。

(小幡)

「大丈夫」とは「崩壊しない」という意味ですか?

(深田)

「10兆、20兆円予算が増えたとしても、金融市場で大幅に金利が上がることもないし、国債が暴落するようなこともないから、多少なら大丈夫だし、このまま行けるかも知れない」とおっしゃっています。

(小幡)

過去数年で見ると確かにそうでした。

(深田)

負けを認めるのですか?

(小幡)

「昨年の予想」という意味では負けていますよね。昨年崩壊してもおかしくないと思っていたのに無事でしたから。

(深田)

今後もこのまま行けるのでしょうか?

(小幡)

「言い訳は1回」と言いましたが、もう1個言い訳をすると、やはり外れる理由が幾つかありまして、予想というよりも警鐘なのです。実際に起きたら本当に困ることになりますので。

起きない方が勿論良いのですが、構造的にはいつか起きないと辻褄が合わないのです。いつかは起きるのではないかなと思うと、やはり起きることに備えておいた方が良いと思うのです。

本当は今年起きるかどうかは分からないですよ。バブルの一番難しいのは、バブルはいつか弾けることは間違いありません。でも、いつなのかは分からないのです。

なぜかと言うと「自己実現」だからです。つまり、みんなが弾けると思わない限り、金を入れ続けるわけじゃないですか。大多数が一気に「これはやばい、逃げろ!」と言わないとバブルは弾けないのです。特に株式はそうです。

(深田)

株式市場が崩れる場合には、その前にちょっと予兆がありますね。

(小幡)

おっしゃる通りあります。

(深田)

金利市場で金利がちょっと上がると、その後に脆くなるというか…

(小幡)

勿論そうです。

(深田)

なので、今ちょっと金利が上がって来ているので、その辺りが特に日本の市場に関しては、心配になる要因なのかなと思います。

(小幡)

全くその通りなのですが、アメリカは過去2、3年で金利がずっと上がって来たのに何ともなかったじゃないですか。これが、予想が大きく外れたところです。

結局、これだけ金利上昇局面になって「多分、インフレも抑えられないだろう」と思われました。なぜかと言えばサプライサイドだからです。

需要が過熱してインフレになる場合は、インフレを抑えるために金融引き締めをして需要を減らそうとするしか手段がないのですが、今回はサプライサイドで主に起きました。

(深田)

「サプライサイドで主に起きている」とはどういう意味ですか?

(小幡)

つまり、「供給力が低下している」とか、「原材料不足になっている」とかです。

サプライチェーンが中国とアメリカで敵対して分断していたり、ロシアでの戦争で空輸も船も輸送コスト上がったりしています。そうなると、物を作ったり運んだりするのに今までより費用が掛かるのです。

ニーズが沢山あると、みんなが「欲しい、欲しい」と言って物の奪いになるから、景気が良くなり、物価が上がります。

だから、景気が良いというメリットと、物価上がってしまうデメリットとはセットです。ある意味、プラス・マイナスでバランスが取れているわけです。

サプライサイドというのは、供給網のコストが高いということで全員が損なわけです。供給している方もコストが上がったから価格も上がっているので、別に高く売り付けて儲けているわけでもないのです。

日本では「インフレを起せ」という話がずっと続いていたので、あまり実感が湧かないですが、特にイギリスではEUを離脱したことで10%のインフレがずっと続いたため、「とにかくインフレが問題だ」とみんな思っていて、「とにかくインフレを抑えなきゃいけない」と考えています。

そして、抑え込むと今度は景気も悪くなってしまいます。

だけど、サプライサイドが要因の場合、需要が減っても別にコストは下がらないわけですから、インフレは残りますね。結果、「仕事もないし、インフレだし」という最悪の状態になりました。

いわゆる「スタグフレーション」です。

「スタグネーション」は景気停滞、「インフレーション」は物価上昇です。それらが同時に起きるから「スタグフレーション」です。これはオイルショック当時の1970年代に流行った言葉です。

それが起きるのではないかとみんな怯えていたのですが、なぜか景気が悪くならないのですよ。これが謎なのです。多くの人の予想が外れたと思います。

(深田)

私は大学で経済学の授業も取っていましたが、経済学は謎が多いですよね。

(小幡)

謎が多いというよりは、経済学はダメなのです。

(深田)

ここに来て自己否定ですか!?(笑)

(小幡)

そうです。経済学というのはレベルが低いというか、「まだ進歩途上なのにノーベル賞を貰ってしまったりしていいのかな?」と思うのです。

私はよく、「経済学は他の科学で例えると、メソポタミア文明当時の医学レベルだ」と言っています。

「景気が過熱したら、熱冷ましで頭を冷やす」みたいな程度でしょう?「何がウイルスか」も分かってないし、「心臓がどこにあるのか」というような経済のメカニズムもあまりよく分かってないわけです。

「とにかく冷ませ!」と言ったり、景気が悪くなると「噴かせ!」と言ったりしています。

(深田)

教科書に「神の見えざる手」と普通に書いてありますしね。

(小幡)

それはそもそも間違っているというか、アダム・スミスが「神の見えざる手」と言ったことになっていますが、アダム・スミスはその言葉を一度も使っていません。

しかも、その「神」という概念がものすごく間違っていて、「見えざる手」が誰の手かというと「我々の手」なのですよ。

つまり市場とは、自分でコントロールしているつもりはないのだけど、全員が買うとか売るとかの経済行動の結果、マーケットは動いて行き、やがて纏まっていくのです。

「予定調和的に纏まる」ということをスミスや、或いはその後の「一般均衡理論」で唱え、経済学を美しい学問にしたのです。

おそらく「神の」と付けた人は、「あたかも神がみんなを理想的な場所に、予定調和的に導いてくれるかのようだ」と考えて、「神の」と入れたと思うのです。

だけど、アダム・スミスは入れてない上に、事実として「神」ではなくて「自己実現」しているのです。逆に言うと、「経済学には神がいない」というのが非常に大事なところなのです。

でも、「神がいない」ということをみんな分かってないのです。

バランスが取れている時は、みんなが幸せになるような所に何だか行くのだけど、それが崩れた時には戻してくれる人はいない。実は我々は、戻すメカニズムを構造的には分かってないのです。

知恵として「過熱して来たら、ちょっと冷やせば行き過ぎは戻るよね」というのは分かっています。そして「みんなで揉み合って取引が自由に行われて、過熱さえ冷ませば、いつかは落ち着くよね」というその程度です。だから「メソポタミア文明」なのです。

(深田)

ああ、なるほど。「熱が出たら頭にアイスノンを乗せてください」というのが今の経済学なのですね。

(小幡)

ですから、私は極端に「景気が悪くなるぞ。株も落ちるぞ」と言って、しかもそれを嬉しそうに言うからよく怒られるのです。そうでなくても、みんなそれを心配していて「何とかハードランディングは避けて、ソフトランディングしよう」と言って、「利上げのペースはやり過ぎなのではないか」とか、「利下げは早めにやっておく方が良いのではないか」と論争していたのです。

ですが、景気が一向に悪くなりすらしないわけです。なぜ悪くなっていないのか、みんな分かってないのですよ。

(深田)

確かにそうですね。株も同じで、「過熱して高くなり過ぎているのではないのか」と思っても、そこから更に行くのですよね。

(小幡)

そうです。だから「神」もいないし、自分たちで作っているのに「自分たちがどうしたからこうなるのか」も分からない。自分たちが止めたくなった時に、どう止めていいかも分からない。

だから今の状態は、だいぶ危険なんじゃないかと思っています。

(深田)

小幡先生、株で儲かったことはありますか?

(小幡)

いいえ。私は昔、デイトレーダーだったから。

(深田)

本当ですか!?

(小幡)

行動ファイナンスという学問もやりましたが、野蛮な学問です。

「バブル崩壊」とか、「追証」、「マージン・コールで投げ売りをする」とか出て来ると、もう全然意味が分からないですよ。

「追証」と言われても分からなかったので、自ら体験してみようと思ってデイトレをバンバンしてみましたが、「追証」は本当に怖いと思いました。

デイトレーダー自体は「ものすごく儲けて、ものすごく損をして、今に至る」みたいな感じです。だから経験は豊富です。

リーマン・ショック前までは、株は超強気派でした。

2007年にパリバ・ショックがあって、リーマン・ショックの1年前、その前兆でした。「これはやばい!」と思い、そこから超弱気派になりました。

「リーマン・ショックの前日に株を全部売った男」として、あの時は名を馳せたのです。

アベノミクスが始まる直前は「日本株を買え」と言っていたのです。日経平均8000円でしたので、「もう絶対買った方がいい」と言いました。

「じゃあ、なんでお前は買わないのか?」と聞かれて、「リーマンで損して、ちょっと金がないので」とか「もう引退したんだよ」みたいな感じでした。

「みんな、買った方がいいよ」と言っていましたが、アベノミクが始まったら「これは完全にバブルだから、どこかで早めに降りた方がいいよ」と言い始めました。

今までは安過ぎましたが、2万円を超えてからは「これはいつ崩壊してもおかしくない」と言うようになり、それ以降はずっと外れています。

(深田)

アベノミクスで金融緩和をバンバンやって来たのですが、石破政権になってこの辺りは少し変わりそうなので、ちょっと調整局面に入るのかなという気もしますよね。

(小幡)

でも問題は、石破さんはやはり党内政権基盤が弱いじゃないですか。

野党との関係では玉木雄一郎さんが活躍していて、それはそれで開き直れば良いのですが、党内の基盤が弱いですし、経済政策を担当している赤澤さんが、アベノミクスには反対だけど拡張主義者というか、要は「噴かす派」なのです。

(深田)

「噴かす派」とは?

(小幡)

金融政策はあまり信じてないけれど、財政政策は信じている方なので、財政はどんどん支出しようという人なのです。私とは逆の立場です。

だから、結果として今までと起こることはあまり変わってないので、バブルをなるべく続けさせるような政策になっているわけです。

(深田)

なるほど。では、まだもう少し行けるのかなという感じでしょうか?

(小幡)

延命はされると思います。但し、「その分、谷が深くなる」と言い続けて、早や3年です。

(深田)

(笑)。ということで、経済学を否定する慶應大学…

(小幡)

否定はしていません。「Long Way To Go」です。

ポジティブではありますが、「まだまだよちよち歩きだ。経済学者は偉そうな顔をするんじゃない。お前らはまだ赤ん坊だぜ」ということです。

(深田)

というわけで、経済学を「よちよち」から育てて下さっている小幡先生にお話いただきました(笑)。ありがとうございました。

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