生成AI、chatGPT で失業者激増のウソホント!? 前編 海老原詞生×深田萌絵

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【目次】

(深田)

皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵です。今回は大正大学招聘教授で雇用ジャーナリストでもある海老原嗣生先生に お越しいただきました。先生よろしくお願いします。

今日は、長らくお茶の間を沸かしているあの話題です。AIの台頭で人類から仕事が奪われるのでベーシックインカムが必要だ、というような論調が結構茶の間を賑わせてきたのですが、「AIで仕事がなくなる」論には私はすごく違和感を持っています。有名な先生方がすごい夢物語のように、AIは何でもできて人類を超えていく、といった話をしています。事務職も何もかも簡単な仕事は全部AIに取られてしまうから私たちは仕事がなくなってしまう。だから生活保護ではなくてベーシックインカムで人類全てを救おうというような話です。でも、そんなことありえないと私は思っています。海老原先生はかなり早くからAIで仕事がなくなるようなことはないとおっしゃっています。その辺りについてお話いただいてもいいでしょうか。

(海老原)

前段で違う話もしたいのですが、日本人というか世界中そうなのかも知れませんが、普通の人はやはり流行りに弱すぎます。人生100年という話も日本がすごく熱狂してしまい、政策にもたくさん入っていますが、リンダ・グラットンさんの『ライフシフト』を読むと最初に書いてあるのは、2007年に生まれた 子供の半分が100歳まで生きるということです。2007年に生まれていない私たちが100歳まで生きるというわけではありません。そこを全然飛ばして人生100年という話に入ってしまっている。

AIの話も、ベーシックインカムで食べていくということは、シンギュラリティ(技術的特異点)を超えてからの話です。

それこそ全脳アーキテクトとか、その手の時代にまでなってからの話であって、100年後の話なのにいきなり来年のような話になってしまっている。どこか浮ついたところがあります。

(深田)

そうですね。ものすごく浮ついています。私は企業の下請けで色々開発に入っていたのですが、そういう立場から見ると絶対にありえない話です。無人タクシーでどこでも行ける時代が来るとか、だからもうタクシードライバー はいらなくなるとか、事務作業とか単純作業、ホワイトカラーはいらなくなるというようことがずっと言われていますが、開発している側からするともうありえないぐらいそれが難しいのです。 事務作業や雑用とかは自動化しようがありません。少量多品種すぎて、その少量の一個一個の付加価値が低いので、それをいろんな種類作っていくというのがものすごいお金がかかって、そもそもそこに開発費用をかける意味があるのかとか、そういう現実的なことを考えると、それは大企業であれば分かりますが、中小企業で数十人しかいない会社であれば、本当に開発するのに人手を取られ、お金も足りないとか、疲れて、みんな途中でやめてしまうというような、そういう現実を見ているとどうしてそのような話になってしまうのかといつも思います。

(海老原)

8割は同意しますが、2割ぐらいは違います。違うところは後で言います。私たちの間ではAIというのは、多種多様な細切れのもの一つずつに作らなければならいないから難しい、というのが 当たり前の話として一個あります。二つ目にいわゆる対人折衝と物流的業務はできない。パソコンの中のことならまだできますが、対人折衝や物流的業務はできない。それにはメカトロとかが必要なインターフェイスが必要になって、そこにとんでもない投資がかかる。こんな当たり前のことを忘れてそれこそ単純労働というのは細切れ作業の物理的労働だからそれに全部メカトロをつけていたらとんでもないお金になる。だから単純労働こそなくならなくて、逆にちょっとした知的労働の方がなくなりやすいという話を逆転で捉えているのです。

(深田)

そうなのですよ。だから単純労働の方が絶対に強くて、あとクリエイティブの方がちょっと危険かなと思うのですが。

(海老原)

そこもちょっと後で話しましょう。トータルで言うと本物の人は残るけれども偽物は消えるというのが私の考え方です。

その前にフレイ&オズボーンから始まった話をちょっと振り返っていきたいと思います。オックスフォード大学のフレイ&オズボーン(Frey & Osborne)が論文を書いたのですが、この論文は実は経営学部ではなくて工学部に出した。だからこの時点でもかなりインチキでしかも査読を受けていない。つまり向こうで言うとリファレンスペーパー、参考文献でしかない。こういうようないわゆる粗々なものなのに、向こうのマスコミが飛びついた。日本では一流企業の野村総研の研究者までが飛びついて猿まねで全く同じロジックで調べた。

まだオズボーンの方は随分譲歩節があって、なくなる仕事が9割ぐらいだけれども、いつなくなるかということは書いていない。だからそれはまだいいのですが、野村総研の方は10年から15年以内に47%の仕事がなくなると、ここまで言い切ってしまった。

(深田)

それは言いすぎですよね。

(海老原)

あれは2014年に作って15年に発表だからもう10経ってしまった。

(深田)

ここで上がっている仕事はほぼ残っています。

<スライド消える仕事・残る仕事(野村総研)の違和感>

(海老原)

これはJILPTの職業区分というものですが、すごく古くさくて、例えば人材エージェントの区分とかを使えばいいのに古いものだから同じような仕事がたくさん何回も出てきます。例えば、行政事務員(国)、行政事務員(県市町村)と、これも2つに分けただけでなんとか100にしようとしているような気がしてしまいます。

(深田)

カメラ組立工というのはなんだろうという感じがします。(笑)

(海老原)

金属加工だけでも7職種も入っています。これは駄目です。

(深田)

金属加工は結構少量多品種に対応しているマシンも結構あるので、この辺はかなり楽になったんですけれども、その代わりソフトウェアを使える人が必要になったので全くいらないというわけではありません。

(海老原)

そうですか。いわゆる汎用性のあるような、メカトロがくっついていてもすでに出来上がっていて、金属系だったら結構何種類も仕事ができるという状態だと作りやすいわけですね。

(深田)

そうです。だからソフトウェアに対してパラメーターを割り振っていくとか、どういう形状のものを作るのかということを入れて、そして削る時の先端の切削工具を取り替えておいて、それでセットして作る、自動化で作るということはできるので、もう手でやらなくてもいいのですが、ソフトウェアの知識がある人、パラメーターが分かる人、専門知識のある人が若干必要だということです。

(海老原)

エヌシー(NC)とかマシニングセンタ(MC)とか、そうしたものなのですか。でも、とにかくそうするとその先端の切削工具を取り替えることまでメカニックロボットがやることにしたらとんでもない投資がかかるけれども、その部分は人がやればいいってことでしょう。

(深田)

そうです。だからその先端の部分もちゃんとセットしておけば順番に1,2,3,4と取り替えて削ってくれるので、そこまでセットしておけば、日中にソフトウェアを書いて、それでセットして夜の間に削るようにスタートボタンを押したら翌朝サンプルが出てくるという具合です。

(海老原)

分かりました。洗濯機のようなイメージですね。さて、野村総研に対してのツッコミを深田さんが色々書いていますね。

<スライド野村総研に対してのツッコミ>

(深田)

はい。事務員雑用が最もなくならない。無くなりようがありませんし、AV通信機器組立修理工がなくなるとか、 これも意味不明で何の根拠があってそのようなことを言っているのかわかりません。

(海老原)

組み立てというのはこまごまとした物理的作業の集まりですからね。

(深田)

組み立てとかディスアセンブル(分解)とかは非常に大変です。私はやっていましたから分かるのですが、これは絶対無理です。どこに不具合があるのか分からない。基盤にあるのかチップにあるのかケーブルにあるのかわからない。ですから、最近のポンコツ修理工だと、ちょっと不具合がありましたという公共機材の場合は、製品交換というか、代替機を出して工場に持って帰るので、絶対なくならない仕事です。

(海老原)

そう思います。事務員のことはちょっと後でありますが、行政に関わるところもなくならない。

(深田)

行政で働いている人たちというのは国家権力を持っていますから自分たちの首が切られるなどということに同意するはずが絶対ありません。

(海老原)

官僚ではなくて地方行政だと住民からのいわゆる受付業務やクレーム対応がすごく多いけれどもその部分はなくしてもいいのではないかと思います。

(深田)

いや、そこの行政というのは派遣会社と結構癒着していますから、減らないと思います。

(海老原)

でもなくせるのであれば、彼らはお金かけたくないし、あのようなものはAIがやれいいと思う。

(深田)

なくした方がいいと思います。結構区役所の仕事などは人がいなくてもいい仕事の最たるものだと思っています。ただ区役所の人たちとかそこで食べている人たち が拒否権プレイヤーになる可能性は高いとは思います。

(海老原)

この中で私が一番違うと思っているのは事務員です。事務員は実はもうすでになくす方向のフォーマットはかなり出来ています。庶務の仕事はなくなりませんが、事務の仕事というのはどうなっているかというと、基本今ダイレクト化して営業マンが自分で請求処理とか出張伝票を管理するようになっている。だからその部分でダイレクト化という点で相当減ったわけです。もう一つは、事務作業だけは切り離して別会社、子会社にするというのが大手の基本になっている。そこにある仕事というのは本当に事務処理です。

(深田)

だとするとかなり簡素化はできますね。

(海老原)

公共系のいわゆる村役場とか区役所とかの全部の事務を一括で引き受けるという事務処理センターを作って、同じような仕組みにしようと今しているわけです。それがうまくいくと中堅中小でそれを使うところは使っていいという方向には私は進むと思っています。その仕組みもやはりかなり良くてレアケースとかそれからルール違反というものも全部です。例えば、請求書というとどこに何が書いてあるか全然フォーマットが違うし、さらに言うと書いてある言葉も「御請求金額」なのか金額の名前も全部違っているわけです。それも全部AIが読み取って、これは請求という意味なのだろう、これはここに振り込めという意味だろうと自動認知してくれて紙ベースで来たものも全部読めるようになってきているのです。

(深田)

実はそのシステムが結構最後の1%の ところの難易度が高くて、今のところ最終的に「目検」になっています。それで開発をやっている人たちの話を何度かするのですが、伝票に文字があってこれを「99%読める」と言う時、100文字あって99文字読めるというわけではない。一文字ごとに99%の確率で合っているので、最後はやはり目検しないといけない。だから物流センターとかでこういう手書きの伝票とかでたくさん入ってくると読み取りきれなくて、やはり人が目で仕分けしているのです。だから意外と自動化しきれそうでしきれない部分が最後のハードルとして残っています。

(海老原)

いや、そこが私は進化だと思っています。物理的業務がまず発生していないのと、感情的な対人接触業務も発生していないから、私はそれは進化でどうにかなるのではないかと。実際、AIのディープラーニングはやっていることはLMM(大規模マルチモーダルモデル)でも何でも同じで、結局は何かしらの共通項を見つけてそれをルール化していく、それでそのルールに反するものをまた集めて共通項にしてルール化していく。こういうようなローカルルールを作っていくという仕組みです。そう考えると、なぜこれが外れたのだろうか、同じような外れが何かあるとするとそれはルール化する。こういう形で進んで、例えば翻訳などは一番LMMを使っているのでいい例です。例えばお店屋さんに入って「俺魚ね」と言えば、これは翻訳だと「アイアムフィッシュ(I am fish)」になるのではなくて「アイオーダーフィッシュ(I order fish)」になる。これもいわゆる例外というのでランチ時に食品店に入った場合の一言は違うルールだ、「アム」ではなくて「オーダー」だと、こういうルールを作っただけの話なのです。こうやっていわゆるイレギュラー対応というものをルール化していくのは(LMMは)うまいと思っています。

(深田)

そうですね。AIも機械化もそうなのですけれども、それをどこで使うのかという環境設定が大事なのですね。

(海老原)

それも一つのパラメーターです。

(深田)

そうです。だからそのパラメーター環境を指定してその環境から外れないという中だとものすごくパフォーマンスが上がります。ですから違う業務になって、さらに違う業務になっていってという少量多品種になってくると、シチュエーション、前提条件がどんどん変わっていった時にそれの切り替えが上手にできるのかというその柔軟性が難しいのです。

あと意外と難しいのが最近生成AIが描く絵、出してくる画像です。人間そっくりなのですが、指が6本あるからこれはAIで描いた映像だということがばれてしまう。これを6本指は人間ではない、普通は5本指なのだということを教えるのが意外と難しい。だから未だに6本指が出てくる。6本あるのは人間じゃないという風に言うと奇形の人は人間ではないと判断されてしまいますので、開発する側から言うと悩ましいところです。ですからこの辺りは目検が必ず必要なのです。

(海老原)

目検用のAIも出てくるのではないかとやはり思ってしまいます。結局イレギュラーを階層化して、階層化のどんどん下の方の難しいところまでイレギュラー対応してくという仕組みになっていくのではないかなと思います。

(深田)

ところが最適化しすぎると汎用性を失ってしまいます。だから一つの分野、例えば、映画だから人間は5本指のみ、と設定すれば使えるようになります。

(海老原)

深田さんの人生を見ているとわかります。

(深田)

(笑)なんですか?!

(海老原)

彼氏の条件を最適化しすぎて—

(深田)

(笑)

どうしてそんなにいじめるのですか毎回。

(海老原)

(笑)

はい、行きましょう。宅配便がなくなるという話がそれこそたくさん出ていました。

<スライド野村総研に対してのツッコミ2>

(深田)

無理です。

(海老原)

有名な識者の方、どなたですか。

(深田)

ホリエモンですか。

(海老原)

あと落合君も言っていました。ビデオになって残っていますね。あれはなぜ無くならなかったのかと言えば、当たり前の話です。

(深田)

意外と皆さん3次元空間をロボが動くということの大変さをご存知ないと思います。私などは自動運転とか遠隔運転の開発などもやっていたので、あそこですごくいろんなエンジニアとして優秀な人たちがすごく苦労して、なかなか開発が進まない。それがやっぱりわからない。あとはラストワンマイルのところでドローンを使うのもかなり難しいです。

(海老原)

だってハンコをもらったりするのもあるし、 お金の着払いもありますし。

(深田)

結局、ドローンとかラストワンマイルロボッで、宅配ロボで宅配するのではなくて、スマートマンションにしないといけないです。だからマンションの宅配ボックスに入れたら宅配ボックスから上に勝手に上がっていって届けてくれたり、ハンコをもらって戻ってきてくれるという、こっちの方が現実的です。

有名な方の話を聞いていると、「ああ、この人たち開発したことない方だな」ということは思います。だからAIの夢物語を語る大学教師も結構おられます。

(海老原)

松尾さんとか、言ってしまいましたが、井上君とかもよく言いますね。

<スライド「仕事が消滅する」論文の根本的な問題

(深田)

読んでいても絶対ありえませんと思うような内容です。AIは何も理解していない。認識はしているけれども理解しているわけではないので、その辺りの判断はできないということが人間にいまいち認識されていない。

(海老原)

それ本当に素晴らしい。

<スライドAI進化の3段階>

AIの進化について、誰もが認めている話をします。ご存知だと思いますが、今は一つの仕事しかできない特化型AIです。これだとさっき言ったように細切れの仕事はできない、人間のような仕事はできないと言われている。それが汎用型AIになってくるといろんなことができるようになる。それが最初から全脳アーキテクチャという形になってくる。全脳アーキテクチャというのは脳みそのことを同じような形に作り直すと言うのですが、脳みそは16個の部品からできているらしくて、これ例えで言っているのですが、その16分野ごとにモジュールにしてしまって、このモジュールAはこういう機能、モジュールBはこういう機能、というように一個ずつ真似ていって、全部くっつけて脳みそにするという形です。

なんとなく人間的なものができるようになるのが全脳アーキテクトというものです。それに対して全脳エミレーションというのは何かというと、脳のいわゆる一番小さい末端のニューロン単位まで全部細かくしてしまって、そのニューロンごとにくっつけていくという仕組みで、脳と同じものを組み上げて作るというものです。ここまで行くと本当に感情も人間と同じようなものができるのではないかという話が出てきます。でもここです。この話、確かにそうなのかも知れないけれど、全脳アーキテクチャーに入るのは2045年で、まだ20年も先です。

<スライドAI進化のタイムスパン>

全脳エミレーションは2100年と言われています。(深田)さん、これでも笑っていますね。これでもちょっと早すぎると思っているわけでしょう。

(深田)

そうです。分かりました?

(海老原)

するとまだまだ無理な話だということです。

(深田)

センサーの技術というのが追いついてないのです。だから文字情報とかだと確かにAIは処理が早いと思うのですけれども、人間の知能が発達するステージには五感があるわけです。その五感のセンサーが完璧ではないわけです。そうすると圧倒的にデータが足りない。

(海老原)

いや、そこは必要ないのではないかなと思います。例えば、味音痴で味も全くわからない人がいるとする。でもその人が、もしフランス料理の料理人が完璧に作ったレシピがあって、その通りにそれも一切間違えない技術で綺麗に切ってに並べて作ったらおいしいでしょう。つまりそういうAIはできてくると思います。

(深田)

そういう高付加価値帯はできないと思います。ここはちょっと意見が違いますね。

(海老原)

ではそれも後でやりましょう。大体合ってはいるのですが、二人の違いは例えば例外対応もたくさんあって、そんなに高度なことはできないから専門的な事務作業でいろんな目検が残るという話があります。そこが(深田)さんと私との違いです。結局はAIはそこまでうまく進化していくだろうというのが私の考えです。

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