悩みゼロ!?上場企業社長が語る「スランプの抜けだし方」 木下勝寿社長@北の達人コーポレーション

【目次】
- 00:00 1. オープニング
- 01:42 2. 報告ベースではなく数字ベース
- 04:47 3. 今までが無意識に外れていく
- 08:11 4. 感情モードから思考モードに
- 10:57 5. 悩みを言語化する
- 13:42 6. 考え方のパターンを作る
- 16:06 7. 具体的な課題に落とし込む
- 18:17 8. 悩んでいるのは考えていない
(深田)
皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵です。今回は、北の達人コーポレーション代表取締役社長の木下勝寿さんにお越しいただきました。木下社長、本日はよろしくお願いいたします。
今回、お越しいただいたのは、社長の新刊「悩まない人の考え方」を拝読してお話を伺いたいと思ったからです。ちょうど私自身、この番組の運営を含めすべてがスランプでした。いまメルマガ配信や書籍の執筆、SNS運用をしながら、YouTubeで個人チャンネルとこの番組を運営しているのですが、最近、視聴回数が伸び悩んでいたのです。そういった人生で突然やってくるスランプ、その要因分析をしたのは、日本では社長が初めてではないでしょうか。
(木下)
どうでしょうか。あまり意識したことはないのです。
(深田)
スランプというのは「今までできていたことができなくなる状態」と本の中で定義されていましたよね。
私自身も、YouTubeで新しい展開を模索したり、ゲストを招いて番組を作ったりしましたが、その一方で最初に積み上げてきたものが崩れてしまうことに気づきました。結果として、すべてに手が回らなくなってしまうのです。
(木下)
それはよくあることですね。新しいことに挑戦すると、どうしても最初にやっていたことへの注意が薄れがちです。僕自身もそれを経験しました。
(深田)
それはいつ頃のことだったのでしょうか?
(木下)
起業したばかりの頃です。インターネットで物を売ることを始めたのですが、当時はまだ一般的ではありませんでした。周囲でも、新しいことに取り組んでうまくいったという話を聞くけれど、総売上に変化がないということがよくあったのですよ。
社内でも、社員が「これをやったら成果が出ました」と報告してくれることがありますが、その成果をよく分析すると、月間の売上はあまり変わっていなかったりするのです。
人間は新しいことに目が向きやすいですが、前にやっていたことが疎かになりやすい。特に前向きでアグレッシブな人ほどその傾向があります。そういったことに20年前に気付きました。そこから、報告ベースではなくデータや数字を基に状況を正確に把握するようにしました。
(深田)
振り返ってみて、最初のベースが落ちているけれど、新規事業で手一杯な時はどうするのですか。
(木下)
そういうことを何度か経験したので、新規事業を立ち上げる際によく考えるようになりました。必ずリソースを明確化するのです。新しいことに取り組むと、それまで無意識にやっていたことが抜け落ちてしまうことがあるので、それを防ぐためにも新しいプロジェクトに必要な時間や労力を具体的に計算し、「本当にできるのか」を精査するようにしています。
(深田)
なるほど。それまで何となく皆でやっていた責任の所在がはっきりとしていない仕事が、無意識に外れていくのですね。
(木下)
そうです。新しいことに挑戦すること自体は素晴らしいのですが、それによって失うものとのバランスを見極める必要がありますね。この比較をしっかり行い、適切な判断をしていくことが重要です。
(深田)
その判断の基準はあるのでしょうか。
(木下)
新しいことをやることによって得られそうな数値と、それをやることによって失う部分の数値での比較ですね。
(深田)
なるほど。それを続けることで、社長はスランプに陥らなくなったのですか。
(木下)
気を抜くと発生するので、数字を比較するということは気を付けています。
例えば、物流のコストが4年前に比べて2倍くらいになっているのですが、内訳を見てみると物流量自体は1.38倍にしかなっていないので、バランスがおかしいですよね。一気に2倍になっていたら気付くのですが、少しずつ何かのコストが上がっていると気づきにくいのです。それを防ぐために半年に1回は、数年前の数字と比較して何かおかしくなっていないか確認しています。スランプになっていることに気付いていないこともありますから。
(深田)
木下社長の本を拝読して、やっと自分がスランプだったことに気づいたのです。何かおかしいなとは思っていたのですが、実は以前はきちんと時間を取ってやっていたことを、いつの間にかやらなくなっていました。
私のように情報発信の仕事をしていると、インプットの時間ってすごく大事ですよね。でも、ゲストの皆さんの本を読むことやその他の忙しさに追われて、ニュースを追う時間をおろそかにしていました。本当にこのタイミングで社長の本を読めて良かったです。ありがとうございます。
ところで、この「悩まない考え方」というのは、いつ頃ご自身の中に取り入れられたのでしょうか。
(木下)
大元となるのは僕が20歳くらいの時の出来事です。
(深田)
20歳ですか。それは早いですね。
(木下)
ラッキーでしたね。本の中にも書いてあるのですが、当時僕は学生企業に所属していました。その会社の社長が、現在のGMOインターネットの副社長である西山さんという方だったのです。当時、西山さんは25歳か26歳くらいで、非常に目配りが利く方でした。悩んでいそうなメンバーには必ず声をかけて、「何を悩んでいるの?」と聞いていたのです。
あるメンバーが「悩んでいます」と答えたら、「何がどうなったらいいの?」と聞く。「これがこうなったらいいのですけど……」と言うと、「じゃあ、それを実現するにはどうすればいい?」と問いかける。そうすると、悩みがその場で解消されていくのです。
その様子を見て、「悩みって、感情のままだからこそ悩みになる。思考モードに切り替えれば、一瞬で解決するのだ」と気づきました。
(深田)
たしかにそうですね。
私も最近番組の視聴回数が伸び悩んで、どうしようかとくよくよしていたのですが、具体的に何をすればいいかを考えるところまで落とし込んでいませんでした。
(木下)
悩みは、何が問題でどうなりたいのかを明確にすると、やるべきことが自然と見えてきます。
(深田)
おっしゃる通りです。ただ、「何かおかしいな」と思っているだけでは、それが悩みだと自覚できないことが多いですよね。
(木下)
そうなのです。僕はこれを「サーモスタット」と呼んでいます。サーモスタットは、温度が一定の値に達すると自動的に調整される仕組みですが、それと同じで「不快だな」と感じた時に、自己認識することが大事なのです。「いま悩もうとしている」「いま嫌だと感じている」と認識する。そして、「なぜ嫌なのか」「なぜ悩んでいるのか」を明確にし、「どうなりたいのか」を考えると、2〜3分くらいで悩みが解消することが多いです。
(深田)
まずは自分がモヤモヤしていることを自覚するのですね。
(木下)
そうです。何か「気持ち悪いな」と感じたら、それを認識することから始めます。
(深田)
実は私、最近連日イライラしている夢を見て、睡眠の質が悪くなっていました。そんな夢を見るのは珍しくて、ストレスを抱えているのかもしれないと気付きました。そして仕事を振り返ってみたら、やはりストレスの原因となる部分があったのです。そこを整理したら、すぐに解決しました。
悩みは、言語化して、「何が本当に問題なのか」「どうなりたいのか」を明確にすると解決が早いのだなと思いまいした。
(木下)
そうです。感情的に「嫌だ」と感じる状態を一旦思考モードに切り替えると、意外と一瞬でなくなることも多いです。
(深田)
西山社長と出会ったことで、その考え方に20歳で気付いたのですね。
(木下)
はい。すぐに身についたわけではありませんが、経験を積む中で30歳くらいにはほとんど悩まなくなりました。もちろん、不快なことや予想外のことはありますが、それを長引かせることはありません。翌日には確実に気持ちを切り替えられるようになりました。
(深田)
どうすれば、短い時間で自分の感情を変化させられるのですか。
(木下)
それが、この本に書いた「思考アルゴリズム」で、考え方のパターンを作っていくのです。不快な状態になった時に、「上手くいっていないのか」「思い通りにいっていないのか」を明確にします。上手くいっていない場合というのはそれほど多くはなくて、こうやっていこうと決めたけれど思い通りにいっていない場合は、別の手を打てば良いのです。
(深田)
たしかにそうですね。この番組でいうと、編集チームの人数が足りずショート動画の制作まで手が回らない状況でした。どうしようと思いながらモヤモヤしたまま半年ほど経ってしまったのですが、この本を読んで、内製化ではなく全部外注してしまえば良いと、ようやく割り切ることができました。
(木下)
それは結局、「思い通りに行っていなかった」だけということなので、方向性を変えれば良いのですよね。
本当にうまくいっていない場合は、「問題を解決するのか」、「問題を問題でなくするのか」、「問題を課題にするのか」の三パターンが考えられます。そもそもそれは本当に問題なのか、という視点が大事です。
何のために再生数を増やしたいのか、何のために登録者を増やしたいのかを突き詰めると、実は再生数を回さなくても良いのではないかということもあります。
(深田)
私がこの番組を始めた理由は、政治的な課題や政策について新しい視点を提案し、世論を形成したいからです。税金や社会保険料の増加など、庶民にとって不利益な政策が多い中で、これを変えるために世論を作りたい。その手段の一つとしてYouTubeを選んだので、再生数を増やすことだけが目的ではないのですよね。
(木下)
再生数が上がらないテーマの場合、他の手段を模索するのも一つの方法ですし、「このテーマで再生数は上がるはずだ」と思うなら、再生数を上げる方法を研究する必要があります。
(深田)
私が知ってほしいと思うテーマと、視聴者が興味のあるテーマが一致しないことも多いのが悩ましいところです。
(木下)
その矛盾を無理やり合理的に解決しようとすると、精神的に苦しくなります。たとえば、「本来の目的はこれだから、再生数が伸びなくても問題ない」と割り切れれば良いのですが、それでも「やっぱり再生数は伸びてほしい」という思いがある場合、その感情を受け入れることも必要です。
(深田)
この番組をやることで、今までお会いできなかった方と出会えるようになったことは、とても意義のあることだと思います。そのことに、この本を読んで気付けました。
(木下)
悩みを抱えている時というのは、思考が止まっているのです。いまのお話は、悩んでいるのではなく考えている状態ですよね。悩んでいるというのは、考えていない状態なので、いかに「思考モード」に切り替えるかが重要です。
たとえば、現状がまったく変わらなくても、「これでいい」と考えられるようになるのであれば、それも大事な事だと思います。そのためには、何かをしながらではなく、考えるための時間を取った方が良いですね。一時間なら一時間しっかりそのことについて考えた方が、結果として考える時間は短くなります。
(深田)
この番組をいかに大きくしていくかについて、そのための時間をとって考えたことはなかったです。
(木下)
僕は、一時間考えて結論が出ないことはほぼないです。
たとえば、日本が終戦を決めた会議は二時間で終わったのですよ。もちろん、その前に多くの情報を収集していますが、最終決定は二時間で行われました。それを考えれば、自分の人生の問題はもっと小さいと思います。
(深田)
なるほど。戦争を止めるかどうかという国家的な問題でも二時間で決まるのであれば、自分のことは一時間あれば十分に決められると思えますね。
(木下)
戦争を止めるかどうかを決めた時は、おそらくポジティブな情報とネガティブな情報をすべてだした上で決断を下したのだと思います。同じようにすべての情報を整理して、問題を解決するために外部を変えようとするのではなく、自分の考え方や行動を変えれば、一時間もあれば結論が出るはずです。
(深田)
たしかにそうですね。
ちなみに、他の番組では聞かれていないかもしれませんが、恋愛の悩みはどうやって解決するのですか。
(木下)
それはあまり詳しくないのでわからないですね。
(深田)
社長にも分からないことがあるということで、今回は北の達人コーポレーションの木下社長に「悩まない人の考え方」についてお話しいただきました。木下社長、ありがとうございました。