トランプ勝利でどうなるBRICs通貨!?マスクが中東交渉へ!? 下斗米伸夫 × 深田萌絵 No.176

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【目次】

  • 00:00 1. オープニング
  • 00:55 2. ブリックス誕生の経緯
  • 03:25 3. ブリックスに続々と参加する国
  • 07:12 4. トランプ政権とブリックスの関係
  • 09:27 5. ドルが弱くなり資源国の価値が上がる
  • 12:42 6. ロシアとの関係修復でエネルギー危機を回避
  • 15:38 7. いまエネルギー戦略を立てるべき

(深田)

本日は神奈川大学の招聘教授、下斗米伸夫 (しもとまい のぶお) 先生にお越しいただきました。下斗米先生、よろしくお願いします。

先日ロシアのバルダイ会議にご参加されたと伺いました。その際、BRICSについても議論があったそうですが、今後BRICSがどのように展開していくのか、ぜひ教えて下さい。

(下斗米)

そうですね。まず、BRICSというのは、ブラジル(B)、ロシア(R)、インド(I)、中国(C)、そして南アフリカ(S)を指します。このBRICSの概念が誕生したのは、約30年前、ソ連崩壊後のことでした。当時、ロシアの指導者の一人、エフゲニー・プリマコフという経済学者兼政治家がこの構想を打ち出しました。彼は、ロシアが西側と連携するのは難しいと感じ、1995年ごろにインドや中国という成長の可能性を秘めた大国との協力を推進しようとしたのです。

(深田)

その考えが今日のBRICSの基盤となっているのですね。

(下斗米)

はい。そこに、21世紀に入ってからプーチン政権下でブラジルと南アフリカを含め、経済成長が期待される人口が多い資源国を中心に、2009年になってBRICSという枠組みが本格化しました。こうした動きには、西側のドル経済から独立した新たな経済圏を築こうという狙いも含んでいます。

(深田)

今後も世界はエネルギー問題で揺れそうですよね。G7は脱炭素を謳い、あまり化石燃料を使わない方向ですが、一方のBRICSは資源国家なので、その点で成長の余地が見込まれると考えています。この観点からG7とBRICSはどんな動きをすると思われますか?

(下斗米)

世界人口約80数億のうち、G7は約10%に対し、BRICSは約40%を占めますが、この差は大きい。しかも、去年、南アフリカで行われたBRICS 会議では新たなメンバー国として、中東のイラン、サウジアラビア、OEU(アフリカ統一機構)、アフリカからはエジプト、エチオピアなどの加盟が議論されました。加えて、トランプ次期大統領のサウジアラビアをエネルギー面のパートナーにしたい、という意向もあり、10月ロシアのタタルスターンという都市に世界首脳が集まった際には、“招待国”という位置付けのサウジアラビアは外務大臣が出席したりもしました。ただ今回プーチンは、自分たちは孤立していないことを示す意味で、ASEANあたりにも相当、声をかけたようです。インドネシア、ベトナム、タイ、キューバ、NATO加盟国のトルコなど、今年12カ国がパートナー国(準加盟国)に加わりました。

その主たる目的は、政治というより経済の領域で、西側ドル経済だと使い勝手窮屈だし難しいというところがあるからなんですが。

(深田)

そうですね、少し逆らえばすぐに金融制裁の対象になってしまいますしね。

(下斗米)

ウクライ侵攻後、今現在、ロシアはアメリカからの金融制裁が課されているために、インドと中国に大量のロシアエネルギーを輸出しています。そこから世界中に還元されているという形になっていて、BRICSの拡大が進んでいると言える状況にあります。

(深田)

転売ヤーとして大活躍していますね。

(下斗米)

世界的に有名なロイズ海上保険は大事ですが、その西側に変わってインドやロシアをカバーするメカニズムが出来上がって、制裁があまり効いていないということにもなっています。その結果、一番得をしているのが、インド、中国、ブラジルや南アフリカですね。

(深田)

ロシアがウクライナ侵攻して、アメリカからの経済的制裁を受けてから、逆説的に一気にBRICSが拡大しましたね。恐らくは、このまま先進国G7やアメリカの言いなりになっても、良いことはないんじゃないか?という潜在的な思いがあったのかもしれませんね。

(下斗米)

アメリカは元々イランとの関係は悪く、今でも良好というわけではないのですが、イランもイスラエルとは対立しているもののアメリカとの関係は改善しようという動きもあるんです。元東京で大使だったイランの外務大臣は、イーロンマスクとの交渉を始めるということのようです。

(深田)

イーロンマスク氏が登場とは、どういうことなんでしょうか?

(下斗米)

世の中の流れが変わって来ていることを感じます。イーロンマスク氏にしても、アメリカの財政赤字3兆ドルの削減が彼の一番の仕事だと思います。

(深田)

マスク氏も政府効率化省のトップに就任することになっていますからね。

(下斗米)

はい。トランプ政権がイスラエル重視を採用するのかはわかりません、ただそういうポジションの人がイランとの交渉役をするのは、イランとの関係を見直したいからだろうとは思います。BRICSとの関係ももっと多元的に変わるのではないかと考えています。

(深田)

トラン政権後のBRICSはどうなっていくでしょうか?ネットのニュースでは、BRICS通貨は米ドルに対抗するものだという見方が多いのですが。

(下斗米)

米ドルは戦後これまで80年間、世界の基軸通貨でしたから、それに代わるものを西側が作れるわけではないとか、暗号資産的な形で米ドルに代わるものを作れるのではないか?など、いろいろが議論はあります。でも、そういうものを実際に動かすのはそれほど簡単ではないから、“通貨バスケット”のような形で一挙に米ドルに代わるものを作るという考え方は採らず、BRICS側の専門家同士で、支払い方法や自国通過重視などを考え始めているようです。

(深田)

私自身も、ドル預金をどうしようとか、円も100円から160円とどんどん安い方向に向かってしまうと、自分の老後のことも考えてドル預金だけではなく、別の預金も考えないといけないんじゃないかなど色々考えます。

(下斗米)

やはり米ドルは基軸通貨なので、貨幣印刷をすることで、結果アメリカのGDPに占める米ドルの通貨発行量が増え、それが世界的なインフレを招きBRICS諸国の不満を掻き立てるんですね。日本円が弱くなるのもそれが原因ですから。

(深田)

結局、通貨を印刷できる国はいいけど、そのあおりでこちらはインフレで困ったことになってますよ、ということですもんね。

(下斗米)

ドル以外の国はそうなるでしょうね。

(深田)

ドルが弱くなりインフレが起こると、いわゆる資源国は資源という「モノ」を持っているので、相対的にはバリューが上がってきているということになりませんか?

(下斗米)

おっしゃる通りです。BRICSの中では、自国通貨での決済を重視しながら、物々交換のような仕組み―いわゆる「バーター取引」にも取り組んでいるようです。ただし、完全な物々交換ではなく、柔軟な決済方式を試みているのだと思います。 

(深田)

まさかの物々交換なんですね?!

(下斗米)

必ずしもそうではないでしょうけど、自国通貨で決済する方法を非常に重視する中で、バーター的な方法も採用しているということでしょうね。

(深田)

今後トランプ大統領が就任した際、日本はしばらく石破政権なので、トランプ大統領が新ロ的であれば日ロ関係も一旦落ち着くのではないかと期待しています。やはりエネルギーのことを考えると、日本はロシアとの関係をそれなりに重視する必要があるのではと思っています。今、日本国内では停電や電力が逼迫する問題があるのですが、それも結局、火力発電がダメ、原子力もダメ、火力発電の発電所も老朽化でどんどん引退しているような状況が背景にあるわけです。その一方で、火力でも天然ガスの火力発電はそんなにCO2も出ないクリーンな発電所だということなので、こちらの路線も考えておかないと、日本自身もエネルギー危機に陥るのではないかと懸念しています。

(下斗米)

石破政権は水力発電の再開発を考えているのですが、プーチン大統領もバルダイ会議で「日本のエネルギー政策は賢明だ」と評価していました。サハリンの天然ガスプロジェクトなど、日本とロシアのエネルギー協力は制裁下でも続いています。将来的にウクライナ戦争が収束し、制裁が部分的に解除されれば、人や物の流通が再開し、日本にとってエネルギー供給の安定化が期待できます。

(深田)

なるほど。サハリンのガス油田の開発投資は継続しているわけですね。

(下斗米)

トランプ政権になり、ロシアとウクライナの戦いが終われば、部分的かもしれませんが制裁が解除になり、人や物の往来が再開するでしょう。その際、このエネルギーは一番最初の決め手になるでしょうね。

(深田)

日本は、中東からの石油に99%依存しているような状態なので、早めにロシアとの関係を修復しておいたほうが良いですね。その一方で、イスラエルを中心に

中東問題も色々なところに飛び火しているような状況なので、ホルムズ海峡が封鎖される時のあのリスクを考えたら、ロシアとはエネルギー関係だけでも手を結んでおくべきじゃないかと思います。

(下斗米)

もう一つ、70年代にはイランという国との関係が日本にもありましたし、

同時に“田中資源外交”のような形でシベリア開発もありました。その流れはずっと続いていています。見直しが必要なのは北極圏ですね。ホルムズ海峡などの政治的不安は増すとしても減る可能性は少ない。深田さんがおっしゃるイスラエルと中東、特にイランとの関係もどうなるのかわからないのであれば、対ロ関係は意識せざるを得なくなると思います。

(深田)

北極圏でのプロジェクトとは?

(下斗米)

北極圏でのLNG共同プロジェクトが考えられていたのですが、特にインドと中国はこれに非常に関心が高いんです。日本はこれに積極的に関与しているので、政治的リスクが高い中東だけに頼るのではなく、北極圏やロシアとの協力を強化することが現実的な対応と言えるでしょうね。

(深田)

日本は今、ロシアに対して制裁をしている場合ではない、ということですね。

(下斗米)

制裁の解除については、おそらくグローバルなコンセンサスをどうやって作るかというところがポイントになってくるかと思います。トランプ政権は、その方向で一定の理解は示すかもしれないが、トランプ政権自体、アメリカをエネルギー輸出国にしようとしているので、その辺の兼ね合いをどうするかについては、これから考える必要がありますね。

(深田)

本日は下斗米先生にBRICSの未来、日本とロシアの関係、そしてエネルギー政策について幅広いお話を伺いました。先生、本日はありがとうございました。

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