イスラエル暴走は止まらない? 米イラン核施設爆撃はネタニヤフ首相を嵌める罠だった!? 宇山卓栄氏 #408

【目次】
00:00 1.オープニング
00:41 2.最近のイスラエル暴走の状況
01:42 3.トランプ政権の目的は?
05:16 3.ネタニヤフ首相の駆け引き
07:57 4.シャラア暫定政権
11:35 5.イスラエルは戦火を拡大したい
14:15 6.スパイの存在は日本も危ない
19:20 7.スパイ防止法の前に帰化議員を明らかに
21:05 8.中東の核拡散の問題
(深田)
みなさん、こんにちは。政経プラットフォームプロデューサーの深田萌絵です。
今回は著述家の宇山卓栄先生にお越しいただきました。宇山先生、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
(宇山)
よろしくお願いいたします。
(深田)
すっかり選挙報道に埋もれてしまい、イスラエル問題について「あの後どうなったのだろう」と感じている方も多いように思いますが、最近の情勢はいかがでしょうか。
(宇山)
いえいえ、状況はまったく終息していません。実は一昨日、イスラエルがシリアに対して空爆を行うという事件が発生しました。中東情勢、とりわけイランを巡る対立について「ひと段落ついた」と捉えるのは、私はまったく現実的ではないと考えています。
(深田)
そうなのですね。
(宇山)
ええ、これからが本番と言えるでしょう。
(深田)
7月半ばの段階でも、なおシリアへの空爆が行われているということですね。
(宇山)
シリア、イラン、イエメン、そしてレバノンも含め、今後それぞれがどのような動きを見せるのか、現時点では予測がつきません。いずれもイスラエルの行動に強く影響を受ける地域です。少し経緯を説明いたしますと、6月13日にイスラエルがイランに対する空爆を実施しました。これに続いて、6月22日には、トランプ政権がイランの核施設を標的として、いわゆるバンカーバスターによる攻撃を行いました。この6月13日と22日の両作戦は、私の見解では、イスラエルとアメリカが連携して行った一体的な軍事行動であったと考えています。そして、実際のところ、トランプ大統領はイランといわば“八百長試合”を行ったと私は見ています。
(深田)
あれは、八百長だったのですか?
(宇山)
私は、そうだと考えています。
(深田)
その理由を教えていただけますか?
(宇山)
理由は、トランプ大統領がイランの核施設を攻撃するにあたり、事前にイラン側へ通知をしていたからです。
(深田)
そうですよね。「バンカーバスターを使用する」といった情報は、かなりの頻度でテレビでも報道されていましたよね。私はそれを見て、「こんなことをすれば、イランは当然警戒して避難してしまうのではないか」と感じたのです。
(宇山)
実際に「攻撃するぞ」と明言されていたのです。そして、イランの重要な中枢システムは、その核施設の中から事前に持ち出され、無傷のまま保全されたと報告されています。結果として、その核施設の中枢部分は破壊できなかったと見なされています。さらに、国際原子力機関(IAEA)の評価によれば、イランは数か月以内に核開発を再開できる状態にあるとするレポートも出されています。私は、おそらくこれが真実なのだろうと考えています。
(深田)
では、トランプ大統領はそのとき、何のためにバンカーバスターを使用したのでしょうか。それは単なる「ショー」だったのですか?
(宇山)
私は、まさに「ショー」であったと考えています。さらに付け加えれば、イランもまた、カタールにある米軍基地を攻撃する際に、事前にアメリカ側へその旨を通知していました。つまり、イランとアメリカは互いに攻撃をする際、事前通知をし合いながら、いわば八百長的な試合を演じていたのです。
(深田)
そうですよね。本当に、その点には大きな謎が潜んでいますね。
(宇山)
ええ、確かにそこには謎があるのですが、私としては、やはり「イスラエルの暴走を抑えること」が主たる目的だったのではないかと考えています。
(深田)
つまり、イスラエルの暴走を止めるために、トランプ大統領とイランが共に芝居を打った、ということですか?
(宇山)
そうです。というのも、イスラエルは長年にわたり、「たとえ単独でもイランを攻撃する」と繰り返し発言してきました。実際、4月にはネタニヤフ首相がホワイトハウスを訪問し、トランプ大統領に対して、「アメリカが動かないのであれば、我々は単独でもイランを攻撃する」と明確に伝えています。こうした圧力に対して、アメリカは「まずは我々が交渉を行う」として、これまでに6回にわたる核交渉を進めてきました。
しかし、イスラエル側はその過程に業を煮やし、6月13日に実際の攻撃へと踏み切ったわけです。このようなイスラエルの行動を抑えるためには、もはやアメリカが直接行動に出るしかなく、そこでバンカーバスターによる攻撃が実行されたのです。そして「これでアメリカとしても行動を示した。よってイスラエルも手を引くべきだ」とメッセージを送ったのだと思われます。
ただし、ネタニヤフ首相はその背景をすべて理解していたはずです。つまり、「アメリカとイランが八百長試合を演じ、自分たちを出し抜いた」ということを百も承知の上で、あえてトランプ大統領に花を持たせる形で、「よくやってくれた」と評価し、表向きは攻撃を控える判断を下したのです。
(深田)
なるほど。つまり、イスラエル側も、トランプ大統領の芝居に気づいていたのですね。
(宇山)
もちろんです。
(深田)
つまり、ここで一度アメリカに花を持たせて一歩引いたほうが、イスラエルにとっては得策だと判断したということですね。
(宇山)
その通りです。その理由は複数ありますが、まず第一に、この一連の軍事作戦を経て、ネタニヤフ首相の支持率が大きく上昇したという点があります。
(深田)
それは意外ですね。支持率が上がったのですか?
(宇山)
はい、かなり上がりました。来年にはイスラエルの総選挙が予定されていますが、今回の件でその選挙に向けて大きな弾みがついたと言えます。ネタニヤフ首相としては、場合によっては、この高まった支持率を背景に、早期解散・総選挙に打って出てもよいと考えているようです。「これで我々は政権を維持できる」という空気が生まれたことが、第一の要因です。したがって、ここで一歩引くことに合理性があるという判断につながりました。
そしてもう一つの理由は、イスラエルが誇るミサイル防衛システム「アイアンドーム」に関わる問題です。イランから相当数のミサイル攻撃があり、それに対してイスラエル側は迎撃ミサイルで応戦したのですが、その命中率が低く、多くが空振りに終わってしまいました。結果として、テルアビブにいくつかのミサイルが着弾し、実際に被害が発生したのです。
さらに、迎撃ミサイルを大量に発射したことにより、イスラエル側はミサイルの備蓄切れという深刻な事態にも陥ってしまいました。これが、イスラエルが一時的に手を引かざるを得なかったもう一つの重要な要因です。
(深田)
なるほど、よくわかりました。
(宇山)
イスラエルは、これ以上イランからミサイルを撃ち込まれても、もはや迎撃できない、そうした状況に追い込まれてしまったのです。だからこそ、「今が引き際だ。一旦、手を引こう」と判断したのだと思います。さらに、アメリカ、つまりトランプ大統領に花を持たせることで、面目を保つこともできるということで、賢明にも一時的に手を引く判断を下したのです。
しかしながら、ネタニヤフという人物は非常に狡猾です。私は、そのしたたかなメッセージが、昨日行われたイスラエルによるシリア空爆に表れていると考えています。
(深田)
そうなのですか。
(宇山)
ええ。それがどのようにつながっているかと言いますと、現在のシリアは、ご存知の通り、昨年末にアサド政権が崩壊し、その後、新たに「シャラア暫定政権」が樹立されました。このシャラアという人物について、アメリカは当初「テロリスト政権の首班」と見なし、実際に彼には懸賞金までかけられていました。1000万ドルの賞金が懸けられていたような人物だったのです。
ところが、今年5月にトランプ大統領が中東諸国――カタール、UAE、サウジアラビアを歴訪した際、サウジアラビアの首都リアドにおいて、トランプ大統領とシャラアが直接会談を行ったのです。
(深田)
会談したのですか?
(宇山)
はい、会談しています。しかも、彼らは連携しているのです。ところが、この重要な会談について、ネタニヤフ首相には一切知らされていなかったのです。
(深田)
つまり、ネタニヤフ首相にとっては敵であるシャラアと、トランプ大統領が会談したことを事前に知らされていなかったということですね。それでは、ネタニヤフはかなり怒っていたのではないでしょうか?
(宇山)
ネタニヤフ首相は、非常に強い怒りを抱いていました。この件はネタニヤフ政権内でも大きな問題となり、「我々を蚊帳の外に置いたまま、トランプ大統領がシリアのシャラア政権と会談するなど、あまりに一方的で不当だ。イスラエルをないがしろにしているのではないか」との声があがったのです。
しかしながら、この怒りは公式には表面化されることはありませんでした。今回、イスラエルがシャラア政権に対して直接空爆を行ったことは、私はトランプ大統領への“当てつけ”だと見ています。
すなわち、アメリカとシリアは、かつてアサド政権時代には激しく対立していましたが、政権交代を経て、トランプ大統領は新たなシャラア政権と手を結び、今後は友好的な関係を築こうとしていた矢先の出来事です。
その矢先に、イスラエルがまさに“背後から襲撃”するかのようにシャラア政権を攻撃した、これがまさに昨日今日の出来事です。
これは明らかに、ネタニヤフ首相がトランプ大統領に対して、「あまり自分を軽視するな」という強い警告の意志を示したものだと、私は考えています。
(深田)
確かにそうですね。トランプ大統領がイランに対してバンカーバスターを使用したこと自体、ネタニヤフ首相への牽制でもありましたよね。「これ以上下手な動きをすれば、国際的な批判にさらされることになる」という意味合いも込められていたのだと思います。
(宇山)
まさにその通りです。
(深田)
しかし、ネタニヤフ首相は、表面的にはトランプ大統領と良好な関係を保っているように見せかけながらも、「お前の言うことには従わない」という姿勢をはっきりと示してしまったということですね。
(宇山)
おっしゃる通りです。シリア空爆が持つ意味は、非常に重いと私は考えています。
(深田)
トランプ大統領としては、イスラエルにおとなしくしてもらったほうが、自身の支持率にも良い影響がありますよね。
(宇山)
その通りです。
(深田)
やはり、イスラエルがこれ以上過激な行動に出れば、「ユダヤ・ロビーに対して、あなたは何も言えないのか」といった批判的な視線が、アメリカ国内から向けられることになりますよね。
(宇山)
まったくおっしゃる通りです。トランプ政権としては、何よりもまず中東情勢を一旦落ち着かせたうえで、次の中間選挙に臨みたいという意向があります。外交面で成果を挙げ、支持率を上げたいという一心なのです。
しかしながら、ネタニヤフ首相の側から見れば、「トランプ大統領よ、そう簡単にはいかせないぞ」という強い思惑があり、両者の間には激しい駆け引きが存在しています。イスラエルとしては、戦果をさらに拡大させたいという意図があります。なぜなら、そのことによって軍事産業が潤い、国家経済や与党政権にも利益をもたらすからです。
(深田)
でも、イスラエルは現在、弾薬が不足している状態なのではないでしょうか。
(宇山)
ええ、確かに一時的には弾切れの状況に陥りましたが、装備の補填は迅速に行われます。シリアへの攻撃を実施するにあたって、実質的には何の支障もない状況なのです。
このように、近隣諸国との軍事的な緊張を維持しながら装備を整え、同時に軍事産業を拡大させ、自らのネタニヤフ政権の安定化を図っていく、イスラエルの指導層は、こうした構図の中で常に「戦争」を自らの生存手段、いわば“飯の種”として利用しているのです。
(深田)
いやはや、もしそのような戦略に巻き込まれてしまったら、日本にとっては大変なことになりますよね。日本は一体、どうなってしまうのでしょうか。
(宇山)
まさにおっしゃる通りです。この点については、ぜひ一緒に考えていきたいと思っています。
6月13日に行われたイスラエルによるイランへの攻撃について、私自身も非常に大きな衝撃を受けました。というのも、この作戦を通じて明らかになったのは、イラン国内にモサドと通じていたイラン語を話すイラン人が相当数存在していたという事実です。
彼らの一部は、イラン政府の中枢にまで入り込んでおり、国内に秘密工場を持ってドローンやミサイルなどの兵器を製造・発射していたのです。そして、それと同時に、イスラエルによる本国からの空爆作戦と並行して、イラン国内においても彼らは一斉に行動を起こしていました。
彼らは皆、イラン語を話すイラン人であるため、外見や言動からはまったく見分けがつきません。つまり、モサドの関係者であることを周囲の誰も見抜くことができなかったのです。
この攻撃を契機として、イラン国内では現在、数百人規模、あるいは千人を超えている可能性もありますが、多くの政権内部関係者が粛清されている状況です。
(深田)
それは、モサドのアセット、つまり協力者と見られる人物たちに対して、ということですね?
秘密警察のような存在が摘発に動いているのでしょうか。
(宇山)
まさにその通りです。現在、スパイ容疑をかけられた者たちが次々と拘束され、「疑わしき者はすべて排除せよ」といった徹底した姿勢で粛清が進められています。
(深田)
そのような情報が、どういった経路で漏れているのでしょうか。
(宇山)
結局のところ、情報が漏洩していたのはイラン人によるものだったのです。私は、ここが極めて重要な点だと考えています。つまり、イスラエル人がイラン国内に潜入して情報を流していたのではなく、イラン人自身が現場から情報を外部に漏らしていたという事実こそが、最も深刻な問題なのです。
この点を、日本に当てはめて考えてみると、いくつかの重要な示唆が得られます。たとえば、日本語を話し、日頃は愛国主義的な発言をしている人物の中にも、実際には外国の諜報機関とつながりを持っている者が相当数存在するのではないか、ということです。
仮に有事が発生した場合、そうした人物たちがどのような行動に出るのか、その点にこそ最大の懸念があると私は考えます。つまり、いわゆる“スパイ”的な存在が、日本国内にも多数潜伏している可能性があるということです。
たとえば、福島みずほ氏や辻元清美氏などの名前が挙がることがありますが、彼女たちに関しては、むしろ発言があまりに分かりやすいため、私は逆にスパイとは思っていません。
(深田)
確かに、あのように外国政府の主張をそのまま代弁しているような発言を見ると、かえって“まんま過ぎて”危険性は感じませんよね。ああいうタイプは、実は本質的な脅威とは言えないのかもしれません。
(宇山)
まさに、その通りです。本当に警戒すべきは、我々には一見して分からないような人物たちです。
(深田)
もっと“愛国者の様な雰囲気”をまとった人たちの中にこそ、潜んでいる可能性がありますよね。
(宇山)
ええ、そうです。大抵は、愛国者然とした装いをしている者たちの中に、本当のスパイが紛れているものです。
(深田)
近年、新台湾派と呼ばれる政治家たちに対して、私は一定の警戒感を抱いています。彼らは頻繁に台湾を訪問し、「次の自民党総裁選では誰々が立候補する予定なので、支援してほしい」といった要請を行っています。しかも、台湾の諜報機関のトップや、安全保障に関わる要人とも会談を重ねているのです。そうした動きを目にするたびに、私は少なからず懸念を抱いてしまいます。
しかし、保守派の中には、そうした行為をむしろ「良いことだ」と肯定的に捉える人々も多いのが現状です。とはいえ、冷静に考えていただきたいのです。外交上、台湾という地域は「中華人民共和国の一部」と国際的に認識されている現実があります。
さらに、その台湾の秘密警察の成り立ちを辿れば、もともとは大陸から来た勢力が戦後に形成した組織であることも見過ごせません。そうした背景を踏まえると、無条件に信頼を寄せることは危ういのではないかと私は考えています。
(宇山)
まったくその通りです。私自身、台湾という存在を100%信用することは極めて危険だと思っています。それにもかかわらず、「民進党だから安心だ」とか、「中国からの独立を主張しているから信用できる」といった単純な論理で判断してしまう傾向が、一部には見られます。私は、そうした見方には賛同しかねます。
(深田)
おっしゃる通りです。「一つの中国」に同調する国際会議が開催された際に、実はその公式の場に参加していたのは蔡英文氏でした。この事実からも分かるように、彼女が必ずしも中国共産党に明確に対抗しているわけではないということが伺えます。むしろ、「共産党と戦う」といった主張を掲げることで有権者の支持を集めている可能性が高く、実際のところは選挙戦略の一環であると見るべきかもしれません。
(宇山)
その可能性は十分にあります。だからこそ、いかなる外国であっても、決して無条件に信用してはならないのです。よく見られる傾向として、外国の首脳を絶賛しすぎる人たちがいます。「トランプ大統領の言うことはすべて正しい」「プーチン大統領の主張は絶対に正しい」といった意見を耳にすることがありますが、私はそうした見方は非常に危ういと思っています。
(深田)
本当にその通りですね。
(宇山)
所詮、外国の元首というのは、自国の利益を第一に考える存在です。それは当然のことであり、私たち自身も本来であれば、自国の利益を最優先すべきなのです。しかし、残念ながら日本の指導層は、常に他国の利益を“ファースト”に掲げて行動しているような節があり、その点では極めて特異な国であると言えるかもしれません。
いずれにしても、いわゆるスパイ的な人物や“スリーパー”と呼ばれるような存在は、私たちのすぐ近くに、しかもまったく気づかれない形で多数潜伏している可能性があると、私は見ています。
(深田)
おそらく、そうした人たちは“愛国者風”の装いをしていると思います。なぜなら、いわゆる左翼の人々であれば、その思想や立場は比較的わかりやすいからです。
(宇山)
おっしゃる通りです。本当に警戒すべきは、左翼的な立場の人物ではないと思います。
これは、先日のイスラエルによるイラン攻撃の際に顕著に表れた事例ですが、ごく身近なイラン人たちが、突如として反逆行為に及び、外国と連携して攻撃を始める、そうした現実に直面したとき、私はその恐ろしさを他人事とは到底思えませんでした。
(深田)
本当に恐ろしいことだと思います。私が特に危険だと感じるのは、“愛国者風”の装いをした人々の中に、憲法改正を掲げて「徴兵制を導入すべきだ」と主張する人たちが少なからず存在している点です。
そうした主張をしているのは、多くの場合、自身が徴兵される可能性のない立場にある女性や年配の方々です。「自分は対象外だから」と平然と語る姿を見ると、よくそんなことが言えるなと、率直に思ってしまいます。本当に戦いたいのなら、自らが最前線に行って戦えばよいではないか、と言いたくなるのです。
さらに問題なのは、愛国心を強調するあまり、「特攻精神は尊い」「自爆攻撃は美徳だ」といった発言を平気で口にする人たちの存在です。しかし、それは本質的には敵対勢力によるプロパガンダと何ら変わらず、そのような言説に洗脳されてしまった日本人が、仮に中国人の偽情報に扇動され、「あなたたちはこの国のために命を捧げなさい」と命じられたとき、何の疑問も持たずに自爆行為に走ってしまう、これは極めて危険な状況です。そして、それは中国にとって極めて都合のよい結果でもあります。
こうした可能性についても、私たちは冷静かつ慎重に考え、見極めていく必要があるのではないかと思います。
(宇山)
まったくその通りです。現代において、国家間の戦争を見ると、「諜報戦」が実質的な主戦場となっていると言えるでしょう。実際、武力による衝突が始まる前の段階で、すでに諜報活動によって勝敗が決しているケースも多いと、私自身強く感じています。
だからこそ、今の日本にとって本当に必要なのは「スパイ防止法」の整備だと考えます。
(深田)
ただし、そのスパイ防止法の前提として問題なのは、現在の“スパイのような政府”がこの法律を制定した場合、真っ先に取り締まりの対象になるのは、私たちのような者かもしれませんね。
(宇山)
おっしゃる通りです。
(深田)
まずは「外国人エージェント登録法」のような制度を整備すべきだと考えています。外国の利益を代弁するような人物については、きちんと政府に登録させる仕組みが必要です。登録せずに活動を続ければ、法的に処罰される可能性がある、という体制を構築すべきです。加えて、誰がどのような話を外国と行っているのか、ロビイストとしてどのような活動をしているのか、そうした情報も適切に政府に申告・記録させるべきです。
また、アメリカでは各政治家の出自がしっかりと明らかにされています。そうした点を見習い、日本の政治家も出自を公にする制度が必要です。
しかし現状では逆行する動きも見られます。たとえば、立憲民主党の中谷一馬議員は、官報に掲載される帰化情報について「3か月で閲覧不可とする」との方針を打ち出しました。こうした事例からも分かるように、立憲民主党の内部にも、いわゆる“あちら側”の影響を受けた人物が一定数存在していることが伺えます。
このような状況下で、スパイ防止法を拙速に制定してしまうと、むしろ真っ当な日本人こそが不当に弾圧される結果になりかねません。だからこそ、まずは議会とその周辺をクリーンに整備し、適正な制度設計を行ったうえで、スパイ防止法の制定に進むべきだと考えています。
(宇山)
まったくもって、おっしゃる通りです。
(深田)
ありがとうございます。それともう一つ、中東における核拡散の問題についても伺いたいのですが――。
(宇山)
ぜひ、この点についても一言申し上げたいと思います。実のところ、私はイランによる核拡散は、もはや避けられないものと考えています。
(深田)
そうなのですか?
(宇山)
はい。イランは、最終的には必ず核武装に踏み切ると思います。今回のように軍事的な攻撃を受けたことで、イスラム革命防衛隊をはじめとする強硬派の間では、「このまま無防備では国の存立が危うい。核を保有しなければならない」という認識がさらに強まったことでしょう。
結局のところ、イランが核兵器を持つという流れを、外部の力で完全に阻止することは困難です。そして、イランが核を保有すれば、今度はサウジアラビアが黙ってはいないはずです。サウジもまた「我々も核を持つべきだ」と主張するでしょうし、UAEやトルコなど、他の中東諸国も同様の動きを見せる可能性が高いと考えられます。
このようにして、中東地域全体に核の拡散が進んでいくことになるわけですが、私はむしろそれが結果として「抑止力」として機能するのではないかと見ています。
私の考えは、ミアシャイマー教授の主張と一致するものです。すなわち、「核の抑止力」の観点から中東の安全保障を構築していく以外に、現実的な選択肢は存在しないということです。
現在の状況は、イスラエルが核を保有し、イランには保有を認めないという非常にアンバランスな構図です。この構図そのものが緊張と紛争の根本的な原因となっているのです。もし双方が核を持ち、それによって均衡が保たれるようになれば、むしろ紛争は極めて起こりにくくなると私は考えています。
(深田)
なるほど。ご指摘の内容は非常に現実的で納得のいくものですが、同時に少し恐ろしさも感じます。他に現実的な処方箋のようなものはないのでしょうか?
(宇山)
私としては、やはり他に有効な手立てはないと考えています。その意味では、日本も例外ではありません。極東アジアの安定を実現するためには、現状を冷静に直視する必要があります。
すでに北朝鮮は、事実上の核保有国家です。それを前提とするならば、日本も「北朝鮮は核保有国家であることを認めます」と公式に表明したうえで、「その代わりに我が国も核武装を進めます」と明言すべきです。実際、トランプ大統領も北朝鮮の核保有を黙認するような態度をとっており、既成事実化しているのが実情です。
ですから、我が国もまた、「必要な抑止力として核を保有する」という姿勢を明確に示すべきだと考えます。
(深田)
私は、北朝鮮で開発されている核兵器について、実は日本からの技術移転によって実現された側面があるのではないかと疑っています。つまり、日本政府が何らかの形で関与していたのではないかということです。
日本はアメリカに厳しく監視されており、自国で核兵器を開発することが事実上困難な状況にあります。そのような中で、「それならば北朝鮮で開発を進めさせよう」といった裏の動きがあったのではないか、私はその可能性を疑っているのです。
というのも、実際に多くの北朝鮮出身者が日本の旧帝国大学に留学し、原子力の研究室に所属していたという事実があります。そうした人材の活動を政府が規制しなかったという点を踏まえると、むしろ何らかの“共謀”があったのではないかと考えざるを得ないのです。
(宇山)
ええ。一般的には、パキスタンのカーン博士のような人物が北朝鮮に核技術を提供したとされています。しかし、萌絵さんがおっしゃる通り、日本の技術もその一部に組み込まれていたはずだと、私も思います。
(深田)
この点について、どのように考えるべきか、正直なところ私にも明確な答えはありません。ただ一点伺いたいのですが、このイスラエル問題、中東情勢には、果たして終わりがあるのでしょうか?
(宇山)
私は、終わりはないと思っています。この問題は、まだまだ続くでしょう。
(深田)
まだまだ続くのですね。
(宇山)
ええ。第2ステージ、第3ステージと、さらに展開していくものと考えています。決して簡単に収束する問題ではないと思います。
(深田)
本日は「終わりの見えない中東問題」について、ここまでの経緯を中心に、著述家の宇山卓栄先生にお話を伺いました。宇山先生、ありがとうございました。