#664【石油危機】あらゆる危機を想定せよ。現代インフラ危機に備える備蓄・防災術とは!? 高荷智也氏(2026.4.21)

(深田)
皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム、プロデューサーの深田萌絵です。今回は備え・防災アドバイザーの高荷智也さんにお越しいただきました。高荷先生、よろしくお願いします。

(高荷)
よろしくお願いいたします。

(深田)
最近、高荷先生といえば、ホルムズ海峡封鎖で石油が足りるのかという関連の動画で大人気となっていますね。

(高荷)
ありがたいのか、ありがたくないのかという感じですね。

(深田)
そもそも備え・防災アドバイザーというのは、活躍の機会がない方が良いお仕事でもありますよね。

(高荷)
そうなのです。私は「備え・防災アドバイザー」という肩書きで仕事をしていますが、自分では死神だと思っています。

(深田)
死神ですか(笑)。

(高荷)
はい。この職業が暇であればあるほど、世の中としては良い状態だと考えています。

(深田)
その“死神”が最近はご活躍ですものね。

(高荷)
死神に脚光が当たるのは、世の中が荒れているという状況なので、そこは謙虚でありたいと思っています。ただ、防災に限らず、個人や家庭が生き延びていく上ではいろいろな困りごとがありますので、現在は原油関連の話題などについてもお話ししています。

(深田)
ところで、政府は石油備蓄について「我が国は250日分あるので年内から年明けまでは大丈夫です。慌てないでください。備蓄を放出するので、いくらでも使ってください」と説明していますが、どのように見ておられますか?

(高荷)
いろいろな視点から見ると、足りるケースもあれば足りないケースもあると思います。ただ明確に言えるのは、原油全体としてはある程度備蓄があり、代替調達も進んでいるのは事実です。

一方でナフサを原料とする石油化学製品は状況が異なります。ナフサはもともと在庫が少なく、代替調達も全然進んでいません。そのため、ナフサを使うプラスチック、ゴム、合成繊維といった分野は、あまり猶予がない状況が続いています。

(深田)
今日も、ホルムズ海峡が解放されたのかと思いきや、そうでもない状況のようですね。

(高荷)
最近のニュースによれば、停戦したと思えば当日中に再封鎖されるなど、非常に不安定です。基本的には、個人がホルムズ海峡の情勢を追うのはあまり意味がないと考えています。最終的にどうなるかは分かりませんし、専門家であっても先行きを正確に言い当てるのは難しい状況です。

(深田)
では今、石油やナフサが不足するかもしれない状況で、私たちを襲う危機はどのようなことでしょうか?

(高荷)
何がなくなるのか、それがいつなのか、予測することに大きな意味はないと考えています。ただ、自分の生活や会社において「これがなくなると困る」というものはあると思います。

今回の原油危機ではナフサが注目されていますが、有事に突然、自分にとって必要なものが手に入らなくなることがあるのですね。仮に今回の危機が幸い何事もなく収束したとしても、別の要因で自分の必需品がなくなるケースはは繰り返し起こります。

ですから、ホルムズ海峡の動向を追うのではなく、これをきっかけに「自分の必需品をどう確保するか」「どのように備蓄するか」というライフスタイルを考えてもいいのではないでしょうか。

(深田)
なるほど。私も何がなくなるか考えた結果、まずラップだと思って300メートル分購入しました。

(高荷)
300メートルですか(笑)。

(深田)
ただ冷静に考えると、料理もしないし、1本使うのに3〜4年かかるので、買わなくてもよかったのではないかと思いました。

(高荷)
今のお話は非常に重要なポイントです。多くの方がニュースやSNSで「ナフサがなくなる」と聞くと、石油製品であるラップやゴミ袋、洗剤、化粧品などを買いに走ります。しかし実際には「買ったもののあまり使わなかった」「使い切るのに何十年もかかる」というケースが非常に多いのです。

例えば2020年4月のコロナ禍初期の緊急事態宣言の時には、トイレットペーパーの買い占めが起きました。当時10年分購入した方は、今でも家にあると思うのですよ。このようなことは今後も繰り返されます。SNSで品薄の映像が目に入り、買い続けると、物が増えるだけでなく、生活や家計、精神的にも負担が大きくなります。

(深田)
実はその時に買ったアルファ米がありまして、賞味期限が1年前に切れたものを最近食べ始めたのですが、まだおいしいです。

(高荷)
それは良いことですね。備蓄品として適切に活用されていますね。

おっと……今、緊急地震速報が入りました。長野県北部でマグニチュード5を超え、最大震度5弱とのことです。これはなかなか大きいですね。今は原油の話をしていますが、このように地震も突然起こるかもしれないですね。

(深田)
本当にそうですよね!?

(高荷)
日本に住んでいる限り、原油危機に加えて常に災害リスクがあります。そのため備えは重要であり、アルファ米のような備蓄品も有効です。ただしポイントは「いつか必ず使うもの」や「通常の防災対策にも役立つもの」を、置いて邪魔にならない範囲で備えることです。これであれば無駄になりません。一方で、使う見込みのないものを大量に購入するのは、あまり良い選択ではありません。

(深田)
サランラップを300メートル分を買ったら、ハウスキーパーさんに「使いませんよね」と笑われました。

(高荷)
ラップは賞味期限がありませんので問題ありません。5年、10年かけて使えばよいですし、大地震で断水が起きた場合などには非常に役立ちます。

(深田)
どのように役立つのでしょうか?

(高荷)
水が使えない状況では、皿にラップを敷いて使えば洗う必要がなくなります。また、衛生状態が悪化する中で、ラップを手に巻いて食材を扱えば清潔を保てます。さらに、包帯代わりにしたり、紐のように使ったりと、素材としていろいろな用途があります。防災用品として考えれば、全く無駄にはなっていません。

(深田)
今のお話で少し安心しました。心が軽くなりました。

(高荷)
大丈夫です。3キロ分ではなく、300メートル程度であれば十分に使い切れる量ですので、問題ないと思います。

(深田)
では今日は、ラップは石油対策ではなく防災対策として購入したのだと、自分に言い聞かせることにします。他に備えておいた方がよいものはありますか?

(高荷)
今回のホルムズ海峡閉鎖に関連して問題になっているのは、まず原油そのもの、そしてそこから生成されるナフサです。さらにもう一つ重要なのが、中東が世界的に高いシェアを持つ資源です。これらがホルムズ海峡を経由できなくなることで影響が出ています。

例えばアルミニウムは中東のシェアが高く、ヘリウムも医療機器やロケット燃料、精密機器の製造に使われる重要な資源ですが、これも中東依存度が高いものです。さらに尿素は肥料やトラックの排気ガス処理に使われますが、これも同様です。こうした資源の供給が滞ることで、中長期的にいろいろな影響が出る可能性があります。

(深田)
肥料が作れなくなるというのは大きな問題ですね。先日、ロシアがBRICS諸国に肥料の共同備蓄を提案していましたが、私たちはどうすればよいのでしょうか?

(高荷)
今回の危機の本質は、生活全般に影響が及ぶ点にあります。ナフサを例にとると、プラスチック製品や化学繊維、ゴム製品など、あらゆるものに使われています。実際にご自宅を見渡していただくと、ナフサが関係していないものはほとんど存在しないのです。

(深田)
そうですね。

(高荷)
衣類もほとんどが合成繊維ですし、食品も中身自体は石油と無関係でも、包装材はナフサ由来です。こうした影響が長期化すると、生活に必要なあらゆるものがなくなってしまう可能性があります。

(深田)
そうですよね。江戸時代に戻って、おにぎりを竹の皮で包むような生活になりますね。

(高荷)
その通りですが、ここには大きな落とし穴があります。江戸時代は非石油・非電気の高度なインフラが整っていた時代でもあるのです。

(深田)
高度な非石油インフラがあったのですか?

(高荷)
そうなんです。例えば竹の皮も一つのインフラです。しかし現代では、竹をどこで入手するのかという話です。石油製品がなくなった時に、紙と木で何とかする。江戸時代には、それを生産する職人や流通網、そして使うための知恵がありましたが、今は何一つないのですね。

(深田)
そうですね。

(高荷)
農業も同様です。当時はトラクターやコンバインはなく、牛や馬を使っていました。肥料も化学肥料ではなく、山の中の落ち葉や街から出る糞尿を利用したバイオ肥料でした。いわゆる「おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行く」といった生活が、非石油インフラの象徴です。電気がなくても生活ができていました。しかし今、芝刈りに行ける山、洗濯できる川はありますか?

(深田)
やはり隅田川ですかね。

(高荷)
しかし現実的には難しいですね。つまり今回の危機は、単に石油や燃料が不足するという問題にとどまらず、失ったインフラに代替するものがない中で物資が不足していくという点にあります。その意味では、江戸時代の方が遥かにましな社会だったとも言えます。

(深田)
確かに、私のようにタワーマンションに住んでいると、エレベーターが止まった場合に階段で上り下りするのは大変です。今は息を切らしながら何とかできても、高齢になると厳しくなりますね。

(高荷)
そうです。ただし、これは今回の原油危機に限った話ではありません。首都直下地震や南海トラフ地震などで停電が起きれば、同じ問題が発生します。ですから特定の危機だけでなく、日頃から「電気が使えない状況でも生活できるか」を考えておくことが重要です。例えば、家から一歩も出られなくなった場合に、何日生活できるかを一度考えてみてください。ちなみに、深田さんいかがでしょうか?

(深田)
500mlのペットボトルが48本、あいこちゃんの缶詰が100個、いなばのタイカレーが10個、防災用の長期保存パンが8個、それから高荷先生の本を読んで買ったおやつの、5年保存の羊羹が50本あります。

(高荷)
あ、それでしたらしばらくは生きていけますね。1週間程度は問題なく過ごせると思います。ちなみに備蓄用のトイレなどはご準備されていますか?

(深田)
先週、買いました。

(高荷)
それは完璧ですね。とても良い備えだと思います。今回の原油危機で食料や日用品がすぐに消えていく可能性は低く、あるいは何も起こらないかもしれません。ただし問題は、この危機がどこまで広がり、最終的に何が不足するのか分からない点にあります。

通常の防災であれば、水・食料・トイレといった不足するものが明確なので準備しやすいのですが、原油危機の場合は何がなくなるのか分かりません。社会全体では大きな混乱がないように見えても「自分にとって必要なもの」が手に入らなくなる可能性があります。

例えばワンデーコンタクトや自分お好きな化粧品など、日常的に使っている特定の商品が突然なくなることもあり得ます。実際、今回の危機で最初に影響を受けた企業の一つが山芳製菓の「わさビーフ」でした。

(深田)
そうなんです。私はわさビーフが大好きなのに、突然店頭から消えました。

(高荷)
好きな方にとっては困りますよね。ただ、わさビーフがなくなっても社会全体が壊れるわけではありません。代替として他の味のポテトチップスを選ぶことはできます。しかし、わさビーフを愛用している方や、それに関わる仕事をしている方にとっては死活問題になります。

(深田)
私は小学校6年生の頃からずっと食べているのですよ。

(高荷)
筋金入りのファンですね(笑)。こうした影響が他の製品にも広がる可能性があります。例えば溶剤やシンナーといった工業製品、あるいはTOTO・INAXのユニットバスの出荷停止がありましたが、あれが何に広がっていくかわかりません。だからといって、すべてを備蓄することは現実的ではありません。重要なのは「自分にとって不可欠なもの」に絞り、使い切れる範囲で優先順位をつけて備蓄する。これが今できる対策なのですね。

(深田)
なるほど。防災士は男性が多いのですが、女性にとって重要なものもありますよね。避難所では女性用品が一番足りないものですよね。

(高荷)
その通りです。生理用品などは備蓄が少ない傾向にありますし、個人ごとに好みや使い慣れた製品もあるでしょう。こうした「自分にとって欠かせないが、必ず消費するもの」は、日頃から少し多めに備えておくことが重要です。これはホルムズ海峡の問題に限らず、あらゆる災害対策として有効です。

(深田)
今回の危機で改めて備蓄を見直したところ、6年前のコロナ禍で買ったアルファ米が賞味期限切れから1年経っていて、慌てて食べ始めました。それでもとてもおいしかったです。

(高荷)
おそらく問題なくおいしく食べられたと思います。「賞味期限」はあくまで飾りなので、一般的にはその倍、場合によっては3倍程度でも品質に問題がないことが多いです。アルファ米は保存期間が5年ですので、10年以内であれば大きな問題はないでしょう。[※高荷氏個人の感想です]

(深田)
実際、いなばのタイカレーと一緒に食べたのですが、普段の食事と変わらないくらいおいしかったです。

(高荷)
それは良い活用例ですね。ただ、それらは今回のホルムズ海峡危機を想定して用意したものではないですよね。

(深田)
そうです。あの時はコロナで何かと物流止まるかな、とかなんか問題が起こるかなと思って備えただけなんですよ。

(高荷)
過去の備えが結果的に役立っているわけです。ものがなくなる、生活が苦しくなる、インフラが滅茶苦茶になる。こうした事態はいろいろな要因で起こります。

今回の危機だけに意識を集中させてしまうと、不安や苦しみが続いてしまいます。基本は、どのような状況でも生活を継続できるように、水・食料・簡易インフラといった基本的な防災用品を備えること、そして自分の必需品を2週間から1か月分程度、使い切れる範囲で確保することです。

これができていれば、特別な原油危機対策をしているというよりも、普段から備えているので影響は限定的と言えるライフスタイルを目指していただくのがおすすめですね。

(深田)
今回の石油危機で少し鬱になりかけましたが、お話を伺って冷静になりました。日本は災害大国ですし、特定の危機に限らず、日常的に備えておくことが大切なのですね。

(高荷)
その通りです。災害大国である日本では、防災をライフスタイルの一部として取り入れることが重要です。そうすれば大きな出来事が起きても一喜一憂せず、落ち着いて対応できるようになります。

(深田)
「職業は死神で、本当は出番がない方が良い」とおっしゃる備え・防災アドバイザーの高荷さんですが、貴重なお話を本日はありがとうございました。

(高荷)
ありがとうございました。

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