#654 「アメリカに勝ち目なし」元特殊部隊自衛官が語るイラン戦争の戦略的失敗と現代戦の真実 荒谷卓氏(2026.4.11)

(深田)
皆さんこんにちは。政経プラットフォームプロデューサーの深田萌絵です。今回は熊野飛鳥むすびの里代表の荒谷卓先生にお越しいただきました。荒谷先生、よろしくお願いします。

(荒谷)
よろしくお願いします。

(深田)
前回は自衛隊特殊部隊の精神性についてお話を伺った時に、イラン戦争のことをお聞きしました。イラン戦争はどうなっていくのでしょうか?

(荒谷)
イランがずっと負けない状態が続くと、アメリカが妥協しない限りは終わらないですね。

(深田)
今回はアメリカの失敗だと見ていらっしゃるのでしょうか?

(荒谷)
はい。完璧なる失敗ですね。

(深田)
米軍の何が失敗だったのでしょうか?

(荒谷)
2つの点がありますね。客観的な戦争をするための必要な要素と精神面の問題があります。

まず戦争を遂行するために勝つための要件がいろいろあります。前回お話ししたように、1992年に冷戦の崩壊が起きて、ニューワールドオーダーを宣言しました。その後NATOが、東へ進出していって、一時はロシアまで西側の資本の支配下に入ったのですね。

それで、アメリカをはじめとする西側諸国は勝利と認識したわけですね。それも完全勝利です。地政学的な勝利を認識しまして、今度は軍隊を完全に次のフェーズ、つまりニューワールドオーダーのフェーズに転換しました。

どのような転換かというと、まず軍事思想を変えました。それまで軍事思想は大きく言うと防御とか攻勢、そういう概念が主体だったのだけれど、それ以降は、安定化とか支援、そういう概念で軍事的な思想を認識するようになったのですね。

それに合わせて、巨大な兵器は必要なくなったのです。冷戦の最後はアイアンドームという防空システムを完全に固めて、万が一核で攻撃されても、ある程度ディフェンスができるような体制を作ったのです。

そこで一旦、技術開発も終わって、あとはどちらかというと警察行為ですね。テロリスト対策のような方向へ向かったわけですね。組織も戦車部隊だとか大砲部隊などよりもどちらかというとインファントリー(歩兵)みたいなテロ対処に向いている部隊へシフトしました、そして特にそのスペシャルオペレーション(特殊作戦)にどんどん資源を投資したわけです。

それまで軍事会社は、もっぱら巨大な最新兵器を作って売り込むことがメインだったけれども、それを使わなくなりました。そこで、ロッキードなど大会社はライフルやボディアーマー、拳銃のホルスターのような細かい小物の製造会社を全部傘下に収めて、それをメインにビジネスをするようになりました。

弾薬やミサイルは使わないから生産を中止して、鉄砲の玉などにどんどん製造をシフトしました。それから兵隊のマインドも変わりました。要するに軍隊と軍隊の戦いではなく、テロリストと戦う。テロリストは民間人ですから、民間人相手に軍隊が戦う。いわば弱い者いじめのようなことを、オペレーションとして20年ぐらいやってきているわけですよ。

したがって、アメリカ軍や西側諸国の軍隊は、ここまでそういう状態で推移してきているわけです。アメリカ軍は最強だと思っていたけれども、実はそういう変化が内部的にあったのです。

ところがその間、ロシアや中国、イランは何をやっていたのかと言うと、どんどん新しい戦争の形を作っていったのですね。アイアンドームをどのように崩していくのかとか、彼らの迎撃ミサイルで打ち落とせないミサイルを開発しようと取り組んだのです。

(深田)
ああ、超音速ミサイルみたいなものですね。

(荒谷)
そうです。有人の飛行機にこだわっていると、超音速の飛行体は作れないわけですが、アメリカは今でもまだ有人飛行機を飛ばしているでしょう。しかし、超音速のミサイルが来たらどうしようもないですよね。

その辺りでどんどん技術的な逆転が起き、戦い方が変わってきました。今回のイラン戦争は典型的です。安い兵器を量産して、これで高い兵器を消耗させて、消耗し切ったあたりから今度は本格的に攻撃をするということですね。だから、冷戦期に考えていたような戦術では全然対抗できない仕組みになっていたわけです。

それをウクライナの戦争でロシアがやったのです。本当はそこで「あっ、これではもう勝てない」と認識できたはずなのです。多くの関係者は認識できたと思うのですが、なぜかトランプは「イランであれば行ける」と思ったのでしょうね。

(深田)
それはやはりその前の2つの戦い、ベネズエルのマドゥロ大統領の拘束、そしてメキシコの麻薬王の殺害がAIの解析によって成功した。こういう成功体験がやはりトランプ大統領を次のステップのイラン戦争に導いたのではないかと思うのですよ。

(荒谷)
しかし、相手の認識として、ベネズエラやメキシコとイランを比較してはだめですよね。イランはもうどちらかというと軍隊をロシアや中国並みに近代化しているわけですから。多分アメリカの情報機関も軍隊も提言したと思うのだけれど、イスラエル側の情報に飛びついたり、いろいろな判断ミスがあったのでしょうね。

それで、まずイスラエルが要人を攻撃して、イランが報復攻撃をできないように、アメリカが報復基盤を最初に叩いてしまえば、あとは報復もできなくなって、いわゆる再度の政権転覆ができると思ったのでしょうね。しかし全然できなかったのですよ。

(深田)
それは、イランが新しい戦争に備えていたということですよね。

(荒谷)
そうです。だから、何度アタックしても潰せないようなところに生産基盤を作る。つまりイランは山岳地帯ですから山の地下などに作っているものは、核兵器としても壊せないわけですよ。そういうところに全部作っているから、いくら奇襲のアタックをかけても、これから何度攻撃しても潰せないわけです。イラン側は、毎日400機以上のドローンを生産できる。それも1機が200万ぐらいです。

(深田)
安いですよね。

(荒谷)
アメリカは1発落とす度に何百億を消耗していく。そのミサイルも年間200発くらいと数も限られているわけです。だから長引けば長引くほど、状況はどんどんイランに有利になっていって、逆転するタイミングを超えているのですよ。

(深田)
もう超えているのですか?

(荒谷)
超えています。もう逆転はできないですね。だからこれ以上アメリカ側は、もう手がないのです。

(深田)
もう切れるカードがないのですね。

(荒谷)
地上部隊を投入するなどと言っているけれど、全く愚かな作戦ですよね。地上部隊はドローンに対する対処能力がありません。地面に這いつくばっているわけですよ。そこにドローンが1回で600機とか800機飛んでくるのですよ。どうしようもないですよね。ただ、死ににいくような感じですね。

(深田)
そういうことなのですか。今回の戦争は、イランが強くて凄いと思いました。イランの指導者ハメネイ師が殺され、次の指導者も殺され、どんどんトップから順番に殺されている状態じゃないですか。それでもイランがこれだけ機能しているのは、どういうことなのでしょいうか?

(荒谷)
それはイラン国民が、自分たちで取り戻した政府を、再びパフレヴィー体制に戻すことに対する強烈な拒絶感があるのです。それから、やはり宗教的な理念もあるでしょう。単なる宗教的な理念ではなくて、一度転覆された経験から、他国の支配に再び陥りたくないという国民の強い意志がある。

これまで、イランも政治的取引をしていたので、ある面で妥協をしていたわけです。その政治的取引ができる人たちをアメリカが全部排除したので、今「政治的取引」の部分が消えて「戦う」意思だけの塊になっています。

(深田)
なるほど。政治的に調整や交渉する人たち全員がやられましたものね。そうすると、その下にいるのは、戦う革命部隊で、戦う人たちだけが残ったのですね。

(荒谷)
だから最後まで戦い抜く。クラウゼヴィッツの『戦争論』によると「戦争」とは個人の対決の延長のようなものなのです。つまり喧嘩をした時、例えばボブ・サップという尋常ではない筋力とパワーがある格闘家がいるのだけれど、彼は自分が顔を殴られたり、ちょっと痛いことをされると消沈するのです。

(深田)
あー、分かります。

(荒谷)
痛みに弱いというか。データを見ると、アメリカの軍隊は圧倒的に強大です。しかし「俺は死ぬまで、絶対に音を上げない」という者と、ちょっと叩かれたら「痛い」という者が喧嘩をしたら、やはり前者の方が強いです。

(深田)
分かります。私は、以前外国企業で働いていたのですが、彼らはちょっと風邪を引いただけですぐに帰るのです。私が、風邪や高熱、インフルエンでも休まずに残業していると「どうして君はそんなに頑張って仕事できるの?」と聞かれるのです。「責任感の差が違うんだよ。仕事を放ったらかして、何で帰るんだよ!」となりますものね。

(荒谷)
そうでしょう。日本人が強かったのも、そういう理由です。「俺は死んでもいいんだ」という人に対して、絶対死にたくない人は戦えないのですよ。戦争は殺し合いですから、そうなってくると、どちらが先に音を上げるのかというと、怖がって痛がりの人が先に音を上げるのですよ。だから精神面でも実際の戦闘を遂行していくファクターを考えても、もうアメリカに勝ち目はないですよ。

(深田)
勝ち目がなく、今後は物量でもイランに負けてしまうのですね。

(荒谷)
さっき言ったように、イランに対する戦争は、対テロではなく、本格的な戦争ですが、アメリカにはその準備ができていない。弾薬を使い切ってしまって、1か月以上は戦えないでしょうね。だから今、日本などいろいろなところに弾の提供を求めてくるのです。ヨーロッパはウクライナの方へ相当投入していて、日本は他国を賄うほどの弾を作っているわけではないから、どこからも物資は来ないのです。

(深田)
なるほど。今イランは死に物狂いで戦っているのですね。

(荒谷)
プーチン大統領もウクライナ戦で「核戦争も辞さない。ロシアのない地球には興味はない」と、全滅しても戦うようなことを言いました。これをやられると西側諸国は、そこまでの覚悟がないから歯が立たないのですよ。国民がそれを許さないでしょう。「俺らは死んでも戦うなんてことはないよ」と言って、そういう選択を政府がすることは許さないということですから、それはできないのですよ。

加えて、軍事面だけではなくて、オイルのことや国際的な金融システムもドルの支配体制下ではなくなっていますいろいろな面で、アメリカにとって勝ち目はないのです。

(深田)
イランの戦い方を見ていると、すごく賢くて、戦略的にホルムズ海峡を封鎖して、アジア圏を揺さぶってみたり、反対側のマンデブ海峡も封鎖するかもしれない。そうすると今度は、欧州が音を上げるでしょう。トランプ大統領がAI企業に支援されているのであれば、AI企業のデータセンターや工場を攻撃していく。この効率のよい戦いは凄いと思うのです。

(荒谷)
やはりペルシャですから、戦争についてはいろいろな面で相当経験を積んでいる国なのだから、やはり凄いですよ。簡単に負けるとか、そんなことはないと思います。ここまで国を滅ぼしていないということは、そういうことですよね。

(深田)
今回のアメリカの失敗の本質は、どこにあったのですか?

(荒谷)
指導者がもう少し周りの意見を聞いて冷静に判断すれば、イランに対する爆撃をしなかっただろうと思うのですけれど。そこは、トランプの早合点や独走が失敗でしょう。

(深田)
最後にイラン戦争は日本にどんな影響があると思いますか?

(荒谷)
日本は、世界で一番早く影響を受けるのではないですかね?

(深田)
えっ!?一番早くですか?

(荒谷)
多分まずオイルの影響が出てくるのが日本ですよね。僕も、いろいろな専門家に聞きました。今、中東からの油が止まって10日くらい立っている状況で、備蓄についていろいろな見方があると思うけれども、一番長く持ったとしても、年内がギリギリです。一番短くみている人は、1か月で4月いっぱいということです。

石油だけでなくナフサの問題だとか、それに伴って化学肥料もきていないとか、様々なものが停滞し始めています。仮に1か月で石油がなくなると、その時の日本は一体どうなるのかということを、国民も想定してないが、多分政府も想定していないでしょう。

(深田)
そうですよね。何も考えてないですよ。

(荒谷)
何も考えていないでしょう。そもそも、日本がなぜ世界で最も脆弱な体質になったのかというと、特に戦争等に関する海外の情報を自ら収集せずに、全部アメリカ側の情報に頼ってしまっているのです。

ウクライナ戦争も全く認識が誤っており、イラン戦争も認識が誤っています。西側のヨーロッパ諸国は自分でデータを取っているから「これはまずい。アメリカが勝たないだろう」と分かっていて、すでにいろいろな手を打っています。ところが日本だけがアメリカの情報だけに頼っているから、戦況の推移に関する危機感がないのです。まあ何とかなるだろうという程度の認識だと思うのです。

(深田)
今回、イランからアラグチ外相が「日本の船だけ通行を認める」と言われました。

(荒谷)
多分、トランプの強気の方を信じていて「アメリカが何とかしてくれる」という感じだと思うのです。アメリカが負けるなどとは、万が一にも考えていないと思うのですよ。それが、全部後手になって、油も遅く交渉をスタートすればするほど、手に入らない。

おまけに自分から勝手にロシアに制裁をして、貴重な油とガスの資源国であるロシアとのパイプを自ら足っている。このような状況ですから、世界で最初に悲劇的な状況が訪れるのは日本だと思いますね。

(深田)
なんでこんなにバカなのだろうと思える状態になっています。

(荒谷)
判断を見誤っているトランプ氏を信じて、見誤っている日本だから、ダブルで悪いですよね。

(深田)
二重に間違っていますものね。やはり情報は自ら取りに行って、自ら判断しないといけないです。

(荒谷)
そういうことです。

(深田)
日本もいよいよ危なくなってきて、私たちは、どうやってサバイバルをしていけば良いのか。次は、「むすびの里」に入れば生きていけるのでしょうかということをお話しいただきたいと思います。

今回は、熊野飛鳥むすびの里、代表の荒谷卓先生にお話をいただきました。先生、どうもありがとうございました。

(荒谷)
ありがとうございます。

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