#649 アラスカ原油は20年後!?石油高騰から日本を守る「ロシア外交」とパイプライン構想 宇山卓栄氏(2026.4.6) ※2026年3月28日収録
(深田)
みなさんこんにちは。政経プラットフォームプロデューサーの深田萌絵です。今回は、作家の宇山卓栄先生にお越しいただきました。宇山先生、よろしくお願いします。
(宇山)
よろしくお願いいたします。
(深田)
最近は、イラン戦争がずっと話題になっています。私たち日本人の立場から見て、ホルムズ海峡を通ってくる石油が届かなくなった場合、日本の石油事情がどうなるのかについて、教えていただきたいと思います。
(宇山)
これは大変な問題です。日本は原油の90%以上を中東から輸入しており、そのうちホルムズ海峡を通過する原油が全体の72%を占めています。現在、このホルムズ海峡は事実上封鎖されています。まだ物理的に封鎖されておらず、機雷が敷設されているわけでもありません。しかし「ここを通れば攻撃してやるぞ」とイランが脅しているため、実質的には封鎖状態にあるのです。
(深田)
まだペルシャ湾の中には、日本の船と日本人が25名ほど残っていますよね。
(宇山)
その方々を早く帰還させてほしいという交渉を行うのかどうかという話になっています。原油不足に備えて、日本は石油を備蓄しています。245日分の備蓄があり、それを昨日から放出することを高市政権が決定したのです。
(深田)
これが大絶賛されていますよね。
(宇山)
しかし、問題はその先です。
(深田)
250日分といっても、備蓄を放出してしまえば、いずれなくなってしまいますよね。
(宇山)
そうです。その後どうするのかという話です。
(深田)
その後はどうなるのでしょうか?
(宇山)
私は、この石油備蓄の放出について、多くの人が「よかった」と評価していることに対して、本当にそうなのかを問いたいのです。石油備蓄は、本来的には非常事態に使用することを前提としたものであり、石油価格を押し下げるために使うものではありません。
(深田)
確かにそう思います。
(宇山)
もちろん、IEA(国際エネルギー機関)の諸国と連携して一斉に放出することによって、石油価格の一時的な高騰を抑えるための協調介入ということはありかもしれません。しかし、本質的には、日本のように周囲を敵対国に囲まれている国は、石油備蓄は有事に備えて確保しておくべきものです。石油価格を下げるためのものではないのです。
(深田)
本当にそうですね。敵国だらけですからね。
(宇山)
今はまさに有事です。中東でこのような軍事衝突が起これば、それと連動してアジアでも起こらないとは限りません。
(深田)
そうですよね。イランも北朝鮮と関係が深いですものね。
(宇山)
そうです。北朝鮮もそうですし、中国が何をするかも分かりません。ロシアも同様です。そうした中で、石油備蓄は戦時に備える意味合いのものです。もしこのまま放出を続ければ、8か月でなくなります。そして、どこからも調達できないという事態になれば、価格は一気に跳ね上がります。その時に、周辺国が何らかの行動を起こしたら、どうするのですか。
(深田)
でも、日米首脳会談で高市さんが、アラスカ産の原油を買うとトランプさんと約束してきて「すごいじゃないか!」とみなさん評価していますよね。
(宇山)
しかし、それには何年かかるのかという話です。
(深田)
どのくらいかかるのでしょうか。
(宇山)
10年から20年のスパンが必要だと思います。どれほど急いだとしても、今すぐアラスカ産の原油を持って来られるような話ではありません。もし本当にそれが可能であれば、アメリカ企業がとっくにアラスカの開発をしていますよ。アメリカ企業にとっても、あの地域での開発は採算が合わないため、これまで誰もやりたがらなかったわけです。
それを、日米首脳会談のお土産か何かは知りませんが、10兆円規模で約束して帰ってきたということなのでしょう。しかし、そんなものが、今この目の前で石油備蓄が減っていくという状況に対する調達先になるのかといえば、全くならないのです。
(深田)
そもそもトランプ大統領は、関税交渉の時に各国と交渉し、アメリカの石油やガスを買うよう約束を取りつけてきたわけですが、その総量はアメリカの産出量を超えるので、供給できるだけの量がないのですよね。
(宇山)
そうです。百歩譲って、アメリカから優先的に安い原油を買う権限を約束したのであれば、まだ日本にとっても安心材料にはなるでしょう。冒頭に萌絵さんがおっしゃったように、たとえホルムズ海峡の封鎖が続いたとしても、こういう形で別の調達ルートを確保していく、すぐに構築していく、というロードマップをきちんと示さなければなりません。実際にできるかどうかは別としても、そうした見通しを示さなければ、ビジネスをしている人たちにとって最も困るのは先行きの不透明感なのです。
(深田)
そうですね。やはりヨーロッパはそのあたりが賢くて、トランプ大統領に対しては「制裁しなければいけませんね」と言いながら、裏ではロシアからガスやオイルを買っていますよね。
私たちも「トランプ大統領はすばらしい、世界に平和と繁栄をもたらせるのはあなただけです」と言いつつ、裏ではプーチンに「すみません、少しオイルをお願いします」と言うぐらいでよいのではないでしょうか。
(宇山)
そうですよ。仮にアメリカがそれに難癖をつけてきたら「あなたの所為で、こうなったじゃないか。ホルムズ海峡が使えないからロシアと話をしているのに、いけないのか」と言って、アメリカを突っぱねればよいのです。こういう時こそ、ロシアとの関係を進めていくいい機会なのです。
(深田)
そうなんですよ。ロシアとエネルギー面で付き合うメリットは、日本にはありますよね。
(宇山)
おっしゃる通りです。これは絶対的にあります。
(深田)
距離が近いですからね。
(宇山)
そうです。隣国ですから、パイプラインを引くこともできます。
(深田)
そうです。パイプラインを引けばよいのです。
(宇山)
ロシアとの連携を進めさせないようにしてきたのがアメリカの勢力なのですが、しかし今や、そんなことは認められないと言うべきなのです。こちらも「これをやらなければ干上がってしまうではないか」と果敢に多元外交に取り組む姿勢を見せてくれればよいのですが、政府は「備蓄を放出します」と言うだけなのです。
カザフスタンから持ってくるという話もありますが、そもそもカザフスタンからどうやって石油を運んでくるのですか?アゼルバイジャンについても、日本は権益を持っていますが、そこから持ってくるにしても、今はスエズ運河すら通れないわけです。
そうなると、アフリカ南端の喜望峰をぐるっと回って運ぶしかありませんが、その場合は莫大な輸送コストがかかります。そのような状況の中で、オーストラリアはどうかといった話も出てはいますが、肝心のビジョンが政府からまったく示されていないのです。
(深田)
自民党が示す将来計画のようなものは、どれも実現が不可能ばかりに見えます。たとえば、太陽光パネルでエネルギーを賄おうとか、EVで走ればよいという話です。しかし、太陽光パネルは限られた時間帯しか発電しないのに、どうやってEVを走らせるのかということです。
そうした現実的に難しいことを平然と進めようとするわけです。自民党は頭が狂っています。脳みそがあれば、そのような物理的に不可能なことを、政治家が本気で言い出すはずがありません。アラスカ産の原油で何とかなるという話も同じで、誰が聞いても嘘っぱちの話を平然と口にしているのです。
(宇山)
政権与党の頭が腐っているのはその通りで、加えて不思議なのは、経団連の人間たちもまた同様だということです。今や、自分たちのビジネスが立ち行かなくなる寸前まで来ているのです。もう半年もすれば、世界中の生産ラインで工場が回るかどうかさえ分からないのです。
だから、日本政府が新たな調達ルートをどのように確保していくのかが、今、緊急の課題なのです。実現できるかどうかは別としても、せめてロードマップを示して、こういう方向だという全体像が見えなければ、企業としては投資のしようがないのです。
それにもかかわらず、日本人はなぜか非常におとなしいのです。ホルムズ海峡に7割も依存して石油や燃料を調達している国は日本くらいのものであり、そのホルムズ海峡が今、事実上封鎖され、それが長期化するかもしれないという重大な問題があるにもかかわらず、産業界全体は、一部には強い危機感を持って何とかしろと言っているようですが、全体としてはあまりに静かです。
(深田)
そうなのです。我関せず、です。
(宇山)
まさに我関せずで、丸の内のビジネス街も通常通りに動いているでしょう。とにかくおとなしい。普通の国であれば、これは大変な騒ぎになっているはずです。
(深田)
考えればすぐ分かることなのに、考えようとしないのです。日産もホンダも、EV推進で潰れそうじゃないですか。
(宇山)
ホンダはEVにシフトして巨額の損失を出し、結局やめると言って撤退したではありませんか。
(深田)
現場の社員はずっと反対していたのです。作っている側は、売れないとずっと言い続けていたのに、それをトップが無視し続けたのです。
(宇山)
ポリティカル・コレクトネスの圧力ですね。
(深田)
そうです。だから、イラン戦争についても、石油が入ってこなくなるから、そうした方向へ進めるべきだ、などと言い出しかねないですよね。
(宇山)
要するに、頭が腐っているのですよ。今の経済界も政権与党も、危機感も何もないから、この事態に至ってなお、石油備蓄を放出して「高市さん、よくやった。素晴らしい」で終わってしまっている。それはどういうことですか。
(深田)
それで、250日後はどうするのですか?
(宇山)
普通はそこを考えます。その後はどういう計画なのか、といってもそれが全く出てこない。もっと前に示されていなければならないのです。
(深田)
しかも、日本は石油だけではなく、ガスも火力発電に使っているじゃないですか。そう考えると、夏の電力問題をどうするのかということですね。毎年夏になると、電力が足りないと言っていますよね。しかも今年の夏は、再稼働した原発の点検時期もやってくるわけで、どうするのかという話です。
(宇山)
確かにそうです。夏を越えられるのかという差し迫った問題になっていると思います。そこで、批判ばかりしていても仕方がないので、ではどうするのか一つ提案があります。まず、今お話ししたように、ロシアとの連携関係をもう一度構築し直すことです。
そして、オーストラリアからも至急調達を進めることです。政府もオーストラリアに関しては動いていると聞いていますが、もう一つ進めるべきは、パイプラインを至急整備していくことです。
現在、ホルムズ海峡を通らなくてもインド洋に出せるパイプラインは、すでに存在しています。アブダビからオマーン側のフジャイラへつながっているのです。ただし、この石油パイプラインの1日あたりの輸送能力は200万バレルしかありません。
(深田)
かなり少ないのですよね。それでは、その容量を大きくすればよいのですか。
(宇山)
そうです。拡張すればよいのです。
(深田)
日本が住友金属工業のシームレスパイプラインを持ち込めばよいのではないですか?
(宇山)
そういうことです。これは日本の得意分野で、すぐにきるのです。ホルムズ海峡を通る1日あたりの輸送量は2000万バレルで、その半分を供給できれば、大きな違いが出ます。すぐに工事に着手し、パイプラインを至急整備すれば、何らかの対処が可能になります。それこそ日本が主導して進めるべきなのです。
(深田)
すばらしいと思います。やはりパイプラインは重要ですね。ロシアとウクライナも、パイプラインをめぐる争いでもありますよね。
(宇山)
そうです。ノルドストリームを爆破したのは、ウクライナとアメリカのラインであったことが、すでに明らかになっています。まさにパイプライン紛争なのです。だから、ここを拡大していく必要があるのです。
もう一つは、サウジアラビアを東から西へ貫き、アラビア半島を横断して、ヤンブーという紅海側に出てくるパイプラインです。現在は200万バレルで稼働していますが、どうやら最大で500万バレルまで稼働できるようです。そのため、ここを使うべきだという案も出ていますが、実際には少し難しいのです。
(深田)
そうなんですか。なぜですか?
(宇山)
理由は明確です。紅海を南に下っていくと、インド洋への出口にあたるバブ・エル・マンデブ海峡があります。そこはイエメンのフーシ派が支配している地域であり、ドローン攻撃を仕掛けてくる危険があるのです。そうなれば、タンカーは一発で火がつくおそれがあります。したがって、簡単に通れる海域ではありません。
(深田)
タンカーは、いったん燃え始めたら止まらないですよね。
(宇山)
可燃性の高い大量の積み荷ですから極めて危険です。
(深田)
ドローン一発でも大変なことになりますよね。
(宇山)
そうです。極めて危険なので、そのような海域を進んで通ろうとする者はいません。したがって、どうしてもフジャイラのルート、つまりオマーン側へつながるルートを使って、至急インド洋へ出られる体制を整えなければならないのです。そうしなければ、日本が真っ先に干上がってしまいます。だから、日本が当事者として、こうした対策を次々と進めていかなければならないのです。
それからもう一つ、先ほど萌絵さんがおっしゃった、日本が国際協調を維持しつつも、単独でイランと話し合いをして、ホルムズ海峡を通れるようにする必要があるのではないか、というご指摘ですが、いよいよそうせざるを得ない局面が来るかもしれません。
日本がまずい手を打った、あるいはタイミングを誤ったと思うのは、イランが戦略的に動いている可能性もありますが、日米首脳会談の前日に、日本がホルムズ海峡の安定化声明を取りまとめたことです。9か国、すなわちイギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、オランダなどとの共同声明だったわけです。日本はこういう場面で、すぐに格好をつけたがるのです。
(深田)
日米首脳会談へのお土産だったのでしょうね。
(宇山)
そうです。トランプさんも喜んだのです。ああいうものが好きな人ですから。しかし、安定化声明を出したところで、何かが変わるのかといえば、何も変わりません。そんな声明を出したところで、現実は動かないのです。
(深田)
言ってみただけですよね。
(宇山)
そうです。官僚たちとしては、それを外交カードとして使えると考えて取りまとめたのでしょうし、それ自体は理解できます。しかし、その結果として案の定、イランがカウンターを仕掛けてきたわけです。
(深田)
イランがすごく頭が良くて、日本が馬鹿にしか見えません。
(宇山)
イランは日本を揺さぶるために「単独で交渉してもよいぞ、どうだ、我々と話し合わないか」と囁きかけてきているわけです。
(深田)
それを茂木さんが断ると、今度は自民党に対する批判がまた起こるわけです。なぜ断るのか、日本がホルムズ海峡に石油供給を依存していることを分かっているのか、という批判が出て、結局また自民党自身が炎上するのです。
(宇山)
そうです。つまらない格好をつけたために、自ら難しい立場に陥ってしまったわけです。
(深田)
ですから、イランが非常に戦略的に、さまざまなシナリオを準備していることがよく分かります。
(宇山)
まさにおっしゃる通りです。これは完全に、イランが次の一手を打ってきたということです。単独交渉を持ちかけることで、最終的には20か国規模に広がった声明参加国と日本を離間させようとしているのです。
日本としては、格好をつけてしまった手前、自分たちだけで抜け駆けして交渉するわけにはいかない立場になっています。しかし、日本は原油の72%をホルムズ海峡に依存しているわけです。ヨーロッパはそこまで依存していません。
(深田)
ヨーロッパは関係ないですからね。
(宇山)
そうなのです。ヨーロッパは格好をつけるだけでいいのです。口先だけ済みますから。
(深田)
そもそも、ホルムズ海峡に大きく影響を受けませんからね。
(宇山)
しかし、日本は格好をつけている場合ではありません。これはもう死活問題なのです。風呂にも入れなくなる、水も通らなくなるという状況になりかねないのに、共同声明を出してどうだと言っているようでは、イランから見れば笑い話の種になっているのです。
(深田)
茂木さんも、わざわざ公の場で「個別交渉には応じない」などと格好をつける必要はなかったわけです。どうするのかと聞かれたら、はぐらかしておけばよいのです。自民党の国会議員は、それが得意なのだから、今こそその力を使って、はぐらかせばよかったのです。
(宇山)
そうなのです。確かに、現時点では国際協調を維持するという姿勢自体は、それでよいのかもしれません。しかし、いずれそんなことを言っていられなくなった時にどうするのかというシミュレーションが、日本政府には少なくとも私が見る限り存在していません。
(深田)
ありません。何の施策もありません。
(宇山)
ないと思います。それから、先ほどから日米首脳会談の話が続いていますが、私が本当に疑問に思うのは、石破政権の時に約束された5500億ドル、つまり80兆円規模の対米投資の話です。
(深田)
ありえない話ですね。
(宇山)
本当にありえないと思います。その対米投資のうち、今回11兆円分について、小型原子炉を設置する、あるいはアラスカの開発を進めるという案を、お土産として持ち帰ってきたのですが、結局のところ、日本はこのようにアメリカに媚びへつらうことしかできないのだということが、よく分かります。
そこまでアメリカに譲歩するのであれば、資金面まで約束しているわけですよね。であれば、いざ石油が枯渇した時には、アメリカが責任を持って日本に石油を届ける、同盟国としてきちんと面倒を見るという約束を取りつけるべきだったと、私は思います。しかし、その点については全く約束していないのです。
(深田)
何も約束していないですよね。
(宇山)
全くしていません。それに、日本の国益を考えるのであれば、こういう時こそ、今まさに孤立しているアメリカと正面から話し合い、日米安保の性格を見直すべきです。これまでは一方的に従属させられるような性格が強かったわけですが、それを双務的なものへ変えていく必要がある。我々も軍備を増強する、自衛のための核武装も進める、原子力潜水艦も持つ、そのくらいのことを言いながら、弱っているアメリカの足元を見て交渉する。それが本来の外交だと私は思います。
(深田)
そもそも、日本がアメリカの石油や天然ガスではなく、ずっとホルムズ海峡経由の中東からの輸入に依存してきたのは、アメリカと少し距離を取りたいという思惑があったからではないかと思うのです。
アメリカとのバランスを取ろうとしてきたのであれば、今こそ、日米安保についても見直しを提起できたかもしれません。協定上、日本側から通告すれば1年後に解除され、その結果、合同委員会なども含めてすべてなくなるわけですよね。
(宇山)
法的にはそうです。
(深田)
アメリカを応援したい気持ちはあるけれど、日本には十分な独立性がないため、いざという時に対等な立場で助けることができない。だから、今この機会にそれを解消して「本当に対等な形で助け合える関係にしましょう」と言えたかもしれないですよね・。
(宇山)
おっしゃる通りです。こうした危機の時だから、実際にアメリカのアジアにおけるプレゼンスが低下し、力の空白が生じているわけです。その空白を我々が埋めていかなければならないと日本はきちんと言うべきだったと思います。
それでは最後に、マーケットの話もさせていただきたいと思います。
(深田)
金価格の下落で、私は少し落ち込んでいるのです。
(宇山)
金を持たれていたのですか?
(深田)
はい、持っています。
(宇山)
実は2週間前に、ある証券会社のオンラインセミナーに登壇した際、「金は危ない」と申し上げたのです。そこで、少し注意してほしいと警鐘を鳴らしたところ、その週に実際に大きく下落しました。
私が、金は短期的にやや危ないと考える理由は、WTIの石油先物価格が1バレル100ドル近辺で推移し始めると、アメリカで再び本格的なインフレ懸念が強まるわけです。そうなると、トランプさんが求めているような利下げは到底実現せず、むしろ金利を引き上げなければならない環境になるのです。
そうなると、金利のつかない金を保有するよりも、金利のつくドル建て資産を持っている方が運用上有利になります。そのため、短期的には金に売りが入るだろうと2週間前に申し上げたのですが、その直後に実際に大きく下げました。
私自身も、さすがに4200ドルまで下がるとは予測していませんでしたが、急速な下落に見舞われたわけです。現在はやや回復しており、4600ドル前後まで戻してきていますが、私は金の買いポジションという長期トレンド自体は、まだ崩れていないと見ています。
(深田)
そうなんですよ。私も、短期的には下がっているけれども、世界最弱通貨の円を持ち続けている方が、危険かもしれないと思っています。
(宇山)
おっしゃる通りです。そうした危機感を持つ人が、やはり金へ向かっていくのです。世界中に需要は確実にあります。やはり「有事の金」という鉄則は崩れていないと思います。ただし、目先に限れば、やや弱含む展開があるだろうとは感じています。
そして、やはり最大の問題は、石油価格がどこまで高騰していくかという点です。ここが現在、マーケットにとって最大の関心事になっています。もし150ドル近辺で推移し始めれば、世界経済は間違いなくリセッションに陥ると、アメリカの各種評価会社も明確に言い始めています。
(深田)
そうなると、結局引き金を引いたのはトランプだった、ということになってしまいますね。イランが石油価格の決定権を握った。その状況を招いたのはトランプ大統領ではないかと、ヨーロッパの人たちは冷ややかに見ているのではないでしょうか。
(宇山)
そうです。確かに150ドルというのはやや大きめの見方かもしれませんが、現実に今、100ドル近辺を推移しているではありませんか。ついこの間つけた高値である118ドルに再び上昇する展開も十分あり得ると思います。この100ドルを超える水準が2か月、3か月と続いたまま夏場を迎えることになれば、これは極めて深刻な事態になります。
各国でインフレ圧力が強まり、それを抑えるためにアメリカでは金利上昇が必要になるでしょう。そうなると、ますますドル高円安が進みます。すでにドル円は160円を突破しているわけです。
(深田)
そうです。ドルもかなり弱いのに、それよりもさらに安いのが円なのですよね。
(宇山)
まさにそうです。
(深田)
危険ですね。
(宇山)
極めて危険です。円はすでに危険水域に入っていると言えます。ドル円でここまで金利差が広がり、さらにドル円が上昇する展開になれば、私たちの生活におけるインフレも、さらに加速していく可能性があります。
そうして経済が次第に縮小していけば、日本経済全体へのダメージが、まさにボディーブローのようにじわじわと効いてきます。企業収益にも影響が出始めれば、当然、株価の下落につながらざるを得ません。
ただ一方で、そうした見方は教科書通りではあるものの、現実には、多くの人がインフレの深刻化を肌で感じ、もはや止まらないと受け止める中で、現金のまま持っていることに不安を覚え、何らかの資産に移そうとする動きも出てくるでしょう。
今おっしゃった金であるとか、日本株であるとか、あるいはNISAやiDeCoを通じて株式に資産を移すという投資行動が、一定のまとまりをもって起きる可能性があります。個人投資家の中にも、株式運用に慣れた人がかなり増えてきていますから、その意味では、日本株が極端に下がるとは限らない部分もあると思います。だから。長期的な上昇トレンドも、まだ壊れていないのではないかと見ています。
ただ、それでもやはり問題なのは、イスラエルが次に何をしてくるか分からないのです。
(深田)
そうですよね。原油価格が上がるたびに、マーケットが一気にクラッシュするような局面がありますからね。
(宇山)
そうです。今はまさにそういう局面です。100ドルを超えて、さらにどんどん上がり始めれば、それに応じて、逆に株価は下がっていくことになります。そうならざるを得ない局面に入っているのです。ですから、イスラエルが何をするか分からないということ自体が、不安定要因になっています。
そのうえで、金や石油と並んで、私が注目しているのがガス価格、つまりLNG先物価格です。現時点では、まだそれほど大きく動いていません。確かに、中東におけるLNG供給は世界全体の2割から3割程度ですから、仮に供給が滞ったとしても、直ちに決定的な影響が出るとは限らないかもしれません。
それでも石油の代替としてガスが使われるようになれば、ガス需要も逼迫してきます。そうなれば、ガス価格が大きく上がる局面も十分にあり得ると思います。しかも、現時点ではまだあまり上がっておらず、ガス価格は3ドル近辺を推移しています。
その意味では、投資妙味があると言えるのかもしれません。一方で、石油は値動きが激しすぎます。すでにかなり上がっているうえ、あのようなコモディティは市場参加者が少ないため、ボラティリティが非常に大きいのです。急騰も急落も起こりやすく、長期保有には向きにくい。しかも金利も配当もつきません。
そうしたことを考えると、やはり日本株という選択肢が現実的だとは思います。ただ、私自身がどうしているかというと、現在はすべてのポジションを外しています。
(深田)
そうなのですね。
(宇山)
怖いのです。イスラエルが何をするか分からないのです。
(深田)
本当に怖すぎますよね。私も、ドル預金をスイスフランに替えています。
(宇山)
そうですか。いいかもしれません。
(深田)
金利はゼロです。ただ、最弱通貨が日本円で、その次に弱いのがドル預金ではないかと思うと、少しまずいのではないかと感じるのです。円は生活通貨として持っておかなければなりませんが、ではドルでよいのかということですね。
(宇山)
その意味では、スイスフランは最も安全ですものね。
(深田)
世界各国の独裁者の預金が集まっている場所ですから、あの国で戦争が起こることはあり得ないですよね。
(宇山)
確かに、そうした事態は考えにくいですね。
(深田)
スイスは、むしろ戦争を煽って儲ける側であって、自分たちは無関係と涼しい顔をしていますよね。
(宇山)
ただ、やはり金利がつかないのですよね。
(深田)
そうなのです。そこが痛いのですが、目先はお金を増やすことよりも、インフレや、アメリカと共倒れになる日本から自分を守ることが最優先です。
(宇山)
そうです。こうした有事の時には、資産をどう守るかを、それぞれが真剣に考えなければならないでしょう。ひどいインフレが始まれば、あっという間に現金の価値は毀損されていきます。
(深田)
そうです。そういう意味では、やはり畑が一番ですよね。
(宇山)
いつもおっしゃっていますね。土地を持って、畑として運用していくということですね。
(深田)
そうです。地面が一番です。
(宇山)
そうなのですね。ただ、固定資産税などがかかって、なかなか煩雑ではありませんか。
(深田)
煩雑ですが、畑は賃貸でもできますし、借りて始めることもできるのです。借りてやってみるのも一つの方法ではないかと思います。
(宇山)
そうなのですね。そうすると、ある程度の収益は確実に見込めるのでしょうか?
(深田)
農業は儲かりません。まったく儲かりません。この間、2反で米を作ったて、1反分を売りました。それで、本当に最終的な利益は数万円程度でした。ほとんどぎりぎりです。ただ、ここは自分の畑なのだという安心感があるだけです。農家が儲からないというのは、揺るぎのない事実ですね。
(宇山)
そうなのですね。
(深田)
皆さん、送料無料などで販売していますけれども、農家が自分の人件費を入れなければ成り立ちますが、人件費を含めると、とても採算は合いません。
(宇山)
そうでしょうね。ただ、そうした農地が外国人に買われることを防ぐという意味でも、非常に愛国的な投資としての意味を持っているのかもしれませんね。
(深田)
そうですよね。それはあると思います。国家が減反政策を進めるのであれば、自分は増反するのだということですね。
(宇山)
そうです。自分の食料は自分で賄うのですね。
(深田)
引退して時間に余裕がある方であれば、畑仕事は運動にもなってよいのではないかと思います。
(宇山)
そうですね。よいアイデアだと思います。
(深田)
今回は、日本の石油の対応が最悪であるというお話を、宇山先生に伺いました。そして皆さんには、資産防衛の重要性、この国に自分の人生を委ねきってはならないという大切なお話もいただきました。先生、どうもありがとうございました。
(宇山)
ありがとうございました。





