#641【建築界の巨匠】山本理顕が挑むベネズエラ再開発!住民が自給自足で街を再生する凄さとは? 山本理顕氏(2026.3.29)
(深田)
みなさん、こんにちは。政経プラットフォーム・プロデューサーの深田萌絵です。今回は、日本を代表する建築家の山本理顕先生にお越しいただきました。山本先生、よろしくお願いします。
(山本)
よろしくお願いします。
(深田)
山本先生は、以前、ベネズエラのカラカスで再開発をされるとおっしゃっていました。先日、ベネズエラのマドゥーロ大統領がトランプ大統領に拘束され、アメリカに連れ去られてしまったのですが、その件や、その後のベネズエラの様子について教えていただけますでしょうか。
(山本)
ベネズエラには、バリオと呼ばれているスラムのような場所が、非常に大きな面積を占めています。バリオとはコミュニティというような意味ですが、南米ではさまざまな呼び方があります。ペルーではバリアーダと呼びますし、ベネズエラではバリオ、ブラジルではファベーラという言い方をします。人口の約60%がこちらに住んでいます。

(深田)
そうなのですね。
(山本)
ですから、彼らは普通の住宅のように住んでいるのです。
(深田)
なんだかカラフルな家がかわいらしいですね。
(山本)
とてもいいですよ。地形にも合っています。ただ、問題はインフラがないことです。自分たちで、不法占拠のような形で作ってきたのです。
(深田)
少し耐震性などに不安のある造りですね。
(山本)
耐震性はまったくありません。地震が起きたり、こちらは雨が降ったりすると、かなりもろいのです。土壌もあまり良くないので、かなり不安定な場所で、崖崩れも時々起きますし、ベネズエラは地震国でもあるので、地震が起きると非常にもろいのです。
ベネズエラの働き手の多くの人たちが、そういうところに住んでいいます。これが、ベネズエラの状況なのです。こうした状況を変えようと、チャベスという大統領が革命を起こしたのです。この人たちは被差別層で、ベネズエラの中でも、貧しく定職もないような人たちです。
豊かな人たちは街の真ん中の平らなところに住んでいます。一方、バリオの人たちは自分たちでこういう住宅を作り始めてしまったのです。これらはすべて不法占拠で作られていったのです。もともとベネズエラには、豊かな人たちが住んでいる街と、バリオに住んでいる人たちとの間に、今でも非常に深い対立があります。豊かなところに住んでいる人たちは、アメリカとの関係によって豊かになっているわけです。
ベネズエラは石油の国なので、石油を売り、石油でお金を儲けている国なのですが、長い間、その石油はアメリカの石油会社に支配されていたのです。アメリカの石油会社がベネズエラで井戸を掘り、自分たちの石油として商売をしている状況に対して、まずチャベスが手をつけたのは、石油会社を国営化するということでした。
そうすると、アメリカは収入源がなくなるため、最も困るわけです。そうしたことから始まって、チャベスに対する弾圧が非常に強くなっていったのです。一度、チャベスは革命に成功したのですが、その後すぐに追放され、さらに戻ってきて、選挙で正式に大統領になったのです。
その人が今やろうとしていたのが、このバリオの改革で、現在それをやり始めています。改革を進めている途中で亡くなってしまったので、今はマドゥーロという後継者がその後を継いでいます。
(深田)
今、そのバリオの再開発に携わっていらっしゃるのですか?
(山本)
在日本ベネズエラ大使が突然訪ねてこられました。ちょうど私がプリツカー賞をいただいた時で、プリツカー賞の審査に関わった方々が、私について「コミュニティと建築をつなぐような仕事をしている」と言ってくださったのです。
それを高く評価してくださって、セイコウ・イシカワさんとおっしゃる日系の大使で、その方が訪ねてこられたのです。「今、こういう状況なのだけれども、副大統領に会ってくれないか」とおっしゃったのです。それが始まりです。
副大統領はデルシー・ロドリゲス氏で、現在の大統領代行になっておられる方で、それをマドゥーロ大統領も支持してくださって、バリオの再開発の仕事を頼まれたというのがきっかけです。
(深田)
その後、マドゥーロ大統領が拘束されてしまいましたけれども、その後はいかがですか。今のベネズエラの状況というのは危険なのでしょうか?
(山本)
全部嘘です。アメリカのプロパガンダで「危険地帯だ」と世界中にベネズエラがいかに危険な街かということを広めようとしたのですが、実際に行ってみると、非常に穏やかな街です。チャベスの革命がかなり成功していて、バリオに住んでいる人たちと、街の人たちが一緒に、穏やかな街を作り始めていて、それはすでに成功しているのです。行けば分かりますけれども、危険なところなど全くありません。
(深田)
治安はどうなのですか?
(山本)
治安も非常に安全です。以前、メキシコにも行ったことがあるのですが、メキシコはひどい状態でした。本当にひどかったです。しかし、ベネズエラはまったくそういう状況ではなく、非常に治安もよく、特に街にいる人たちが非常に明るいのです。
経済的に封鎖されて困っているのかというと、全くそうではなく、彼らはタフで、自分たちで自給自足をしていこうとしているのです。それもかなり成功しています。
(深田)
食料自給率38%の日本とは全然違いますね。
(山本)
果物がすごく豊富なのですよね。果物を食べて生き残ったと言っていました。2年間ひどい状態だったらしいのですけれども、街の中にマンゴーなどの果物があるので、それを食べて生き延びて、今は完全に回復しています。自分たちの力で回復しているのです。
石油が売れなくなっていますけれども、それをものともせずにやっている。それから、売る場所を探していて、ロシアや中国にも石油を売っていましたからね。ですから、決してベネズエラは困っていなかったのです。
そこにまた経済封鎖があって、それでもへこたれず、石油の国有化を外さなかったため、トランプは、マドゥーロを連れて行ってしまえば何とかなるだろうと思ったわけです。けれども、そんなことでどうにかなる状況ではありません。
今、ベネズエラを支えているのはマドゥーロではないのです。バリオの人たちや街の人たちが支えている国に変わっていっているのですよね。ですから、マドゥーロを連れて行ったからといって、今の状況は一切変わりません。
その後を担っているのが、副大統領デルシー・ロドリゲスという人で、この人はいろいろなことを調停しながら進めていくのがすごく上手な人なので、多分、トランプに対しても懐柔してしまうと思うのですよね。実際、トランプもかなり懐柔されているのではないかと思います。
(深田)
そうなのですか。意外ですね。
(山本)
今は、アメリカとも石油の交渉を始めています。それが成功している時に、今度はイラン戦争が起きたので、ホルムズ海峡が封鎖され、アメリカはアラブ諸国などの中東から石油がまったく入ってこなくなってしまったのですよ。
そうすると、欲しいのはベネズエラの石油です。ベネズエラは世界一の埋蔵量と言われていますから。アラブ諸国よりも、こちらの方が埋蔵量は大きいのです。
(深田)
そうなのですね。では、アメリカは世界の石油輸出国ですから、トランプ大統領はイランを攻撃することによってベネズエラの石油の値段をつり上げたという形なのですかね?
(山本)
つり上げました。今度、ロドリゲスは「アメリカにも石油を売りますよ」とやり始めたので、トランプにとっては、ベネズエラは味方になったのです。イラン戦争が起きたために、トランプはベネズエラに近づかざるを得なくなってきているのです。それをうまくコントロールしているのが、今のロドリゲス副大統領です。
(深田)
なるほどね。賢い方なのですね。
(山本)
すごく賢い人です。私たちも少しやりやすくなったと思います。これからもう一度、仕切り直しで、今のバリオの計画や中央広場の計画など、いろいろ依頼されているのですけれども、それがこれからスムーズに進んでいくのではないかと期待しているのです。
(深田)
もう図面などはあるのですか?
(山本)
大体の基本設計はあります。まだ中央広場のところは、今やっているところです。バリオの方は、どうやって開発していくかという提案をしているので、まず、どういう場所かお見せしますね。この画像はサン・アグスティンという、今のバリオ、いわゆるスラムの中と言われているところです。

(深田)
活気がありますね。
(山本)
全然スラムではないでしょう。
(深田)
なんだか、和気あいあいとしていて、皆さん楽しそうですよ。
(山本)
お店もありますし、我々が行くと「お前、これ食べろ」と言ってくるのです。
(深田)
ジューススタンドもありますね。
(山本)
みんな明るい人たちなのです。この人たちがバリオの住人です。この人たちのおかげで、ベネズエラ経済が回っているのです。ここの人たちは職人が多いのですよ。働き手はここにいるのです。お金持ちたちはサラリーマンなので、ここにはいないのです。
ところが、ゴミが捨てられていたように、インフラが整っていない状態です。バリオに行くとサルサを踊って歓迎してくれました。ベネズエラ全体の中では彼らはいわば被差別なのですね。
チャベスが何をやったのかというと、コミュニティ革命のようなことをやったのです。コムーナが1つの大きなコミュニティで、その中に小さい単位として、150世帯から400世帯のコムーナル・カウンシルがあります。これが基本的なコミュニティ単位ですね。これが9個集まって、コムーナという単位ができます。
このコムーナル・カウンシルは完璧な自治権を持っていて、コムーナル・カウンシルには、お金を補助してもらえるのです。それには「私たちはこういう計画があります。この計画に対して、お金を補助してください」と申請すると、その計画に対してお金が出るのです。会議があって、そこでコムーナル・カウンシルの予算が下りるのです。その予算はどこから来るかというと、国の政府というよりも、コムーナから来るのです。
(深田)
そうなのですか。自治体のようなものでしょうか?
(山本)
完璧な自治体です。そういう仕組みを、チャベスが作ったのですね。素晴らしいでしょう。これがすごくうまく働き始めています。こういうことがあったので、飢饉になった時も、彼らはお互いに助け合ったのですね。
自分たちで金儲けも始めたのです。例えばTシャツ屋さんを作ったり、あるいは魚の養殖をやったりと、コムーナル・カウンシルの人たちが自分たちで収入を得るようになって、それがすごくうまくいきました。そのお金はどこで使われるかというと、コムーナル・カウンシルの人たちみんなで使うお金になるわけですね。
だから、本当の意味での自治があるのです。どこかにサポートしてもらうのではなく、自分たち自身の自治ができて、その持続性がそこで生まれるわけですね。そういうやり方をしていったのがチャベスの考えたことで、それが今、すごくうまくいっています。
そういうところに、アメリカが、マドゥーロを連れて行ってしまったのだけれども、全然怖くないのです。今、ベネズエラにはこういう仕組みを持っている人たちがいるのです。
この画像は、バリオの人たちが作っているTシャツ工場で、バリオの人たちのコミュニティ、コムーナル・カウンシルの人たちが作っている工場です。この工場の資本はどこから来たかというと、先ほどのコムーナという大きな単位のところからお金をもらうわけです。

(深田)
お金が出ているのですね。
(山本)
こうやってTシャツを工場で作っている。そして、これを売って商売しているのです。従業員はコムーナの中の人、コムーナル・カウンシルの人たちです。

こういうことをやり始めたのは、チャベスの指導によるもので、こうした取り組みを始めたのですね。みんな明るいです。これは自分たちで稼ぐためです。コムーナル・カウンシルを維持していくためには、お金が要りますよね。そのためにやっているのです。
小学校のプールでは、魚の養殖を始めて、経済封鎖で大飢饉になった時に、実際に儲かったのです。次の画像ですが、洗濯屋さんを始めたのです。この洗濯機を住民たちに貸すのですよ。

(深田)
コインランドリーみたいですね。
(山本)
そうです。もっとよいのは、キャリアに洗濯機を載せて、困っている人のところに行ってしまうのです。
(深田)
洗濯機を持っていくのですか?すごいですね。カゴではなく洗濯機を持っていくのですね。やはり少し違いますね。
(山本)
すごいでしょう。だから、これはコムーナル・カウンシルというコミュニティがあるからできるのです。次は洗剤を作っているところです。洗剤は非常に利益が出るそうで、原価もただみたいなものですよね。

それで、色をつけたり、香りをつけたりして高く売っている。ジョンソン&何とかという会社があるじゃないですか。あれはぼろ儲けしているのですよ。洗剤ほど儲かる商売はない。そこに目をつけて、自分たちで洗剤を作っているのです。
(深田)
それは私も作ってみたくなりますね。
(山本)
一番儲かりますよ。それで、色をつけたりしながら、おしゃれにして作っているのですよね。これも彼らの商売です。
そして次は、僕が訪ねて行った時の画像です。

(深田)
みんな楽しそうですね。本当に盛り上がっていますね。
(山本)
迫力がありますよ。そういうことを今、僕は彼らと一緒にやっている。全体をそういう街にしようとしています。
(深田)
やはり、その植民地型の再開発がありますよね。麻布台ヒルズや六本木ヒルズのような、下町の良さがすべてなくなるような再開発との違いを出すには、どうしたらいいのですか?
(山本)
今考えているのは、斜面の住宅がありましたよね。それをどうやって再開発していくかという提案を、既にしているのですけれども、自分たちで作る街なのです。まずやり方としては、今、バリオで使われている材料をそのまま使うのです。
(深田)
今、その何か掘っ立て小屋のようなバラックで使っている材料を、そのまま再利用するのですか。
(山本)
そうです。どういう材料かというと、ブロックなのですよ。この画像はバリオで、この左下の画像で穴が開いたブロックがあります。これが彼らの使っている材料です。

(深田)
ブロックがこのように空洞になっているのですか?
(山本)
これは、自分たちで作っているのです。押出しという形で、泥を押し出して、こういう形を作るのですよ。
(深田)
心太みたいにするのですか。なぜ穴が開いているのでしょう?
(山本)
まず、軽くできるのです。それに断熱性がいい。これを積んでいくと、断熱性もよくて軽いので、住民たちが自分で作れるのです。この画像の左側が、自分で作った建物です。
(深田)
手作りで、レゴみたいですね。簡単に作れてしまうのですか?
(山本)
簡単です。積んでいけばいいので。ただ、積む時にずれてしまうので、今、僕が考えているのは、ずれないように補助を組んで、上の段と下の段がきちんと嵌るようなブロックを開発しているのですよね。これで作っていって、この間にコンクリートを流し込むというような作り方をしています。これなら自分でできます。
これを積むのも、こうやって補助があるので、住民たちが積んでいけば、自然にきれいな壁になるわけですよね。これで柱も同じように作る。中にコンクリートを流し込んでいく。これはほとんど、住民たちだけでできてしまいます。
(深田)
今、人手不足の問題などがあるけれども、それは関係なく、自分たちで簡単にできてしまうのですね。積み上げていけば、もう誰でも作れてしまう。
(山本)
それに、自分たちで作っているので、建設コストもほとんど労働者のコストになるでしょう。労働者コストは、建設会社が彼らに払えばいい。建設会社は必要なのですよ。自分たちだけでは無理なので、建設会社が彼らを労働者として雇うことにすればいいのです。発注者も彼らです。
(深田)
地元の人が地元の人に発注をして、お互い潤っていいということですね。
(山本)
そうです。今、そういう仕組みを作っているのですね。どうやっているかというと、彼らはみんな商売しているのです。商売をしながら、収入を得ている。飲食店をやったり、先ほどの洋服屋さんのようなものだったり、それをこのベネズエラでまたやろうとしています。
再開発では、横方向に壊して作る、壊して作るというやり方を、これから進めようとしているところです。壊した時には仮住まいを作っておいて、そこに移ってもらう。数としては、25世帯で1つ作る。25世帯が終わると隣に移る。これを大体100世帯ぐらいの単位にしながら、というやり方をしようと思っています。地盤は建設会社が作ります。地盤が悪いので、まずは壁を作って、土が流れないようにするのです。
(深田)
基礎のところは建設会社が作って、その上には自分の好きなものを建てていいということですね。
(山本)
そうです。先ほど言ったようなシステムで作る。みんな商売しているので、すべての人たちが商売できるような家づくりをしているのです。
(深田)
店舗と住まいがセットになっていて、昔の商店街みたいな感じですよね。
(山本)
そうです。それが少し積層していて、テラスのある街にしようとしています。
一番欲しいのは観光客なのです。住民の彼らはサービス精神が旺盛なので、必ず観光客が来ます。これで観光客がたくさん来れば、経済回復ができます。深田さんがおっしゃったように、観光地を観光業者に任せないで、自分で作るのです。
(深田)
地元の人が、やはりそうするのですね。
(山本)
そうすれば、観光客から入ってくるお金を、全部自分たちが受け取ることができますよね。ところが、どこかのデベロッパーに任せてしまったら、全部デベロッパーの利益になっていってしまうわけですよ。
(深田)
本当におっしゃる通りです。今、日本でいろいろなところに行っても、以前は地元のものが食べられたのに、今はただのソフトクリーム屋さんとかパンケーキ屋さんが入っています。画一的なものしか食べられなくなり、楽しくないのですよね。
(山本)
楽しくないですよね。それが今、日本で起きていて、世界中でも起きているのです。これをやれば自分たちで作れるので、全部自分たちの収入になり、サービスする人が住民なのですよ。だから、観光客にとっても楽しくなるわけですね。その辺のちょっとしたサービスではなくて、この人たちは本気でサービスしますからね。
こういう人たちと一緒に劇場を作ったり、観光客用の街と同時に自分たちが住んでいる街を作ったり、そして森ももう一度作り直して、一緒にやっていこうという提案をしていて、もう動き出します。
(深田)
今の日本の再開発は、自然を破壊して、コミュニティまで破壊するのとは対照的に、コミュニティと自然の共生ができるわけですね。
(山本)
自然は新しく作らなければだめなのです、都市の中では。今までの自然は、ほとんど壊されてしまっているので、もう一度作り直さなければいけないのですよ。森を作ろうと思ったら、意図的にやらなければできないのですよね。
今残っている木を残すぐらいでは、もう全然無理です。ここでも森をもう一回作り直そうとしています。森ができると、地盤も安定します。
こういうことを繰り返しながら、これから少しずつやっていきます。ようやくこういうことをやろうという話にまではなっているのです。そこでマドゥーロが連れ去られてしまったので、中は少し止まっているのですが、再度仕切り直しをしているところです。
(深田)
なるほど。マドゥーロ大統領に対する賛否はあるのですけれども、連れ去ってしまうというのは、どうなのでしょうね?
(山本)
あんなことが、いいわけがないじゃないですか。独立国家で、他の国が逮捕するようなことは、考えられないでしょう。
(深田)
あれを良しとすれば、我が国の高市総理も、トランプ大統領が連れて行って、逮捕して起訴しましたと言われたら、「すみません、我が国の総理なのですけれど」となりますよね。
(山本)
そういうことが起きているのですよ。天皇陛下が連れ去られてしまったようなものですよ。大統領ですからね。他の国が来て、天皇陛下が連れ去られたら、日本人は怒るでしょう。
(深田)
はい、怒りますよね。
(山本)
トランプが狙っているのは、そういう資源国ばかりです。連れて行ってしまうのは、元首のような人ばかりです。今回も、イランで殺したのは、あれは政治家ではないのですよ。あの人は、イランでいう天皇のような人なのです。
(深田)
イスラム教の精神世界の先生のような方ですね。
(山本)
そうです。独裁国家だったのですけれども、その人をあろうことか殺してしまったのですよ。そんなことをしたら、イランの人たちは黙っていないですよ。トランプ大統領は最悪のことをやってしまったので、これからイランと戦争をしても、イランは多分、簡単には負けないですよ。あらゆることをやると思いますから。
(深田)
何か、もう降伏したいのかなと。
(山本)
前のアフガニスタンの時は、アルカイダが飛行機で突っ込んだじゃないですか。彼らはあのようなことを平気でやるのですよ。そのボスがイランなのです。その人を殺してしまったものだから、イランの人はものすごく怒っていますよ。トランプは一番やってはいけないことをやってしまったので、これは簡単には収まらないと思いますね。
(深田)
ベネズエラの方たちはどうなのですか。マドゥーロ大統領がいなくなって喜んでいるのですか?
(山本)
とんでもないですよ。マドゥーロは、一方で独裁的なところがあるけれども、改革をしようとしているから、それはやむを得ないところがあるのです。かなり独裁的に進めていたけれども、バリオの人たちにとっては、マドゥーロが救いなのですよ。
チャベス、マドゥーロの路線があるので、今のバリオの再開発もできるし、自分たちのコミュニティもできるというので、彼らにとっては、マドゥーロを連れ去って喜んでいる人など一人もいないです。
(深田)
日本では、地元の人たちが等価交換といって、六本木ヒルズあたりの土地を巻き上げられて、小さな面積のマンションを与えられて、全然等価ではないのに騙し取られているのとは対照的な開発をされているのですね。
(山本)
まったく違います。世界でも初めてのやり方なので、これがうまくいくと、他の国にもすごく影響を与えられるのですよね。南米は全部こういう状況だから、とにかくこれを成功させたいのですよね。
(深田)
逆に、日本に持ってきてはどうでしょうか。日本は人手不足だ、何だと言っていますが「再開発をして、みんなで作ろうよ。自分で作ったら自分の好きなものができるよ」と提案する。作るのも楽しいし、地元の人たちが自分のお店もできる。やはりそういうやり方が、能登半島の輪島などでもできるのではないでしょうか。
(山本)
ところが、日本では法律が邪魔をしてできないのです。いろいろな省庁がありますよね。そういうところは、むしろ国家全体の利益のことを考えるので、地域の利益などまったく考えないのですよ。むしろ大資本を呼んできて街を作る方に賛成なのです。
省庁の役人たち、高級官僚と呼ばれている連中です。こいつらが悪い。文科省や国交省などの役人が、新自由主義的な方向に向いているのです。そのため、今のようなことは日本では非常に難しいのです。
今、世田谷区の保坂区長と、かなりいろいろな話をしていて、私が提案しているのは、町内会自治を作っていくべきだということです。今、町内会がどんどん壊れているのですよ。理由はマンションです。マンションの住人は町内会には入らないのです。
(深田)
はい、そうですね。
(山本)
興味がないので、町内会費も払わない。だから、町内会がどんどん壊れてしまっているのですよね。それをもう一回立て直して、町内会に入ったら得をするというような仕組みを、まず作ろうと保坂さんと話をしていることです。
町内会館のようなものを作って、そこでいろいろなサポートをしてくれる場所を作る。困ったらそこに行くと、いろいろな困りごとに関して助けてくれる。「そういう場所を作りましょう」と。
町内会館があるところもあります。それをもう一度鍛え直して、その町内会館に何を作ればよいのかというと、一つは飲み屋などサロンのような場所です。そこで商売をする。もう一つは一時預かり所で、高齢者や子どもを、その町内会の人たちが預かってくれる。パンデミックのようなことが起これば、まずそこに行けばいいようにすることです。
もう1つ重要なのは、銀行機能です。ATMを設置してもらって、町内会の人は専用カードをもらえる。借金できるというようなカードを、町内会に入るともらえるのです。そうすると、町内会の中で経済が回るのですよ。彼らは町内会に入って、区長が保証人になりますから、銀行もカードを出しても全然心配ない。みんなカードを持っている。一番いいのは、借金できることなのです。貧しい人が困っているのは、借金できないことです。
(深田)
そうですね。
(山本)
カード一つもらうだけでも大変なことでしょう。町内会でそのような仕組みを作るということを、まず基本としてやりましょうという話をしているのです。町内会の人たちだけの中で商売できる仕組みを、何とか作れるといいなと思っています。
(深田)
確かにそうですね。
(山本)
そういうことを保坂区長と話をしています。今やらなくてはいけないのは、コミュニティの一番大事なところをもう一回作り直すことで、今、日本で一番やらなくてはいけないことではないかと思っています。
(深田)
そうですね。今回は建築家の山本理顕先生に、ベネズエラの現状、そしてベネズエラは実はコミュニティが生き返ろうとしている。対照的に、日本ではやり直しが必要だということについて、お話しいただきました。先生、どうもありがとうございました。
(山本)
ありがとうございました。





