#626 イランがアリベイさんの故郷アゼルバイジャンをドローン攻撃!空港直撃の衝撃と戦争参戦の危機を解説 アリベイ・マムマドフ氏(2026.3.12)

(深田)
皆さんこんにちは。政経プラットフォームプロデューサーの深田萌絵です。今回は、在日アゼルバイジャン人で「アリベイチャンネル」を運営されているアリベイさんにお越しいただきました。アリベイさん、よろしくお願いします。

(アリベイ)
深田様、皆様よろしくお願いします。

(深田)
アリベイさん、アゼルバイジャンで非常に大変なことが起こっています。先日、イラン戦争が始まって以降、アメリカによるイランへのミサイル攻撃が行われ、それに対してイランが周辺諸国に対しドローン攻撃などを仕掛けてきました。

そして、3月5日には、ついにアゼルバイジャンに対しても攻撃が行われたと指摘されています。イラン側はこれを否定しているようですが、アゼルバイジャンの立場からはどのように見えているのでしょうか?

(アリベイ)
深田さん、ありがとうございます。今回、私たちは全く想定していなかった事態ですが、そもそもイランで戦争が起きたことは、アゼルバイジャンにとって決して他人事ではありません。

(深田)
アゼルバイジャンはイランの隣国ですものね。

(アリベイ)
そうです。アゼルバイジャンはイランの北側にあり、さらにイラン北部には非常に多くのアゼルバイジャン人が住んでいます。

(深田)
えっ!?そうなんですか。

(アリベイ)
あまり知られていないことですが、まずアゼルバイジャン共和国があります。これは私の出身国であり、私が国籍を持っている国です。もう一つはイラン北部に「アゼルバイジャン州」と呼ばれる地域があります。日本で例えるならば、東京や大阪府のような所です。イランのアゼルバイジャン州とアゼルバイジャン共和国は制度的には全く別のものです。しかし、そこに住んでいる人たちはいずれもアゼルバイジャン人です。北側のアゼルバイジャン共和国には1,020万人ほどのアゼルバイジャン人が住んでいます。一方、イラン側のアゼルバイジャン州には、大体2,000万から3,000万人ほどのアゼルバイジャン人が住んでいると言われています。

(深田)
イランの方が人数は多いのですか?

(アリベイ)
そうなのです。イランには非常に多くのアゼルバイジャン人が住んでおり、イラン人口のおよそ4割に相当すると言われています。これは非常に大きな割合です。

しかし、1945年の第二次世界大戦後以降、彼らはアゼルバイジャン語の使用を禁止され、学校教育や大学教育もすべてペルシア語で行われるようになりました。その結果、現在では二世、三世、孫の世代になると、アゼルバイジャン語を話せなくなってきています。それでも民族としてはアゼルバイジャン人です。

その人たちから見れば、現在のイラン情勢は非常に不安定であり、安心して暮らせる国として最も期待されているのがアゼルバイジャン共和国です。彼らにとって希望を持てる国がアゼルバイジャンなのです。国境を挟んですぐ隣にありますし、もし移動したい場合でも、人道的観点からアゼルバイジャン政府がそれを止めることはありません。

しかし、アゼルバイジャンとしては大きな懸念を持っています。受け入れること自体は可能ですが、それに伴う経済的負担がどれほど大きくなるかという問題があります。100万人、200万人、あるいは300万人がアゼルバイジャンに移動してくれば、アゼルバイジャン経済は耐えられなくなる可能性があります。そのため、事前の準備が必要になるのです。

現在、イランで戦争が起きているので、イランから空路でアゼルバイジャンに入ることはできません。そのため、日本人を含む諸外国の人たち、ロシア人も500人ぐらい、さらにはセルビアの外交関係者などもアゼルバイジャン政府に要請して、アゼルバイジャンの国境を越えて入国し、そこから航空機でそれぞれの国へ帰国しています。

日本人を含む多くの外国人にとって、アゼルバイジャンは重要な避難ルートとなっており、アゼルバイジャンは非常に重要な役割を果たしているのです。そのような状況にもかかわらず、イランはアゼルバイジャンの飛び地であるナヒチェヴァン自治共和国の空港に、自爆ドローン攻撃が行ったのです。

(深田)
そうなのですね。

(アリベイ)
はい。ドローンは4機飛来し、そのうち2機は空中で落下し、1機は民間施設であるナヒチェヴァン国際空港のターミナルビルに直撃しました。もう1機は近くの学校付近に落下しましたが、幸い学校には直撃せず、校舎から約500メートル離れた場所に落ち、子どもたちに被害はありませんでした。しかし、空港では4名ぐらい負傷しています。幸い死者は出ていません。

この事態を受け、アゼルバイジャンのアリエフ大統領は極めて厳しい言葉でイラン政府を批難しました。僕自身も、アゼルバイジャン大統領があのように強い言葉で批判する姿を初めて見ました。大統領はイラン側を裏切り者だと言ったのです。

ドローン攻撃が行われたのは3月5日ですが、その前日、アリエフ大統領はバクーのイラン大使館を訪れ、ハメネイ師の死亡に哀悼の意を示すメッセージを書いたのです。つまり、イランに対する敬意を示したばかりだったのです。

さらに、攻撃があった5日の朝、イラン外相がアゼルバイジャン外務省に「困っているので助けてほしい」と電話をかけてきたのです。具体的には、レバノンに滞在しているイラン人の脱出を、アゼルバイジャンの民間機で支援してほしいという依頼でした。必要であれば費用を負担するとも伝えてきました。

この要請を受け、アゼルバイジャン外務省はアリエフ大統領に許可を取り「全然大丈夫です。やります。お金もいらないです。こういう時に助けなくていつ助けるのですか」と支援をしたわけですよ。ところが、その数時間後にイラン側から自爆ドローンが発射され、アゼルバイジャンの民間施設である空港ターミナルに直撃したのです。これはどう考えても理解できません。

現在のイランは、アメリカやイスラエルと戦うだけではなく、イラン側が協力関係にある国、若しくは協力関係にあるであろう国にも攻撃を行っています。実際、ドバイやサウジアラビアも影響を受けており、世界でも最も安全とされてきたドバイのイメージも大きく揺らいでいます。イランは自国が崩れるのであれば周囲も巻き込むという発想なのです。

これに対し、トルコのフィダン外相も強く批判しています。イランが戦うべき相手はアメリカとイスラエルであり、なぜ関係のない国々まで攻撃するのかと指摘しています。トルコにもドローン攻撃がありましたが、NATOの防空体制によって空中で迎撃されました。しかしアゼルバイジャンでは実際に着弾してしまいました。これが大きな問題となっています。

イラン国内には「アゼルバイジャンにはイスラエルの軍人がいる」「イスラエルやアメリカに協力する勢力がアゼルバイジャンの領土・領海・領空を使ってイラン攻撃の準備をしている」と思い込んでいる人たちもいます。そのため、アゼルバイジャンを攻撃してもよいと考える人たちがいるのです。

しかし、アリエフ大統領は以前から、そして今回も「アゼルバイジャンは第三国に対し、自国の領空・領海・領土を使ってイランを攻撃させることは一切許さない」と明言しています。しかし、イランはそれを信用していないということですね。

(深田)
イラン側は現在、アゼルバイジャンへの攻撃を否定しているという報道も出ていますが、この点についてはどのように見ておられますか?

(アリベイ)
攻撃の直後、アゼルバイジャンでは大統領、外務大臣、防衛大臣をはじめとする政府幹部が集まり、国境警備隊なども含めて緊急会議が開かれました。その場で、今回の事態に必要な対抗措置の準備を進めるよう指示が出され、軍が即応できるように第一段階の準備態勢に入りました。大統領が命令を出せば、いつでも戦闘行動に移行できる状況になっています。

そのうえでアゼルバイジャン政府は直ちにイランに対して、今回の事態の説明と正式な謝罪を要求しました。その後、イランの外務大臣がアゼルバイジャンの外務大臣に電話で「現在状況を調査している。我々は関与していない」と説明しました。さらに3月8日には、イランのペゼシュキアン大統領がアリエフ大統領に電話で「今回の攻撃はイラン政府は指示しておらず、政府は関係していない」と言いました。

しかし、ドローンがイラン領土から発射され、アゼルバイジャンの領土に着弾したことは事実です。イラン政府がそれを指示していたのかどうかは、第二の問題です。仮にイラン政府や国防軍が関与していなかったとしても、イラン国内の勢力、例えばアゼルバイジャンと対立するアルメニア系勢力やクルド系勢力がいますよね。あるいはイスラエルやアメリカのスパイなどが、両国の関係悪化を目的で試みたのかもしれません。

しかし、そのような状況自体がイラン政府にとって深刻な問題です。自国の領土内で発射された攻撃を政府や軍が統制できていないのであれば、それは国家として非常に恥ずべき状況です。政府の統制が軍や国内勢力に十分及んでいないということになり、それ自体が大きな問題です。

仮にペゼシュキアン大統領が謝罪し「政府は関与していない。今後は近隣諸国を攻撃しない」と表明したとしても、軍が従うのかどうかは別問題です。地方には合法・非合法を問わず様々な武装組織があり、そこから再びアゼルバイジャンに対する攻撃が起こる可能性を誰も否定できません。

そのような場合、アゼルバイジャンがどのように自国を守るのかということですが、これもアリエフ大統領は非常に強い言葉で発信しています。彼は、アルメニアとのカラバフ戦争を念頭に置いて「我々に脅威を与えた国に対しては、我々は自国の力を示してきた」と述べました。そして「必要であれば、我が国の領土と国民の安全保障を守るため、第三国に対しても軍事力を行使することができる」と明言しています。要するに、イランに対して必要であれば参戦する用意があると言っているのです。

しかし、このシナリオは非常に危険です。仮にそのような状況になれば、アゼルバイジャン軍が南下し、イラン北部のアゼルバイジャン州に入り、アゼルバイジャンへの攻撃拠点とみなされる地域を制圧し、そこを自国の管理下に置くという展開も考えられます。

しかし、それはイラン領内に軍を進めることを意味します。イランの領土を占拠し、実効支配することになれば、イラン側にとって到底受け入れません。その結果、アゼルバイジャンとイランの全面戦争に発展する可能性があります。

(深田)
それは非常に危険な展開になりそうですね。もしアゼルバイジャンとイランが全面的に衝突した場合、軍事力はどちらが優位なのでしょうか?

(アリベイ)
はっきり言って、今の状態でなければ、イランとアゼルバイジャンが単独で戦えば、アゼルバイジャンに勝ち目はありません。イランの軍事力は圧倒的です。ただし、今の状況は、イランの防空システムの約7割から8割は、アメリカとイスラエルの攻撃によってすでに機能していません。また、多くの軍事・政治指導者が殺害され、国内で自由に動けない状況です。

さらにサウジアラビアやUAEもすでにイランに対する反撃を開始しており、クウェートなどもイランの攻撃を受けています。今後もイスラエルとアメリカの攻撃は続くとみられ、そこにイギリスも加わる可能性が高い。これらの国の陸軍がイラン領内に入れば、イランは壊滅状態になります。そうするとゲリラ戦に移行し、イランの統治は複数の第三国の影響下に置かれる可能性があります。

そのような状況になれば、イランがアゼルバイジャンと戦う力を持てなくなるので、そうした状況を利用して、アゼルバイジャンが北部地域へ進出する可能性もあります。もちろん、政府は公式にはそのような主張をしていません。憲法上の問題もあり、与党としては公然と主張することはできません。しかし、野党の政治家や研究者、さらには一般国民の中には、「イラン北部は、昔はアゼルバイジャンの領土だった。我々は分断されたのだ」というナショナリスティックな意見を持つ人たちも多いのです。

また、イラン北部の住民の中には、現在のイランよりも、より近代的で経済的に発展し、女性の自由も大きく、社会的な自由度も高いアゼルバイジャンとの統合を望む人がいるのではないかでしょうか。例えば、アゼルバイジャンでは宗教的制約が比較的緩やかであり、普通にお酒を飲めます。そうした点を評価する声もあるのです。

もちろん、このような話をすれば、イランからもアゼルバイジャンからも叩かれるかもしれません。しかし現実には、現在の情勢がそのような方向へ向かいつつあるのです。私はそのような展開を望んでいませんし、起こるべきではないと考えています。しかし、アゼルバイジャンが自国の領土、国民、そして安全保障を守るためには、そうせざるを得ない状況もそう遠くはないと思うのですね。

(深田)
イラン政府が今回の攻撃を意図したのかどうかという点は一旦横に置くとして、少なくともイランの何者かがアゼルバイジャンを攻撃したという事実に対して、このような行為が今後も続くのであれば、アゼルバイジャンとしては武力行使で対抗する準備があるということですよね。

(アリベイ)
そうですね。

(深田)
イラン北部にはアゼルバイジャン人が多く、その地域の人たちの中にはアゼルバイジャンとの統合を望む人も多いだろうから、そのような動きが進めば、イランの国土は縮小することになりますね。

(アリベイ)
その可能性については、すでに多くの人が議論しています。イランが分断されて、例えば国内にクルド人国家が成立したり、北部がアゼルバイジャンと統合したり、南部やイラクに近い地域がクルド国家の影響下に入るといった構想です。さまざまな勢力が動いているため、イランが分裂し、その一部をアメリカやイスラエルが影響下に置くような事態も、決して夢ではありません。

さらに、アゼルバイジャン側としても、大統領自身が必要であれば軍事的手段を含めて必要な措置を講じるという方針を示しています。イランとの国境地帯ではアゼルバイジャン軍が最大限の警戒態勢に入り、準備段階に入っています。大統領が命令を出せば、いつでも行動に移ることができる状況です。

命令が出れば、「アゼルバイジャンの領土と国民を守るためにイラン領内に進出する」という判断が下される可能性もあります。その場合、難民の流入を防ぐためのバッファーゾーンを設けることや、テロリストや過激派がアゼルバイジャン領内に侵入することを防ぐため、イラン北部に緩衝地帯を設けることも考えられます。そこから人の移動を制限することも十分考えられると思います。

また、同様の対応をトルコが行う可能性もあります。トルコの承認が得られれば、アゼルバイジャンがいつ参戦してもおかしくない事態に入っていると言えるでしょう。

(深田)
アゼルバイジャンとトルコは、それほどまでに密接な関係なのでしょうか?

(アリベイ)
はい、非常に密接です。今回イランがアゼルバイジャンに対してドローン攻撃したことを、私はもちろん政府が意図的にやったと思いません。しかし同時に、イラン政府が国内を十分に統制できていないのも事実です。だから、誰かがこの状況を止めなければならないのです。

実際、今回の攻撃を受けて、中央アジア諸国だけでなく、ギリシャなどの国々からも「アゼルバイジャンの立場は正当であり、イランは許されないことを行った」という応援のメッセージが寄せられました。また、トルコのエルドアン大統領も「我々はこれまで通りアゼルバイジャンと共にある」と明言しています。

(深田)
そうなのですね。つまり現在は、アゼルバイジャンを支持する国は多い一方で、イランを支持する国は非常に少なく、イランが孤立していく状況が出来上がりつつあるということですね。

(アリベイ)
そうですね。現在、イランを支持している国はほとんどありません。ロシアもプーチン大統領の報道官であるペスコフ氏が「ロシアはイランに対して軍事支援を行うつもりも義務もない」と明言しています。

(深田)
ある意味見捨てられたわけですね。

(アリベイ)
そうですね。見捨てられましたよね。中国も同様です。人口衛星による軍事情報も何も提供していないのです。単にホルムズ海峡付近で独自に軍事演習を行っている程度です。中国もロシアも、自国の兵士をイランのために犠牲にするつもりはないと考えられます。したがって、イランはこの戦争では孤立状態です。

しかし率直に申し上げると、私はイランがここまで強いとは全く思っていませんでした。世界を主導する国々が、軍事的にも経済的にも莫大な資金を投入し、アメリカやイスラエルが大規模な空爆を続けているのに、イランが未だに持ちこたえているということは、イランが想像以上に強いという結論になるわけですね。

(深田)
そうなのですね。だからこそ今、アメリカがクルド人勢力を支援し、イラン国内のクルド人に独立を促すような動きがあるとも言われているのですね。つまり、イランが想定以上に強く、各地に攻撃を行いながら孤立を深めている状況にあるということですね。しかし最終的には、イランも長くは持たないのではないでしょうか。

(アリベイ)
最終的には、私も深田さんと同じ見方です。長期的には持ちこたえられないと思います。ここまで持ちこたえていること自体は非常に強いと言えますが、これ以上はさすがに難しいでしょう。資金面でも、武器の面でも、そして経済面でも限界があります。

さらに世界経済にも大きな影響が出ています。石油価格はものすごく上昇して、現在は1バレル108ドルになってきました。戦争が始まる前は70ドル以下でした。

日本に住む私はワインのビジネスをしていますが、取引はドル建てで行っています。海外送金を行う際には、まず日本円をドルに換えなければなりません。石油価格が上昇すると、アゼルバイジャンのような産油国の経済は利益を得ますが、輸入国にとっては大きな負担になります。日本は石油を輸出する国ではなく、購入する国ですから、その負担は非常に大きくなります。さらに円はドルに対して弱くなり、世界経済全体にも大きな打撃を与える可能性があります。

そのため、この戦争は一日も早く終わらせるべきです。すでに影響は避けられない段階に入っていますが、これ以上被害が拡大しないよう、できるだけ早く戦争を終結させる必要があると考えています。

(深田)
分かりました。ありがとうございます。イラン戦争が始まった当初、どのような展開になるのか見通しが立ちませんでしたが、これほどまでに周辺国に影響が広がるとは全く予想していませんでした。現在は非常に不安定で、予断を許さない状況が続いていると感じます。

本日は、イランの北側に位置する隣国アゼルバイジャンの立場から、アゼルバイジャン人のアリベイさんに、イランとアゼルバイジャンの関係について詳しくお話しいただきました。
アリベイさん、本日はありがとうございました。

(アリベイ)
ありがとうございました。

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