#584 【日本は選挙だが・・】イラン情勢の違和感。暴動の裏で蠢くアメリカCIAとイスラエルの情報工作 宇山卓栄氏(2026.1.29)

(深田)
みなさん、こんにちは。政経プラットフォームプロデューサーの深田萌絵です。今回は作家の宇山卓栄先生にお越しいただきました。宇山先生、よろしくお願いいたします。

(宇山)
よろしくお願いいたします。

(深田)
前回は解散総選挙のお話を伺いましたが、同時にいま話題になっているイランの暴動についてもお聞きしたいと思います。あれはアメリカが煽っているのでしょうか、それとも単なる民主主義運動なのでしょうか?死者もかなり出ているようで、いったい何が起こっているのでしょうか?

(宇山)
イランの情勢については、さまざまなメディアで、大変なことになって体制がひっくり返り政権が今にも崩壊するという報道が、一斉に出ています。しかし、本当にそうなのかという疑問が私にはあります。

(深田)
体制が崩壊しそうにも見えますよね。もう火の海のように見えますから。

(宇山)
テレビを見ていると、火の海で混乱しているように見えるでしょう。ただ、私は「さにあらず」だと思っています。つまり、この報道は注意して見なければならないと考えているのです。

(深田)
今のイランの政権には、悪い独裁者がいるのでしょうか?

(宇山)
そのような構図になってしまっていますよね。

(深田)
報道を見ていると、私もそうなのかもしれないと思ってしまうのですが、実際はどうなのでしょうか?

(宇山)
それも、さにあらずです。物事はそこまで単純で簡単なものではないと、私は思っています。もっとも、ここまでの暴動が起こっている状況ですから、体制が崩壊することが絶対にないとまでは言いません。崩壊する可能性はあるかもしれませんし、何が起こるかは分かりません。特に、イスラエルのような勢力が横から何を仕掛けてくるかが分からないのです。

(深田)
イスラエルが仕掛けているということですか?

(宇山)
私は、主にイスラエルが仕掛けており、そこに英米も関与していると思っています。もちろん、市井の人たちが食べるものにも困り、こうした動いている側面もあります。しかし、それでも体制がそこまで簡単に崩壊するのかという点について、私は非常に疑問を感じています。

(深田)
ベネズエラのときのように、特殊部隊を使って大統領を連れていくということは起こるのでしょうか?

(宇山)
基本的にはできません。そこから少し説明します。いま宗教の最高指導者としてハメネイ師がいて、この人が最終意思決定者です。大統領とは別の存在であり、大統領はマスード・ペゼシュキヤーンという人ですが、イランでは大統領は大きな権限を持っていません。大統領の権限は議会運営や行政運営に関わるものの、その運営も重要な部分は最高指導者であるハメネイ師が握っています。したがって、ハメネイ師をサージカル・ストライク(ピンポイント攻撃)で爆撃して殺せばよいという話も出てきます。仮にアメリカがそれを実行しようと思えば明日にでもできますよ。居場所も含めて、すべて把握していますからね。しかし、ハメネイ師をサージカル・ストライクで殺したとしても、イランは集団指導体制なのです。

(深田)
中央集権化しておらず、皆で意思決定しているということですか?

(宇山)
確かにハメネイ師が最終意思決定者として独裁的な権限を持っているのは事実です。しかし、その人がいなくなったとしても、別のアーヤトッラーが出てくるだけです。アーヤトッラーとは宗教学の最高権威者のことで、そうした人たちが最高指導者になります。ホメイニ師が第一代で、第二代がハメネイ師という流れで、次も新たなアーヤトッラーが出てくるだけのことです。さらに、指導者を殺すようなことをすれば、逆にイランの人たちは「何てことをしてくれるのだ」と一致結束してしまう可能性が高いのです。

(深田)
日本で言えば、なぜ天皇陛下を生かしていたのかということですよね。天皇陛下を連れていかなかったアメリカの決断は、もしそれをやれば日本人が怒るだろうという判断でしょうか?

(宇山)
おっしゃる通りです。まさにその通りです。最近の例で言えば、この前まで石破首相がいましたよね。

(深田)
連れていかれても、誰も怒らないかもしれませんね。

(宇山)
それでも、石破氏が拉致監禁されてアメリカに殺されたとなれば、さすがに「何てことをするんだ」と反発は起きるでしょう。

(深田)
好き嫌いとは別にさすがにやり過ぎですね。

(宇山)
そのように考えると、反感を買いますから、ハメネイ師に対して簡単に手出しすることはできないのだろうと思います。今のイランの状況ですが、死者数については情報が錯綜しています。1月14日の報道によると、死者数がかなり大人数に膨れ上がっており、1万2千人の犠牲者が出ているという報道もあれば、7千人だ、2千人だ、いや600人だという報道もあるのです。

(深田)
今イラン国内ではインターネットが遮断されていて、正確な数字が分からないということですね。

(宇山)
おっしゃる通りです。実態がどうなのか私にも分かりません。ただ私の推測では、死者数は千人前後で最大でも2千人程度だろうと思っています。なぜなら、イランにはイスラム革命防衛隊という軍事組織があり、このイスラム革命防衛隊が依然として事態を掌握しきれていると私は見ています。

もし内戦状態のように銃火器で撃ち合っているのであれば、犠牲者は1万、2万という規模で増えていく可能性もあるでしょう。しかし、現時点ではそこまでの状況にはなっていないと私は考えています。イスラム革命防衛隊はまだ無傷です。

こうした暴動がイラン全国で150を超え、200近くに達するという報道はその通りだと思います。ただ実態は、暴徒たちが火を付けたり暴れたりして、騒いでいるだけの話です。暴徒が拳銃を持っているという情報もありますが、そもそも拳銃をどこから入手したのかという問題があります。

基本的には暴徒が暴れているだけであり、イスラム革命防衛隊にとっては脅威ではない。火を付けたなら「付けさせておけ」、ガラス窓を叩き割ったなら「叩き割らせておけ」というくらいの判断ですね。革命防衛隊は抑制的に対応しているのではないかと、私は推測しています。

いろいろ言われますが、イランは成熟した国です。例えば去年の6月頃にも、イスラエルに空爆をされ、アメリカにもバンカーバスター攻撃のような形で揺さぶられました。それでもイランは抑制的に対応してきました。カタールのアメリカの空軍基地を攻撃する時でさえ「いまから攻撃しますのでよろしく」と連絡までしているのです。

(深田)
事前に連絡しているのは、国際法のことを考えてのことですか?

(宇山)
それもありますし、アメリカと決定的な亀裂をさせないようにするためでもあります。だから「いまから攻撃しますよ」とわざわざ事前に通知しているわけです。

(深田)
中国とは違いますね。

(宇山)
随分と抑制的な対応だと思います。イスラエルがどれほど挑発してきても、怒りに任せて暴走することは、これまで一貫してありませんでした。そうした国が、国内で正体のはっきりしない暴徒が騒いでいる程度で、大々的に鎮圧部隊を差し向けて内戦のような形に持っていくとは、常識的に考えにくいと思います。

ただし、今世界中で起こっていることには、常識が通用しない面があるのも事実です。そのため、断言はできません。私は最近イランに行ったわけではありませんし、現地取材をしたのは2024年の6月から7月で、1年以上前の話です。現在の状況がどうなっているかは全く分からないので、軽々に言うべきではないかもしれません。しかし、常識的に考える限り、いまメディアが大々的に報じている内容には、誇張が非常に大きいのではないかと思います。

では、何によって誇張されているのか。私は、イスラエルのモサドが「大変なことが起こっているぞ、みんな立ち上がれ」と煽っている可能性があり、英米のメディアもそれに乗って煽っているのではないかと見ています。先週は、ハメネイ師がロシアに亡命するという報道もありました。

(深田)
報道が出ましたね。ハメネイ師はロシアと仲が良いのだと感じました。

(宇山)
仲が良いという点は事実でしょうし、亡命先としてロシアが有力候補かもしれません。

(深田)
しかし、最高指導者として、そのようなことはできないですよね。

(宇山)
できるはずがありません。おっしゃる通りです。

(深田)
そうした行動に出れば、体制が崩れてしまいますよね。

(宇山)
おっしゃる通りです。そもそも、そこまでしなければならない理由がないのです。イスラム革命防衛隊は従前どおり機能しており、ハメネイ師の指揮権も依然として健在で、当局は事態を掌握しているわけです。そうであるなら、なぜ亡命などしなければならないのか。私はあり得ないと考え、すぐにこれは虚偽の報道だと否定しました。案の定、ハメネイ師はいまもイラン国内にいます。

では、この情報がどこから流れているのかといえば「タイムが流した、BBCが流した、アメリカだ、イギリスだ、あるいはモサドだ」といった話が出てきます。要するに「ハメネイが逃げたぞ。いまがチャンスだ。さあ立ち上がれ」と煽っているのです。

この種の煽り報道は、割り引いて受け止めなければなりません。私は暴動が起こって以来、ずっとその点を言い続けています。1月11日でしたか、私のXやフェイスブックをご覧いただければ分かると思いますが「体制が崩壊するなど、そんなに簡単な話ではない。もっと冷静に見てください」と警鐘を鳴らす投稿もしました。

情報は錯綜していて見極めが難しい一方で「今メディアが言っていることには煽りが相当含まれている、という前提で割り引いて考えましょう」ということです。いまハメネイ師の話をしましたが、ただ問題は、アメリカが本当に攻撃してくるかどうかです。

(深田)
現時点では、大義がありませんよね。ただ、トランプ氏が「民主主義者たちよ、頑張れ。助けに行ってあげるよ」といった趣旨のことを言っていましたよね。

(宇山)
その通りです。昨日も同じ趣旨のことを言っていました。「援軍を差し向ける。もっと耐えしのげ」と自身のトゥルース・ソーシャルで発信していたのです。私は、ああした口先での介入をすればするほどマイナスになると思います。結局、デモ隊の背後にいるのはアメリカだと思うでしょう。

(深田)
私もやはり、仕掛けているのではないかと思います。イランの元皇太子を手駒にしているのですよね。

(宇山)
パフラヴィーの皇太子、いわばイランの王子のような人物を手駒にして、そこからも発言させているでしょう。これはすべて、デモ隊にとってはマイナスです。デモ隊の背後にアメリカやパフラヴィーの皇太子のような勢力がいるのだと見えたら、協力できないと考える良識あるイラン人は、デモから離れていきます。私は必ずそうなると思います。

(深田)
そう考えると、眞子さまが結婚されてニューヨークにいるのは危険ですね。後で利用されてしまいますね。

(宇山)
そのようなことにもなり得ます。外国に皇族や王族がいるということは。

(深田)
人質を取られているのと同じですものね。

(宇山)
ある意味では、そのようなことなのですね。決して良いことではありません。また、トランプ氏が口先で介入すればするほど、イラン人は基本的に反米なので、それが強くなるのです。

(深田)
親米ではないのですか?

(宇山)
親米ではありません。イランの人々は反米です。確かに、アメリカ文化が好きという側面はあります。例えば、映画をこっそり見る、ファッションを取り入れる、といったことです。しかし政治的には、強く反米です。私が2024年にイランに入り、現地で話を聞いたときも、アメリカをどう思うかと尋ねると、けしからんと強い怒りを示しました。

「俺たちはアメリカ人に何をしたというんだ。何もしていないだろう。それなのに、どうして経済制裁をしてくるのか。圧力をかけてくるのか。何様のつもりだ」と、強い口調で憤っていたのです。そういう意味でも、トランプ大統領が口先で介入すればするほど、イラン人の気持ちはデモから離れていきます。これが実態だと思います。

もう一つは、パフラヴィーの話です。パフラヴィーの後継者とはどういう人物かと言うと、1979年のイラン革命で逃げた王(シャー)がいましたね。ムハンマド・レザー・シャー・パフラヴィー2世です。当時の王は革命の煽りの中で逃げていきました。では、この王はどういう人物だったのかと言えば、イギリスやアメリカとつるんで私腹を肥やし、自分たちだけの利権を確保することに努めた、国を裏切った売国奴だったのです。

(深田)
岸信介みたいな人物ですか?

(宇山)
そこまで言えるかどうかは別として、かなり危険な人物です。少なくともイラン人は「あいつらは売国だ」と見ています。パフラヴィーの息子がまた戻ってくる。だからデモ隊に向かって「みなさん頑張って」と今アメリカのワシントンから呼びかけているでしょう。しかし、やればやるほど、イラン人の心が離れていくのです。

(深田)
そうなのですね。例えば、韓国からマザー・ムーンが「高市さん頑張れ」と言うようなものでしょうか。こちらとしては言わないでくださいという感覚になりますよね。

(宇山)
それと同じ構造です。だから、私はやり方が下手だと思います。イラン人の気持ちや心情をまったく分からずに、こうした工作をしているのだとすれば、アメリカに対して全然分かっていないと思います。

ただ、そうは言いながら、アメリカは決して柔な国ではありません。ベネズエラでも示された通り、マドゥロの側近から末端に至るまで、すべてアメリカ側に寝返っていたわけです。情報も全部流していた。結局、このようなことをイランに対しても、CIAがモサドと一緒になって以前から情報工作を進め、寝返り要員を確実に押さえている状況が一貫してあるわけです。

例えば昨年6月、イスラエルがライジング・ライオン作戦というドローン作戦を仕掛けたとき、ドローンはどこから飛び立っていたかといえば、イラン国内から飛び立っている。つまり、イラン語を話すイラン人がモサドと内通して協力しているということが、はっきり分かります。そこまで諜報工作員が潜り込んでいて、政権の中枢部にも寝返っている人間がいると私は思います。だから昨年6月の時点で、ハメネイ師は、政権中枢部や軍関係者も含めて300人を処刑しています。

(深田)
そうですよね。

(宇山)
少しでもスパイとおぼしき者が捕まれば、直ちに「殺してしまえ」という処置を取るほど手を打っている。しかし、それでも次から次へと内通者は出てくるはずです。その内通者が、どういう形で体制をひっくり返してくるかは予測がつきません。

(深田)
そうなのですね。

(宇山)
ここでアメリカはさすがだと思います。これは他人事ではありません。日本に対しても諜報工作をしているのですから。

(深田)
日本側の人間が政権内にいないではないですか。全員がどこかに紐づいているスパイで、スパイとスパイの戦いになっていて、どこに日本人のために戦っている人がいるのか疑問です。中国の手先か、アメリカ、ロシア、台湾、韓国、北朝鮮等々、あるいは韓国のふりをした北朝鮮といろいろいるじゃないですか。

(宇山)
どこかと内通しているのでしょうね。そのような状況だから、イランも何がどうなるかは分かりません。さらに、イーロン・マスク氏がスターリンクを接続し、ネットが使えるような状況にしているわけです。これが実現すれば、確かにデモ隊の横の連帯が生まれます。

ネットが使えると、アラブの春のように、民衆に大義名分を一気に広め、なぜイランのイスラム体制を倒さなければならないのかということを、ネットを中心に打ち立てることができる。そこまで進めば、アラブの春のように体制がひっくり返る可能性があるわけです。

トランプ氏はイーロン・マスク氏と、これまでずっと対立していました。それをわざわざ呼び寄せて「仲直りしようじゃないか、スターリンクを貸してくれ」と持ちかけ、スターリンクを飛ばして、イランでネットをつなげている状況なのです。イラン当局も、いずれネットを再接続すると、現時点で言っています。こうした情報戦がどう展開するかは私にも分かりません。内部侵食についても分からない状況です。

もう一つは経済です。私たちの想像以上にイランは深刻です。私は一昨年、2024年に現地へ行った時、経済状況をつぶさに見てきました。若者は失業し、食べ物も買えず、将来に希望が持てない。例えばスーパーに行くと、日本であれば商品が普通に並んでいるのに、イランでは棚が空きだらけで物がないのですよ。経済制裁を受けているから、外国製品が入ってこないのです。衣類から洗剤、食品に至るまで基本的にイラン製ばかりで、供給が追いつかない。インフレが進み、通貨トマンも暴落している。結果として、多くの人が希望を失っているのです。

象徴的な出来事もありました。夜、イランでホテルへ戻る途中、大学生のインテリ風の若い男性に「あなたは日本人ですか」と声をかけられたのです。私は「日本から来ました。あなたは大学生なのか」と聞くと「そうだ」と言いました。政治学を学んでいるというので、私は政治の話をしながら、いろいろと話を聞きました。

帰り際、彼はこう言ったのです。「願わくば、少しでいいからお金を恵んでくれないか。パンを買う金もない」と。イラン人の若い大学生です。私はポケットに入っていた2、3000円ほどを渡しました。彼は喜んで「これで飯が食える」と、それを握りしめて帰っていきました。

(深田)
そうなのですね。それほど困っていらっしゃるのですね。

(宇山)
あの姿は、いまでも忘れられません。みんな希望を失っている状態なのです。こうして希望を失った人々が、自暴自棄になって横の連帯で一気に広がれば、体制崩壊が起きる可能性は、もちろんゼロではありません。

それでもなお、イスラム革命防衛隊が無傷で、強固に存在している限り、いくら暴動が起きても民衆は歯が立ちません。イスラム革命防衛隊や官僚組織は、このイラン・イスラム体制下における既得権益者です。

イランは産油国で石油を中国などに売り、そこで得た利益を、役人や軍人にきちんと配分している。ここがシリアのアサド政権とまったく違い、既得権益者に手当てが行き届いているのです。体制が崩壊すれば彼らは直ちに路頭に迷い、場合によっては殺されるか、国外追放に処されます。だから、必死になって体制を守るのです。彼らが自ら率先して体制を崩壊させるようなことをするのか、常識的に考えればあり得ません。

これらの根拠から私は、デモが拡大する不安定要因は確かにあり得るとしても、結局は収束していくと見ています。直近において体制の崩壊はない。将来的には何が起こるか分からないので、崩壊があり得ないと言い切るつもりはありません。

アメリカもモサドも簡単に体制転覆へ直結する手出しはできないでしょう。今後も核施設やミサイル施設をピンポイントで叩くことはあり得ますが、体制転覆につながるような効果的な攻撃は難しいというのが私の見立てです。

最後に、誤解を避けるために申し上げます。いまの話ぶりだと、宇山はイランからお金でももらっているのかと思われるかもしれませんが、私はそうではありません。むしろ私は、いまのイランのイスラム体制が崩壊したほうが、日本の国益になると考えています。できるなら崩壊してほしいと思っているのです。擁護するつもりはありませんし、デモ隊には頑張ってほしいし、トランプ氏にも頑張ってほしいと思っています。ハメネイ体制は崩壊してほしいのです。

(深田)
そんなに悪い人物なのですか?

(宇山)
私は、ハメネイ師をそれほど悪い人物だとは思っていません。しかし、それでも、なぜ体制の崩壊が日本の国益になるのかを説明すると、次のような話になります。

第一に、イランは中国にとって中東における拠点です。ベネズエラがラテンアメリカにおける中国の拠点だったのと同様に、イランもまた中国の拠点である、という認識です。その体制が丸ごとひっくり返るということは、中国が影響力を失うことを意味し、その点で日本にとっては国益になります。だから、崩れてほしいと思うのです。

第二に、イランのイスラム体制があるからこそ、ある意味で中東の不安定さが増している面があります。イランが支援するはハマス、レバノンのヒズボラ、イラクのカタイブ・ヒズボラ、そしてイエメンのフーシ派もそうで、イランを軸とするシーア派連合があるわけです。彼らがいろいろちょっかいをして緊張が生まれるのです。イスラエルでは、ネタニヤフ政権のような強硬派がイランと戦うという大義名分で求心力を得て、過激な方向へ暴走する。こうした不安定なスパイラルが、繰り返し起こっているわけです。ハメネイ体制という根が断たれれば、イスラエルとしても大義名分がなくなるので、ネタニヤフが求心力を失います。

(深田)
イランの政権が倒れれば、グレーター・イスラエルを目指す大義名分がなくなり、イスラエルは縮小していく、ということですか?

(宇山)
私は、短期的にはイスラエルが縮小していくと思いますが、長期的には民族主義的な考え方が再び高まる可能性はあります。ネタニヤフが汚職まみれでありながら、未だに求心力があるのは、凶悪なイランと戦うという大義名分があるからです。それがなくなれば、ネタニヤフは間違いなく追い出されるでしょう。

そうなれば、中東は相対的に安定し、世界のリソースがアジアへ振り向けられる可能性が出てきます。これは日本にとって追い風になるので、私はハメネイ体制が崩れることは、日本の国益にとって望ましいと考えています。

もっとも、イランで人権弾圧や言論弾圧が起こっているのは事実です。ただ、ハメネイ師がそれほど悪いのかというと、別にそれほどでもないわけですよ。ヒジャブを着けなければ叩き殺されるといった話が、まことしやかに流れていますが、私がイランに行って見た限り、実際にはそうではありません。ヒジャブを着けていない女性も多くいます。

(深田)
開放的な服装でショッピングモールを楽しんでいる女性の投稿も見かけます。

(宇山)
男女が手をつなぎ、肩を寄せ合いながら歩くカップルも、日常的に見られました。少なくとも私が2024年に見た範囲では、そうした光景に対して直ちに弾圧する、という空気ではありませんでした。皆さんが和気あいあいと日々の生活を営んでいる、という印象です。

しかし一方で、ハメネイ体制への不満を、イラン人が直接口にすることは、さすがに少ない。宗教警察がいるので、うかつに言えば問題になるからです。それでも、言葉の端々に言葉では言えないけれど「分かってくださいね」というような含みがあり、不満自体は相当に蓄積しているというのが実態です。

イランの情勢は凶悪な独裁政権がめちゃくちゃな弾圧をしているということではありません。しかし、複雑な要因が絡み合っているとしても、一人の日本人としては倒れてほしいとい思っています。

(深田)
複雑なのですね。

(宇山)
おっしゃる通りです。いろいろな要因が絡み合っていて、ベネズエラのようにマドゥロを捕らえて終わり、という話ではありません。

(深田)
そのあたりは、次回詳しく伺いたいと思います。今回は、作家の宇山卓栄先生に、イランの最近の暴動についてご解説いただきました。先生、ありがとうございました。

(宇山)
ありがとうございました。

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