【お前のモノは俺のモノ】世界のジャイアン!トランプ大統領「ドンロー主義」が国際法を粉砕する意味とは? 宇山卓栄氏 #577

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【目次】
00:00 1.オープニング
00:36 2.米軍によるベネズエラ制圧は国際法違反
04:42 3.トランプ大統領のドンロー主義
08:15 4.高市政権の反応
10:42 5.日本が取るべき外交姿勢
16:00 6.トランプ政権の狙い
23:22 7.国際機関が自国の為になっているか選別が必要
24:39 8.トランプ政権が次に狙うグリーンランドの内情
27:18 9.日本の外交はトランプ政権任せになっていないか

(深田)

皆さん、こんにちは。政経プラットフォームプロデューサーの深田萌絵です。今回は作家の宇山卓栄先生にお越しいただきました。宇山先生、よろしくお願いいたします。

宇山先生、最近トランプ大統領がベネズエラのマドゥーロ大統領を連行したり、「グリーンランドは自分のものだ」と発言したり、さらにコロンビアやイランまで名前を挙げたりしていますよね。

(宇山)

メキシコも、ですね。

(深田)

「メキシコも自分のものだ」と言わんばかりです。

(宇山)

あとパナマも、ですね。

(深田)

「パナマ運河も自分のものだ」「ドンロー主義だ、文句あるか」という調子です。ただ、今年の初めには「モンロー主義でいく」と述べていたのに、それをさらに突き抜けたような「ドンロー主義」という話になっています。トランプ大統領のこの「ドンロー主義」とは、結局どういうことなのでしょうか。ぜひ教えてください。

(宇山)

承知しました。この「ドンロー主義」が最初に具体化した事例が、ベネズエラのマドゥーロ拘束です。まず、その作戦の輪郭に触れておきます。私が非常に興味深いと感じたのは、早期発見の管制レーダーが中国製だった点です。防空ネットも中国製とロシア製が導入されていたとされます。そこに対し、アメリカ軍が電磁波攻撃を一気に加えて無力化し、続いてデルタフォース部隊を投下して首脳を生け捕りにし、連行した、という流れでした。これにより、中国製兵器はレーダーも防空ネットも、アメリカ軍の前ではほとんど役に立たない、ということが明確になったと私は見ています。言い換えれば、中国のずさんさがこの作戦を通じて露呈した、ということでもあります。

加えて、アメリカの諜報力の強さが際立ちました。CIAを中心に、マドゥーロの側近から末端に至るまで寝返らせ、情報が筒抜けの状態だったからこそ、あの精度で作戦を遂行できたのだと思います。作戦全体は合計でおよそ2時間、拘束そのものは30分あまりで実行されたとも言われるほど短時間でしたが、その短さ自体が情報の精度を示しているといえるでしょう。

他方で、トランプ大統領のこの行動は主権侵害であり、国際法違反だと私は考えます。これは「国際法違反ではない」といった理屈が成り立つ類いのものではなく、国際法違反だと言わざるを得ない、というのが私の見立てです。

もっとも、アメリカ側は別の建て付けを用意しています。すなわち「国際法違反というよりも、法的に適正な手続きだ」という説明です。具体的には、FBIの捜査官、すなわち逮捕官がマドゥーロを逮捕しに行き、その逮捕官を護衛するためにデルタフォース部隊が付いただけであり、要するに「逮捕しに行ったのだ」という形にしているわけです。

(深田)

つまり「裁判をするために連行しに行っただけだ」という説明ですね。

(宇山)

その通りです。さらにアメリカは「そもそも彼は元首ですらない」と主張します。

「不正選挙で選ばれたのだから本当は選ばれていない。したがって元首ではない」という理屈を立て、「連行してもよい」「犯罪者を身柄拘束しただけだ」という位置づけにしているのです。理屈として分からなくはありませんが、それでも、これを国際法違反と言わずして何と言うのか、というのが率直なところです。

(深田)

これは言い逃れのしようがないと思います。これを「オーケー」としてしまえば、たとえば我が国の総理が連行されたとしても、「すみません、返してください」くらいしか言えない、という話になってしまいますよね。

(宇山)

では、その論点に入りましょう。ここが、おそらく萌絵さんと私の違いだと思いますが、私は今回のトランプ大統領の行動を全面的に支持します。

(深田)

どうしてですか。

(宇山)

私は大賛成です。「よくやってくれた」と思っています。

(深田)

私は大反対です。これを認めてしまえば、高市総理や石破元首相、岸田さんが連行されても、こちらは文句を言えなくなってしまいます。誰一人として「帰ってきてほしい」とは思わないかもしれませんが、たとえムサシのような仕組みが使われたとして不正選挙だと疑っていたとしても、体裁上は投票を経て「一応は選んだ」という形を取っているわけです。首相は直接選んでいないにしても、少なくとも議員としては選ばれているのですから、そこは勘弁してほしい、と思ってしまいます。

(宇山)

そう思うでしょう。仮に石破氏が連行されたとしても、「それはやり過ぎではないか」と日本人として感じるはずです。さらに保守の陣営の中からも、「国際法違反を認め、力による現状変更を容認するようなことをすれば、中国が台湾に攻め込む口実を与えてしまう」という見解が出ています。

(深田)

中国が頼清徳を連行し、「これが頼清徳だ」と言って、偽物を連れて帰ってくる可能性すらありますよね。

(宇山)

まさに、「そういう行為を認めるのか」という反論は当然あり得ます。ただ、私はそれらをすべて踏まえた上でも、国際法というものを絶対視する必要はないと考えています。以前も触れたかもしれませんが、国際社会における国際法は、現実には「破られることを前提に存在している」と言ってよい側面がある、という感覚です。

(深田)

実際、皆さん破っていますよね。

(宇山)

その通りです。世界史、国際政治の現場で、国際法が徹底して守られてきた例など、ほとんど見当たりません。

(深田)

皆、破り方が巧いのですよね。理由付けを用意し、建前を整え、「犯罪ではない」「国際法違反ではない」「こちらには正当な理由がある」と言いながら、実質的には踏み越えている。多くの場合、そういうやり方です。

(宇山)

まさに、その通りです。ところが今回のトランプ氏は、そうした“建前の運用”すら、はばからなくなっています。本来は、今おっしゃったように建前だけは通すものですが、それすら通さず、「国際法など要らない」「自分には通用しない」と、はっきり公言しているように見えます。

(深田)

しかし、それを言ってしまうと、リーガルチームが国内法の枠内で「元首ではありません。一般市民の被疑者を強制連行しただけです」と、法的な立て付けを整えているのに、上から台無しにしてしまいます。そこは口を滑らしてはいけませんよね。

(宇山)

結局、ひっくり返したのです。ルビオらが「逮捕に過ぎない」として法的に成立する建前を必死に整えているのに、トランプ大統領が上から「そんなものは知るか。国際法など関係ない」と言って、踏み越えてしまった。いわば“チャブ台返し”ですが、私はそれでよいと思っています。

(深田)

66の国際機関からの脱退も進めていますよね。

(宇山)

その通りです。そうした動きについても、私は大賛成です。では、日本の政治家がこれをどう受け止めているかというと、例えば高市氏は、このマドゥーロ拘束について、直接の評価や言及を避けています。

(深田)

久しぶりに高市氏は賢い、と思いました。ここは、はっきり言わないほうがよいですよ。

(宇山)

はっきり言っていないですね。

(深田)

その点で、高市氏はやはり賢いと思いました。支持してしまうと、仮に台湾の頼清徳が連行された時に、擁護する言葉が立たなくなりますから。

(宇山)

そこを考慮したのだと思います。

(深田)

高市氏は常に台湾中心ですからね。

(宇山)

加えて高市氏は、ウクライナ問題では「ロシアは国際法違反だ」と批判しています。そうなると、この論理の整合性も崩れます。結果として「ベネズエラの民主主義が根付くことを切に望む」といった、私からすると要領を得ない言い方になり、「何を言っているのだろう」と感じました。

(深田)

ごまかすしかなかった、という印象ですよね。

(宇山)

そうです。私はそこに強い不満があります。日本として、「国際法違反かもしれないが、独裁者による人権抑圧は許さない。ゆえにトランプ氏を明確に支持する」と、なぜ言えないのか、という点です。さらに、もう一人、興味深い発言をした人がいます。自民党の安保調査会長である小野寺五典氏です。小野寺氏はXなどで、「トランプ氏の行為は国際法違反であり、これを認めれば中国に口実を与える」と、はっきり述べました。これが与党・自民党の考え方として「まとまった意見」と受け取られても、仕方がない面があるでしょう。しかし私は、「何を言っているのか」と思います。

そもそも、国際法違反という言葉自体が、現状ではほとんど実効性を持っていません。実際、通用していないのです。トランプ氏も、プーチン大統領も、習近平も、そしてイスラエルも、皆が相当に無理なことをしている。

(深田)

結局、誰も守っていない、ということですね。

(宇山)

その通りです。誰も守っていない。だからこそ日本は、建前の原則論に自らを縛り付けるのではなく、「日本も力を持つ」という現実に向き合うべきです。相手が力で押し寄せてくるなら、こちらも力を持つことを考える。日本が力を持つために何をするのか、その議論を進めよう、と政治家は言うべきだと私は考えます。

それを「力による現状変更は認めません」という原則論だけで抱え込み、その原則論で中国の暴走を止められるというなら、言論人や学者が建前として語るのはよいでしょう。しかし政治家は、評論家のように原則を唱えるだけでは務まりません。政治家は物事を変える立場にありますから、「自分たちも力を持つにはどうするか」を考えよう、という結論に行き着くはずです。

先ほど萌絵さんが示した例えの通りです。こうした行為を認めるなら、仮に高市氏が拉致・監禁され、アメリカに連行された場合に、どうするのかという問題が生じます。

(深田)

「返してください」としか言えませんよね。

(宇山)

結局、そうなってしまうのです。

(深田)

ベネズエラの副大統領のように「返してください」と言うしかない。しかし、彼女は本気で返してほしいと思っていないように見えます。「思っていないけれど、言っている」という感じです。

(宇山)

私も、そう見えました。

(深田)

「あなたが売ったのではないのか」と思ってしまいますよね。

(宇山)

内通していたのではないか、と疑いたくもなります。あの様子を見ると、喜びを隠しているようにも、笑いをこらえているようにも見えました。結局、そうしたことが日本で起きないようにするにはどうするかを考えることこそ、日本人としての最優先事項だと、私は感じたのです。

(深田)

ただ、宇山先生、弱いうちから吠えてはいけません。力を蓄えるまでは、「力による現状変更には反対だ」と言い、「我が国も防衛力を高めましょう」と唱えるしかない。そこは、やはりそうだと思います。自分たちの防衛力を十分につけてもいない。米の備蓄も足りない。その状況で対中強硬や「戦ってやる」などと口にするのは、愚かなことだと思います。やはり韜光養晦(とうこうようかい)、つまり弱いふりをしながら、「申し訳ありません、私が悪うございました」と頭を下げつつ、銭を貯め、米を食べ、兵器を買い、身を固めてから、「力による現状変更など、かかってこい」と言うべきです。

(宇山)

今のように弱いままで、いくら言っても、「言うだけ番長」になってしまいます。

(深田)

その通りです。小型犬がキャンキャン吠えているようではいけません。

(宇山)

おっしゃる通りです。

(深田)

きちんと準備してから、強気に出るべきです。

(宇山)

現実的にはそうでしょう。したがって、まずは原則論を掲げるくらいしか日本にはできない、という現状については、残念ながら私も認めざるを得ません。

(深田)

しかし、中国に長年お金を与え、軍事力や軍事技術を移転し、中国を強くしてから「戦おう」というのは、日本は絶対に間違っています。中国を締め上げて弱体化させてから喧嘩をするのであれば理解できますが、順番が逆なのです。勝てる喧嘩なら、いくらでもやってくれと思いますが、勝てないのですから。現状では「力による現状変更には反対だ」と掲げるしかありません。

(宇山)

現実問題として、それを掲げる以外に日本を守る道がない、ということです。

(深田)

小野寺氏は現実主義者なのだと思います。高市氏は理想主義者ですが、力関係を読む局面ではリアリストになったのだと思います。

(宇山)

その点は、私も理解できます。理解はできますが、それでも私は、理想論だと言われるかもしれないにせよ、その程度のことは言ってほしいと思います。ただ、言ったところで「言うだけ番長」に終わってしまうのではないか、という懸念もあります。

(深田)

それでも、言ってほしいのです。私は子どもの頃からテレビを見て、「なぜ中国に文句を言われると、いつもペコペコするのか」と思っていました。本当に情けない、と。アメリカから何か言われれば、トヨタの車をひっくり返して火をつけ、「トヨタの車なんか買うか」と騒ぐアメリカ人の映像を見て、「あなたたちは、なぜ経営努力をしないのか」と思っていました。

(宇山)

まさにその通りです。自分が努力して自らを改革しないまま、口先だけで主張しても、どうにもなりません。だからこそ政治家たるものは、言葉ではなく実行で示せ、という点が大切なのだと思います。

(深田)

黙ってやる。吠えない。例えばEV推進を進めれば、確実に日本は弱くなるのですから、EVなどは二の次にして、黙ってガソリン車を推進すればよいと思うのです。

(宇山)

全くおっしゃる通りです。国際法云々の話をしてきましたが、もう一つ重要なのは、アメリカが今回ベネズエラに対して動いた狙いが、利権争奪戦にあると言われている点です。私は、これは間違いないだろうと思っています。トランプ氏は、日本のために中国の拠点を叩く目的でベネズエラを攻撃したのではなく、あくまで自分の利益のために動いているのです。

(深田)

そのあたりを、日本の保守派が少し勘違いしている、ということですね。

(宇山)

その通りです。

(深田)

「こうやって中国包囲網を築いているのだ」と言われますが、日本だって中国の一部だと見られたら、同じことが起きかねない、という話です。これは我が国の未来かもしれません。地理的にも隅にあって、中国に寄っているわけですから。

(宇山)

おっしゃる通りです。結果として中国を叩くことになっている面はあるかもしれませんが、トランプ氏はディールの人間であり、自分たちに得のあることしかやりません。では、その「得」とは何か。ここからが、また面白い話になります。ベネズエラ産の原油は、ご案内の通り粘土質で、生成にかなりコストがかかります。

(深田)

サワーオイルのような感じですね。

(宇山)

そうなのですね。アメリカは原油産油国ですから、ベネズエラの原油を押さえたところで、そのままでは使い道がありません。したがって、それを使い道のある「銭」に変えていく必要がある。そうでなければ、トランプ氏がリスクを取ってまで、この作戦を行う意味がありません。トランプ氏は、すべて「銭」のために動いている以上、ベネズエラの原油をどう「銭」に変えるのかが焦点になるわけです。アメリカ側が言い始めたのは、今週エネルギー庁長官が述べたとされる話ですが、ベネズエラの原油を中国に売っていく、しかも格安で売るから、今まで通り買ってほしい、というものです。

(深田)

それでは、中国と戦っているとは言えませんよね。

(宇山)

そうなのですね。そういう意味では、戦っていないと言えます。ただ、別の見方も可能です。これまで中国は、ベネズエラに700億ドルを投入してきたとされますが、その資金が回収できない状況に追い込まれている。実際、採掘や生成のための開発も進め、施設も整備してきた。そうした施設は、そのまま使ってよい。しかし、原油そのものの管理はアメリカが握る。したがって、原油を買うのであれば、アメリカに「銭」を払え、という構図になる、ということです。そこで面白いのは、中国が「分かった。アメリカに金を払う」と言うのか、言わないのか、という点です。

(深田)

中国は相手国を骨抜きにするのは得意ですが、正面からやられると意外と弱い面がある。正面攻撃に弱いので、トランプ氏のように「バーン」とやられると、ひるむかもしれません。

(宇山)

そうなのですね。中国の意外な弱さが、ここで露呈してきているとも言えます。私は、おそらく中国は、ベネズエラの原油について、アメリカに対して「買う」「金を出す」という形で合意するのではないかと見ています。そうしなければ、700億ドルという巨額の投資資金が回収できず、完全な損切りに追い込まれてしまう。さすがに中国も、それは避けたいはずです。そこを見越して、「我々から原油を買え」と迫っているのが、今のトランプ氏だ、ということになります。これは非常に示唆的な話です。

(深田)

ただ、中国は中国で、トランプ氏の周辺に自分の刺客を送り込んでいるとも言われますよね。実際、関税問題でも、トランプ氏は中国に対してそこまで強硬に出ていないではないですか。

(宇山)

そうなのです。

(深田)

そのため、意外と戦わない可能性もありますね。

(宇山)

私はそこを危惧しています。

(深田)

中国も「取られてしまったのだから、仕方がない」といった形で、受け入れてしまうのではないか、ということですね。

(宇山)

親中派の代表的な人物として、ベッセント財務長官が挙げられます。トランプ氏が拳を振り上げて「中国はけしからん」と言ってきたにもかかわらず、そこへベッセント長官が出てきて「まあまあ」と抑え、「ディールですから」と言って中国と引き合わせる。そうした動きを、ベッセント財務長官は繰り返してきたのです。財務省周辺が経済界に支えられ、「中国マーケットを失ったら大変なことになる」と考え、代表者としてベッセント氏が中国との関係を取り持つ。つまり、中国とディールをしたいというトランプ氏の思惑も、同時に存在すると見てよいでしょう。

今、萌絵さんにご指摘いただいた重要な点は、トランプ氏は自分の利益のために動く、ということです。中国を叩くことが日本の利益になる場面はあり得ますが、それがアメリカの真の利益になるかどうかは、必ずしも明確ではありません。「覇権は並び立たない」という発想から、中国を叩くべきだとする強硬派、たとえばピーター・ナバロ氏のような人物も、確かにトランプ政権内にはいますし、国務省にも同様の強硬派は存在します。しかし一方で、親中的なベッセント氏のような人物も配置されている。ここに、トランプ外交の特徴があります。トランプ外交は、常に「両建て」なのです。

(深田)

そうですね。どちらに転んでも自分の得になるようにしておく。ウクライナが勝ってもロシアが勝っても、その中間地帯は自分のものだ、という発想に近いのだと思います。

(宇山)

まさにそこです。中国を叩くかと思えば中国とディールをし、ロシアを批判するかと思えばロシアと手を組む。イスラエルを批判するかと思えばイスラエルと手を組む。そういう意味では、常に白いネズミと黒いネズミの両方を走らせているのです。その上で、自分にとって最も利益になる地点に、最終的なポジションを集約させていく。これがトランプ流のやり方です。いま保守派の一部は、「ほら見ろ、トランプ氏はベネズエラを叩いている。イランを叩いている。どちらも中国の拠点ではないか。つまり、トランプ氏の本意は中国を叩くことだ」と言って喜んでいます。しかし、話はそこまで単純ではありません。トランプ氏は、どちらに転ぶか分からないのです。

(深田)

そもそも、この世に「正義の味方」などいません。日本列島ですら、中国とのディールの一部になり得る。結局は、彼の気分次第、という側面もありますよね。

(宇山)

いまは日本と仲良くしているように見えても、日本を強く叩いてくる可能性は十分にあります。したがって、そうしたリスクも含めて同時に見ておかなければならない、ということです。

それから、先ほど萌絵さんが触れられた「トランプ氏が66の国際機関から脱退した」という話ですが、これもまた興味深い動きです。

(深田)

正直、少しうらやましい面もあります。

(宇山)

この行動については、賛成ですか。

(深田)

一概には言えません。ただ、すべてから脱退するのではなく、自分にとって「得にならないところ」から引いている。その点がトランプ氏の巧みさだと思います。

(宇山)

おっしゃる通りです。

(深田)

日本も、まずはWHOあたりから脱退してよいのではないかと思います。

(宇山)

その通りです。日本もトランプ氏に倣って、どんどん脱退していくべきだ、という発想ですね。

(深田)

たとえば、パリ協定などもそうですね。

(宇山)

まさにその通りです。このような国際機関に拠出金を出した結果、それが巡り巡って国際左翼の財源になり、さらには日本を貶めるような行動にも使われているのだとすれば、国際機関からは次々に脱退していくべきだと思います。トランプ氏が「自分には国際機関も国際法も必要ない」と言うのであれば、日本もそれに続いて、躊躇なく脱退を進めていくべきだという考え方になります。

最後に、トランプ氏の思考は一体どうなっているのか、という点です。「世界分割だ」「帝国主義だ」といった批判があり、冒頭で触れた「ドンロー主義」という言葉も、その文脈で語られています。次はどこを狙うのか、イランなのか、メキシコなのか、コロンビアなのか、それともグリーンランドなのか、パナマなのか、狙っているとされる地域はいくつも挙げられています。ここでは、最後にグリーンランドについて見ておきたいと思います。

私は、グリーンランドは近年、中国の進出が著しい地域であり、北極海資源の開発や北極海航路の開拓という観点からも、極めて重要な要衝になっていると考えています。中国は「氷のシルクロード」という言い方をして、北極海における権益を固めようとしており、その動きに呼応する形で、グリーンランドへの関与を強めています。では、この動きに対してデンマークはこれまで何をしてきたのか、どのような防備をしてきたのか、という問いが出てきます。デンマークのフレデリクセン首相は、トランプ氏の言動を「暴虐だ」「暴言だ」として怒っていますが、デンマークはこれまで、他国からの侵略や浸透に対して十分な対応をしてきたとは言い難い。さらに今後も、それをするつもりがあるのかといえば、必ずしもそうではないでしょうし、そもそも弱い国である以上、財源も能力も限られています。

そのため、放置はできない、という発想が出てきます。こうした状況の中で、トランプ氏は「グリーンランドはアメリカが管理するのが、世界戦略上妥当だ」と言っているわけです。

(深田)

現地の人々は、どういうお気持ちなのでしょうか。

(宇山)

現地の人々は反対しているという声が大多数だと思いますが、一方で賛同する人もいます。デンマークに支配されるよりも、アメリカの支配を受けて投資を呼び込み、そのほうがよいと考える、アメリカの息のかかったような人々も少なからずいる、という点も事実です。これもまた、アメリカの「乗っ取り作戦」の一種であり、力による現状変更だと、はっきり言ってよいでしょう。こうした一連の動きは、国際法違反、あるいは力による現状変更かもしれません。しかし、これもまた、中国を叩くためにトランプ大統領がやっているわけではない、という点は先ほど申し上げた通りです。ただ、結果的には日本にとって、中国の出鼻をくじくという意味で、グリーンランドのアメリカ支配は追い風になる、と私は感じています。

とはいえ、こう言いながら私自身も思うのですが、何でもかんでも他人任せになってしまっている面は否めません。日本がトランプ氏に頼って中国を叩いてもらう、という構図になっていること自体、本当にそれでよいのか、という問題意識はあります。

(深田)

もし、いきなりトランプ氏から「日本人が日本を統治しているのは良くない。ロシアや中国に食われそうではないか。これからは俺が管理する、俺が運営する」と言われたら、どうしたらよいのでしょうか。

(宇山)

要するに、どう対抗するかということです。何でもかんでもトランプ氏に付き従うという姿勢になってしまえば、いざという時に抵抗できなくなります。

(深田)

何でも「いいよ」と言っていると、自分たちもやられてしまいますからね。だからこそ、こちらも一応「それはどうなのですか」と言える余地を残しておく必要がある、ということですね。

(宇山)

その通りです。韜光養晦という考え方になります。そういう意味でも、日本がしっかりと力をつけていく必要があります。その一つとして、自衛のための核武装を含め、何らかの形で防衛力の強化を少しずつでも進めていかなければ、何が起こるかわからない状況に入っている、ということだけは言えると思います。

(深田)

ただ、日本国内には原発がたくさんあって、いつでも爆発できてしまいますもんね。

(宇山)

そうですね。狙われたら、ひとたまりもないでしょう。

(深田)

ある意味で、核兵器が国内にあるような状態とも言えます。

(宇山)

ところが、テロ対策も十分ではありませんし、情報対策も同様です。

(深田)

その上、NTT法も廃止して通信網も売り払おうとしている。

(宇山)

産業スパイに対する手当も、ほとんどできていません。

(深田)

結局、何もできていない、という話になりますね。

(宇山)

まさにその通りです。

(深田)

ですから、日本もやるべきところから着実に進めていけたらよいと思います。ということで今回は、作家の宇山卓栄先生に、ドンロー主義についてご解説いただきました。どうもありがとうございました。

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