#520 【衝撃事実】台湾人6割は親中派!?台湾有事と日本の安全保障の複雑なリアル 宇山卓栄氏
(深田)
みなさん、こんにちは。政経プラットフォーム・プロデューサーの深田萌絵です。
今回は、著作家の宇山卓栄先生にお越しいただきました。宇山先生、よろしくお願いします。
(宇山)
よろしくお願いいたします。
(深田)
最近、高市さんが「台湾有事で集団的自衛権を発動する」と発言しました。その後、中国総領事が「その汚い首を切ってやる」と言って、日中間でばちばちに火花を散らしています。この流れをどのようにお考えでしょうか?
(宇山)
よくもあのように言ってくれましたね。薛剣大阪総領事が「その汚い首を叩き切ってやる」と発言して、日中関係が混乱している状況です。
(深田)
ひどい言葉ですよね。
(宇山)
昨日は早速、日本側はアジア大洋州局長を北京に派遣し、先方の局長と協議しました。ところが、その局長が学ランのような変な服を着て、ポケットに手を突っ込んで、輩に指示をされているような姿を撮影されてしまいました。
(深田)
あれもまた腹が立ちますよね。失礼なことを言っておきながら、失礼というよりも暴言ですよね。
(宇山)
そうですね。私は、あのタイミングで、アジア大洋州局長を北京に派遣しなければならない必然性がどこにあったのか疑問です。しかも、あのようにポケットに手を突っ込むのは「お前、手を突っ込んどけよ」と指示されていたはずです。完全にマウンティングであり、写真を撮られることも分かっていたはずです。
(深田)
写真を撮られに行ったようなものですよね。
(宇山)
そうです。まんまと嵌められたようなものです。なぜそこで局長を派遣したのかと言いたいです。
さらに、高市さんは「ペルソナ・ノン・グラータを発動すべきだ」「これは許さない」といった趣旨の発言を未だに言明していません。あの暴言から既に10日以上が経過しています。
それにもかかわらず「首相が何も語らないのはなぜなのか」という点を、まず申し上げたいと思います。
(深田)
高市さんはどのようにお考えなのですかね?
(宇山)
まったく見えてこないのです。自分への暴言なので「まあまあ」という程度に受け止めておられるかもしれませんが、首相というのは公職ですよ。その首相に向かって「叩き切ってやる」と言われた以上、本人がしっかり反論すべきです。ところが、未だに何も発言されていないのが現状です。
そのうえ、日本側は局長を北京に派遣しました。日本のメディアでは「日中関係改善のために、ほとんど謝罪外交のようなことを高市氏が行なっている」という書かれ方をされており、実際にあの写真が撮られ、そのように見えてしまいます。
しかし、実際には中国側の真意を問いただす側面もあり、あの局長会議は以前から設定されていたもので、謝罪のために行ったわけではありません。
(深田)
緊急の派遣ではないのですね。定期的な会合なのですか?
(宇山)
その通りです。定期的に局長会談が行われており、今回は日本側が北京に行く順番に当たっていただけです。
(深田)
たまたま順番だったのですね。
(宇山)
もともと設定されていた会談であり、今回の暴言を受けて急遽派遣されたわけではないけれども、どうしてもそう見えてしまいますよね。
(深田)
そうですよね。何かぺこぺこしているように見えてしまいます。あれは、高市さんが局長に指示をして派遣したのではなく、定例会としての派遣なのですね。高市さんの考えとは別に、外務省内のコンセンサスを持って局長が派遣されたという理解でよいのでしょうか?
(宇山)
その通りです。外務省もそのように説明しているのですが、それがまったく伝わっていません。外務省は発信力が常に弱く、このように曲げて捉えられてしまうわけです。
私は、外務省としてはこうした点を正確に発信していく必要があると考えています。自民党は「ペルソナ・ノン・グラータを発動せよ」と言っていますが、外務省はその点に触れていません。それが国際社会からは「弱腰外交をしている」「中国に首根っこを押さえられている」と見られてしまうのです。
(深田)
高市さんはペルソナ・ノン・グラータを発動すればよいのに、その点をおっしゃらないのですね。
(宇山)
その通りです。さらに、あの写真が撮影されてしまいました。国際社会がこれをどう見るかが問題です。日本は常に弱腰外交を行う国だ、と受け取られてしまいます。
だから、日本側が発信力を高め、適切に説明していくことが必要だと考えています。また、中国側の薛剣氏による発言ですが、これは個人の発言ではなく、中国本国の指示が当然あります。
(深田)
普通はあのような発言はしませんよね。中国は手口が巧妙なので「怒ったふりなのでは」とも思ってしまいます。
(宇山)
その通りで、中国は節目ごとに、こうした演出を行います。例えば、昨年2024年の台湾総統就任式に日本の国会議員が出席した時に「日本が台湾に介入すれば、日本を火の海にしてやる」と呉江浩大使が発言したという出来事がありました。
台湾問題に関しては、中国側は常に「火の海にする」「首を叩き斬る」といった威嚇表現を行います。これは一種の約束事のようになっており、中国本国と示し合わせた上で行われるのです。
したがって、薛剣総領事が今回の発言を勝手に口にしたわけではありません。中国側の意向を踏まえて発言しているわけであり、日本側はこれに対して「許さない」という明確な姿勢を示す必要があります。
(深田)
そうですよね。一国の首相に向けて使うべき言葉ではありませんよね。
(宇山)
まったくその通りです。にもかかわらず、私が聞くところによれば、日本側が今中国に求めているのは「薛剣総領事を早期に自主帰国させてほしい」ということだそうです。
(深田)
丸く収めたいということですね?
(宇山)
丸く収めたいのでしょう。ペルソナ・ノン・グラータを発動すれば日中関係が混乱するため、それを避けたいわけです。その結果「早く帰国させてください」という話になるのです。
(深田)
人事異動という形なら、着地点としては確かにあり得ますね。
(宇山)
日本政府がよく用いる手法です。実際、過去に外交官にペルソナ・ノン・グラータ、つまり国外追放処分を発動した事例は4回あります。その4回はいずれも、日本側がまず「帰国させてください。なかったことにしましょう」と要請をして、それでも応じなかったため、仕方なく発動したケースでした。
(深田)
なるほど。では今回は「自分で帰ってください。そうじゃないとペルソナ・ノン・グラータを発動しなければならず、両国の利益にならないですよ」という着地点を探りに行ったということですか?
(宇山)
まさにその通りです。そのように報道されていますし、私もその理解でよいと思います。実際、薛剣総領事は年内にも人事異動となる見込みで、任期の終了も近い状況です。そのため、早期帰国を求める調整が行われているのでしょう。しかし、私はこれを落としどころにしてはいけないと考えます。
(深田)
だめですか?
(宇山)
だめです。「首を叩き切る」とまで言われて、昔ならば即戦争です。宣戦布告に等しい重みがあります。それに対して日本側が「まあまあ、帰国させてください」などと対応していては、すでに中国から舐められているだけでなく、国際社会全体からも舐められることになります。
それに、ペルソナ・ノン・グラータを発動したところで、中国側にとっては痛くもかゆくもありません。
(深田)
そうですよね。確かに大きな痛手ではありませんよね。
(宇山)
萌絵さんもご自身のチャンネルで述べておられますが、今回の件は薛剣氏が「英雄気取りで凱旋するだけ」の話です。中国人民から拍手喝采で「よくやった」と賞賛されるだけであり、中国側は何ら痛みを伴いません。
(深田)
現在、中国は景気が悪いので「日本はこんなに悪い奴なんだ」と炎上すれば、国内の不景気から国民の関心が逸れ、むしろ歓迎されるかもしれませんね。
(宇山)
おっしゃる通りで、中国に塩を送るようなものです。ですから、それだけでは意味がありません。ただし、まず日本の意思を示すためには、ペルソナ・ノングラータを行うべきでしょう。さらに、中国が実際に痛みを感じるような制裁をしなければいけません。
(深田)
どのような制裁がありますかね?
(宇山)
まあ、簡単なことではあるけれども、一つは中国人の入国を制限することです。ビザ緩和については岩屋前外相が推進してきましたが、今後は「中国人には適用させません」「入国制限をしましょう」「不動産の取得にも制限をかけましょう」。それで、中国人が来なくなったら「不動産を没収することもあり得ますよ」といったことですね。
(深田)
良い案ですね。
(宇山)
その他、中国人が具体的な痛みを感じるような制裁措置、例えば関税の引き上げをこちら側は本来課すべきだと思います。ただ一方で興味深いのは、中国政府自体が「日本への渡航を自粛せよ」と言っているのです。
(深田)
そうですよね。しかも、航空券をキャンセルしても補償すると発表しています。11月15日以降の日本行きフライトのキャンセル分を、国が航空会社に補償するという話です。
(宇山)
その通りです。セルフ制裁をしているので、ありがたいことです。「どうぞセルフ制裁で自分の首を絞めてください。もう来なくていいよ」という話です。
私は、日本がこれぐらいのことをしっかりメッセージを出していかなければ、いつまでもなめくさられて、中国がつけ上がります。領海侵犯や様々な嫌がらせが続くでしょう。「このループを断ち切る」と、私は絶対にしなければならないと思っています。
そして次に、台湾とどう向き合うかということです。
(深田)
そうですよね。非常に難しい問題です。
(宇山)
ここが、存立危機事態云々の難しい話だと思います。最初に少し掘り下げた視点でお話ししたいのですが、私は台湾問題に日本が直接関わることに危険性があるということも認めています。萌絵さんもご自身のチャンネルで触れているように、その背後にはアメリカのネオコンのような勢力(戦争屋)がいるわけです。
(深田)
そうですよね。高市さんの発言の直後、台湾がアメリカから550億ドル分の兵器を購入するという話が出ましたよね。アメリカはウハウハですよね。
(宇山)
その通りです。アメリカのネオコンにとってはウハウハで「ここで戦火を拡大させて、日本と中国が戦争の火花を散らせれば儲かるぞ」「高みの見物をさせてもらおうじゃないか」という考えが、アメリカには絶対にあります。
アメリカはオーカス(AUKUS)という協定をイギリスとオーストラリアで組んでいる。しかしこの中に、日本を入れていないのですよ。これは原子力潜水艦が寄港するためにどのように運営するかという協定なので、日本が加わることはできないかもしれない。
しかし、本質的にオーカスは、いざ台湾有事の時は「有色人種である日本人が前線に立て。俺らは高みの見物をさせてもらうからな」と、白人諸国のアングロサクソンはそれには関わらないということをある意味示していると思います。
さらに、ファイブアイズ(Five Eyes)というアングロサクソン同盟には、日本はそこにも決して入れてもらえていないのです。本当のところ、軍事情報の共有には、全然日本は入れてもらっていないのです。
このような状況の中で、アメリカのネオコンが考えているのは「日本と中国が戦えばよい」ということです。もし日本がその流れに乗ってしまえば、矢面に立たされ、破滅してしまいうことも同時に考えていかなければなりません。
つまり「アメリカは信用できない」というのが一つの論点になります。そしてもう一つは「台湾を本当に信用しても大丈夫なのか」という議論もしておかなければならないと思います。
私は高市さんの存立危機事態の発言を支持していますが、同時により掘り下げて考えていかなければならないのは、保守層が台湾を馬鹿みたいに信用して「仲間だ、万歳」となっているが「それが本当に大丈夫なのか?」という話ですよ。
なぜなら、先の台湾総統選で親中派の国民党の侯友宜氏、同じく親中派の柯文哲氏が率いる台湾民衆党の得票を合計すると6割に達するのです。民進党・頼清徳氏の4割を大きく上回っています。台湾では親中派が過半を占めています。しかも、柯文哲氏の民衆党は、実質的に中国にかなり寄っている立場です。
(深田)
そうですよね。柯文哲氏には臓器売買に絡んでいた疑惑があり、アメリカ人のイーサン・ガットマン氏(中国問題アナリスト)が指摘して炎上したこともありました。
(宇山)
そうです。柯文哲氏は、中国に完全に首根っこを押さえられている人物です。何か中国と対峙するかのようなことを言っていますが、彼の政策を見れば「さにあらず」ですよ。「中国との対話を進めましょう」という親中の党です。
国民党と民衆党の得票を合わせると6割。これが台湾の民意なのです。民進党のように自らの主権を守ろうとする独立派は4割に過ぎません。これが台湾国民の総意です。
また、萌絵さんもよく台湾に行かれたと思いますが、台湾の高雄、台南、台中を回ると、もうとんでもないシャッター街ですよ。地方は経済が著しく疲弊しています。台北には人・物・金が集まるので、比較的良いのですが、地方の状況は非常に厳しいです。
私が地方の商店主に話を聞くと、彼らは口をそろえて「蔡英文総統、頼清徳総統の民進党政権になってから商売が立ち行かなくなった。中国との取引が制限され、わしらはこれではやっていけん。なんとか中国様から客が戻ってくれることを望んでいる」と言うのです。多くの店主が「商売が苦しい」「中国頼みだ」と同じことをはっきりおっしゃるのです。
その民意が、親中6割となって総統選の結果に反映されているわけです。そもそも台湾人は中国人でもある。同じ中国語、福建語を話す人たちです。萌絵さんのほうが詳しいと思いますが、やはりつるんでいるわけですよ。
(深田)
そうですね。つるんでいますよね。
(宇山)
「台湾と中国は、実際のところ底辺ではがっちり握手をしている状態にあることを日本の保守層も正しく理解し、台湾に対して警戒することが必要じゃないですか」ということを私は申し上げます。本当の意味では、台湾を信用できませんよ。
それでも、台湾が日本にとって重要なパートナーであることは間違いありません。安全保障上、台湾を中国に取られたら、日本にとって良いことは何もないわけですよ。そのため、一定のレベルで台湾にコミットメントしていくのは必要なのですが、同時に「信用してはだめよということも深く肝に銘じておくべきだ」と私は思うのですよ。
(深田)
台湾自身が玉虫色の『一つの中国』として、大陸とは握っています。でも、その『一つの中国』が中華人民共和国なのか中華民国なのかは後で決めればいいという姿勢です。大陸(中国)と島(台湾)が玉虫色戦略で、お互いにいいとこ取りをしているわけですよね。であれば、我々日本も、玉虫色で対応したほうが得ではないかと思います。
(宇山)
おっしゃるような見解も十分にあり得ると思います。
今回の存立危機事態について、首相が国会で明確に言明したことには、ある種の抑止力になったと私は考えています。というのも、存立危機事態とは集団的自衛権を発動するための自衛隊法の要件になっています。これは、台湾有事の時にはアメリカが介在することを前提にしています。
平和安全法制の中で「我が国と密接に関係する国が他国から攻撃された場合、それが日本にとって明白な危険となれば存立危機事態に該当する」と法制上定められています。
そして『密接に関係のある国』とは、言うまでもなくアメリカのことです。つまり、アメリカが台湾有事に介入することを前提に、我が国も黙って見ているわけではない。この発言は、アメリカに対して尻を叩くことを、同時に確認をしているのです。現在のアメリカのトランプ政権はどうやら、台湾問題に全く関心がないのです。
(深田)
全ないですね。もう関わりたくないと考えていると思います。
(宇山)
その通りです。トランプ大統領と習近平主席は今月、APEC首脳会談の時に韓国で会談しました。その共同声明文には「台湾」という言葉が一言も出てきませんでした。裏では台湾を話題にした可能性は十分あるでしょうが、表の声明としては全く触れられていない。これは紛れもない事実です。
(深田)
以前、トランプ大統領は「習近平は、私の任期中には台湾へ侵攻しないと約束した」という趣旨の発言もしていましたよね。「そのままにしておいてくれるよね。俺の任期の間は台湾問題に触らないでほしい」という気持ちなのでしょうね。
(宇山)
私もそう考えています。トランプさんは、台湾に積極的に関わりたいとは思っていないはずです。
だから、ベッセント財務長官が横から出てきて中国と「関税協定をまとめましょう」と先日も妥結したではないですか。「その代わりに、レアアースもアメリカに入れてくれよ」という合意がなっています。
これは日本にとって非常に大きな脅威です。アメリカと中国が日本の頭越しに接近することに対し「ちょっと待った」という効果が、今回の高市首相の存立危機事態の言明にあったのではないか、と私は見ています。
高市首相は「アメリカさん、あなた、わかっているんだろうね。台湾有事では、まずあなた方が前面に出てくださることが必要です」「そのうえで、我が方は集団的自衛権を発動するという立て付けを分かっているよね」ということを、ワシントンに確認したかったのだと思います。
(深田)
ただ、その後、トランプ大統領に梯子を外されましたからね。
(宇山)
そうなんです。残念ながらそこが問題なのです。
(深田)
トランプ大統領が「中国は友達ではないけれども多くの同盟国(日本も)もまた友達ではない」とおっしゃっていました。
(宇山)
トランプ大統領は、この件に関して日本側の肩を持つ姿勢を全く見せていません。
(深田)
そうなんです。私はアメリカ人の本音だと思います。「勝手にやってください。武器は売りますが、兵は出しません。兵器は買ってはほしいけれど、人は出しません」と、アメリカの態度がよくわかりました。
(宇山)
ウクライナでもそうだったではないですか。アメリカは軍として介入はしないが、武器と資金は送る。これが基本姿勢です。
(深田)
でも、ロシアとウクライナの戦争が始まる直前にちょっかいを出したのはアメリカですよね。仕掛けたのはアメリカだから、私は今回の話に乗りたくはないと感じています。
(宇山)
2014年のマイダン革命以来、アメリカはウクライナにスパイを潜り込ませ、バイデンは開戦直前に「我々は介入しません」と発言し、ロシアが安心して突っ込んでいったという経緯があります。
こうした過去を考えれば「アメリカは台湾でも同じことをするのではなかろうか」と日本側の疑心暗鬼は当然広がっていくわけですよ。その中で我が方としては「集団的自衛権ですよ」と強調して、アメリカの尻を叩く点において、一定の抑止力になったと政府が捉えているのかもしれません。しかし、アメリカはそれだけで実際に前線に立って戦ってくれる国ではありません。
(深田)
私も外資系金融機関で働いていた経験から分かりますが、彼らには「人のため」という発想がありません。常に算盤を弾いて「損か得か」で判断します。
戦争を煽るのは利益になりますが、戦争に自ら介入することは損です。「日本人は勝手に死んでください。兵器だけ買ってください。金払いの良い日本は好きですよ」ということですよね。
(宇山)
まったくその通りです。アメリカのスタンスは一貫しています。こんな遠い太平洋の向こう側にある国のために、なぜアメリカ人が血を流さなければならないのか。トランプ大統領はMAGA(Make America Great Again)を掲げ、自国の利益を第一に守る政策を取っています。対外戦争に自ら関わることなど、常識的に考えてあり得ません。
こうした状況に対する日本側のせめぎ合いが、高市首相の存立危機事態発言として表れたのだと、私は見ています。
(深田)
なるほど。それにしても、中国がいつ嫌がらせをしてくるのか、日本としては常にヒヤヒヤしていますよね。「尖閣諸島に何度来る気なんだ」というイライラがマックスになっています。
(宇山)
おっしゃる通りです。台湾有事の時に「台湾からの避難民をどうするのか」という問題もあります。最後に、この点について触れておきたいと思います。
台湾有事には二つの形が考えられます。ひとつは武力によるものと、もうひとつは平和裏に内部工作により、ある日政権が転覆されていたという二つのパターンが考えられます。
武力による併合制圧の場合、台湾人の難民が数万人単位で日本に押し寄せることになります。その場合、日本政府は難民認定を出す可能性が高いでしょう。しかし、平和裏のうちに内部クーデターで政権が倒れた場合、日本政府は現行法制上、難民認定を出せません。日本の難民認定制度は極めて厳格です。
(深田)
ほとんど通らないですよね。ただ、申請をするだけで就労許可が得られるという問題もありますよね。
(宇山)
クルド人のケースですね。しかし、それでも難民としての認定は出していません。ウイグル人、チベット人にも、非常に限定的にしか認定は出されていません。以前、ミャンマーでスーチー政権の時にロヒンギャ族が迫害を受け、日本に逃れてきた時期がありました。
(深田)
ロヒンギャ族、ありましたね。川を泳いだり、船で渡ったりしていましたよね。
(宇山)
そうです。命がけで日本にたどり着きましたが、それでも難民認定はされませんでした。
(深田)
ロヒンギャはミャンマーでかなり虐殺されていましたよね?
(宇山)
はい。大変な目に会わされました。それでも認定は出されていません。日本政府が認める基準は「その国に戻せば生命の危険が生ずる蓋然性があること」ですが、ロヒンギャ族ですら認められなかった。それほど日本の難民認定は厳しいのです。ましてクルド人には出すはずがありません。
同様に、台湾が平和裏に併合された場合でも、出せるわけがないです。では、台湾へ送り返すのかというと、それは日本の国際的信用を著しく損ねることになります。こうしたシミュレーションが、日本政府内で適切にできているのかと問われれば、できていないでしょう。
(深田)
今の移民問題ですら、十分にシミュレーションできていないと思います。
(宇山)
そうでしょう。こういう武力事態だけでなく、難民や避難民の問題も含めて、台湾有事を複合的に想定しておかなければ、大変な目に会います。
(深田)
難民のふりをしてスパイが大量に入り込むリスクがありますよね。もし外務省が台湾有事シナリオを書いているのであれば、そこまで考えてほしいです。
(宇山)
まさにその通りで、難民のふりをしたスパイが入ってきた場合の対処を、日本政府は全く想定していません。こういうところを考えていくべきですね。
(深田)
そうですね。今回は、著作家の宇山卓栄先生に、集団的自衛権発動の条件である『存立危機事態条項』についてお話をうかがいました。ありがとうございました。
(宇山)
ありがとうございました。





