#519 メディアのウソが露呈!?ロシア優勢で戦争は最終局面へ!西側支援が途絶える真の理由 下斗米伸夫氏
(深田)
皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム、プロデューサーの深田萌絵です。今回は神奈川大学特別招聘教授の下斗米伸夫先生にお越しいただきました。先生どうもよろしくお願いします。
(下斗米)
よろしくお願いします。
(深田)
先生、お久しぶりです。今回は、現在も続いているロシア・ウクライナ戦争について、お伺いします。アメリカのトランプ大統領は「自分が大統領になったら、直ぐに解決できる」と言っていたのですが、今はどのような状況なのですか?
(下斗米)
かなり煮詰まってきて、どのように着地するのかという状況です。軍事的にはロシア軍がウクライナのドンバス地方を中心に圧倒的な力で攻略しています。戦略上の要衝で、鉄道と石炭とレアメタルがあるドネツク州のポクロウシクという都市の包囲作戦に、1年ぐらいかかりましたが、この包囲網が閉じてウクライナ軍が逃げられなくなっています。
今回の戦争は戦車などの旧来兵器よりも、ドローンを活用した新しい形態になっています。ウクライナでは撤退論がずっと議会を中心に出ていたのですが、ゼレンスキー大統領が拒否をしたために、結果として封じ込められました。
ロシア軍は、ドンバス地方の南部2州を完全制圧し、ドネツク州の80%ぐらいを取りました。かつてウクライナ軍が反転攻勢をしようとして失敗したものを、逆にドニエプル川まで追いつめて、ポクロウシクの先には事実上ドニエプル川まで何もない(ウクライナ軍がいない)のです。そういったところにロシア軍がどんどん入り始めて、パブロフラードという街を制圧すると殆ど詰まった状態になると思います。
(深田)
最初からロシアが狙っていた東部ウクライナ・ドンバスはロシアの手に(事実上)落ちているのですか?
(下斗米)
そういう形になると思います。あの辺は事実上、ロシア語話者地域で、簡単に言えばロシア人居住地域で、行政的にはウクライナになっていたけれど、ロシア軍は事実上ホームで戦っているわけです。
ロシア軍だけでなく、二つの州の義勇軍にあたる、昔のドンバスのコサック部隊も加勢し、ウクライナ軍が殆ど総崩れになりつつあると思います。
(深田)
日本は高市政権になって「ウクライナを支援し続ける」と明言されていますけれど、ウクライナを支援し続けることは日本にとってどうなのですか?
(下斗米)
11月10、11日にカナダでG7の外相会議があり、そこで茂木外相も似たようなことを言ったのですが、そこで大スキャンダルが起きました。ゼレンスキー氏の芝居仲間で政権の中枢に近くにいるティムール・ミンディッチという人物の大きなスキャンダルが、西側のファイナンシャルタイムズを中心とするメディアに暴露されました。
ミンディッチ氏は映画の制作関係の仕事もしていましたが、1年ぐらい前からファイアー・ポイントという軍産複合体を立ち上げ、表向きは西側の協力を得て、エネルギーやミサイル開発をしていました。
実は、ウクライナの国家汚職対策局(NABU)が1年以上前からミンディッチ氏の行動を監視していたのです。NABUはウクライナ政府の組織に見えて、元々アメリカ民主党政権が毎年600億ドルも金を出していた関係で、米FBIやソロス財団も絡んでいると言われ、腐敗や、武器の横流し、リベートがないかなどをずっと調べている組織なのです。
この調査の結果が出て、司法大臣とエネルギー大臣が逮捕され、ミンディッチ氏は捕まる寸前に、ポーランド経由でイスラエルに逃亡するという事件が起きました。
(深田)
それは汚職に関わっていたので、イスラエルに亡命ということですか?
(下斗米)
そうです。
(深田)
イスラエルは、それを受け入れたのですか?
(下斗米)
そうなのです。イスラエルとウクライナとの間には、犯人の引き渡し協定がないので逃げ得で、ミンディッチのことを調べることができないのです。
彼の豪華アパートを調べると、黄金のトイレットが出てきた。10年前、前政権の時に腐敗がありましたが、今回も腐敗の象徴として黄金のトイレットが出てきて、それがマスコミに次々に報道されました。
なぜ、日本のメディアがそれを報道しないのか分からないのですが、G7が来年からどのように支援をするか話し合いの最中に出てきたので、支援の話が吹き飛んだわけです。
(深田)
確かに、各国の支援が金のトイレに変わっていれば、支援どころではないですね。
(下斗米)
そうですね。ゼレンスキー大統領と彼の本当の黒幕であるイェルマーク大統領府長官たちの豪邸が写真付きで報道されたので、その話が事実上頓挫しているのです。
更にこの問題は深い側面があって、来年度以降の予算編成にあたり、ユリヤ・スヴィリデンコ首相が予算を作るのですが、今年から来年にかけてまずお金がありません。特に、軍事費は、毎月50億ドルぐらい戦争にかかるので、年間600億ドルの予算が必要です。以前はアメリカが支援していましたが、事実上切れてしまいました。
トランプ政権は、金融支援は一切しないとはっきりしており、代わりに今年から、ヨーロッパがお金を出してアメリカのミサイルや弾薬などの兵器を買って、ウクライナに渡すという枠組みを作ったのですが、今のヨーロッパは経済がほとんど機能していません。
(深田)
そうなのですか?
(下斗米)
ヨーロッパは、特にドイツが今のメルツ政権の支持率が20%を切っています。イギリスは労働党のスターマー政権ですが、労働党の支持率も第3位か4位に落ちています。しかも労働党内の左派グループが反乱を起こして殆ど機能していない。今年のクリスマスまでヨーロッパの政権が持つかどうかです。
(深田)
そこまで追い詰められているのですか?
(下斗米)
追い詰められています。ヨーロッパはそうなっていると思います。
話を元に戻しますと、この戦争が始まった時に、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長の考えで、EUはベルギーに置いてあるロシア政府の金融資産を凍結したのです。それを勝手に運用して、利子をウクライナに支援を出していたわけですが、今は資産も使おうと動いています。2~3年間で3千億ドルから4千億ドルを出そうという計画で、ロシアのお金でウクライナが戦争をするという、枠組みになりかけているのですが、ベルギー政府が「ノー」と言い始めたのです。
(深田)
なぜでしょうか?
(下斗米)
ベルギーにすれば、戦争はウクライナが負けているので、戦争が終わった時に返還要求の訴訟を起こされますよね。
(深田)
そうですよね。国際裁判所ですね。
(下斗米)
ヨーロッパに世界中のお金があるわけですが、無断で(他国の)お金を戦争に使っていいわけがなく、それはインドでもアフリカでも同じで、ベルギー政府が抗議をしたのです。
EUでウクライナ支援に反対派は中部ヨーロッパで、特にハンガリーのオルバーン首相、スロヴァキアのフィツォ首相たちです。チェコのパヴェル大統領は軍人出身で比較的バランスの取れた政治家ですが、首相も議会もむしろロシアのエネルギー・石油ガスがないと、とてもやっていけないという親露派です。
ちなみに、チェコでは新たに国会議長に板橋区出身の国会議長が出てきました。
(深田)
我が国の板橋区ですか?
(下斗米)
そうです。トミオ・オカムラさんというハーフの方ですが、起業家で政治グループを作って国会(下院)議長になったのです。
中部ヨーロッパで、かつてNATO東方拡大の中心だったハンガリーやチェコがウクライナのNATO加盟は反対して、この戦争にファイナンスや支援することはできません。
それよりも石油、ガスがこれだけヨーロッパに入ってこなくて、ヨーロッパ経済全体が地盤沈下になっている。これらが今最大の問題になり始めたのです。戦争も負けていて、来年度の予算がたたない。完全に破綻財政ですから、戦争をやめないと軍事費が出てこない。
今、最大の問題は、これまで徴兵の動員対象にしなかった25歳から18歳の若い人たちで、NATO側は、この若者たちを戦場に送らなければお金を出さないと言っているのです。
(深田)
それは日本の終戦前の学徒出陣と同じではないですか。負けると分かっていてやったわけですよね。しかも、しっかり勉強してきた若者を戦地に送り込んで、みすみす殺すことなど、できないですよ。
(下斗米)
私もよく記憶に残っているのですが、2014年にアメリカのネオコンが中心になって低強度紛争の内戦が始まり、キャンパスの若者に「鉄砲を持て」と言って、イロヴァイスクの戦いで若者がたくさん亡くなりました。その時に「若者の命を助けるべきだ」と言ったのがゼレンスキーさんだったのです。
そのゼレンスキー政権では、ウクライナの徴兵組織が5万人ぐらいいるらしいのですが、ここが一番腐敗しています。1万ドルか1万5000ドル出したら海外に逃してくれる。あるいは、18歳から22歳までの人に「海外に行っていい」と言うので、この夏に10万人ぐらいが海外に出たわけですが、帰ってこない。
そうするともう最後だから、今度は25歳から22歳の人たちを動員しないとだめだというのがNATO本部の考え方のようです。
今のゼレンスキー政権は人気がないので、今度の反腐敗運動では、ゼレンスキーを外して、場合によってはロンドンにいる元ウクライナ軍総司令官ザルジニー(駐英大使)さんを推す動きがある。この人は人気が一定程度あり、初期の頃、タカ派でゼレンスキーの人気を凌いでいました。彼をイギリスから戻して、この危機が乗り越えられるのかという問題になってきているのです。
(深田)
いよいよゼレンスキー政権が倒れるかもしれないということですか?
(下斗米)
そこがちょっと微妙で、倒す目的は、あまりにも評判が悪く腐敗がひどいのですが、残念ながら西側が「金さえ出せば」とやってきたので、そういう体質が身についてしまったわけです。
今、ゼレンスキーさんは、ギリシャに行って、昨日と一昨日は、マクロンさんのフランスへ行って、10年後にジェット戦闘機を100機ぐらい作る契約の話をしたようですが、今の状況には何の解決にもなりません。
今は、トルコでアメリカのトランプ政権の紛争処理の中心的人物であるウィトコフ特使に会おうとしているので、今週、来週がひとつの山場になるのかというところです。
ウクライナ内で連合政権を作って政府に対抗しようという動きが、これから来週にかけてどう動くかポイントになると思います。
(深田)
ゼレンスキー大統領の汚職の問題などもあるので、これからウクライナはどうなるのでしょうか?
(下斗米)
システムでは、議院内閣制に比較的簡単に移行できます。ゼレンスキーの貢献を認めて、その代わり女王陛下のようにシンボリックに「君臨すれども、統治せず」というシナリオを書いているグループもあります。
それともそうではなく、大統領選挙で、新しくザルジニーさんなどを選ぶ。いずれにせよ戦争は負けるでしょうから、その後すぐにでも議会選挙と大統領選挙を実施する。もう予算は決まっていますから、そういう形で選挙が来年初めてにかけて行われるのかというところです。かなり煮詰まってきたとは、そういう意味なのですね。
(深田)
ゼレンスキーがどうなるのかというのが、年明けぐらいに見えてくるのですか?
(下斗米)
そうですね。このクリスマスを越せるのかどうか、イギリスのスターマー政権もそうですけれども。何しろお金が出ない。事実上破綻していますが、プリンティング・マネーをすれば、もの凄いインフレになりますから。
(深田)
日本からそのお金が出そうです。高市さんがお金を出すと言いそうですよね。
(下斗米)
お金を出しても解決にならない。むしろ「アルコール依存症の人にウォッカを与えるようなものだ」とある評論家が、言っていました。今のウクライナの問題は、戦争をやめて国内再建をしなければいけないのだけれども、それをゼレンスキー大統領はやる気がなかったのです。彼の権限はもう去年の5月に切れていたのだけれど、西側もG7も延長を認めてロシアと戦争をさせたのですが、うまくいかなかった。
(深田)
任期が切れたままやっていたのですか。なんか日本もそういうことを考えてそうですよね。改憲で緊急事態条項を作れば、国会維持のために選挙がなくなる。
(下斗米)
私は、日本人は信じています。
(深田)
私は信用できないなと思っています。今回は神奈川大学特別招聘教授下の斗米伸夫先生に最近のウクライナの状況が、かなり煮詰まってきているという話を伺いました。先生どうもありがとうございました。
(下斗米)
ありがとうございました。





