#495 日本の相続税は高すぎる!?諸外国の中流世帯はほぼ無税!都内中流サラリーマンがほぼ課税対象の衝撃的事実! 三木義一氏
(深田)
皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム、プロデューサーの深田萌絵です。今回は税法専門の弁護士三木義一先生にお越しいただきました。先生、よろしくお願いします。
(三木)
はい、よろしくお願いします。
(深田)
先生、今回は『やっぱり変だよ、日本の相続税』というテーマですが、何が変なのですか?
(三木)
なぜ、マスコミが騒がないのかなと思っています。昔、バブルの時代に、課税割合が7%を超えたというので、マスコミがものすごく騒ぎました。これでは事業承継もできないなど、いろいろ騒いだわけですよ。
ところが、今年は、多分10%を超えていると思うのです。昨年は9.9%で、この課税割合の9.9%というのは異常なのですよ。要は、死亡された方が100人いたとすると、その人のうち9.9人の相続人たちが相続税の納税義務を負ってしまうということなのです。だから10件に1件ですね。
(深田)
あ、そうですね。10件に1件は相続税ですよね。
(三木)
「まあ、いいじゃん。10件に1件だったら、富裕層だからいいんじゃない」と思うかもれない。しかし、僕はずっと「異常なんだ」と言っているわけです。異常だと思わないですか?
(深田)
え、10件に1件ならば、普通それぐらいではないですか?10件に1件ぐらいがお金持ちということですよね。世界はどうなのですか?
(三木)
皆さんそう思うのですが、世界からすると、これは異常な数値です。
(深田)
えっ!?こんなに相続税を払っている国はないということですか?
(三木)
うん。ものすごく課税割合が高い国ですね。世界全体では低いです。特にアメリカは非常に低いです。韓国は日本よりもはるかに相続税対象になるものが少なく、法改正をしたので、直近は分かりませんが、とにかく日本は高いですよね。
10件に1件だと思っているのは錯覚なのですよ。10人のおじいちゃんが亡くなっても1件ぐらいだねと東京の人たちは思っているでしょう。だけど、おばあちゃんも死ぬからね。そうすると2倍になります。若い人もいろいろな不幸があって死んで、その割合も含まれるよね。そうすると、およそ25%になるのかな?
「それでも4分の1じゃん」と思うかもしれないけど、相続財産の対象になるのは、最近は金融資産が増えてきましたが、従来は、ほとんどが土地なんですよ。それで、土地が高いところはどこですか?東京、名古屋、福岡、大阪といったところですよ。首都圏が高いですよね。全国平均で10%なので、東京に住んでいる人に限定すると数倍ですよ。
(深田)
そうですよね。倍以上になりますよね。確かに地価が全然違いますものね。
(三木)
たとえば、東京の場合、八王子から千葉県市川あたりまでの間に一軒屋を持てるように、お父さんが一所懸命働いて頑張って一軒屋を建てた。あるいはマンションを買った。そういうお父さんがバタンと倒れると、ほぼ相続税がかかります。
(深田)
ほぼ相続税、確かにそうですね。
(三木)
おかしいでしょう。本当の富裕者に課税するのは必要だと思います。
(深田)
確かに都内のサラリーマンであれば、普通に相続税がかかりそうですよね。
(三木)
今は実質的には4割と言われています。
(深田)
少子化で子供1人、10~20年前ぐらいに家を買っていたら、もう1.5倍、下手をすると2倍になっているところもありますものね。
(三木)
そういうことです。仕方がないから、相続のために売ったりすれば今度は譲渡税がかかる。だから、僕は、これはおかしいと思っているのですよ。これは、民主党、自民党、公明党のみんなが間違えて共犯関係にあります。それで、お互い三すくみで直せないでいるわけです。
実はバブルの時に7%を超えて日本中で大騒ぎになったので、基礎控除を引き上げたのですよ。確か5000万円プラス法定続人の数×1000万円で、相続人が一人いれば5000万円プラス1000万円で6000万円です。奥さんと子供が二人いると9000万とか1億円なのですね。これは評価額なので、実際には1億2000万ぐらいにならないと、課税対象にならなかったわけです。
それで、国税庁長官が民主党政権の担当者に「もうバブルは終わったので、下げてもいいんじゃないですか」と提案したわけですよ。確かに民主党が政権取った時にはバブルは終わっていたから「確かに終わったよな」という風に思うわけですよ。
国税庁はそこにつけ込んで「今度は、5000万円プラス法定相続人の数×1000万円ではなく、3000万円プラス600万ぐらいでいかがですか?」と持ち掛けたわけです。そうすると、2000万下がり、子供が1人の時は今までは6000万円だったのが今度は3600万円と、がくんと減るわけです。相当の割合で減りますよね。
(三木)
民主党は久しぶりに政権を取って、初心であまりずるくなかったから、国税に言われると「富裕層に課税するのだからしょうがないかな」と思ったわけです。民主党は、その後すぐに崩壊をして、民主党政権はなくなりました。この改正を自民党と公明党の連立政権が担って、確か平成27年頃に改正案を具体化して出しました。
それまで1億円ぐらいの財産がないと課税されなかった人たちが、6000万ぐらいでも課税されてしまうという改正になったわけです。バブルが終わったからといっても、東京はそんなに地価が下がったわけではないですよね。
(深田)
そうですよね。東京は全然下がっていないですものね。
(三木)
それまで4%だった課税割合が、一気に8%に上がったのです。そこから毎年じわじわ上がり続けているわけです。
(深田)
それに、また相続税が何か不利になりましたよね。
(三木)
(生前)増与税が死亡3年前から7年前に延長されるなどですよね。3党が絡んでいるとはいえ、実施した自公政権の責任はあるのですが、改めなかったのですよ。
国税庁は提案する時に「そんなに上げてはだめだ」と政権政党から言われることを見越して、ダメもとで少し多めの減額案に出すのですよ。それで、5000万円プラス法定相続人数×1000万円を3000万プラス法に×600万にしましょう」と言ったのです。
まさか本当にこの提案を政権が飲むと思っていなかった。でも民主党は飲んでしまった。その流れで自公政権が法律を作って制定してしまい、国税としては予想外に税収が増えたわけですよ。
国税庁にはありがたいのだけれど、本当の富裕層ではない中間層まで全部入ってしまい、少額の相続税を払わないといけない人たちがいっぱい増えて、困っているのではないかと思うのですよね。
私は、相続税は必要だと思っていますよ。しかし、富裕層にきちんと税金をかけるべきであって、中間層に相続税を取るというのはそもそもおかしいのですよ。
(深田)
そうですよ。相続税はいくらからが適正なのですか?
(三木)
少なくとも、バブル期の時の基礎控除に戻さないとだめだと思いますよ。それ以上の人たちにはある程度負担してもらいたいし、何十億も持っている人は、相続の時にビシッと払ってほしいですね。外国に逃げるようであれば、捕まえて日本で払わせないといけないと思います。
(深田)
確かにそうですよね。
(三木)
税制を見る目線で、左右対立など考えた時に、左とは何でしょうか?
(深田)
右と左の対立がよくわからないですよね。
(三木)
わからないですね。僕らが若い時は、国際社会がイデオロギー的にすごく対立していました。ソビエトと中国の共産主義が広がり、資本主義国はそれにものすごい危機感を感じてアメリカのマッカーシズムのような考えで赤狩りをするなど、すごく激しい対立がありました。
当時、日本は資本主義国で、不公平などがあり若者はみんな左に行ったわけですよ。他の国が美しい、隣の芝生は青いというもので、共産主義がいいと思って左翼に走ったのですが、共産主義を名乗っていた連中の国もみんなひどい国になっていきました。
そうすると、民主主義の方が良さそうだけれど、今のアメリカを見たらどうしようもない国だと僕は思うわけですね。資本主義もでもいいのですが、格差が拡大すると、社会が乱れるのですよ。
(深田)
そうですよね。中間層が厚くないと社会が乱れますよね。
(三木)
だから、そこなんですよ。
(深田)
今、オレオレ詐欺の受け子や立ちんぼをしている子たちは所得が低い家庭の子供たちですよね。
(三木)
昨日、僕の友人の弁護士に聞いたら、今の若い人たちが自分たちの社会が変わるという希望感がない。正規社員は上級給与所得者で、非正期社員はそうではない。損害賠償の依頼を受けた時も、あの人は正規社員だから間違いなく取れるはずだという発想になっているそうです。完全に危ないですよね。
(深田)
そんな風になってしまうのですか?分かります。何か、そういうことがある気がします。
(三木)
だから今、僕らが目指さないといけないのは日本を一億総中流と言われていた時代に戻さないといけない。そんなに高額なお金持ちにならなくても、みんながそこそこ幸せでいいのではないですか。
(深田)
アメリカみたいな格差社会にならなくていいですよ。
(三木)
経済の発展で、もっと伸ばしましょうと日本はやってきたのだけれど、逆に格差が拡大してしまったのですよ。一億総中流にしていくためには、税制では富裕層はきちんと負担をする。貧しい層はそれほど負担しないで、逆に給付を受けるような社会を作っていかにといけないと思っているわけです。
「このような社会にしていこう」と言うと「左翼だ」と言われるのですが、こんなことは当たり前のことだと思うのですよ。立憲民主党が主張している給付付き税額控除はまさにそういうことです。これを高市さんまで言い出したのです。みんなが言い出してくれたことはいいことだと思います。私たちは本当にこれを目指してかなければいけないと私思っているのですよ。
相続税について、今の状況は中間層に税金をかけています。これをやめて富裕層にかけるようにして、同時にあの富裕層については東京大学名誉教授の醍醐聰先生などが「富裕税を日本に導入しろ」とおっしゃっています。
これは本当に正しいことだと思っているので、皆さんも関心があったら、どんな税金なのかいろいろな文献を調べて、考えていただきたいと思います。
日本の上位1%で、資産3億円以上の所得階層の人たちは、おそらく僕らよりあまり税金の負担が少ないと思うのですよ。そういう人たちにもう少し税金を払ってもらい、貧しい者たちの環境が良くなるような社会にしてほしいと思っているわけです。
それで、今回の相続税について、僕はおかしいと思うので、これは直してほしく、合わせて新たに富裕税のようなものを考えてほしいとお願いをしておきたいと思います。
(深田)
あ、そうですよね。中間層が厚い方が、社会が安定するというのはその通りなので、それで治安が良くなるのだからいいじゃないかというお考えですよね。
(三木)
これを左と言うのであれば、左で行きましょうよ。
(深田)
それが左とは、私は思わないです。実は右派の人もそんなに恵まれた生活をしている人はいないのですよ。正直なところ、右も左もそんなに裕福な人はいないですよね。裕福なのは一部の大企業の方とか、グローバル企業経営されているプレイヤーたちだけですよね。
今回は、右も左も関係なく中間層を厚くするための相続税度に変えていきませんかという話を税法専門の弁護士三木義一先生にご解説いただきました。先生、どうもありがとうございました。
(三木)
はい、失礼します。





