【衝撃の事実】44%が貧困!単身高齢女性を襲う年金カット地獄とは? 伊藤周平氏 #483
【目次】
00:00 1.オープニング
00:40 2.日本の単身高齢女性の貧困率は高い
04:29 3.物価が上がっても年金は上がらない
05:30 4.日本は国連から最低保証年金を作るよう勧告を受けている
06:42 5.年金の財源をどうするか
08:37 6.遺族年金をカットする法案が通されている
11:14 7.年金積立金500兆円を使うべき時
(深田)
皆さま、こんにちは。政経プラットフォーム・プロデューサーの深田萌絵です。
今回は、鹿児島大学教授の伊藤周平先生にお越しいただきました。先生、どうぞよろしくお願いいたします。
(伊藤)
よろしくお願いいたします。
(深田)
最近は低年金問題で高齢者から「自分の年金が月に5万円程度しかなく、70代になっても働き口が見つからない。この先どうやって暮らしていけばよいのか」という切実な声をよく耳にします。伊藤先生は社会保障問題の専門家として、このような年金問題をどのようにお考えでしょうか?
(伊藤)
現在は世代間の分断が広がり「高齢者はお金持ちだ」と言われていますが、実際はそのようなことはなく、貧困率が非常に高い状況にあります。
(深田)
あっ、そうなのですか?
(伊藤)
私の著書にも記しましたが、OECD諸国の中でも日本は深刻で、特に単身の高齢女性の貧困率は約44%に達しており、OECD加盟国の中で最悪です。
(深田)
貧困率44%ですか⁉
(伊藤)
単身で暮らす高齢女性のほぼ半数が、貧困線(※1)を下回ります。
※1)貧困線:世帯の可処分所得÷世帯人数の平方根の中央値×50%の値
(深田)
それは本当に感じますね。私の世代より上の女性は、男女雇用機会均等法が施行される前に社会に出たので、十分に働く機会がなかった人が多いのです。
(伊藤)
厚生年金に加入していない人が多いのですよね。
(深田)
仕事のスキルが低く、年金が少ないので、貧困から抜け出す道は結婚しかありませんでした。しかし、結婚しなかったり、離婚したりすることで貧困に陥る事例をよく目にします。
(伊藤)
特に厚生年金に加入していない場合、国民年金のみでは40年間保険料を支払っても月額6万9000円で、生活保護基準以下です。厚生年金の上乗せがあったとしても、80代、90代の女性は働く場が非常に限られており、厚生年金に加入していた人自体が少ない。仮に加入していたとしても賃金が低かったため、年金も少なくなってしまいます。このような状況を「貧困の女性化(Feminization of poverty)」と言います。
(深田)
「貧困の女性化」ですか?
(伊藤)
「貧困の女性化」とは、アメリカの社会学者ダイアナ・ピアースが提唱した概念です。移民などを含め貧困層に占める女性の割合が急増しており、なぜそのような傾向が起こるのかを分析しました。
日本における「貧困の女性化」は、今おっしゃったような雇用の問題や、年金が賃金に連動しているという問題があります。特に単身の高齢女性は年金額が極めて少なく、貧困状態に置かれやすい。さらに、年金からは介護保険料、後期高齢者医療保険料、国民健康保険料などが天引きされています。
(深田)
確かに、年金から保険料がさらに差し引かれていますよね。これはいつから始まった制度なのでしょうか?
(伊藤)
介護保険は2000年からです。
(深田)
年金から別の保険料が差し引かれると「何のための年金なのか」と感じてしまいますね。
(伊藤)
差し引かれているのは医療保険料や介護保険料などですが、これらの負担額が年々上昇しています。現在では介護保険料が月額6000円から7000円ほどに達しており、高齢者にとっては大きな負担です。物価が上がっているのに、保険料が天引きされ、結果的に手取りがどんどん減っているのです。これは『マクロ経済スライド』といって、物価や賃金が上昇に応じて年金の上昇幅を抑える仕組みによるものです。
(深田)
物価が上がっても年金が同じようには増えないということですか?
(伊藤)
そうです。この仕組みは2004年に導入されました。そのような制度があるため、年金の実質的な価値は年々目減りしているのです。たとえば、物価が3%上昇しても年金は2%程度しか上がりません。当然ながら生活は苦しくなっていきます。
(深田)
日本の年金はインフレ連動型になっていないのですね。
(伊藤)
もともと日本の年金制度はインフレ連動型で、1973年に物価スライド制が導入されました。ところが、2004年には「少子化が進む中で年金財政が厳しくなる」との理由から『マクロ経済スライド』が導入され、給付額を実質的に削減していく仕組みに変わったのです。
(深田)
伊藤先生は「最低保障年金の確立と地域経済効果」というテーマでも発言されていますが、これはどのような内容なのでしょうか?
(伊藤)
年金削減をめぐっては裁判も起きており、私はその際に意見書を書いて、法廷に証人として出たことがあります。
実は2013年に国連が「日本の高齢者が非常に貧困状態にある」と指摘しました。実際のところ、生活保護を受けている人のうち約半数が高齢者であり、こういう国は珍しいのです。他の国は年金制度が充実しているため、高齢者は生活保護を受けません。
しかし日本では、生活保護受給者の約54%が高齢者です。つまり、年金だけでは生活ができないのです。そのため国連は日本政府に対し、「生活保護制度を整えるとともに、貧困状態を脱却できるよう生活保護に頼らずに済む最低保障年金を創設すべきだ」と勧告しています。
(深田)
確かに、それは一理ありますね。
(伊藤)
65歳以上のすべての人を対象にした最低保障年金という構想があります。65歳になれば、保険料の支払有無にかかわらず最低保障年金として無条件に月額8万円を給付するというものです。いわばベーシックインカムに近い制度です。民主党政権時代にこの制度の導入が検討されたことがありましたが、財源を消費税にしたので、頓挫しました。
しかし、国連からも導入を勧告されています。この制度は、厚生年金保険料を支払っている人にはさらに上乗されます。現在の基礎年金でも、給付の半分は国庫負担によってまかなわれていますから、それを全額税方式に切り替え、もう少し給付額を上げれば、すべての国民が安心できると思います。
何かがあっても、65歳あるいは70歳になれば、これだけの額が確実に税によって保障される。全日本年金者組合の試算によれば、実現には約18兆円が必要とされています。
(深田)
18兆円ですか。
(伊藤)
どう思われますか。やはり難しいでしょうか。考えてみると、18兆円というのは、日本のGDP約600兆円の3%です。現在、日本はアメリカから防衛費をGDPの3%にするように要求されています。これは私の意見ですが、それを年金に回してみてはどうかと思います。
(深田)
先日も、関税を上げてほしくなければ80兆円をアメリカに送るようにと言われました。ひどい話ですよね。
(伊藤)
それだけのお金があれば、最低保障年金を創設できるのではないかと私は考えています。
(深田)
最近、遺族年金が削減されて、女性が受け取れる金額が減るという話を耳にしました。
(伊藤)
まだ実施はされていませんが、法案が通りました。
(深田)
遺族年金が5年の有期給付になるということは、本来であれば約2300万円受け取れるはずが、2000万円減額されるのでしょうか。
(伊藤)
そうです。ただし、女性の場合は20年ほどかけて段階的に移行しますが、男性については2028年頃から適用される予定です。60歳未満の人は5年の有期にするという内容です。それはまるで「死ぬまで働け」と言っているようにも感じます。
(深田)
女性の貧困は、結婚していない、あるいは結婚相手が亡くなられたことをきっかけに始まることが多いと思うのです。
(伊藤)
その通りです。遺族年金は重要なセーフティネットなのです。
(深田)
それが大幅に削減されるとなれば、今後、女性の貧困がさらに増えるのではないかと懸念しています。
(伊藤)
今でも増えていますよね。島根県などの過疎地域は高齢者の割合が高く、高齢者が地域経済を支えています。したがって、年金が減ると消費が落ち込み、地域の経済が回らなくなってしまいます。
(深田)
確かにその通りですね。
(伊藤)
国民全体の所得の2割近くは高齢者なので、年金を増やしたほうが経済効果はあると思います。ところが「賃金を上げろ」と言っても「年金を増やせ」とは誰も言わないのです。
(深田)
確かにそうです。それを言うと、また「財源はどうするのか」という話になってしまいます。
(伊藤)
だから、消費税以外の安定した財源を確保すべきで、新たに富裕税などを設けてもよいのではないかと思います。
(深田)
そうですね。やはり、消費税が上がるたびに所得税や法人税が下がるというのは、大きな矛盾だと思います。
(伊藤)
それらを下げるための穴埋めに消費税が使われているのですよね。
(深田)
結局、自民党に献金を行う大企業や富裕層だけが優遇され、そこから波及して低所得者層や女性が困る社会になっている。そういう構造ですね。
(伊藤)
そうです。加えて、年金積立金というものも存在しており、その額は非常に大きく、現在では500兆円を超えています。
(深田)
えっ、そうなのですか?
(伊藤)
なぜそれを取り崩ないのでしょうか。
(深田)
年金積立金はあるのですか?
(伊藤)
1985年に突然、賦課方式に移行しましたが、それ以前は積立方式でり、その資金が今もあるのです。
(深田)
賦課方式には1985年から変わったのですか。
(伊藤)
そうです。制度が始まった当初はすべて積立方式でした。
(深田)
そうだったのですね。
(伊藤)
厚生年金などには莫大な積立金が残っているのです。本来であれば、それを取り崩して活用すればいいのに、株式投資などに使っています。それはやめてほしいです。
(深田)
その積立金を株価の買い支えに使わっているのですか?
(伊藤)
買い支えというか、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF=Government Pension Investment Fund)が大規模に運用しています。かつてはその資金を使って「グリーンピア○○」のような保養施設を各地に建設していました。鹿児島にも「グリーンピア指宿」がありました。何億円もかけて建設したものが、最終的には数百万円で売却されたのです。それにもかかわらず、誰も責任を取らなかった。
積立金は私たちが支払った保険料なので、きちんと年金給付に還元すべきだと思います。他の賦課方式を採用している国は、年金積立金は半年分も持っていません。日本は年間の年金給付費が約55兆円ですから、500兆円を超える積立金を一部でも取り崩せば、保険料を上げる必要もなく、税金もかかりません。
(深田)
なんと!そんなところに埋蔵金があったのですね。
(伊藤)
埋蔵金です。ただ、GPIFが株式をすべて売却すれば、大パニックになるでしょう。確かGPIFは上場企業の十数社の筆頭株主です。それほど膨大な資金が市場に投入されているのです。私は学生にもこの実態を説明するのですが、皆驚きます。国民の多くはこうした実態を知りません。
高齢者はお金持ちだと思われがちですが、現実には深刻な貧困が広がっています。もちろん裕福な高齢者もいますが、世代を重ねるごとに格差が拡大しているのです。お金のない人の生活は本当に悲惨なものです。
このような低年金の人々を支えるためにも、年金積立金を取り崩すか、あるいは最低保障年金を創設することで、貧困を防ぎ、消費を活性化させ、地域経済を循環させられると私は考えています。しかし、どの政治家もそのような提案をしません。
(深田)
確かに、その通りです。
(伊藤)
もっと年金積立金の取り崩しを検討すべきではないかと思います。
(深田)
そうですね。ありがとうございました。今回は、鹿児島大学教授・伊藤周平先生から『年金問題、実はそこに550兆円を超える埋蔵金があった!』という驚きのお話を伺いました。先生、ありがとうございました。
(伊藤)
ありがとうございました。





