【総裁選特番】首相レースのトップを走るのは小泉か? 宇山卓栄氏が語る予想外の実態とは!#455

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【目次】
00:00 1.オープニング
00:37 2.石破総理辞任の裏事情を読み解く
07:36 3.自民党総裁選に関する諸々の話題
15:34 4.注目の林芳正氏の下馬評
23;23 5.茂木敏充氏の下馬評
29:29 6.小林鷹之氏の下馬評
31:40 7.高市早苗氏の下馬評
32;54 8.小泉進次郎氏の下馬評

(深田)

皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム、プロデューサーの深田萌絵です。

今回は著作家の宇山卓栄先生にお越しいただきました。宇山先生、どうぞよろしくお願いいたします。

(宇山)

よろしくお願いいたします。

(深田)

ついに石破茂首相が辞任することになりました。

(宇山)

これから総裁選が始まるという、タイミングですね。

(深田)

どうご覧になりますか。

(宇山)

石破氏の辞任について感想を述べると、最後の最後まで非常に厚かましかったという印象です。

(深田)

私も、辞めるのか辞めないのか、はっきりしてほしかったです。辞めるならもっと潔く辞めるべきですし、辞めないのであれば、自民党が滅びるまで引っ張るべきだと感じました。

(宇山)

その通りです。『破れかぶれ解散』をしてくれた方が、良かったのです。中途半端に撤退するのではなく「俺は衆議院を解散して国民に信を問う」とやりたかったのですから。

(深田)

私は、自爆すると思っていました。

(宇山)

私も同じ思いで、本当に期待していたのですが、結局は腰が砕けて辞任になってしまいました。

(深田)

私が一番不思議に思うのは、菅義偉元首相の時も今回の石破氏も「なぜ小泉進次郎氏に説得されるのか」という点で、これは謎ですよね。

(宇山)

深田さんは石破氏が小泉氏に説得されたと考えますか?

(深田)

説得されたわけではないと思います。しかし、なぜ小泉氏がきっかけとなり、キーパーソンとして振る舞えるのか、それが非常に不思議なのです。

(宇山)

確かに小泉氏は出しゃばりです。ただ、私の見方は少し違います。石破氏が小泉氏と菅氏に引導を渡されたわけではありません。9月6日に正式に表明しましたが、その前日には石破氏の辞意はすでに固まっていたと考えています。

さらに遡れば、9月3日の閣議で、石破氏は「自分は解散をしたい」と閣僚たちに諮っていました。その時「もし自分が解散権を行使したら、あなた方はついてきてくれるか」と問いかけているのです。この時点ではまだ解散を前提に構想していたのです。加えて、総裁選の前倒しを求める署名活動についても、過半数に届かないよう封じ込められると目算を立てていたのではないかと私は見ています。

(深田)

そうですね。間際になって署名が過半数を超えたのではないかと私も感じています。

(宇山)

おそらく、それが9月5日だったと思います。その日に雪崩を打って過半数超えの署名が集まり「これではもう勝ち目がない」と石破氏も観念したと思います。それまでは、徹底的に脅しをかけていました。当時、森山裕幹事長ら執行部と結託して「自分は解散を打つぞ」と繰り返していました。石破氏は小泉純一郎氏のように総裁選の前倒し署名を突きつけてきた者には刺客を立て、公認を取り消す」といった強い脅しを示し続けていました。石破氏はそれが効果を持つと考えていたのです。

しかし、やはり政治家というのは、最終的にはファイターだと私は思います。あのように脅し続けられると「自分たちをそこまで愚弄するのか」と自民党議員の間に反発心が一気に燃え上がったのです。私はこれが実態だと考えています。森山氏らは「脅せば屈する」と思い込み、まだ勝てると踏んでいたからこそ、石破氏は粘り続けていたのです。

最終的には情勢が逆転し、辞任に追い込まれました。ところが辞任会見では「後進に道を譲りたい」と述べた。何を言っているのか!というのが率直な感想です。「署名を叩きつけるなら公認を出さない」と直前まで仲間を脅し続けいたわけですから。それが、署名が集まり、自分が大恥をかく状況に陥ったため、腰砕けになって撤退したにすぎません。それを「関税協議がまとまった。後進に道を譲りたい」とはどの口が言うのか、厚かましいにもほどがあります。

(深田)

厚かましい性格は分かっていたので、その姿勢を貫き通すべきだったと思います。中途半端です。「普通にやめるな。自爆テロをやれ」と言いたいのです。

(宇山)

いずれ辞めるなら道連れを作るのが、石破氏らしさではないでしょうか。

(深田)

そうなのです。「後ろから撃て」と。

(宇山)

後ろから撃つのが「石破らしさ」です。本人も「石破らしさが出なくて残念だ」と語っていたので、最後の最後でそれを実行してくれれば良かったのです。

(深田)

本当にそう思います。記者会見で「解散します」と宣言してくれたらよかったのです。

(宇山)

そうすれば、こんな茶番のような総裁選は必要がなかったのです。今回の総裁選は本当にくだらないものだと思います。

(深田)

なぜ石破氏は「解散する」と言わなかったと思われますか?

(宇山)

やはり、それを実行すれば「自民党を壊した張本人」として末代まで祟られることを恐れたのでしょう。

(深田)

むしろ歴史に名を残せたはずです。

(宇山)

そうです。悪名であっても轟かせればよい。それこそ石破氏らしさではないでしょうか。

(深田)

私も、期待していて、そこまでやれば逆に尊敬したと思います。

(宇山)

あれだけ脅していたのですから、解散するのではないかと思いましたよ。

(深田)

私もそう思っていました。普通に辞めてしまった瞬間に肩透かしを食らって、拍子抜けしました。

(宇山)

小泉氏と菅氏が「鈴をつけに行った」と言われていますが、石破氏は、他人の言葉を素直に聞いて「そうですね、では辞任します」と応じるような人間ではありません。あの時点で「このままでは大恥をかく」と判断し、尻込みして逃げたにすぎないと思います。

(深田)

では、今後の派閥の動向はどのようになるのでしょうか?

(宇山)

総裁選と派閥の動きについて、先週も永田町関係者に聞きましたが、全体の感触としては、小泉氏が優勢だと見ています。

(深田)

そうなんですか?ニュースでは高市早苗氏を推す声が強いので、高市氏の方が優勢なのかと思っていました。

(宇山)

私は高市氏ではないと考えます。現時点で投開票を行えば、小泉氏が優位に立つだろうと思います。

(深田)

公明党が影響しているのでしょうか?

(宇山)

その通りです。高市氏では公明党が支持しないのです。つい先日、公明党の斉藤鉄夫代表が「組む相手は保守中道・リベラルでなければならない」と発言しました。これは「高市氏ではダメだ、極右は受け入れられない」というメッセージにほかなりません。

しかし、私から公明党に「なぜ責任を取らないのか!」と申し上げたい。直近の参院選では、14議席から8議席とほぼ半減し、比例票も720万票から520万票へと200万票も減らしました。これは明らかな大敗北です。その責任を誰が取ったのか?石破氏でさえ、曲がりなりにも辞任という形で責任を示しました。なぜ公明党は誰も責任を取らないのでしょうか?

(深田)

長井秀和さん(元創価学会、宗教2世)の責任ということにしているのかもしれませんね(笑)。彼は創価学会から仏敵とされていますから。

(宇山)

まず、自らの責任をしっかりと総括して、他党を論ぜよということです。一方で、自民党としては今後、解散総選挙の可能性がある中で、公明党との連携は常に視野に入れざるを得ません。そのため、高市氏には議員票が集まりにくい状況にあると考えられます。

(深田)

結局、自民党の議員や候補者にすると、確実に票読みができる創価学会・公明党の支援がないと当選できない。いくら参政党ブームがあっても、それだけで救われるわけではない。その計算が大きく働いているのでしょうか?

(宇山)

おっしゃる通りです。公明党は衰えたとはいえ、各小選挙区で2万から3万票の固い支持を持っています。この「下駄」を履かせてもらえるかどうかで、当落が大きく左右されるのです。そのような中で今週注目されたのは、加藤勝信氏が小泉陣営の選挙対策本部長に就任したというニュースです。

(深田)

あれには義姉の加藤康子さんが激怒していますよ。彼女は高市氏推しですから、かなり憤慨しています。

(宇山)

そうでしょう。加藤康子さんと深田さんは親交も深いですからね。きっと加藤康子さんも涙を流されているのではないでしょうか。もともと加藤氏は経世会(旧竹下派)の出身です。その人物が小泉氏を支援する必然性は全くないわけです。では、なぜ彼があのような形で小泉陣営に入ったのか、誰が糸を引いて彼を引き込んだのか。私はそこに注目しています。

(深田)

萩生田光一氏ですか?

(宇山)

萩生田氏ではないと思います。

(深田)

しかし、萩生田氏、加藤氏、武田良太氏の三人は、いつも行動を共にしていますよね。

(宇山)

確かに萩生田氏たちと行動を共にしていますが、彼にそこまでの力はないと考えます。加藤氏はこれまで官房長官をはじめ、現在は財務大臣を務めるなど、主要な閣僚ポストをほぼ経験しています。したがって、これ以上の閣僚ポストを提示されても動く理由はないのです。

おそらく、自民党幹事長のポストを約束されて、わざわざ派閥を超えて小泉陣営に身を投じたのだろうと思います。そして、それを仕掛けた人物は、菅氏以外に考えられません。こうした芸当ができるのは、菅氏しかいません。

(深田)

菅さんはやはりすごいですからね。

(宇山)

やはり小泉氏を後継者として据えたいのでしょう。ただし、加藤氏が選対本部長になっても、多くの人を引きつけられるかといえば、そうではありません。

(深田)

加藤氏は典型的な算盤を弾くエリートという印象です。

(宇山)

元財務官僚ですからね。

(深田)

人を惹きつけるような魅力に欠けています。

(宇山)

おっしゃる通りです。前回の総裁選でも、ようやく推薦人を20人集めたものの、投票では16票しか得られず、4人に「勝つカレー」を食い逃げされました。それほど人望に欠けていたわけです。ただし、人柄としてはとても良いです。

(深田)

私もそう思います。非常に良い方だと伺っています。

(宇山)

彼は自分を前面に押し出すタイプではありません。その加藤氏があえて選対本部長を引き受けたのは「次は自分が総理総裁になる」という野心を持っているからでしょう。ああいう穏やかな人物でも、やはり政治家です。「次こそは必ず」という思いで、火中の栗を拾いに行っているのだと思います。

(深田)

そもそも政治家になるために、婚約者だったお姉さんから妹に乗り換えて平然と結婚できるという神経自体がまともではないと思います。

(宇山)

加藤六月氏の娘婿になりたかったのでしょう。

(深田)

出世のためなら手段を選ばないということですね。もし加藤氏が首相になったら、その件は必ず海外メディアで取り上げられ、ネガティブに報じられると思います。

(宇山)

私もその点は問題だと思います。一方で、彼は調整役として動き、すでに各方面へ積極的に連絡を取り、小泉陣営の取りまとめ役を担っています。

(深田)

確かに働き者ではありますよね。エリートらしい実務能力もあると思います。

(宇山)

その通りです。実務能力が高く、調整力があります。河野太郎氏も早速「小泉陣営に加わる」と表明しました。三原じゅん子氏も小泉陣営に加わる動きを見せています。その結果、陣営は一気に広がりを見せている点が要注意です。とはいえ、小泉氏が独走しているかといえば、必ずしもそうではありません。私が注目しているのは林芳正氏の動きです。彼には着実に支持の広がりが見られ、先週の取材でもその感触を得ました。

(深田)

確かに、林氏は頭が良くバランス感覚に優れているので「こちらの方が安心できる」と考える人が一定数いるとよく聞きますね。

(宇山)

林芳正氏には安定感があります。林氏は官房長官として石破政権を崩壊させた張本人であり、その前の岸田政権でも官房長官として政権を潰した当事者です。当初私は、林氏が「自分も次は出る」と表明した際には、そのような人物が手を挙げても、周囲がついてくるはずがない」と考えていました。

ところが、先週の中頃からどうもそうではないという空気が一気に広がってきたのです。林氏が所属する旧岸田派の中で「林芳正支持で固まろう」という動きが急速に広がってきています。例えば、今週16日火曜日には宏池会所属の松山政司参議院議員会長が、早々と林氏支持を打ち出しました。松山会長自身に力はありませんが、参議院議員の取りまとめ役として一定の影響力を持っているのは確かです。

こうした状況の中で、旧岸田派の議員が次々と林支持を表明しているので、大将の岸田氏がどう動くのか注目されます。私は、岸田氏は最終的に林氏に乗らざるを得ない可能性が高いと見ています。もっとも、旧岸田派内部では林氏と岸田氏は犬猿の仲でもあります。

(深田)

そうなんですか?

(宇山)

派閥の覇権を争う間柄であり、決して仲が良いわけではありません。とはいえ、私は両者が同じ仲間だと見ています。その証拠となる事例があります。

4年前の総選挙前に、林氏が山口3区の河村建夫氏の選挙区に殴り込みをかけました。当時、林氏は参議院議員でしたが、衆議院に鞍替えするために「無所属でも出る」と宣言し、河村氏の地盤に挑戦したのです。その時、二階俊博幹事長が激怒して河村氏を全面的に支援し「林芳正を許さない」と大きな対立が生じ、山口県では激しい争いとなったのです。

しかし最終的に、岸田氏が総理総裁に選ばれると、河村氏は降ろされ、林氏が自民党の公認を得て、すんなり決着しました。この経緯からも、岸田氏と林氏の間には昔から気脈が通じており、連携してきたことが分かります。実際、岸田改造内閣で松野博一官房長官が退任した際、岸田氏がすぐに引き上げたのは林氏でした。こうした事実から考えても、岸田氏が林氏に乗れば、一定の規模を持つ林勢力が成立するのです。さらに他の派閥もこれに合流する可能性があります。例えば、石破グループが加わる可能性です。

(深田)

なるほど、それは十分に考えられますね。

(宇山)

実際、石破氏は9月6日に小泉氏と菅氏が官邸を訪れた際、菅氏は早々に退席しましたが、その後1時間にわたり小泉氏と会談しました。その後の記者会見で、石破氏は菅氏を「さすがの人材だ」と称賛した一方、小泉氏については一言も良い評価を口にしませんでした。私はこの発言を聞き、「石破氏と小泉氏の間には深い溝がある」と確信しました。

さらに、石破氏としては、現在官房長官を務める林氏が「石破・岸田体制を引き継ぐ」と発言したことに注目しています。石破氏自身は必ずしも望んでいないかもしれませんが、その言葉が示す通り、石破グループ=旧水月会は林氏に合流する可能性が高いのです。そうなれば、勢力は一気に拡大し、他派閥をも呼び込むことになるでしょう。

そして石破氏が動けば、森山派も連動して動くことになります。おおむね森山派と二階派は行動を共にしています。ただ、二階派は空中分解しており、実態はほとんどありません。二階氏も引退し、事務局長を務めていた武田良太氏も落選していて、求心力はまったくないのです。それを一時的に森山氏が二階派を預かり、森山派と二階派を合わせるとおよそ30人程度の勢力になります。もしこの執行部寄りのグループが林芳正氏に流れることになれば、さらに大きな勢力を形成することになります。

ですから、小泉氏が議員票で独走しているという状況ではないのです。

(深田)

確かに、普通にディベートをすれば小泉進次郎氏は厳しく、林氏の方が圧勝すると思います。私も8月、9月にさまざまな方から話を聞きましたが、党内での信頼は林氏の方が厚いという印象を受けました。小泉進次郎氏は確かに面白いのですが、それと仕事ができるかどうかは別問題ですよね。

(宇山)

その通りです。「客寄せパンダで良いのか」という心理が議員の中で働いていると思います。ただし、小泉氏を敬遠する理由は「お調子者だから」といった表層的なものではありません。

多くの議員は自分のポストを強く意識しているのです。小泉氏が総裁になれば世代交代が一気に進み、5期・6期を超える中堅以上で閣僚ポストを狙っている層は「自分の芽がなくなる」と危惧します。そのため「自分は林氏を支持する」と考える議員が一定数出てくるわけです。

その他の候補にも触れておきますが、茂木敏充氏については可能性がありません。

(深田)

なぜ茂木氏はダメなのですか?

(宇山)

まず茂木氏は、自身の派閥をまとめきれていません。旧竹下派(経世会)は自民党最強の武闘派と呼ばれてきた派閥組織ですが、その内部を統率できていないのです。その証拠に、加藤勝信氏が早々に小泉陣営に合流し、小渕優子氏も派閥を離れました。ついこの間までは、小渕氏自身が総裁選に出馬するという話さえありました。

さらに茂木氏に関しては面白い話があります。昨日、彼がスーパーマーケットを訪れて物価調査らしき行動をとり、庶民派をアピールするという出来事がありました。

(深田)

あれは最悪でしたね。運転手付きの黒塗りの車で乗り付けて買い物をし、持ち帰る袋は付き人が持つという。そんな人物がスーパーで買い物をするはずがないでしょう。かえって神経を逆なでするだけです。

(宇山)

おっしゃる通りです。専業主夫の私からも言わせていただくと、茂木氏はその際に「中国産の玉ねぎ4個で200円、国産は300円です。知らなかった、勉強になりました」と発言しました。そんな基本的なことすら知らないのか、という話です。私は玉ねぎやほうれん草といった野菜の価格の動きは日々頭に入っています。おそらく現在の自民党議員の多くは、茂木氏に限らず、ほうれん草や牛乳、卵の値段すら把握していないのではないでしょうか。

(深田)

秋刀魚の値段なんて、もっと深刻ですよ。2週間ほど前にスーパーで見たら880円でした。

(宇山)

それはまだ安い方です。今では1000円近くします。

(深田)

子どもの頃は100円もしませんでしたよね。今や高級魚ですよ。

(宇山)

まさにそうです。庶民には手が届かなくなっています。

(深田)

庶民は今、一体何を食べればよいのでしょうか。

(宇山)

この夏休みでも、電車に乗っている小学生の体格を見ると、皆痩せ細ってきており、2、3年前とはまったく違います。家庭では米も十分に食べさせられない状況なのです。子育て世代は、この異常な物価高の中で苦しんでいます。

そうした中で茂木氏のような人物がスーパーに行って「玉ねぎの値段も知りません」と言う。さらに、今おっしゃったように「袋はいりますか?」と聞かれて「はい、ください」と即答する。普通であれば、我々庶民は袋代の3円、5円を節約するために自分の袋を持ち歩いています。私も常に袋を携帯し、買い物の際にはすぐに取り出して使っています。

専業主婦の方々も、私のような専業主夫も同じように日々節約の努力をしているのです。それを「レジ袋をください」と言って、人に持たせる。そういう人が庶民の暮らしを理解できるはずがないです。

(深田)

本当にそうですよね。運転手や召使いに買い物をさせて、それを持たせるわけですから「結局あなたは見ていただけでしょう」ということですよ。

(宇山)

その通りです。庶民の傷口に塩を塗るような行為であり、本当に怒り心頭です。

(深田)

私は、あれを素でやっていること自体が逆に面白いと感じました。まともなお付きの人がいれば、「やめておきましょう」と止めるはずですよね。

(宇山)

まさにその通りです。怖い話ですよ。冗談抜きで、こうした感覚は政治全般に影響を及ぼします。庶民から大きなブーイングや顰蹙を買う行動を日頃から諫めてくれる人が周囲にいないのです。だから、もしそういう人物が総理になったとしても、結局は誰もアドバイスをしない環境に陥るということなのです。

(深田)

萩生田氏も、やたら八王子の地元でラーメンを食べている写真を頻繁にアップしていますが、あれはいったい何の庶民派アピールなのかと思います。料亭で50万、100万も使った伝票がネットに出回っているのに、それを打ち消すかのようにラーメン屋に通い、その姿を公開しているのは、見苦しいだけです。

(宇山)

その通りです。萩生田氏もそういう意味では感覚がずれています。自民党の大判をどんと押しつけ、「この自民党の家紋が目に入らぬか」と送りつけてくるではありませんか。普通であれば、「そんなことをすれば問題になりますから、やめておきましょう」と諫める人が周囲にいなければおかしいはずです。

(深田)

そうですよ。深田萌絵なんかにそんな手紙を送ったら、すぐに晒されますよ。

(宇山)

一般的にはそういう感覚があるのですが、彼らにはそれがないから自民党なのです。

(深田)

だからこそ自民党なのです。

(宇山)

これが「ザ・自民党」です。彼らは常に庶民感覚から遊離した世界に生きている。だから私は、この総裁選を「茶番」と言うのです。

(深田)

誰が総裁になろうと、結局は「いつもの自民党」なのです。

(宇山)

その通りです。最後に触れるのは候補者の小林鷹之氏です。彼もまた浮世離れしています。石破降ろしの局面で、彼はこう発言しました。「自分は総裁を引きずり下ろすようなことはしません。それは格好の悪い恥であり、党内分断を招くからです。だから私は言いません。石破さんご本人が自主的に退陣してくれることを待ちます」と。

実際には、石破氏が自主的に退陣しなかったからこそ、ここまでの騒動に発展したわけです。それを「自分は何も言いません」と優等生答弁で済ませるのは、戦う意志がまるでない証拠です。

(深田)

彼は「お膳立てされて乗っているだけ」という印象が強く伝わってきます。

(宇山)

そうでしょう。まさにお坊ちゃまの優等生答弁にすぎません。こんな人物が総理総裁になったところで、自ら火中の栗を拾い「自分がやり遂げる」と奮い立つような覚悟は見えません。

(深田)

まるで『偏差値が高いだけの小泉進次郎氏』ですね。

(宇山)

その通りです。良い表現です。私も同感です。もし本当に小林氏が戦略家であるならば、「自分はまだ若い。だから今回は高市氏を支援し、その選対本部長を務めて力を蓄え、次の機会を待つ」と言った方が、自らの評価を一気に高められるはずです。何もあのような場に出て、保守層の分断を招くようなことをしなくても良いと思います。

(深田)

私は小林鷹之氏を動かしている人物が誰なのか分かりませんが、役割としては小泉進次郎氏への牽制球なのではないかと感じています。若くて見栄えのする人物に票を入れるという観点で考えたとき、「小泉氏よりも頭が良い人がいる」と思わせる存在が出てくれば、一定の支持を剥がせる。そういう計算で立てているのではないか、と考えるのです。

(宇山)

それも一因としてあるでしょう。あるいは保守票を高市氏から奪う狙いもあるかもしれません。ただ、私はやはり保守の動きという観点からは高市氏に注目しています。しかし最初に申し上げておきたいのは、私は高市氏を政治家として評価していない、という点です。

(深田)

それはどのような点で、政治家として評価できないとお考えなのでしょうか?

(宇山)

彼女はやはり政治家ではないのです。学者肌で政策通ではあるでしょう。確かに相当な勉強はしているかもしれません。しかし、それだけでは政治は動かないのです。永田町は、ひがみややっかみの世界です。仁義を通し、きちんと挨拶を重ねなければ次にはつながりません。先の総裁選でも、高市氏は十分に支援を受けた方々への挨拶回りをしていなかったと聞いています。「あれだけ応援してやったのに、自分のところには何のお礼もないではないか」と不満を漏らす人が多くいたのです。

(深田)

やはりその点は、小泉氏の方がうまく立ち回っていますね。彼は可愛らしさを演出できますから。

(宇山)

その通りです。小泉氏は、頭が弱いかもしれませんが、マメに動き、根っからの政治家です。

(深田)

いえ、人間として頭はいいと思います。どうすれば自分が人に好かれるのか、そこだけは理解しているのです。その点で小林鷹之氏は弱い。頭の良さは、一般の人々から妬まれて、好かれにくい。小泉氏が好かれるのは、おバカなので安心感につながっているからです。

政治家として考えると、自分より頭が良い人や政策に詳しい人は、自分の政策をはめ込めないのです。その点、小泉進次郎氏はどこか抜けているので「では自分の政策をここにお願いします」といった形ではめ込みやすく、操りやすいと見られているのだと思います。

(宇山)

ひがみややっかみの世界で『彼なら操れる』と考える爺たちがたくさんいる。いわば“爺殺し”なのです。

(深田)

私も“爺殺し”だと思います。

(宇山)

彼は本当によく動き回っています。さまざまなところに顔を出している。一方で高市氏には、そのようなマメさがないのです。

(深田)

恐らく可愛げがないのでしょう。昨年の総裁選では、石破氏と高市氏は右と左で全く違う主張をしているように見えましたが、人間としては「金に細かい、お礼を言わない、飲み会に顔を出さない」といった、人間味の薄さが共通しているように思えます。

(宇山)

その通りです。「可愛げのなさ」は、昨日の出馬表明の記者会見での様子に象徴的に表れていました。高市氏はにやりと笑みを浮かべていましたが、本来は“戦”を宣言する場面であり、より真剣な面持ちで臨むべきです。彼女には上位者に媚びるようなところがあり、その人間性が透けて見えるため、支持の広がりに欠けます。とはいえ、党員・党友票に目を向ければ保守層が依然として多く残っており、その点で高市氏はやはり圧倒的に強いと考えます。

(深田)

そう思いますね。

(宇山)

私が繰り返し申し上げているように、高市氏には政治家としての器量がありません。もう一つその理由を挙げれば、先月8月8日の自民党両院議員総会での態度です。あの場で高市氏は一切発言をしませんでした。

石破氏が続投を表明した場こそ、真っ先に手を挙げて「私は先の総裁選で石破総理と一騎打ちを戦った。他の者は黙って、まず私に発言させろ」と言うべきでした。そして「石破さん、あなたは責任を取って辞任せよ!」と、堂々とみんなの前で戦う姿勢を示すべきだったのです。ところが実際には何も言わなかった。『ここで戦わずにいつ戦うのか!』という局面で、彼女はいつも黙るのです。

これでは政局感も戦略感も欠如していると言わざるを得ません。結局のところ、優れたブレーンにも恵まれていない。そうした意味で、私は彼女が宰相の器にふさわしい人物だとは思えないのです。私は高市氏を評価していないし、高市氏が総裁になったからといって、自民党が変わるとは寸分たりとも思いません。それでも、小泉進次郎氏が総裁になれば、女系天皇に道を開かれる可能性があり、夫婦別姓が導入される可能性があり、日本の国体の屋台骨が崩される危険性があるのです。

(深田)

多分、高市氏でもそのあたりは崩れるのではないでしょうか。彼女は発言では立派なことを言いますが、いざ決議や投票の時には逆の行動を取っています。

(宇山)

その通りです。戦っていないのです。LGBT理解増進法の時もそうでした。

(深田)

だから彼女も“いつもの自民党路線”です。小泉進次郎氏の場合も、おそらく“いつもの自民党”だと思います。そう考えると、国民にとって一番ましなのは林氏なのかもしれませんね。

(宇山)

その通りです。ただし、林氏についても女系天皇を容認する方向に進む可能性があり、夫婦別姓にも肯定的な立場を取る恐れがあります。旧岸田派の性格を踏まえれば、その懸念は拭えません。一方で高市氏は、深田さんがおっしゃるように言葉の上では「ストップする」と明言しています。実際に守られるかは別問題としても、その点に一定の意義はあるのかもしれません。しかし、私自身は大きな期待は抱いていません。

おそらくこの動画をご覧の方々の多くも同様かと思いますが、高市氏が中途半端に総裁となって自民党の延命につながるくらいならば、いっそ小泉進次郎氏が総裁に就いて自爆し、その反動で政界再編が一気に進み、総入れ替えに近い破壊的・革命的な事態が起きた方が、結果としてすっきりする、そのような見方も成り立つのです。

(深田)

でも、多分高市氏が総裁になれば公明党が連立から外れて、また違う展開になるかもしれませんね。

(宇山)

おっしゃる通りです。その可能性はあります。

(深田)

そうすると、高市氏が率いる右派の自民党に、参政党や維新・国民のいずれかが加わり、右派的な連立が形成される一方で、左派の野党連合が対抗するという、疑似的な二大政党制のような構図になる可能性もありますよね。

(宇山)

その可能性は十分にあります。そうなると、また大きな混乱が起きて政界がシャッフルされるでしょう。その際に、どのような連携の可能性が生まれるのかという点については、次回お話ししたいと思います。

(深田)

ぜひ次回お願いします。今回は、著作家の宇山卓栄先生に、自民党をめぐる非常に面白いお話を伺いました。ありがとうございました。

(宇山)

ありがとうございました。

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