#443 税法専門弁護士が明かす驚愕の事実。飲み代が経費にならないのは原発のためだった!? 三木義一氏×深田萌絵

(深田)

みなさん、こんにちは。政経プラットフォーム・プロデューサーの深田萌絵です。

今回は、税務を専門とされる弁護士の三木義一先生にお越しいただきました。先生、よろしくお願いいたします。

(三木)

よろしくお願いします。

(深田)

先生のご著書『まさかの税金』を拝読しました。その中で、税金のおかげで原子力発電所が建設されたという記述がありました。つまり、政府が「企業の交際費を(損金として)認めないことにして、そこに課税して、原発を作ろう」と判断したということですね。

(三木)

昭和29年のことで、さまざまな資料を読むと、どうも不自然な点がある。当時を知る税理士に聞くと、交際費課税の背景には、中曽根康弘元首相が「これから日本は原発だ。原発を建設しなければならない」と主張し、大蔵省(現・財務省)に原発の調査費を強引に捻出させたようです。そのような予算はなかったから、当時の大蔵省の担当者は本当に慌てたようです。一方、企業は朝鮮特需で潤っており、多くの人が銀座で交際費を使って遊んでいました。

(深田)

当時の銀座の交際費はかなり高額だったのでしょうね。

(三木)

そうです。そのような支出を『冗費』つまり無駄な費用だと位置づけたのです。「企業がこのような費用を計上している場合ではなく、資本を蓄積し、日本社会を強くしていくべきだ」という考えです。

(深田)

しかし、銀座でお金を使えば、そのお金が流通して日本社会が潤いますよ。

(三木)

私もそう思います。街が元気になるのは良いことです。しかし当時の公式見解は『冗費節約』であり、これを認めると資本が蓄積できないといって昭和29年に交際費は原則として損金に算入できない、つまり費用として認めないという制度が導入されたのです。

(深田)

原則ということですか?でも、上限はありますが、現在も交際費は使われていますよね。

(三木)

原則として今でも損金には算入できません。ただし、一人あたり1回に1万円以下の場合は会議費として処理できることになっています。

(深田)

1万円以下なら会議費、1万円を超えると交際費になるのではないですか? 

(三木)

交際費は損金にはならない、つまり費用として認められません。

(深田)

ただ、中小企業の場合は600万円までは認められていますよね。実際に600万円も使わないですが。

(三木)

確かにその特例はあります。しかし基本的には「交際費は損金として認めない」ということになっています。

(深田)

大企業についても同じなのですか?

(三木)

もちろん同じです。大企業の場合、一人あたり1万円以上の交際費は損金にできません。当時の論理は冗費節約というものでした。しかし、なぜ交際費を規制する必要があるのか疑問です。企業活動で取引先との打ち合わせなどに費用がかかるのは当然です。「交際費がだめだ」という発想がおかしいのです。本来、交際費は事業のための必要経費の一部です。

(深田)

以前の勤務先では、交際費をかなり使っていて、損金に算入できると思っていました。

(三木)

原則として損金不算入で、中小企業のみ、特例として一定額まで認められています。

(深田)

では大企業は基本的にNGなのですね。

(三木)

はい。その後少しずつ緩和されてきました。麻生太郎元首相が交際費の制限を緩和するように指示して、5000円までならば非課税が認められるようになりました。その後(2024年度)の改正で、現在は上限が1万円となっています。

(深田)

つまり、1万円以下は会議費(非課税)で、1万円を超えるものは交際費(課税)という区分になったのですね。

(三木)

その通りです。今でも原則として交際費は損金にできません。それが果たして妥当なのか、私は疑問を持っています。

(深田)

企業会計上は当然、交際費も経費に含まれますが、あれは損金には入っていないのですか?

(三木)

入りません。租税特別措置法という法律で、企業会計では費用と認められても、法人税の計算上は損金として扱えないのです。

(深田)

そうだったのですか⁉損金には含まれていなかったのですか。

(三木)

はい。昭和29年からそのようになっています。そのため、企業は交際費で処理すると課税されるので、交際費にならないように工夫をするのです。

(深田)

全く理解していませんでした。

(三木)

例えば、従業員全員を対象にした催しに会社が費用を出す場合は福利厚生費として認められます。しかし、取引先と豪華に飲食をすると、それは交際費となり損金には算入できません。

(深田)

交際費になると損金にできないのですね。

(三木)

真面目な人たちの多くは「交際費を経費として認めると、企業が銀座などで従業員を遊ばせて、利益が減るので良くない」という考えが強かったのです。しかし、交際費を使って利益がなくなる企業であれば、結局は淘汰されます。

(深田)

少し余裕があるからこそ食事を共にし、美味しいものを味わって親交を深めることができますよね。

(三木)

それが次への活力になるのです。企業活動で交際費を支出することは悪いことではありません。それが、昭和29年当時は政策目的として「原発の研究費を拠出する」という要請があったのです。中曽根さんが大蔵省に強く迫り、大蔵省も困った末に「交際費を削ればよい」という発想が出てきました。いわば「原発の火を灯すために、銀座の灯を消そう」としたわけです。

(深田)

その頃、中曽根さんはまだ首相ではなかったですよね?

(三木)

その頃は有力な国会議員の一人でした。私自身は直接資料で確認したわけではありませんが、当時を知る税理士からは「大蔵省の担当者が『銀座の灯を消して原発の火を灯そう』と言っていた」とよく聞きました。事実、翌年から原発関連の予算がついています。

(深田)

そうだったのですね。しかし、交際費は悪いことではないですよね。

(三木)

その通りです。昭和29年から「交際費はだめだ」という方針が続いてきましたが、そろそろ見直してもよいのではないでしょうか。企業が交際費を使うことは悪いことではありません。交際費について社長が一人で食事をして、それを交際費にしたケースがあります。

(深田)

そうなんですか?それは誰との交際なのですか?

(三木)

裁判例を見ると、交際費とは取引先との飲食であり、社長一人の食事は役員報酬として処理されるべきでしょう。

(深田)

「守護霊と飲んでいたから交際費だ」などというのは認められるのですか?(笑)

(三木)

役員報酬を否認すると、会社の経理や源泉徴収をすべてやり直さなければなりません。しかし交際費として損金に入れなければ簡単に済みます。そのため、これまではその方向で処理されることが多かったのです。

私が皆さんに申し上げたいのは、昭和29年から続いている「交際費は原則として損金にできない」という発想を、そろそろ見直すべきではないかということです。交際費は原則損金算入にして、よほど不当な場合のみ制限すればよいのです。むしろ、原発の火を灯すために交際費を削った過去の発想を改め、銀座の灯を再び灯すべきです。

(深田)

原発の火を消して銀座の灯を灯す。樋口英明元裁判官が喜びそうなお話です。今度、うちの交際費で樋口先生と3人で飲みに行きましょう(笑)。

ところで、三木先生は裁判で交際費を非課税として認めさせたこともあると伺いました。

(三木)

問題なのは「福利厚生費か交際費か」という区別です。福利厚生費であれば損金算入が認められます。福利厚生費とは従業員の福利に資するものであり、通常の費用を超えてはならないとされています。

(深田)

通常の費用とは具体的に何ですか。

(三木)

そこが問題なのです。少し高級な場所で行えば、すぐに交際費と判断されるのです。

(深田)

例えば、1人1万円を超えれば交際費ということですか?

(三木)

そうした場合もあります。例えば、海外旅行に従業員を連れて行きたくても、工場を止めるわけにはいかない会社では実現できません。その代わりに全従業員を1か所に集め、有名歌手を呼んで豪華な食事を提供することができます。その際、一人当たり2万円程度かかると、税務署の調査官が「これは普通よりも高いので、交際費だ」と判断して課税しようとした例があるのです。

(深田)

何とも悪辣ですね。

(三木)

交際費そのものを否定する発想にも問題がありますが、従業員への支出は本来交際費ではありません。しかし、取引先などが入ると交際費として否認されるのです。さらに福利厚生費であっても「高額すぎる」と言われることもあります。つまり「普段、従業員が近所の焼鳥屋で飲む程度の金額でなければ福利厚生と認めない」というのが従来の実務でした。

(深田)

会社の近所の焼鳥屋に個人の小遣いで行く程度の値段でないと、福利厚生として認められないのですか⁉

(三木)

その通りです。そのような発想はおかしいでしょう。福利厚生とは、普段体験できない非日常を味わうことで「また頑張ろう」と思えるようにするものです。

(深田)

そうですよね。

(三木)

全員が集まって、美味しい料理を食べて、歌の上手な有名歌手を呼んで盛り上がる。そして「明日も頑張ろう」と従業員達が思う。これは立派な福利厚生です。

(深田)

近所の焼鳥屋で飲むだけではモチベーションは上がりませんね。

(三木)

ある裁判でそのように主張したところ、裁判官も「確かにそうだ」と納得しました。「非日常的な体験をさせることが大事であり、それは福利厚生である」と認められ、交際費課税が取り消された事例もあります。

(深田)

判例として「1人2万円までは福利厚生になる」と素晴らしいものを勝ち取りましたね。

(三木)

ケースごとに異なりますが「交際費はだめ」という制度を、そろそろ改めるべき時期だと思います。

(深田)

ぜひ変えてほしいです。

(三木)

ただ、自民党はどうしても財務省の方針で動くので、別の発想を持つ政権党が政権を取って、財務省の古い発想を抑え込んでほしいです。

昭和40年代には「一億総中流」と言われました。当時は「総中流」と日本社会を揶揄されることがありましたが、今振り返れば日本の格差は拡大してきたとはいえ、アメリカやヨーロッパと比べればまだまともです。

(深田)

そうですね。

(三木)

だからこそ、中流層を増やす政治を行ってほしいのです。右でも左でも構いません。「みんなが中流として、仲良く暮らせる日本社会をつくりましょう」と訴える政党が来年、大きく躍進してほしいと願っています。

(深田)

それはぜひ「萌絵党」に任せていただきたいです。私は中道下翼であり、常に思想はミドルで庶民に寄り添う政策を考えています。

(三木)

「日本中流党」のような政党が現れてほしいですね。野党の中では、立憲民主党の一部議員にはそのような思想があると感じますが、どうしても偏りが見られます。

(深田)

原発には反対でも、増税には賛成なのですよ。

(三木)

税金は国のためというより、社会のために必要なものを守るための発想です。手堅いのですが、もう少し明るく取り組んでほしい。明るい野党をつくり、日本社会を良くしていきましょう。そして中流層を拡大する政策を打ち出してほしいのです。

(深田)

交際費をぜひ損金算入できるようにしていただきたいと思います。

今回は税務専門の弁護士、三木義一先生にお越しいただきました。先生、ありがとうございました。

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