#429 怒り爆発の原発裁判!電力会社「原発だけ地震は来ない」根拠レス証言に裁判長唖然!? 樋口英明氏×深⽥萌絵

(深田)

皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム・プロデューサーの深田萌絵です。

今回は、元裁判長で『司法が原発を止める』の著者である樋口英明さんにお越しいただきました。樋口先生、どうぞよろしくお願いいたします。

(樋口)

よろしくお願いします。

(深田)

今回取り上げるご著書は、大変興味深い内容ですが、とりわけ「二つの判決」、すなわち井戸さんと樋口先生による判決が中心になっていると思います。まず、この最初の二つの判決とは、どのようなものだったのでしょうか。

(樋口)

井戸さんは現在弁護士をされていますが、かつて裁判官であり、日本で初めて原発の運転差し止め判決を下した人物です。

(深田)

その際、政府との間で軋轢や圧力のようなものはなかったのでしょうか。

(樋口)

井戸先生から伺った限りでは、政府からの圧力は一切なかったとのことです。私自身も、圧力を受けた経験は全くありません。

(深田)

そうなのですね

(樋口)

一部の方が誤解されているのですが、過去に自衛隊を憲法違反と判断した裁判官がいました。その方は判決直後に厳しい処遇を受け、裁判長の職を外され、地方の家庭裁判所を転々とさせられたのです。これは明らかな報復人事でした。そのため「今も同じことが続いているのではないか」と考える人が多いのです。かつては確かにそうしたことがありましたが、現在はそのようなことはありません。

(深田)

原発を止め、太陽光パネル利権を推進したいと考える政治家の派閥もあるのではないかとも思えますが。

(樋口)

私は利権の問題ではないと考えています。少なくとも原発は危険であるため、中止せざるを得ないのです。その上で「その後どうするか」という議論が行われています。

(深田)

「その後どうするか」というのは、具体的にどのような議論でしょうか。

(樋口)

原発を廃止した場合、それに代わるエネルギーをどう確保するか、ということです。代替エネルギーを示さずに原発反対を唱えるのは無責任ではないか、といった議論がなされているのです。

(深田)

火力発電でよいのではないか、という話もあります。

(樋口)

私自身は、当面は火力で構わないと思います。しかし、そもそも「代替を考えなければならない」とする議論そのものが歪んでいると感じます。いくつか例を挙げましょう。東日本大震災の時、日本は本当に壊滅の危機にありました。東京には人が住めなくなる可能性すらあったのです。吉田所長は「チェルノブイリの10倍の規模になり得る」と述べました。それはすなわち日本が消滅する可能性を意味します。原発とはそういう危険をはらんでいるのです。

(深田)

震災直後、政府は「東京大停電の恐れがあるので早く帰宅してください」と通達を出し、メディアもそのように報じていました。私は、実際には国が危機的状況にあったのに、「大停電」という理由で国民を避難させたのではないかと解釈しているのですが。

(樋口)

私はそうは考えませんでした。あの時、情報を早く知った人々は東京から逃げ出しており、東京駅は人であふれていました。特に情報に敏感だったのは外国人です。私の知人のイタリア人は、本国から帰還命令が出たと話していました。「日本、少なくとも東京には滞在しないように」とすぐに指示されたのです。

(深田)

私も地震直後、アメリカ人の知人から連絡を受けました。「メルトダウンが起きている。アメリカ政府内でも話題になっているので早く逃げた方がいい」と言われました。

(樋口)

つまり、情報は一部には伝わっていましたが、大多数の国民は知らされていなかったのです。多くの人は「電気が不足している程度」と認識していました。しかし実際には、日本という国そのものが滅びかねない状況に直面していたのです。原発とはそのように極めて危険な存在です。停電一つで致命的な事態になりかねない。ですから、ある橋が危険で「渡ってはいけない」と言われているにもかかわらず、「危険だと言うなら代わりの橋をお前が考えろ」と迫るような議論は、全く不合理です。

(深田)

議論のすり替えが行われがちですよね。ただ、一番の問題は情報統制だと思います。外国では「福島原発が危ないから避難せよ」と情報が共有されていたのに、日本国民には知らせなかった。お上の姿勢に問題があると感じます。

(樋口)

その通りです。ここが最大の問題だと思います。民主党政権は、危機的状況を正直に国民に伝えるべきでした。そして、こうした危機を招いたのは自民党政権が原発を推進してきたからです。特に「全電源喪失はありえない」と述べた安倍氏が中心となって方針を進めた結果、このような事態を招いたのです。

(深田)

安倍氏が「全電源喪失はありえない」と述べたのは、第一次政権の時でしょうか。

(樋口)

第一次政権の時です。

(深田)

安倍氏は九州電力の名誉会長から強い支持を受けていたと聞きます。九州電力は現在も原発を稼働させていますが、やはり原発推進の背景には、そうした力が働いているのではないかと思います。

(樋口)

安倍氏自身が本当の意味で原発の恐ろしさを理解していなかった可能性はあります。しかし、一国の総理大臣である以上、基本的な知識は当然持つべきです。全電源喪失、つまり全面的な停電が起これば、必ず過酷事故につながります。それにもかかわらず「全面的な停電はありえない」と発言したのですから、その責任は極めて大きいと言わざるを得ません。本来なら「ありえない」と言った時に、官僚や電力会社が「ありえないようにしよう」と動くべきでした。しかし実際には「ありえないのだから、このままでよい」と解釈されてしまったのです。

(深田)

議論も行わず、安全対策も講じないまま、結局「大きな地震は想定外だったから、この事態が起きた」と。「想定外、想定外」と繰り返しメディアでも報じられましたが、想定するのは本来、国の責務ではないかと思います。

(樋口)

決して特殊な事態が起きたわけではありません。実際、福島第一原発を襲ったのは15メートルの津波でした。しかし15メートル程度の津波は、日本の歴史上繰り返し発生しています。40メートル、50メートルの津波であれば稀ですが、15メートルの津波や震度6強程度の地震で機能不全に陥ること自体が異常なのです。

(深田)

この原発差し止め判決は、1年半をかけて書き上げられたと伺いました。

(樋口)

提訴から判決まで1年半であり、通常よりはかなり早いものでした。現在では一審判決に至るまでに10年ほどかかるのが一般的です。原発裁判は時間がかかり、その多くが原告敗訴に終わっています。

(深田)

現在は原告敗訴が大半なのですね。住民が「原発を止めてほしい」と訴えても棄却される。その背景には何があるのでしょうか。

(樋口)

いくつか理由がありますが、最大の要因は裁判所や弁護士までもが先例主義に強く縛られていることです。その先例とは、現在で言えば「原子力規制委員会の審査が適切かどうかを裁判所が確認する」というものです。

(深田)

しかし、そこが本質ではありませんよね。

(樋口)

おっしゃる通りです。本来問うべきは、日本のような地震国において、原発の耐震性が十分かどうかという点です。耐震性が高ければ安全ですが、低ければ危険です。だからこそ「耐震性が高いか低いか」を議論すべきなのに、その議論がなされていないのです。

(深田)

私自身も裁判を経験していますが、裁判官が争点をすり替えるように感じることがあります。

(樋口)

まさに真の争点から目を逸らしているのです。大飯原発訴訟で住民が主張したのは、「敷地に強い地震が来れば配電や配管が破損し、過酷事故につながる。したがって原発の運転を止め、生命と生活を守ってほしい」というものでした。これに対して関西電力は「大飯原発の敷地には配電や配管を破壊するほどの強い地震は来ないので安全だ」と主張したのです。

(深田)

しかし、それには根拠がありませんね。

(樋口)

根拠はありません。地震の予知や予測は現在の地震学では不可能です。現に過去6回、耐震設計基準を超える地震が起きています。直近では昨年1月1日の能登半島地震です。志賀原発は震源から離れており、揺れは震度5弱にとどまりました。しかし、それでも耐震設計基準を超えてしまったのです。震度5弱の上には5強、6弱、6強、そして震度7があります。わずか震度5弱で超えてしまったのです。

(深田)

震度5弱は日本では頻繁に発生しますよね。

(樋口)

その通りです。これは極めて深刻な事実です。もし震度7で基準を超えたというのなら、まだ理解はできます。しかし震度5弱で超えるというのは論外です。それほどまでに原発の耐震性を高めることは難しいのです。配電や配管を強化するのは容易ではなく、現実には水準が低いために繰り返し基準を超えてしまうのです。それにもかかわらず、なお「原発敷地ごとに最大の地震を予測できるから安全だ」と主張し続けているのです。

(深田)

敷地ごとに正確に地震を予測できると、本当に言っているのですか。

(樋口)

「最大の地震を予測できる」と本気で言っているのです。

(深田)

その根拠は何なのでしょうか。

(樋口)

地震学だと主張しています。

(深田)

地震学が地震を正確に予測したことはありません。気象庁の発表や、国が「地震がどうこう」と述べても、国民にとって信用できるものではなくなっています。その結果、スピリチュアル系の漫画で「2025年7月4日に津波が起こる」といった予言が、国の発表以上に信じられてしまう状況になっています。これは日本の学問の堕落の結果であり、国の発表よりも予言が信じられるような社会になってしまったのです。それにもかかわらず、まだ地震の予測を根拠にしているのですね。

(樋口)

その通りです。そして、それを裁判所が認めているのです。

(深田)

裁判所が認めているのですか。

(樋口)

たとえば、原子力規制委員会には「ガル」という単位があります。伊方原発の場合、「650ガル以上の地震は来ない」と規制委員会が言っています。そして、その根拠として複雑な計算式を提示する。私が見ても理解できないほど難解な計算式です。すると原子力規制委員会は「それでよい、650でよい」と判断する。つまり規制委員会がOKを出したら、裁判所もそれを是認してしまうのです。

(深田)

しかし、本来の争点はそこではないはずです。規制委員会がどう言うかではなく、実際に日本は地震が頻発し、津波も繰り返し襲来しています。過去を振り返れば明らかなのに、「理論的にはないから大丈夫」といった奇妙な計算式が付いていれば、それでよいとするのはおかしいことです。

(樋口)

おかしいのですが、それが認められてしまっているのです。

(深田)

それを裁判官が認めているのですね。

(樋口)

裁判官が認めています。

(深田)

国から「そういう判決を出せ」と指導されているわけではないのですか。

(樋口)

直接の指導はありません。ただし、最高裁などで協議会や勉強会が開かれます。そこで「原子力規制委員会の判断に大きな誤りがない限り、裁判所は口を出すべきではないのではないか」という雰囲気がつくられてしまうのです。「そうしなさい」とは明言しません。それでは裁判の独立を害するからです。

しかし「そうした方が裁判所の役割にふさわしいのではないか」と議論が交わされる。その場にいた裁判官が「そういうものか」と思ってしまう。自らの頭で考えなくなる。これが一番の問題です。

(深田)

言われるままに、雰囲気に飲まれてしまうのですね。

(樋口)

徹底した先例主義です。

(深田)

しかし、先例主義というのであれば、過去には差し止め判決が出された例もあります。その判例は全く参考にされないのですか。

(樋口)

そうした判例は少数派にすぎません。裁判官は常に多数派に属したがるものです。

(深田)

それは裁判官に限らず、日本人全体の傾向かもしれませんね。

(樋口)

裁判官は特にそうです。司法試験でも、少数意見を書けば合格しにくくなります。よほど説得力がない限り、少数説は通用しません。そのため裁判官は常に多数意見を意識し、従う癖がついてしまうのです。

(深田)

ということは、世論が「それを許さない」という方向に動けば、裁判所もそちらに傾く可能性があるということですね。

(樋口)

その通りです。世論が重要なのです。

(深田)

やはり世論ですね。だからこそ政府は世論を操作するために言論統制を行い、議論そのものを封じようとしているのではないかと思います。

本日は『司法が原発を止める』、そして今後も原発を止めることができるのか、その懸念点について、元裁判長の樋口英明先生にお話を伺いました。樋口先生、本日はどうもありがとうございました。

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