#406 トランプ関税交渉で日本は敗戦。80兆円献上で日本は経済植民地へ?  田村秀男氏×深⽥萌絵

#406 トランプ関税交渉で日本は敗戦。80兆円献上で日本は経済植民地へ? 

田村秀男氏×深⽥萌絵

(深田)

皆さま、こんにちは。政経プラットフォームプロデューサーの深田萌絵です。

本日は、産経新聞特別編集委員の田村秀男先生をお迎えしております。どうぞよろしくお願いいたします。

(田村)

どうぞよろしくお願いします。

(深田)

先生、私のことは「萌絵P」とお呼びください。プロデューサーの「P」ですので、本日からはそう呼んでいただければと思います。

(田村)

「萌絵P」とは何ですか?

(深田)

「プロデューサー」の「P」です。

(田村)

つまり、「萌絵プロデューサー」を略して「萌絵P」というのですね。

(深田)

はい、そうです。

(田村)

これは何かのテストですか?

(深田)

いえ、テストではありません。本番です。

(田村)

それは大変ですね。

(深田)

では、もう一度お願いいたします。

先生、本日はトランプ大統領に関連する問題について、詳しくお話を伺えればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

(田村)

そうなのです。私自身はワシントン駐在ではありませんので、当初は詳しい事情はわからないだろうと考えていました。

しかしながら、あまりにも日本国内の報道内容が、アメリカ側の説明と食い違っていることに驚きました。

特に、石破政権や赤澤大臣の説明が、アメリカの主張と一致していないのです。

アメリカ側の説明は非常に明確です。

日本は、総額5,500億ドル、つまり日本円で約80兆円超に相当する投資ファンドを設立し、それを用いてアメリカに対して投資を実行するというのです。

この投資ファンドは、政府系のものであるとされています。

たとえば、国際協力銀行(JBIC)や、政府系の金融機関である貿易保険機構などが該当します。

この貿易保険機構は、経済産業省の子会社で、保険の形で投資を保証する役割を担っています。

つまり、出資・融資・信用保証(あるいは融資保証)といった3つの手段を組み合わせて、総額5,500億ドル、日本円で約80兆円の資金をアメリカに投じるという仕組みです。

この投資の期間については、明確な説明がなされていません。

しかし、赤澤経済再生担当大臣の発言から推察すると、「トランプ大統領の任期中」とのことですので、4年間ということになります。

すなわち、年間平均で20兆円の投資を行う計算になります。

このように、政府系の資金を用いて日本が巨額の投資を行うわけですが、アメリカ側の資料によれば、投資によって得られる収益の9割はアメリカ側が受け取るという仕組みになっています。

(深田)

それは、あまりに不公平ですね。

(田村)

残りの10%が日本の取り分だというのです。

しかし、それはおかしな話です。というのも、投資資金は日本の公的資金、つまり日本の資金によって拠出されるものだからです。

仮に投資によって年利10%のリターンが得られるとすれば、年間20兆円の10%ですから、収益は2兆円という計算になります。

ところが、その2兆円のうち、日本が受け取るのはたったの1割、つまり2,000億円というわけです。

(深田)

2,000億円ですか。

では、80兆円の投資を回収するには、いったい何年かかるのでしょうか。

(田村)

80兆円を回収するには、それはほぼ無限の年月がかかることになりますね。

(深田)

おそらく、私が亡くなった後くらいでしょうね。

(田村)

まったくもって不自然な話です。

では、そもそも「投資」とは何を意味しているのかという点ですが、これはJBIC(国際協力銀行)を中心とした政府系金融機関が行う出資、融資、そして信用保証によって構成されます。

要するに、80兆円規模の「投資」とは、そのリスクを全面的に日本側が負うという仕組みなのです。

つまり、出資であれ融資であれ、あるいは信用保証であれ、万が一これらの資金が焦げ付いた場合や、大きな損失が発生した場合には、日本政府がその全責任を負うことになります。

(深田)

「日本政府が負う」ということは、すなわち、私たち国民の税金によって負担するということですね。

(田村)

その通りです。

したがって、日本は総額80兆円に相当する資金を、基本的には4年間で投資しなければならないということになります。

リターンについては、当然ながらすぐに得られるものではなく、数十年単位で回収されていくことになるでしょう。

そのような長期的な投資にもかかわらず、リスクのすべてを日本が100%負担するという構図になっているのです。

(深田)

ただ、この投資の使途について、アメリカや台湾の報道ではすでに明らかになっています。

ソフトバンクの孫正義氏が主導する「クリスタルランド」というプロジェクトに、総額1兆ドルの投資が行われる計画があるようです。

(田村)

そうでしたね。

ただ、金額は1,000億ドルではなかったでしょうか?

1兆ドルもあるのですか?

(深田)

はい、1兆ドルです。

その全体枠の中で資金が不足しており、韓国が4,000億ドル、台湾が3,000億ドル、そして日本が5,500億ドルを拠出するという構図です。

(田村)

それは、実に杜撰な話ですね。

そして、日本が拠出する5,500億ドルのうち、相当な割合がソフトバンクのプロジェクトに流れるという点は、すでにほぼ確定的であると考えてよいでしょう。

(田村)

これは非常に杜撰な話だと言わざるを得ません。

日本が拠出する5,500億ドルのうち、かなりの部分がソフトバンクのプロジェクトに流れるという点については、すでにほぼ確実な状況となっています。

なぜなら、アメリカ側の説明でも日本側の説明でも、この投資は「アメリカの経済安全保障に資する極めて重要なプロジェクト」に対し、日本が投資ファンドを設立して実行するものであるとされているからです。

そのため、投資の対象となる企業やプロジェクトの国籍については問われておらず、「アメリカに対する投資」である限り認められるというのが実情です。

つまり、日本企業による投資であっても、アメリカ企業による投資であっても問題はなく、たとえば台湾のTSMCであっても、あるいはソフトバンクのプロジェクトであっても、対象に含まれるということです。

このように、全体として見ると、背景ではすべてが密接につながっている印象を受けます。

要するに、投資というものの本質は「誰がリスクを負うのか」という一点に尽きるのです。

それにもかかわらず、投資の仕組みやリスクの所在を正確に理解していない記者に対して、もっともらしい理屈を並べて、

「これは日本にとって有益な案件です」と説明する者たちの存在がある。

彼らは人を騙しているつもりかもしれませんが、実は自分自身も騙されているのではないかという疑念すら湧いてきます。

(深田)

まさに「ジャイアン外交」と呼ぶべき状況ですね。

(田村)

まったくその通りです。常識的に考えても、おかしな話です。

(深田)

トランプ大統領の対応は、あまりにも一方的で強引すぎると感じます。

(田村)

それにもかかわらず、日本側はその話にまんまと乗ってしまいました。

この場合、「騙されたほうが悪い」と言わざるを得ません。

本来であれば、相応の専門家が揃い、しっかりと検証しなければならなかったはずです。

(深田)

おそらく、本当に騙されたというよりも、これはさすがに何かしらの圧力、あるいは脅しのようなものがあったのではないでしょうか。

(田村)

あるいは、喜んで騙されたのかもしれませんね。

(深田)

韓国側も、4,000億ドルの投資を強いられるのではないかと、現在、非常に警戒しているようです。

(田村)

特に注目すべきは、その後に発表されたEUとの合意です。

その内容は総額6,000億ドル規模とされていますが、EU側はわざわざ明言しているのです。

「これはすべて民間による投資であり、政府は一切関与しない」と。

つまり、EUは明確に政府資金の関与を否定しているのです。

一方で、日本の場合は、まさに政府系機関が関わっています。

経済産業省や財務省といった官僚たちが中心となって進めており、その責任は非常に大きいといえます。

(深田)

そもそも、なぜ私たち国民の税金が、ソフトバンクのプロジェクトに使われなければならないのでしょうか。

もしソフトバンクが「クリスタルランド」を実現したいのであれば、自社の資金で行うのが筋というものです。

(田村)

ソフトバンクはこれまでも、サウジアラビアの王族を取り込むなど、さまざまな手法で資金を調達してきました。

(深田)

ついにはトランプ大統領まで取り込んでしまったのでしょうか。

(田村)

トランプ氏に関しては、資金さえ持ち込まれれば、それがどこから来たものであっても、特に問題視することはありません。

問題は、その資金をどこから引っ張ってくるのか、という点にあります。

ソフトバンクの場合、かつて「ビジョン・ファンド」という巨額の投資ファンドを運用していましたが、どうもその運用状況は芳しくないようです。

(深田)

中身は、ほとんど詐欺的な投資でしたからね。

(田村)

あのファンドは、サウジアラビアのムハンマド皇太子をはじめとする王族を取り込み、オイルマネーを投資に充てるというものでした。

しかしながら、その手法はうまくいかず、今後は二度と同じやり方は通用しないでしょう。

そうした中で、現時点で最も現実的な資金の出所として見込まれているのが、日本の金融機関です。

とりわけ、みずほ銀行などはすでに及び腰になっており、慎重な姿勢を見せています。

(深田)

常識のある人間であれば、こうした案件に手を出すはずがありません。

(田村)

その中で、唯一確実に関与しているのが国際協力銀行(JBIC)です。

そして、石破政権をはじめ、財務省や経済産業省が、この案件にまんまと乗ってしまったのが実情でしょう。

石破氏という人物は、おそらく投資とは何かを理解していないのでしょう。

そのため、このような合意内容に対しても、「よし、よし」と安易に同意してしまい、

「これで日本の国難は乗り越えられる」といった認識を持っていたのではないかと考えられます。

(深田)

ただ、少し渋っているような雰囲気も感じられますけれどもね。

(田村)

さすがに、内部では「これはおかしい」といった声もあるのでしょう。

それに、経済産業省や財務省には、金融の専門家が何人かはいるはずです。

そのような人材が揃っているにもかかわらず、誰も明確な異論を唱えないというのは、極めて不自然です。

(深田)

専門家は揃っているけれども、今は誰もが沈黙している、そんな状態ではないでしょうか。

(田村)

本当におかしな話です。

特に問題なのは、投資収益の配分です。

アメリカ側は明言しています。「投資収益の9割は、米国の納税者、つまりタックスペイヤーの利益となる」と。

つまり、日本は投資しても、その見返りとして受け取れるのは、わずか1割にすぎないというのです。

このような条件での合意は、果たして正当なものと言えるでしょうか。

しかも、赤澤経済再生担当大臣、この方が交渉役、いわゆるネゴシエーターを務めたわけですが、後の説明では、

「日本の出資は、5,500億ドルのうち、わずか1〜2%にとどまっています。残りは融資と融資保証です」と説明しています。

ここで言う融資や融資保証の対象は、ソフトバンクであれ、日本企業であれ、あるいは台湾のTSMCであれ、基本的にはアメリカ側が支援・推進するプロジェクトであることが前提となっています。

つまり、最終的にはトランプ大統領が支持するアメリカ国内の事業に対し、日本が5,500億ドルの資金を提供するという構図です。

しかしながら、その巨額の投資に伴うリスク、すなわち、5,500億ドル分の投資リスクは、すべて日本側が100%背負うことになるのです。

(深田)

おっしゃるとおりです。

つまり、融資であれ信用保証であれ、あるいは直接的な投資であっても、万が一焦げ付いた場合には、その損失はすべて私たち国民が負担するということになります。

総額にして約80兆円にも及ぶ規模です。

(田村)

最終的に損失が発生すれば、JBIC(国際協力銀行)などの政府系金融機関は、それを補填するために「財投債」を発行して資金を調達することになります。

この財投債は、事実上の国債と同様の性質を持つため、償還する必要があり、その負担は結果的に日本国民、すなわち納税者が背負うことになるのです。

(深田)

一方で、IMF(国際通貨基金)は先日、「日本は財政的に破綻寸前の状態にあるため、減税すべきではない」といった趣旨の勧告を発表しました。

しかし、それならば、こうした巨額投資についてこそ、トランプ大統領に対して警告すべきではないでしょうか。

(田村)

まったくもって、めちゃくちゃな話です。

(深田)

本当に、あまりに理不尽で支離滅裂です。

(田村)

そもそもIMFにそのような発言をさせているのは、日本の財務省なのです。

財務省の意向により、JBICのような政府系金融機関に、このような投資政策を実行させているという構図です。

(深田)

やはり、おかしいと感じざるを得ません。

(田村)

これはもう、正気の沙汰とは思えません。

私はすでに現場を離れていますが、もし現職の立場にあったならば、間違いなく強く怒っていたことでしょう。

(深田)

当然、怒るべき話ですよね。

(田村)

「一体何をしているのか」と、問い詰めたくなるような状況です。

(深田)

実は、来週からアメリカに行く予定でして、ワシントンD.C.にも訪問します。

現地では、どなたにお会いするのが適切でしょうか。

(田村)

ワシントンD.C.でお会いになるのであれば、ベッセント財務長官やラトニック商務長官が最も適任でしょう。

しかし、率直に申し上げて、彼らこそが今回の件で最も問題のある人物たち、言い換えれば「最大の悪」とも言える存在です。

(深田)

「悪」ですか?

(田村)

極めて悪質だと言わざるを得ません。

アメリカ側は、石破政権の弱みに巧みに付け込んできたのです。

赤澤氏の説明を聞いていて情けなく思ったのは、たとえば自動車関税の件に関する言い方です。

彼によれば、本来25%に引き上げられるはずだった自動車関税が、15%に抑えられたことで、ある自動車メーカーでは、1日あたり約1億円の損失を回避できた。

これを年間で換算すれば、最終的に10兆円の損失を防げた可能性があるというのです。

(深田)

その理屈でいくと、今回の支出は80兆円規模ですから、差し引きでマイナス70兆円になるということになりますよね。

(田村)

まさに、そうした論理で説明しているのです。

(深田)

明らかにおかしい話です。

仮に、自動車メーカーが企業として損失を被る可能性があるとしても、その負担を国民の税金で肩代わりさせるというのは筋が通りません。

しかも、損失想定額の8倍に相当する金額を拠出するというのは、あまりにも非常識です。

(田村)

このような計算の立て方自体が、まったくもって支離滅裂です。

合理性も脈絡も見られません。

(深田)

このような非常識な条件を提示してくるアメリカ側にも、やはり大きな問題があると感じます。

(田村)

この件については、実は写真による証拠が存在しています。

(深田)

写真による証拠ですか?

(田村)

これはホワイトハウスでの出来事です。

7月22日に日米間の合意が成立し、その翌日には赤澤氏ら日本側の一行がホワイトハウスを訪れ、トランプ大統領と直接面会しました。

その際、トランプ氏の机の上には、「Japan Investment America(対米日本投資)」と題されたブリーフィングペーパーのような資料が、大統領向けの説明用として置かれていました。

その時点で、日本が投資する金額は4,000億ドルとされており、当初の資料もその金額に基づいて作成されていたのです。

ところが、トランプ氏はその場で手書きで「そうではない、5,000億ドルだ」と修正し、「500」とわざわざ数字を書き直したのです。

(深田)

しかも、当初のオリジナル版には「利益は50%ずつ分配する」と、明確に記載されていました。

(田村)

その通りです。利益配分は「50対50で折半する」とされていたにもかかわらず、実際の最終合意では「収益は1対9、日本側は1割のみ」という条件に変わってしまいました。

そして、日本側が拠出する金額は最終的に5,500億ドルに引き上げられたわけです。

その場でトランプ氏が「こうではないか」と言いながら、勝手に内容をどんどん書き換えていったのです。

日本側はそれに対して、「はい、おっしゃる通りです」と受け入れてしまった。

収益配分が1対9であるという条件についても、まったく異論を唱えずに了承したのです。

このような経緯がすべてを物語っています。

トランプ氏、ベッセント財務長官、ラトニック商務長官、いずれもウォール街出身であり、投資ファンドでの経歴を持つ、いわば投資のプロフェッショナルです。

彼らは、「この場合の投資が何を意味するのか」を熟知しており、すなわち「投資リスクの100%は日本が負担する」という仕組みであることを理解したうえで交渉に臨んでいたのです。

だからこそ、彼らにとっては極めて理にかなった構図であり、投資のプロであれば即座にその本質に気づく内容でした。

(深田)

いえ、それは投資のプロでなくとも明らかです。

誰が見ても、これは詐欺的な案件であると確信を持って言えるでしょう。

(田村)

これは、まぎれもなく100%詐欺的な案件です。

日本側は、それを自ら進んで受け入れ、喜んで引っかかってしまったのです。

(深田)

本当に、日本の官僚たちは本当に東京大学を卒業しているのかと疑いたくなります。

その判断のあり方は、もはや常識では理解できず、サイコパスか狂気の沙汰としか思えません。

(田村)

これは、歴史に残るような異常事態です。

スキャンダルであると同時に、日本の統治機構、特に霞が関官僚機構の堕落を象徴する出来事だといえるでしょう。

(深田)

絶対に、誰かが金銭的利益を不正に得ているのではないでしょうか。

何らかの組織と癒着している可能性が高いと思います。

(田村)

利権が発生していることは、もはや自明です。

(深田)

しかも、その利権の規模は莫大です。80兆円もの資金が動くのですから、ソフトバンク利権に群がる者が続出するのは必然です。

(田村)

アメリカ側にとっても、これは極めて大きな利権案件です。

モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックスをはじめ、複数の大手投資ファンドが当然のように関与してくるでしょう。

なぜなら、投資による利益はアメリカ側が享受する一方で、リスクはすべて日本、すなわち日本政府が負担するという構造だからです。

(深田)

実は7月19日、ベッセント財務長官の車列が目の前を通過した際、私は夢洲におりました。

そのとき、「恥を知れ」という意味で、“Shame on you” と約10回、大声で叫びました。

(田村)

聞こえていたのでしょうか。

(深田)

はい、メガホンを使っていたので、聞こえていたはずです。実際、振り返っていました。

(田村)

それは非常に興味深い出来事ですね。

ただ、率直に申し上げると、私は「騙された日本側に責任がある」と考えています。

(深田)

いえ、それは違います。

これは騙されたのではありません。

このような条件で騙されるとは到底思えません。

(田村)

いやいや、私は騙されたと思いますよ。

(深田)

いいえ、騙されたのではありません。

(田村)

いや、むしろ日本側は、喜んで差し出しているのではないかとすら思えます。

(深田)

そうではなく、これは「騙された」のではなく、背後に何か意図的な事情があると考えるべきです。

(田村)

この件を最初に持ち込んだのは、実はラトニック商務長官のほうです。彼は元々、投資ファンド出身の人物で、今年1月の段階で「日本はもっと投資をすべきだ」と繰り返し発言し、さまざまな構想を練っていたと語っていました。

そのことは、ブルームバーグかどこかのテレビ番組で、自ら明かしています。

つまり、これは最初から用意されたシナリオだったということです。

そして、日本側が何としても達成したかったのは、特に自動車関税の25%引き上げの撤回でした。

実のところ、当時「国難だ」と最も大きく騒がれていたのは、この部分だったのです。

もちろん、相互関税の問題も重要ではありますが、何よりも日本にとって自動車は基幹産業です。

したがって、関税の引き上げを阻止することが最優先の目標であり、それが交渉上の最大の建前だったと言えます。

ところが、実際の交渉は思うように進まず、結果的には「15%まで抑えられた」という状況に落ち着きました。

さすがに「やった、やった」とは表立って言えなかったのでしょうが、それでも「15%に下がったのだから、ある程度の成果はあったのではないか」といった論調が見受けられます。

(深田)

ですが、それほどの代償を払うのであれば、80兆円もの資金を差し出すのではなく、自動車メーカーに対して「申し訳ありませんが、25%の関税は各社でご対応ください」と言ったほうが、はるかに安く済んだはずです。

(田村)

いや、それでもなお「日本にとっての国益とは何か」ということを、石破氏は強調していました。

彼は繰り返し、「これは国難であり、国益を守るための判断だ」と述べていたのです。

(深田)

結局、「国難」と「国益」という二つの言葉を使い分けながら、同時に押し通してきたというわけですね。

(田村)

よくもまあ、あれほど声高に理屈を並べておきながら、結果的にやっていることは、わざわざ自ら国難を背負い込むようなものです。

日本の富をどんどんアメリカに移転する構図であり、しかも、財投債によって5,500億ドル規模の国債を発行すれば、その資金はすべてアメリカへ流れることになります。

今、日本に本当に必要なのは、国内経済の立て直しと再生です。

そのためには、日本国内への投資が欠かせません。

そして、その資金を最も効率よく調達できるのは、まさに政府系金融機関のはずです。

ところが、その資金がアメリカのために使われているというのですから、信じがたい話です。

(深田)

到底、受け入れられる話ではありませんね。

(田村)

日本の国内経済は、完全に無視されています。

さらに呆れたのは、「これは経済安全保障のためだ」と主張している点です。

そもそも経済安全保障とは、日本の経済を守るためのものであるはずです。

(深田)

経済産業省の説明では、半導体分野への投資は経済安全保障の一環である、という見解が示されています。

(田村)

しかし実態は、アメリカ向けの投資です。

(深田)

「クリスタルランド」構想をはじめ、ソフトバンクやTSMCに向けた80兆円規模の投資が、経済安全保障の範囲に含まれるというのが、現在の説明です。

(田村)

本当に、こうしたこじつけを平然と口にできる神経には驚かされます。

私は、彼らの思考の構造自体に、何か重大な問題があるのではないかと感じています。

(深田)

いっそのこと、孫正義氏がこのスキームから外れれば、80兆円もの投資計画は消滅し、この国も少しは良い方向へ向かうのではないかと思います。

(田村)

まったく、日本人として本当に情けなく感じます。

(深田)

私も、最悪の事態だと強く思います。

ということで今回は、産経新聞特別編集委員の田村秀男先生をお迎えし、「80兆円投資は許されるのか」というテーマでお話を伺いました。

田村先生、本日はありがとうございました。

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