#13ー 深田萌絵×田村秀男 『中国経済衰退の真実と不動産市場崩壊』

(深田)

政治と経済の話を分かりやすく、政経プラットフォーム。ITビジネスアナリストの深田萌絵がお送りします。

今回は産経新聞特別記者田村秀男先生にお越しいただきました。先生よろしくお願いします。

『中国経済衰退の真実』という著書を出版されたのですが、最近の中国、実は経済がかなり危ないのではないかと言われています。その背景について少しお話をいただいてもよろしいでしょうか。

(田村)

なぜ『中国経済衰退』とあえてタイトルにしたのは、習近平国家主席が去年の12月頃に党の中央の会合等で、「中国経済衰退論をぶつ人は、国家反逆罪という反スパイ法でしょっぴくかもしれない」みたいなことを言ったのです。

それでこの本を出版して、本屋に並んだのは2月の初めですけれど、タイミングよく「いいことを言ってくれたなあ」と。「なるほど、本当に衰退しているのだな」ということで、書きました。

中国の経済は、1~3月の実質経済成長率が5.3%だとか、あるいは昨年1年間は実質5.2%プラスだといって、「高めの成長を持続しているのだ、俺たちは」とやっているのです。

それで、こういう統計データが発表された直後に分析をしたら、とにかくインチキだらけ、ということですね。

中国の経済、GDP、国内総生産は、大体5割ぐらいが固定資産投資です。固定資産投資とは土地の上に立つ構造物投資ですね。これは住宅不動産、企業の設備投資、それから政府の公共投資、大きく分けるとこの3つを足し合わせたものです。

これがGDPの5割を占めているわけですから、これさえ増やしておけば、例えば前年に比べて、10%の固定資産投資を増やしたら、GDPは5%を嵩上げされる計算になる。

この固定資産投資は不動産が中心で、マンションとか住宅ですね。ところが不動産の投資はマイナス16%なのですよ。

これが中心なのに、なぜか固定資産投資が当局、大本営発表ではプラス3%だと言っている。そんなはずはないのですよ。

中国の国家統計局が発表する細かいデータ、固定資産投資に関するデータを綿密に調べ上げて見ると、マイナス12%からマイナス6%のはずなのですね。

「これは明らかにインチキをやっているなあ」ということですが、問題は、これだけ生産を増やしていると、中国共産党中央は主張するわけですね。

ところが、需要サイドはどうかと見ると、不動産バブルの崩壊のために家計の方は消費が伸びない。

それから、もう1つ、投資をどんどん増やしていれば、プラスなのですけれども、投資の方もマイナスで、増やして残った生産分は過剰生産として輸出攻勢になるのですね。だから、どんどん安値で、輸出しまくるしかないということですね。

中国の不動産バブル崩壊に伴う生産過剰がどんどん増えて、それを統計上、数字ではごまかしをやる。しかし、対外的に言えば、過剰に作られた色々な生産物が安値、安値でどんどん売られるという現状で、経済が成長するとはとんでもない。私なりに再計算すると、大体マイナス2% から0%ぐらいの領域にしかならないはずなのですね。

(深田)

GDPの実際の成長率はマイナス。

(田村)

中国当局は5%台の成長と言っているのですが、実際は0%以下でマイナス2%ぐらいの範囲内と計算できるわけですね。

この嘘だらけの中国経済ですが、本当の問題は、不動産バブルの崩壊で、金融の方に相当プレッシャーがかかっている。つまり不良債権が増えているはずなのですが、こちらも隠している。

ノンバンクなどは経営破綻をしているわけですが、それにもかかわらず、破綻にはしないのですね。とにかく、ごまかし、ごまかしでやっている。

それから不動産のデベロッパーで最大手の恒大集団、碧桂園(カントリーガーデン)などがあるのですが、これも事実上経営破綻しているけれども、営業は依然として続けている。

すべて中国という国はごまかしというか、本当のことを絶対に明らかにしないことで成り立っているわけです。

こうなると外国からの投資がもう来なくなる。直接投資と言われるものは昨年では前年比でマイナスの81%以上です。

(深田)

直接投資がマイナス81%以上ですか。

(田村)

そうなのですね。

それだけの落ち込み、このような数字はごまかしようがないので、そのまま発表されているのですけれど、とにかくみんな呆れてしまって。

私は2月の初めに、産経新聞で中国の高成長は全くの嘘で、GDPの統計もごまかしていると、綿密に検証した記事を出しました。

そうしたら3月の初めに、アメリカのウォール・ストリート・ジャーナルが、「中国のGDP統計を信用してはいけない」と、やっと、ひと月後にあのウォール・ストリート・ジャーナルまでがきちんと書きましたからね。

これは、世界的に中国のインチキぶりが、投資先としては実にリスクが大きいことが認知されたということであります。

それで、この本では金融や不動産バブルの崩壊で、いかにその嘘が大きな問題を隠しているのかという本当のところを描き出したのがこの本の意味ですね。

(深田)

あくまで数値に基づいて、この統計数字は実は偽物だろうということを逆算した。

(田村)

逆算できる。

(深田)

そうすると、GDPは実はゼロからマイナス成長だろうことが見えてくるぞ、ということを主に描かれているのですね。

(田村)

そうですね。

具体的な例として、投資家やそのような人たちがすごく不満で、色々な抗議活動をやったりする。例えば投資では信託商品があるのですね。それが全然お金が返ってこない。

そうしたら、公安警察が出てきて、「抗議に行かないように」とか、もう散々で、今度は投資家が監視されてしまうのですよ。

(深田)

北京でデモに集まった人たちが結構捕まったり、監視の対象になったりしていますよね。

(田村)

まず24時間監視されています。ネットとかチャットなどのSNSですね。

(深田)

ウィーチャット。

(田村)

あのようなものは全部監視されていて、公安警察が深夜早朝問わずに投資家の家に押しかけて、「お前は今、こういうことをやっているだろう」と言われて、厳しくチェックされる。

それで、投資家が困ってしまって、みんな死活問題ですからね。

ある投資家は、80歳以上で寝たきり老人になっている自分のおじいさんをベッドに乗せ、そのベッドごとノンバンク最大手の中植(なかしょく)企業集団の北京本社のビルのフロアに、そのまま置き去りにしてしまった。

(深田)

何ですかその抗議は? 謎の抗議ですね。

(田村)

要するに、「親を殺すのだ!あなた方は」ということですね。

置き去りにしてしまうような色々な手段で抗議をするのですが、とにかく習近平政権は「調査中だ、調査中だ」と言いながら、もう10か月ぐらい過ぎてしまった。

これが中国の実態で、とてもではないが、中国を相手にお金を貸すとか投資をするのは、とんでもない話だということが、「ようやく浸透してきたのかな」と私は思います。

(深田)

そもそも、中国のGDPが鉛筆なめなめだということは10数年前から結構言われていましたよね。

(田村)

そうそう、そういうことなのですけれど、未だにやっているのですよ、基本的にはね。

ところが、GDP、国内総生産は生産面で見る。つまり生産というのは付加価値と言って、売上というか販売価格から仕入れ、原材料、コスト、これを差し引いたものが付加価値ですね。これを合計したもの、これを生産サイトで見るGDPというものがあります。中国のGDP統計の発表は、こちら(生産サイド)で考える。

では、そのデータはどこから来るかというと各地方政府があり、そこに寄せられてまとめられる、一次産業、二次産業、三次産業の付加価値生産総額というのがあります。

これを北京で集計して「全国合計で、はい、こうなった」。これが中国のGDPですね。

ところが、各地方を政治的に支配しているのは共産党の各幹部なのですね。

そこに派遣されている人たちには、共産党中央が決めている今年は何%の成長目標というのがあります。その数字をクリアしないと出世ができないのですね。だから無理やりその数字を水増ししてしまう。この習慣は全然変わらないということですね。

(深田)

去年、1年ほど前ですけれど、北京で仕事をされている中国共産党の方が、「いやあ、そろそろまずい。地方の統計局の人間がノルマを達成できない。ノルマの数字を作り上げることができなくて、逃げ出した。」と言っていました。

(田村)

それは逃げ出すでしょうね。実際に無理やりだから、「はい、これだけ生産を増やしました」としないと、目標値を達成できない。

それはいみじくもノルマですよね。このノルマ方式というのは、旧ソ連時代、それから毛沢東時代からの伝統なのですね。

(深田)

でも、GDPをノルマで課すという、日本人や欧米社会の人間からすると、少し常識とは違うなと感じがします。

(田村)

常識が違います。

いわゆる経済学でいうサプライサイドということになります。

要するに、作って、作って、作りまくれば、GDPにカウントできるのだということですが、我々西側に住んでいる国のGDPは、生産面よりも需要サイドで見るのですね。

需要は、家計や政府の消費、それから投資です。それに輸出。純輸出と言って輸出から輸入を差し引いたものですね。

これを合計で見るのですけれど、例えば日本のGDPでは、内閣府が発表しているのは全てこれなのですよ。

中国は、この消費サイド、需要サイドのGDPの中身が1年ぐらい立たないと出てこないのですよ。おかしいでしょう。

最初から鉛筆なめなめ「はい、これだけ生産しました。増やしました。」ということですね。こっちが先行してしまっています。

需要がどうであれ、とにかく生産サイドで見たGDPにつじつまを合わせる。

ここで、また鉛筆を舐めるということになっているのではないかと私見ている。

(深田)

私も中国に仕事でよく行っていたのですけれども、現地の中国の方も、いかに数字を作るのかが腕の見せどころだということで、GDPを水増しするのにずっと不動産投資をして、GDPを底上げというか水増しをしてきたことはよく聞いていて、不動産バブルが終わったら大変なことになるのが、今、まさに始まっているのですね。

(田村)

そういうことですね。とにかく不動産投資というのは固定資産投資の要ですよね。それで、中国の場合は、例えば土地ですね。土地の配分権を持っているのは人民だというのは建前です。

ところが実際にそれを仕切るのは地方政府で、地方政府を牛耳っているのは、地方に派遣されている共産党の幹部たちですね。この幹部たちが土地の利用権を販売する。デベロッパーを連れてきて販売、開発させるわけです。ここに巨額の巨大な利権が発生するのですね。

中国の不動産開発と言っているが、言い換えると利権の温床なのですね。すなわち土地の値段が上がっている、言い換えれば、不動産バルがどんどん起きている時は、みんな儲かってしょうがないのですね。

ところが、そのバブル崩壊は、そういう意味で土地の利用価値がどんどん下がりますから市場価値も下がる。そうなると開発というわけにもいきませんから、結局、残るのは地方政府の財政収入が激減する。

さらに言えば、国民一般の消費者ですね。例えば上海とか、北京とか、深圳とかの市民たちは、不動産、マンションなどをどんどん2件目、3件目も買っていたわけですよ。

それで、その価値がどんどん上がりますから、気をよくして、消費もあるということでしたけれども、これが価値がなくなってしまう。ということですから、実体経済と言いましょうか、需要サイドの方もどんどん落ち込んでいく。いわば悪循環に陥っている。

それから不動産の供給過剰というと、少し分かりにくいのですが、例えば、誰も入らないような巨大なマンション群がガラガラになっている。

(深田)

私が10年以上前から中国に行った時に、結構ゴーストタウンみたいな、巨大なビルがたくさん立っているのですけれども、人が住んでいる様子がない。

そういうビル群を意外と香港の隣の深圳や深圳からもう少し1時間ぐらい行ったところで、結構見かけたことがあるのですよ。

(田村)

そうなのですよね。広東省深圳市の都心部などは、まだ人が住んでいる。上海もそうですね。ところが少し郊外に出ると、そういうゴーストタウンあるいはゴーストマンション群は、よく見られる風景だということですね。

(深田)

そうですよね。やはり、中国のGDPを支えているものは基本的には不動産だということが、今、先生のお話でかなり分かってきました。

それが実際には、中国のGDP成長はずっと高い、高いと言われてきたのだけれども、その綻びである不動産投資、ゴーストタウンというものはかなり前からあった。

たくさんあったけれども、今それが露呈してきたのは、中国経済が実は崩壊寸前ではないかということについて、田村秀男先生にご解説いただきました。

先生どうもありがとうございました。

政経プラットフォームでは、毎回様々なゲストをお招きし、大手メディアでは なかなか得られない情報を皆様にお届けします。

日本を変えるために行動できる視聴者を生み出すというコンセプトで作られたこの番組では皆様のご意見をお待ちしております。

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