#370 全米(コメ)が泣いた!? 補助金だけでは救われない農家の危ない未来とは!? 岡本重明氏

(深田)

皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵です。

今回は、農家兼田原市議会議員の岡本重明さんにお越しいただいています。先生、よろしくお願いします。

「米農家は全然儲からない」「時給10円でとても貧乏だ」といった話を耳にしますが、実は「お米を作っても十分に儲けられる」というのが岡本さんのご主張かと思います。儲かる農家と儲からない農家の違いは一体何なのでしょうか?

(岡本)

「時給10円」の理由はよく分かりません。うちの場合でも従業員に最低でも時給1,100円以上を支払っています。赤字では続けられません。

(深田)

農業を始められて何年になりますか?

(岡本)

高校を卒業してからですから、もう44〜45年になります。

私の地域は日本一の菊農家の地域です。それにキャベツも有名です。儲かるのは菊やキャベツですから、畑は取り合いでした。そして「田んぼは儲からないから嫌だ」とみんな避けていました。ですから簡単に面積を集めやすかったのです。

(深田)

「田んぼは誰もやらないから集めたら大きくなるだろう」と思って米農家を始めたわけですね。

(岡本)

それから、米農家はきついと言いますが、実際は機械がやるだけです。だから体が楽なのです。

(深田)

えっ?米作りはすごく重労働で肉体労働だと聞いていましたが、そうではないのですか?

(岡本)

趣味でやっている農家さんの場合はそうかもしれませんが、私たちのようにビジネスとしてやっている農業では、すべて機械化されています。私は長靴も持っていません。

(深田)

えっ!長靴も無いのですか?今日私は長靴を持って来ちゃいました!

(岡本)

だって機械の上に乗っているだけなので、田んぼに降りません。いざとなったら素足になればいいのです。長靴を履くと重いですからね。普段はスニーカーで作業をしています。

田んぼの一番のコストは人件費ではなく、機械です。減価償却費、燃料代、資材費などです。機械1台で、代掻きを1日で3ヘクタールできます。田植えは1日で2.5ヘクタールできます。

稲はウチでは全部で(苗箱を)25,000枚田んぼに植えるのですが、1回では1,500枚くらい植えます。それも全部計算します。ですから稼働率はすごく高いです。

(深田)

コストを下げるには稼働率を上げないといけないのですね。

(岡本)

うちは自社農園として100ヘクタールやっていますが、田んぼ一枚の平均面積は10アールを切っていて細かい所ばかりで条件も悪いです。そうした状況で、田植え機は4年で更新しています。4年間乗ると1,400時間になります。これは米農家なら分かるはずです。また、コンバインは5年間で1台が2,000時間稼働します。それだけ稼働率を上げてコストを下げているわけです。

同じような機械を持っていても「年間で何時間乗るのか」によって、コストがどれだけ反映されるかが決まります。個人の農家でも、自分のところで生産したお米1俵あたりのコストを把握しない限り採算は取れないと思います。

(深田)

小規模な農家が過剰な設備投資をしてしまうと赤字になるということですね。

(岡本)

そうです。ただし、規模が大きければ必ず儲かるというわけでもありません。自慢ではありませんが私の前に同じような農業形態をやってきた人はいないです。

今、コンバイン1台が1,500〜1,600万円します。それを5年ごとに1台ずつ更新します。2台持っている場合は3年毎に1台を更新することになります。このように、面積をこなすために何かを買おうとすると数千万円が必要になるのです。

そして、これら全ては米相場次第です。つまり、農業は相場に翻弄されるのです。これをずっと続けていくと精神を病んでしまいます。ですから農業は甘くありません。でも、潰れるわけにはいかないので必死に維持しているのです。

今からの農業は、価値のあるものを供給するというスタンスで行くならば、農園の面積を小さくして、生産から販売までを自分たちでやるべきだと言いたいです。

例えば、ジャムを作るにしても、大手メーカーが出すような余った原料で作ったものではクオリティーが同じになってしまいます。それでは個人農家は敵いません。

それならば、最初から農薬を使わずに肥料も入れないようにして、自分たちで加工まですれば、大手工場では作れないマーマレードが作れるのです。そのようにすれば、自分たちの農場の特性を生かした事業ができるはずなのです。

(深田)

1次生産として生産してから、商品化して流通に乗せるまでをするということですね。

(岡本)

でも、ここでまた問題があります。農水省が6次産業化を推奨して補助金を付けているのですが、そうすることで根本の思想やポリシーがない人が「簡単だからやろう」と思って6次産業に入って来てしまいます。新規に6次産業に参入した人が、農薬を使った栽培で余ったものを使ってジャムを作ったら、私たちは勝てるはずがありません。私のところのジャムに使うものは無農薬栽培で、砂糖は全てオーガニックです。

こういう話をすると「偉そうだ」と叩かれるのですが、これが現実です。ですから「税金をもらっておいて偉そうに言うんじゃないぞ!」と言いたいです。

(深田)

今、ちょっと気持ちがほとばしっていましたね(笑)

(岡本)

そんな風に6次産業に群がっている連中が大勢いるのですよ。

(深田)

確かに、ジャムを作るにしても「これでフードロスが減りました。皆さん応援してください」といって農薬たっぷりは問題ですね。

(岡本)

たっぷりではなくて基準は満たしていますよ。でも、それでは農園を持っている意味がないのです。そこまで全部考えるのが経営なのです。厳しいことを言いますが、そこまで考えるようにならないと日本の農業は伸びないと思います。

私のように地域で農業をやると「君がこの町を助けてくれる。だから助成金をやるよ」と周りがもてはやします。ですが、そういう人たちは「貰って当たり前」の考えでいるから、本当の経営者にはなれません。

例えば「地方に移住したら補助金が出ます」という話がありますが、補助金が終わったら(地方から)いなくなる人がほとんどです。

世の中には評論家や大学教授、農水省関係者など肩書きが立派な人が大勢いますが、彼らの意見ばかりが世間に流れていますよね。

私たちのように地場で泥ネズミのようになって懸命に働いている者の意見は届きません。「あの野郎、偉そうに!」と言われることもありますが、私は補助金なんて貰ったことはありません。全部、自己資金でやってきました。

(深田)

自己資金でやっても米農家は儲かりますか?

(岡本)

儲かります。だって私はBMWに乗っていますよ。それに1,000万円の船も造りました。

(深田)

船を造ったのですか!

(岡本)

会社ではなくて自分の給料を貯めて造りましたよ。

(深田)

では、きちんと経営をすれば儲かるのですね?

(岡本)

はい。儲かるから社員にも幹部の人間にもボーナスを支払っています。だから真剣です。

米でも野菜でも果樹でも、農業を真剣にやっていれば面積に関係なく確実に利益は取れます。利益が取れないのであれば、それは自分が周りに流されているからです。

(深田)

同感です。IT業界にまつわる嘘を専門家が大手メディアで流すので「日本がおかしくなる」と思って、私は言論活動を始めました。そして言論界に入って驚いたことは、言論人が執筆で生活ができないから、出版社や保守派の媒体に流れてくる政府のお金にぶら下がっているのです。そして、まともな事を言わないで、お上の言いなりになってお上の言って欲しいことだけを言っているのです。

私は「この業界はダメになる」と思いました。言論人も課金制を取り入れるなどの工夫をして、黒字にしていく必要があります。

言論がダメになると政治がダメになります。ですから、言論人がお金を稼ぎ自立できれば、政府から流れて来るお金に惑わされない言論界になると思っています。

お米も同じですよね?

(岡本)

そうです。米農家が儲かるか儲からないかは、経営の手法の違いだけの問題です。農地を使えば米以外も作れます。

(深田)

今日はバーベキューパーティーに呼んでいただきました。いろいろなお米や無農薬の小麦で作ったピザなどをいただきましたが、ああいった取り組みは最終的には地域起こしに繋がって行きますよね。

(岡本)

地域の話ではなくて、日本の再生に繋げようと思っています。

(深田)

日本の再生ですか!

(岡本)

今日ご覧いただいた取り組みは、あくまで一例です。実はもっと奥が深いのです。

(深田)

今日の催し物は、近隣で採れた野菜と、岡本さんの麦とお米と、岡本さんの船で獲ってきた魚とウナギがありましたが、すべて天然ですよね。

(岡本)

買ってきたものは味噌とリンゴとトマトとチーズだけです。それ以外は全て自分で獲ったものです。

(深田)

今後、あのイベントはどうなっていくのですか?

(岡本)

地方が抱えている問題は、まず高齢化です。そして、年金が足りず現金収入が不足しているので、みんな職業が欲しいのです。さらに、子どもの家庭教育に不安を感じている世帯も多いです。また、教師の働き方改革で学校の部活動もなくなっています。ふるさとの教育もできていません。

今日の話のテーマですが、まずは「地産地消」です。原材料は自分の農場で取ったものを使います。加工は地域の高齢者がやります。そして給料を払います。お客さんには地域の郷土料理を一緒に作る体験をしてもらい、お金を払ってもらいます。同時に、マナーや日本人のアイデンティティーを教える環境を整えることで、地域でお金が回るようになっていきます。

そして、これをもっと発展させていくと、外国人が日本の地方に来るようになります。外国人が日本に求めるものは「原風景」です。そして、日本のお米や旬の作物です。このような体験型のツアーを地方で作っていくと、地方経済が活性化して若者も残りやすくなります。

そのようにして、壊れてしまった日本の地方が息を吹き返さないと、日本という国がなくなってしまいます。

私のやっている事のメインは、竈門で炊いたご飯を食べることです。このご飯と添加物を入れた安い外国米の安い外国のお米を買って来て添加物を入れて炊いた時に、味の違いを分かって欲しいのです。そして、私のお米の消費が増えて欲しいという欲もあります(笑)

もう国は守ってくれないので、地方の女性も綺麗事を言わずに働くのがいいと思います。「家庭で旦那さんやお祖父さんに作っていた料理が商売に繋がる」、そのような環境を整えたいです。「レンジでチン」しか出来ないお母さん方が調理体験をすることによって、「食事とは作るものなのだ」と知るための教育にもなります。

昔は3世代が一緒に暮らしていましたが、今はジジとババは嫌われていなくなりました。親と子は仲がいいですが、歳を取れば捨てられて、今よりももっと悲惨なことになると思います。今の30代、40代の親たちが子供に捨てられる時代が来ると思います。

そして、日本の心を地方で育んでいかないと、この国は武器によらない精神の崩壊によって内部から崩壊して、日本ではない別の国になってしまうことを私は一番危惧しています。

それを食い止める役割が第1次産業であり、泥臭いかもしれないけれど、それが農耕民族である日本人の生活スタイルなのです。

都会から来た人がそれを体験できるような取り組みを全国でやっていく必要があると思います。初めはボランティアで始めたけれど、「商売にしていこう」「その次はインバウンドに繋げていこう」という方向に農業の目を向けていけば、地方は蘇ると思います。

今後は、肩書ではなくブルーカラーを大事にする国を作っていかないとダメだと思います。

(深田)

確かにそうですよね。

(岡本)

「良い大学に入って良い企業に入って良かったね」と言いますが、もはや良いところなんてありません。

(深田)

確かに、もう銀行もダメですしね。

(岡本)

「良いところがなくなったのだから自分で職を作れ」、あるいは「ウチに来い!」と言いたいです。そうすれば独立させてあげますよ(笑)

(深田)

「お米で儲けたいなら岡本農園に来い」という熱いメッセージを岡本重明先生にいただきました。どうもありがとうございました(笑)

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