#9ー 深田萌絵×鈴木宣弘 「食糧危機とザイム真理教」

(深田)

政治と経済の話を分かりやすく、政経プラットフォーム、ITビジネスアナリスト深田萌絵がお送りします。

今回は東京大学大学院特任教授、鈴木宣弘先生にお越しいただきました。先生よろしくお願いします。

食糧危機とザイム真理教の不適切な関係についてご解説いただきたいのですけれども、かの有名なザイム真理教、日本国民から金を搾取し搾取し、そして苦しめ、その上食糧危機まで起こしている背景について教えていただきたいのです。

(鈴木)

そうですね、財務省と農水省の関係ですね。私も農水省に15年おりました。経産省さんと農水省も犬猿の仲でしてね、あいつら人間じゃないと言い合っていましたけれどね。

経産省の皆さんは自動車とか売って利益を上げれば、自分たちもそういう業界に天下りできる。だからそのためにはアメリカを喜ばせるために、農業を生贄に差し出すということで完全撤廃どんどんやれと。

(深田)

経産省が農業を生贄に出していたのですか?

(鈴木)

もちろんそうです。

(深田)

これ減反政策とかも関係あるのですか?

(鈴木)

そうですね。それは財務省の方ですね。

(深田)

そちらは財務省なのですか?

(鈴木)

それでもう一つの悪が、悪がと言ったら失礼だけど、お金を握っていて強い大蔵省、財務省さんですよね。財務省さん大蔵省さんも一生懸命国民のためにどのようにお金を使えばいいかを考えてもらえばいいのだけれども、とにかく税金はいっぱい取るけれど、それをいかに使わないようにして予算を切るかが、なにか生き甲斐のようになっているようです。

特に農業はじわじわと産業としては規模も縮小してきていることで、農水予算をカットするのが、何かもう嬉しくてしょうがないのか、そこが一番カットしやすいから、そこに目をつけるのか知りませんけれども、農水予算を減らすことを必死でやって喜ぶわけですよ。この妙な構造がずっと続いていています。

1970年に農水省の予算はすでに1兆円近くあったわけです。それが今も2兆円ちょっとで、これ以上出せるかバカたれと言われているわけです。だから減反政策もそうですよね。減反政策で減反する、お米を生産しない代わりに、農家にお金を出さなくてはいけない。あるいはほかの作物を作ったら、その分に転作奨励金を出さなくてはいけない。こういうものがもったいないと、今もそこにまたメスを入れているわけです。

だから今は米を作るなと言うだけでなくて、米の代わりにほかの小麦や大豆や野菜を作った時の転作の奨励金も、条件を厳しくして意地悪するわけですね。5年に一度田んぼに水を張らないと、もう出してやらないとか。そうするとできない作物がいっぱい出てきて、今まだ耕作放棄地が増えているわけです。

だから今何をやらなくてはいけないかの国家観がないのです。つまり今は米を減反している場合でもないし、それからほかの作物もいっぱい増産して不測の事態に国民が飢えないように準備をしなくてはいけないのに、とにかく未だに農水予算を減らすことが喜びであるかのように、そこにしか目が行かないというか、頭が行かないのが現状なのです。

(深田)

確か安倍政権時代に減反政策そのものをやめたというニュースを見て、その時に「減反政策やめてくれたのだ。結構安倍さんっていい人なのかな」と思ったのですが、実は減反政策で出てくる予算が切られただけだったのですか。

(鈴木)

そうです。そういうことです。

(深田)

減反政策をやめたというのは、米作りを推進するために減反政策をやめたと思っていたのですが、実はそうではなかった。

(鈴木)

そうではないです。米の生産を減らすこと自体にお金を出すわけではないけれども、ほかのものを作る転作にもお金が出なくなったという流れがある。どんどんそういうふうに、実は皆がいろんなものを作れるようにすることとは、ある意味逆行しているわけです。

(深田)

そういう前向きなことに予算が付いたのではなくて、転作してほかのものが作れるよという予算を切っただけなのが、減反政策の終わりだったのですか。

(鈴木)

一番最近はそういうことになっているわけです。

(深田)

やはり普通のニュースを見ているだけだと分からないものですね。

(鈴木)

ええ。さらに今回加わったのが、田んぼそのものをもう潰しましょうという話まで出てきています。米は余っているではないか。だから田んぼなんかいらないのだから田んぼを潰したら、それにだけは一回限りの手切れ金だけは出してやる、という話になってきています。

だから田んぼを畑にするか、あるいはもう山に戻してしまってもいいから、そういう風に田んぼを潰すほうがいいのではないかと言い始めて、なんとそこには一時金だけれども750億円かけて推進する非常に意味不明なことを始めたわけです。

(深田)

それは全然、今の食料農業基本法の改定の議論と全く歩調が合っていない政策ですよね。

今日本は食糧自給率がカロリーベースで4割を切ったことで、有事の時のために芋を作りましょうというのが、次の政策として食糧農業基本法改定の中に組み込まれようとしていますよね。

(鈴木)

そうです。実はみなつながっているわけですね。もう田んぼは潰せという話で、本来自給率を上げて米もいろんなものも増産して、そして皆の命を守れるようにする。そして農業農村も豊かになるようにするために、食料・農業・農村基本法も改定しているのだと普通思うじゃないですか。

国際情勢が悪化して海外からなかなかものが入りにくい。もういつでもお金を出せば食料が安く輸入できる時代は終わってきている。一方で国内の農家はコスト高で餌も上がり、肥料も上がり、燃料も上がっている。しかし農産物の売っている価格がなかなか上がらなくて価格転嫁できない。みんなバタバタ倒れていますよね。

こういう状態を放置したら、本当にいざという時に国民の食べるものが国内で供給できなくなる、食料自給率は絶対に上げなくてはいけないのがまさに国家戦略です。大局的見地に立てば、それをやらなくてはいけないと思うじゃないですか。

でも財務省の予算編成にはそういう発想が全くない。それから今お話のあった基本法、農業の憲法と言われる基本法を25年ぶりに改定したのは、必ず食料自給率を上げなくてはいけないという方向性を出すのだと思うじゃないですか。

ところが食料自給率という言葉も、その向上が必要だということも一切出ていないわけですよ。

(深田)

その中に入っていないのですか。でもこの食料農業基本法25年ぶりの改定というニュースを見て少しおかしいと思ったのが、農家さんが増産に応じないときは、罰金とか刑罰を与えるという文言を見かけたのです。

(鈴木)

そうです。ですので普段は農家の支援はしません。ただ有事立法だけは作るということで、それが今お話のあった芋と罰金の話なのですよ。普段苦しんでいる農家さんは別に支援の必要はない。そして海外の輸入先と仲良くしたり、海外に農業生産を増やすために投資をしましょうということは言っている。だけれどもそんなことをやっても、いざという時に物流が止まれば、持って来られないじゃないですか。

だから国内生産をやはりきちんと高めなくてはいけないのではないかと言うと、いや分かっている。有事になったらその時だけ慌てて命令する。花を育てている農家さんも芋とかを増産しなさいと命令するから、その命令に従ってきちんと増産して、それを供出しなさい。その増産計画を出さなければ処罰する、罰金を科す。その部分だけは強化すると言い始めたわけです。

(深田)

ちょっと正気の沙汰ではないですよね。

(鈴木)

もう全くおかしいでしょう。だから普段苦しんでいる皆さんには何もしないけれども、いざとなったら命令に従ってやれよと言われても、やれる訳がない。そもそもなぜここで罰金まで科して、そういうことをやらせるのか。そんなことに政策を向ける前に、今頑張っている人たちがもっと持続的に生産を続けられるような政策を打ち出して、自給率を上げておけば、それで済む話ではないですか。

とにかく自給率を向上させることは、できるだけもう言わない。そういう自給率はもうどうでもいいのだと、25年ぶりに農業の憲法を変えて、そういう方向にしようとしている。

財務省から委員で来ているような方々の発言は、とにかく余計なお金をかけるなと言うのです。自給率を上げようとすると、非効率な方までみんな支援してしまうじゃないか。だから要はもう生き残れる方だけが生き残ればいいのだという発想が、今回の農業基本法でますますはっきりしてきたのです。

(深田)

それを推進されて農家が生き残れなくなったら、国民が生き残れないですよね。

(鈴木)

そこの発想が全くないのですよ。だから恐るべきことに、これだけの世界情勢の悪化と国内の農業の疲弊を目の当たりにして、しょうがないじゃないか、潰れるやつは潰れなさいを前提にしている。だからごくわずかな人が将来生き残れば、その人たちが成長産業、企業化をしたり、あるいは企業が入ってきてやってもらえばいいからと言う。

これからやるべき政策は輸出振興でバラ色、スマート農業でバラ色、海外農業生産投資でバラ色、それから企業が農業に入ってくるのを入りやすくするために、農業法人における農外資本の出資比率を緩和するとか、そういうことばかりやる。

今は農業法人、農業をやるには農業関係者の資金の比率がある程度ないといけない。それを大幅に緩和して実質、企業が入ってきて農業をやりやすくするわけですね。そういう側面もあってもおかしくはないのかもしれませんが、とにかく今苦しんでいる農業農村の崩壊はやむを得ない。だからごくわずかな人が成長産業化、企業化するか、企業に入って来てもらい、その人たちが儲かる農業をやればいいではないかという発想です。そうすれば余計な予算をかけなくてもいい。いま農家を支援する予算はもう充分だから何もいらないと言っているのです。

(深田)

充分ではないですよね、全然。

(鈴木)

そうでしょう。今それが充分だったら、こんなにみんな苦しんでいるわけがないじゃないですか。

(深田)

そうですよ。酪農家さんだって餌料が高騰して非常に苦しんでいらっしゃる。農家さんも肥料が高騰してしまって経営が厳しい。そういった声が聞こえていますよね。

(鈴木)

おっしゃる通り。だからコストが上がったときに、そこの赤字部分が発生しているのをある程度補填するのが、欧米の当たり前の政策なのだけれども、日本の政策はコストが上がったときに、それをきちんと補填する仕組みが入ってないのですよ。

だからおっしゃるような、こんなことになっているのです。それなのに政策は充分だからやる必要はない。潰れるやつは潰れればいいのだ。残った人だけが利益を得ればいいではないかです。

でもごくわずかな人が生き残ったとしても、あるいはIT大手企業などが入ってきて無人農場みたいなものをやったとしても、それでは農業農村ももう崩壊ですよね。

それに一番大事なのは、おっしゃるように国民が食べるものがどれだけ確保できるかには関係ない話じゃないですか。そういうことをやったら日本はどんどんもう農業農村は原野に戻りますよ。今だって農業者の平均年齢はもう68.7歳ですよ。

(深田)

そうですよね。その農地を潰して太陽光パネルを。

(鈴木)

そういうのがどんどん増えていますよね。ああいうものにしていけばいいと、あるいはまだ投資すると利益が出るじゃないかと。だから一部の人たちの企業的な利益が優先されて、そして農業にお金をかけて無理にそれを守る必要はないと頑張っている人、そういうのはもちろん財政政策的にも今の財務省の考え方には合うわけだし、経産省などの経済政策からしても、もちろんそういうまさに企業向けの、企業が自由に儲けられればいいではないかというふうなところに向かっている。

(深田)

本当に恐ろしい話ですよね。やはり財務省が農林水産省のこの間違った政策の背後にいてそれを推進していることが本当にショッキングです。

視聴者の皆さんも今回の鈴木先生のご提案、問題提起ですね、詳しくはこちらの『国民は知らない「食糧危機」と「財務省」の不適切な関係』をご一読いただければと思います。

今回も東京大学大学院特任教授、鈴木宣弘先生からご解説いただきました。先生、ありがとうございました。

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