#14 深田萌絵×石田和靖 『背景も分かるイラン・イスラエル対立の行方』
【目次】
- 00:00 1. オープニング
- 01:45 2. イラン・イスラエル戦争の背景
- 04:23 3. イスラエルの過剰防衛
- 08:19 4. イスラエルのオクトパスドクトリン
- 12:48 5. イランの核兵器
- 15:12 6. イランの暴発は考えにくい
- 17:55 7. 旧約聖書にイスラエル対イラン・ロシア・トルコ戦争
(深田)
政治と経済の話を分かりやすく、政経プラットフォーム、ITビジネスアナリスト深田萌絵がお送りします。今回は越境3.0チャンネル石田和靖さんにお越しいただきました。石田さんよろしくお願いします。
石田さんは、よく中東に行かれていて、中東の専門家だと世間では認識されているのですけれども、こちらの御著書ですね。
(石田)
『第三世界の主役「中東」』です。
(深田)
すごく勉強になります。
(石田)
ありがとうございます。
(深田)
最近、話題のイラン・イスラエル戦争を、その背景から少し解説していただけませんでしょうか。
(石田)
分かりました。その前に、実は先週サウジアラビアに行っていたのですよ。サウジアラビアに1週間行っていて、現状の国際情勢に関しても現地のサウジアラビア人からいろいろ聞いてきました。
(深田)
現地の生情報をしっかりと取得されてきたということですね。
(石田)
まずイラン・イスラエルの対立の背景についてなのですけれども、だいたい日本のマスコミの報道だと、やはりイスラエル寄りが多い印象です。
実際、現状のイランとイスラエルの対立を見ていると、大人の対応をしているのがイランであって、けっこう暴発しているのがイスラエルという感じなのですよ。
イランとイスラエルが少し小競り合いみたいな感じになったじゃないですか。
まずシリアのイラン大使館をイスラエルが空爆した。それによってイランが報復をするといった構図になったわけですけれど、そもそも大使館を攻撃することが国際法違反なのです。
(深田)
宣戦布告に等しいですよね。
(石田)
等しいです。イスラエルが在外公館を攻撃したのは、IRGC(イスラム革命防衛隊)の幹部がシリア大使館に何名かいるだろうとリサーチをして、そこを目がけて攻撃してきたのです。しかし、これがそもそも国際法違反であって、世界の声はイスラエルに対して強い非難から始まっているのです。
まず、日本の対応はどうかと言えば、この件に関してはもう完璧にイスラエル支持なのですよね。この日本の姿勢が、今後、中東地域から日本に対する、あるいはグローバルサウスという新興国から日本に対する目線が、非常に変わってくるのではないかという危機感は持っていますね。
その後イスラエルに対してイランが報復をしたのですけれども、問題になっているのはこの後イラン・イスラエルの戦争になるのか、大きな戦争になるのかですが、この辺りに関しては深田萌絵さんは逆にどう思いますか。イランとイスラエルは戦争を起こすと思いますか。
(深田)
まったく中東に関して何の知見もないので、どのように発展していくのか想像もつかないのですよね。ただ最近のイスラエルの動きを見ていると、過剰反応をしていて、やり過ぎだと思うところはありますね。
(石田)
そうですね。まさにその通りで、やはりユダヤ民族が歴史的にずっといろいろなところから迫害を受けてきたので、やはり彼らは過剰防衛という形になってしまうのですよね。
目には目を、歯には歯をではなく、やられたら10倍返しなのですよ。
(深田)
10倍返しはまずいですね、
(石田)
もともとその様な民族性を持っている歴史背景があるわけですけれども、特にいまの政権、第6次ネタニヤフ内閣が非常に危険な政権なのですよ。これは僕も越境3.0チャンネルで、この10月7日のイスラエルへのハマスの奇襲攻撃が始まる以前から、その1年前からイスラエルはいずれ大きな戦争を起こすと、ずっと言ってきているのです。
今の第6次ネタニヤフ内閣が一昨年の年末、12月に組閣したのだけれども、連立政権なのですよ。その組閣したメンバーの中に、いまのネタニヤフ内閣は極右の人物が何人も入っている連立政権なのです。
この第6次ネタニヤフ内閣の中の3人の人物が、過激派のシオニストと言われていて、これは別に僕が勝手に言っているだけではなくて、イスラエル人も言っているし、いろんな人が言っているのですよ。
まず1人目が財務大臣のベザレル・スモトリッチ、ユダヤ人過激派のシオニストです。2人目が国家安全保障大臣のイタマル・ベン・グビール、3人目が法務大臣のヤリブ・レビン。この3人が非常に危険人物だと、この戦争が起きる前からずっとずっと言われてきたのです。
彼らの思想は、過激派のシオニストと言われているグループなので、簡単に言えばグレーターイスラエル、大きなイスラエルを作るという思想なのです。
グレーターイスラエルとは何か。イスラエルの国旗は上と下に青いラインが入っています。上のラインがユーフラテス川、下のラインがナイル川なのです。ということはナイル川からユーフラテス川までは全部ユダヤ人の約束された土地だという考え方が、まさにグレーターイスラエルです。ここは全部我々の国にすることを本気で考えているのが、そういった過激派のシオニストなのですね。
彼らがネタニヤフ内閣に入っている以上、大きな戦争は免れられない。もう戦争をやる気満々なのですよ。
(深田)
数年前におかしいなと思ったのが、2、3年前にモサドの元長官を、ソフトバンクが年収6億ぐらいで雇ったのですよ。諜報機関の元長官を雇用することは、その下にいる人達はまだ中にいるわけですよね。インテリジェンスの世界はけっこう人で繋がっているので、元長官の言うことを聞く派閥の人たちが、いまだにいるわけなのですよ。そういうことを考えると、ソフトバンクは日本企業というよりは、やはり中華系だと私は認識をしているので、何か仕掛けるつもりなのかとは思っていたのです。
(石田)
なるほどね。まさにね、おっしゃった通り諜報機関がすごく優れた国なので、イスラエルがそういったところから、どういう方向に向かうのかを、いろんな現地の中東側のメディアを見ると、第6次ネタニヤフ内閣は一昨年の12月に組閣された直後、去年の1月にオクトパス・ドクトリンという新たな軍事協議を発表しているのですよ。オクトパスはタコです。
イスラエルは、ハマスとかヒズボラ、フーシ派など、要は民兵組織に常に攻撃されている国なのですよね。その周りにいる民兵組織は、イランが全部コントロールしているのです。そのイランはシーア派の国なので、イランがコントロールしている民兵組織を総称して、シーア派の三日月地帯と呼ばれているのですね。イスラエルを取り囲んで三日月のように弧を描いているからシーア派の三日月地帯と言います。ちなみにガザのハマスはスンニ派だけど、シーア派ではないのだが、一応彼らも全部ひっくるめてシーア派の三日月地帯と呼ばれています。
そういった民兵組織に攻撃をされているイスラエルは、民兵組織ハマスとかヒズボラに対して仕返しをしても埒が明かないから、要はタコの触手を叩いているだけであって、モグラ叩きのようにまたブンブンブンブン出てくる。それでモグラ叩きをいつまでも続けてもしょうがないから、タコの頭を狙うのがオクトパス・ドクトリンというイスラエルの軍事協議なのですよ。これが第6次ネタニヤフ政権で世界に向けて発表されたのです。
そういうイスラエルの軍事協議とか軍事行動を水面下でヒソヒソやっている分ならまだしも。
(深田)
宣言しているのですね。
(石田)
宣言している。イスラエルにはヘルツリーヤ会議という国際軍事会議があって、けっこう大規模な西側諸国の偉い人もいっぱい集まる会議なのですけれど、そのヘルツリーヤ会議でイスラエルはオクトパス・ドクトリンをこれから遂行しますと言っているのですね。
オクトパスはタコの頭で、それは何かって言えばイランの心臓部なのです。イランの心臓部を必ず攻撃するという軍事協議がオクトパス・ドクトリンです。
(深田)
イランの心臓部はどこを。
(石田)
まずはやはり国のトップですよね。例えば国家指導者のアリー・ハメネイであったり、ライーシー大統領であったり、あとはイスラム革命防衛隊の幹部とか、そういう人物的なものであったり、あるいはイランの地下核施設だったり、地下空軍施設とか主要拠点ですよね。そういうのを全部ひっくるめてイランの心臓部、いわゆるオクトパスの頭と言っているのですが、そのオクトパス・ドクトリンが発表された辺りから、これはイスラエルは危険だなと。
あくまでも、視聴者の皆さんに留意しておいていただきたいのが、僕は基本的には中立の立場で話をしたいと思っているのですよ。イスラエルを非難することがあっても、それはイスラエル人を決して非難しているわけではなく、いまのイスラエル政府、第6次ネタニヤフ内閣が危険ということ。それに対して、イスラエルの民間人も、いま退陣デモとかものすごい勢いで起こしているわけですよ。この戦争はもうやめろと、早く人質解放のために交渉しろと、ネタニヤフ内閣退陣だと、ベザレル・スモトリッチも退陣だと。いま言った3人の人物のプラカードを掲げて退陣デモが起こっているのですね。だから一般のイスラエル人とネタニヤフ内閣、イスラエル政府はぜんぜん別物だと思っています。
(深田)
別物ですよ、日本国民と岸田首相のように別路線ですよね。
(石田)
そういうことです。その前提で話を進めると、この第6次ネタニヤフ内閣が国民によって引きずりおろされるなり何なり、この政権交代などが起きない限りは、先ほどお話したようにものすごい大きな戦争に向かって突っ走って行っている内閣なので、このイラン・イスラエルの対立、この戦争が近い将来起きるのではないでしょうか。この内閣が続く以上は。
(深田)
よく言われているのが核の問題ですよね。イランの核問題はどうですか。
(石田)
イランの核兵器はもうほぼ完成していると思うのですよ。これも去年の秋ぐらいに、ウランの濃縮度が90%近くまで達したというニュースが流れて明らかになっているのですね。ウランは90%に達すると核兵器用途しかならないウランになるのですよ。
イランは元々平和目的で核開発をしていますと、一応表向きはずっと、今でも言っているのですよ。決して核兵器は作ってないと、平和目的だと。
平和目的は、イランの場合、例えばガン患者が多いので、ガン治療のための医療用のアイソトープ、放射線治療の材料とか、あと電気が足りないから原子力発電作るのだとかね。そういうことを言っているのだけど、でも確実に核兵器は作っていると見られます。
でも、その核を使うことは、イランはいまのところ考えにくいと思います。なぜならば、イランはもう孤立化していないのです。一昨年、厳密に言うと昨年の3月までは、イランは国際社会で孤立化していたのですよね。だから暴発する可能性もあるのじゃないかとも言われていたのです。
(深田)
昨年3月までは。
(石田)
昨年の3月に何が起こったのか。イランとサウジアラビアの国交正常化合意がなされたのです。このサウジとの国交正常化をしたことで、イランはサウジアラビアとその他大勢の仲間たちとの国交回復をドミノ倒し的にやってきたのですね。
だから、サウジアラビアと言えば、もうアラブ連盟21カ国の名主ですから、サウジアラビアが右向いたら他の20カ国はみんな右向くのです。あの辺の国のリーダーなのでね。そういったサウジとイランが国交を正常化したことは、イランは他の20カ国も含めて全部アラブ連盟と協調路線に切り替わっている。
(深田)
イランとサウジの中を取り持ったのは。
(石田)
これがね、中国の習近平総書記なのです。これはね、僕もうちのチャンネルでずっと言っているのだけど、これは日本がやるべきだった。そうしたら日本は今頃ね、国際社会の中の、もうすごく輝かしい位置にいますよ。
(深田)
原油の心配もしなくて良くなりますしね。
(石田)
そうです。エネルギー安全保障でもそうだし、なんと言ってもイランもサウジも日本のことをめちゃくちゃリスペクトしている国なのでね。親日国の中の親日国ですから。だから、そこはやはり日本が仲介をやるべきだったのだけど、いまの増税メガネ政権には無理でしょうけどね。
(深田)
そうですね、難しいでしょうね。ただ、ニュースを見ていると、イスラム国はみんなイランではなくてイスラエルの味方なのだみたいなニュースが出ているのですけれども、それはどうなのですか。
(石田)
そこは微妙ですね。ISは基本的にアメリカが作ったようなものなのですよ。イラク戦争が終わった後に、アメリカ軍が置いていった武器とか軍事兵器を全部かき集めて組成されたのがISなのでね。イラク戦争の時に。あれをやはり裏で糸を引いているのは、アメリカの諜報機関ではないかという話なのですけど、イランとも戦ってきたし、シリアとも戦ってきたし。
たしかに対立関係、対立の構図で見ると、イスラエルとかアメリカが糸を引いているのは、もうほぼ間違いないと思うのですね。そういう意味ではISは彼らにコントロールされてきた。そのISを撲滅したのがイスラム革命防衛隊のソレイマニ将軍なのです。
(深田)
宿敵なわけですね。
(石田)
宿敵ですね。イランからしてみたらね。もちろんアラブ社会からもISは宿敵である。
核の問題に戻るのですけど、そういった状況があるので、イランは国際社会の仲間入りを果たした。なおかつ今年の1月にはBRICSにも加盟した。イランとサウジとUAEとエジプトとエチオピアの5カ国が足並みを揃えてBRICSに入ったのです。
BRICSに入って、なおかつアラブ連盟とか、そういった国々とも調和が取れてきているので、イランが単独の、独自の考え方で暴発を起こして核兵器を撃つとは考えにくいです。
(深田)
そこはもうきちんと連携している。話はついている。
(石田)
裏で足並みを揃えるはずですね。昔だったらどうだか分からないけれど、いまだったら必ずそういった国際社会での足並みを、歩調を合わせる方向にイランは進む。
一方で危険なのがイスラエルだと思うのですね。イスラエルは、先ほど言ったネタニヤフ内閣が3人の人物が入っていて、彼らはもうとにかくガザを全部、パレスチナ人を排除する。そして天然ガスがあるガザは全部飲み込む。さらにナイル川からユーフラテス川までの間はユダヤ人が持つべき土地なのだという思想を持っています。そのためにオクトパス・ドクトリン、心臓部を狙って大きな戦争を起こすのだと公言している人たちですから。
そのために手段として核兵器はぜんぜんあり得ると思いますよ。なくはない。ゼロではないでしょうね。
(深田)
怖いですよね。イスラエルはこのまま全面的に衝突する方向に突っ走って。
(石田)
いまの政権はね。政権が変われは別ですよ。いまの第6次ネタニヤフ内閣のままでいったら、その可能性はまだ十分残されている。
なおかつ、ユダヤ人は聖書を信じているじゃないですか。旧約聖書のエゼキエル書第38章というのがあるのですよ。そこに載っているのは、ロシア・トルコ・イラン同盟軍が南に、イスラエルに攻めてきて、次の第3次世界大戦が起きる。そこでイスラエルはヨーロッパに逃げていく。逃げた後に、あそこで巨大地震が起きてイラン軍もロシア軍も全滅するというストーリーなのですよ。それが旧約聖書第38章。
過激派のシオニストの間には、その旧約聖書の通りに世の中を動かすのだという力が働いているのですよ。そのエゼキエル書の第38章の通りに行くのであれば、まさに第3次世界大戦はイラン・ロシア・トルコがイスラエルを攻めてくる。その後巨大地震が起きて軍隊が全滅するなど考えられないじゃないですか。でもあり得るのですよ。それがあり得るなと思いついたのが、この間のトルコの大地震です。あれは人工地震だと言っている人がいるのですよね。アンカラの市長はいまだに言っています。あの地震は人工地震だったから、きっちりと調べてくれと。
なぜ人工地震が起きるのかと言えば、あの地域の地下核施設で大型の核実験をやれば、あの規模の地震は起きることがもう分かっているのですよね。あの地域はイランの核施設もあるし、おそらくイスラエルも地下核施設を持っているのですよ。もしも地下でそういった核実験などを起こされていたら、トルコ東部のあの大地震は起きても不思議ではない。
(深田)
なるほど、予想を超える怖いストーリーが。でもありえますよね、予言の書じゃないのですが。
(石田)
そうなのです。僕はね、全然そんな予言を信じる方じゃないですけど、でもそれを信じてその通りになるように動いている人たちが一部にいるのは現実なのです。
(深田)
たしかに。ロシアとトルコも仲がいいですものね。
(石田)
いま、すごく近づいていますよ。ロシアとトルコがすごい距離を縮めている。トルコはNATOを脱退するのじゃないかなという話もあるくらいです。
(深田)
いま教えていただいたお話が決して不可能ではなくて、どちらかというとその路線に乗っていますものね。
(石田)
可能性として排除できない状況にあると思うのですよね。
(深田)
今回は、イランとイスラエルがどうなるのかという、過去から今日までの流れについて石田和靖先生にご解説いただきました。先生ありがとうございました。
政経プラットフォームでは毎回様々なゲストをお招きし、大手メディアではなかなか得られない情報を皆様にお届けします。日本を変えるため、行動できる視聴者を生み出すというコンセプトで作られたこの番組では、皆様のご意見をお待ちしております。また番組支援は説明欄のリンクからお願い申し上げます。