#11 深田萌絵×鈴木宣弘 『政府推進のゲノム編集食品、培養肉は人体に害!?』
【目次】
- 00:00 1. 地球温暖化は農業と畜産が原因の大嘘
- 03:17 2. スーパーから遺伝子組み換え表示が消えた理由とは?
- 06:50 3. 給食にゲノム食品、日本の子供達がゲノムの実験台に?
- 10:30 4. 声を上げない日本人が世界の標的にされている現実
- 13:18 5. 政府が安全性未確認の代用食を推進する悪夢の国
(深田)
政治と経済の話を分かり易く、政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵がお送りします。
今回は東京大学大学院特任教授・鈴木宣弘先生にお越しいただきました。先生、よろしくお願いします。
今回のテーマは、最近お茶の間を賑わせている不気味な食品は、実は日本政府が推進していた。コオロギ食であるとか、培養肉、そしてゲノム編集食品は、実は身体に良くないのではないのかという話が持ち上がっているのですが、教えていただけないでしょうか。
(鈴木)
そうですよね。今まともな、普通の農業生産がどんどん苦しんで減ってきているのに、そちらには支援策が見えてこずに、だからコオロギを食べればいいじゃないかみたいな議論につながっていないか。
おかしいのではないかと言うと、そこで出てくる議論が、地球温暖化の一番の悪者は農業、酪農、畜産などだった。一番悪いのは田んぼのメタンガスだ、です。
(深田)
田んぼからメタンガスは出るのですか。
(鈴木)
出るのは出るのだけど、それから牛のゲップですね。これが実は一番の地球温暖化の諸悪の根源で、主犯だったと言い始めた。
普通は何を言っているのだと思いますよね。田んぼだって何千年も前からあるのですし、牛もずっと前からゲップをしていますよね。それがいきなり、悪いのは農業、酪農、畜産だと言い始めて、だからコオロギを食べましょうと言う。地球が温暖化したのは工業化したからに決まっているではないですか。
それをなにか農業を悪者にして、だからコオロギと人工肉と培養肉などにしていけと言うような、一部の企業の利益につなげようとしているのではないかと心配されるわけです。
あのコオロギ太郎、間違えた。河野太郎先生がテレビで食べるパフォーマンスもやっていましたけどね。普通、コオロギは食べて来なかったじゃないですか。
(深田)
コオロギは漢方で禁忌ですよね。
(鈴木)
そうです、おっしゃる通りですね。だから長い間かけてイナゴとかは食べる習慣ができたけれども、コオロギは色々な問題があるから、甲殻類アレルギーの問題ももちろんあると思う。漢方薬として漢方の事典に堕胎効果のようなことまで書いてあるという話もあるぐらいだから、そういうものを、わざわざどうしていま徳島県の高校でいきなり給食に出してみたりするのか。
実は日本人はみんなもう食べているのです。コオロギパウダーと書かなくても、アミノ酸とか何とか曖昧な表示で粉末が全食品に、もうすでに混ぜられている。
(深田)
もうみんな入ってしまっているのですか。
(鈴木)
入ってしまっているのです。だから、そんな事をしても良いのかと、まさに今問題になってきているわけです。もう表示を無くすことで、リスクのあるものもどんどん日本人に食べてもらえばいいじゃないかという流れが、今色々な面で強まっているのではないのかと私達は心配になります。
(深田)
最近の食品表示、私も結構アレルギーがあるので、お買物する時は表示をよく見るのですが、遺伝子組み換え食品も今後表記が変わって行くのですか。
(鈴木)
もう変わったのです。去年から「遺伝子組み換えでない」の表示が消されました。だから遺伝子組み換えでないものを自分で選ぶことを、日本人はできなくなったわけですね。
(深田)
それでは、私達はどのようにして遺伝子組み換えではない食品を探し出せばよいのでしょうか、もう不可能になったということですか。
(鈴木)
色々な工夫をしていて、生協さんの所では「遺伝子組み換えでない」という書き方ではなく「NO・GMO」とかです
そう言う風なラベルにするとか工夫はしています。でも行政がなかなかそれを選びづらくしてきたのは事実です。
これも歴史がありまして、TPPという大変大きくもめた貿易交渉があったのですが、その時からアメリカ側から言われていたのです。日本で「遺伝子組み換えでないNON・GM食品」という表示をされると、遺伝子組み換え食品は安全なのに日本人の消費者が不安になる。これは誤認表示だからやめろ、と言われていたのです。
私は関係者だからそれを聞いていたわけです。それで日本の消費者庁が協議会を作って、そこで決った方針が、例えば「国産の遺伝子組み換えでない大豆を使ったNON・GMの豆腐です」という表示をして、もし極々微量の輸入大豆の混入が0.001%でも見つかったら、その業者さんを摘発することになったのです。
そうすると輸入大豆が94%を占めていますので、流通段階での微量の混入は避けられないと皆が恐れて「遺伝子組み換えでない」という表示をする食品から撤退していったわけです。実質的に業者さんに表示できないように追い込むことで、日本の消費者が遺伝子組み換えでない食品を選べないようにしてきたというのが現状です。
(深田)
遺伝子組み換え食品の危険性が、まだよく分かっていないですよね。それでも遺伝子を組み替えた食品を食べるのは、健康に影響があるのじゃないのかなという不安を抱えつつ、今その次のフェーズですよね。ゲノム編集食品、これは一体何なのだ。
(鈴木)
そうですね、これがまた大問題です。遺伝子組み換えの次に今問題になっているのが、仰るとおりゲノム編集です。
「ゲノム編集は遺伝子を切り取っているだけで組み替えていない」という理屈なのですが、本当はそうではないらしい。これもアメリカ側からの要請で、審査もしなくていいと、遺伝子組み換えじゃないのだから、表示もしなくていいのだと完全野放しに日本はしてしまった訳です。
それなので全然表示は無いわけです。だけど、さすがに日本の消費者の皆さんも心配するだろうから、どうやってこれを日本に浸透させるかで「やはり子供たちだよね」となったみたいです。
障害児福祉施設とか日本の全国の小学校に、ゲノムトマトの販売会社さんが苗を無償配布して「子供たちが育てた美味しいゲノムトマト、給食で、お家で食べようね」という形で、いま浸透させる戦略をやっておられまして、日本の子供たちをある意味実験台にと言ったら言い過ぎかもしれませんが、これが良いビジネス戦略ですと国際セミナーでも発表してるような状況になっているわけです。
(深田)
日本の子供たちを使ってこの実験をしているという事を、発表されているわけですか。
(鈴木)
そうです。これがいい戦略だということでしょうね。でも実質実験台じゃないですか。
何十年も食べ続けなければ影響が分らない面もあるわけだし、今の時点でもいろいろある。切り取った後の細胞がガン化しているとか、あるいは新たなアレルギー物質、アレルゲン(アレルギー源)が出てくる可能性は勿論否定できないわけだから。そういう事も含めて、消費者の皆さんが不安に思うのは間違いないわけです。
それで子供たちから広めていけば、一番速いじゃないかと、まさに日本の子供たちを実験台にしたビジネスモデルが、ゲノム編集では行われていると言ってもおかしくない。
(深田)
ゲノム編集食品、海外ではどのように表記されているのでしょうか。
(鈴木)
日本のような形で野放しになっているところは無いと思われます。
遺伝子組み換えもそうですね。アメリカがこの表示をさせないようにという動きを色々やっても、アメリカ国内でもそうですし、海外はもうお店ではきちんと「遺伝子組み替えだ、ゲノム編集だ」と表示しています。
ゲノム編集のものはまだほとんど流通していない現状だと思うのです。とにかくきちんと表示をして、そして消費者が選べるようにすると。不安があるものに、安全性が確認できてない物について、消費者が不安を持つことは当然だから、最低限選べるようにするのが国際ルールと言うか、各国はそれがお店でもきちんとやっている。
それをある意味、日本だけが率先して、特にゲノム編集については野放しにして表示なしです。だからお寿司とか、これも完全に確認は出来ていませんが、ゲノム編集を動物に実用化したのは、日本が最初いうことで、すでにゲノム編集のムキムキ真鯛とかです。
それとかトラフグがお寿司屋さんで出て来ている状況なのですけれども、あまりと言うか、ほとんどメディアは言わないから、日本の消費者の皆さんは勿論知らないですよね。でも海外では結構この日本の動きが注目されているみたいで、アメリカのある団体はポスターまで作って、日本がエライことやっています。「世界で最初のゲノム寿司、こんなの食べられますか」と英語のポスターまで出ているくらいです。
(深田)
世界のグローバリゼーションの動きがすごく激しいねと私達日本人は認識をしていて、それを主導しているのはアメリカなのだという言説が流れているのですが、アメリカよりもすごい勢いで推進しているのは実は日本ですよね。
(鈴木)
そうですね。アメリカも国内でそこ迄やりきれないし、世界的にも、例えば種の話もそうなのですけれど、種の関係の法律が日本では廃止されましたが、グローバル種子農薬企業は「種を制するものは世界を制する」と言って、世界中の種を自分のものにし、それを買わないといけないような状況を作ろうとしている。しかし、世界中の農家・市民は猛反発している。
(深田)
そうですね、ローカル市民の反発ありますよ。
(鈴木)
そう、そういった企業が苦しくなってくるでしょう、苦しくなると、一番言うことを聞く従順な日本の皆さんを標的にして儲けようじゃないか、という動きがどうしても強まっているように思われてならないのです。
(深田)
そうですよね、本当にそれは痛感します。やはり日本国民の皆さんはものすごく大人しくて、反対運動とか、反対意見を出さないですよね。そういう日本人の大人しい特性を利用して、日本政府と言うか、どこかに操られている政府の役人さん達がアドバンテージを取っているように見えます。
(鈴木)
そうですよね。だから日本政府自身も、いろんなグローバル企業からの要請をアメリカ政府などから受けると、それに従順に従ってしまう傾向がありますが、それができるのは国民そのものがおとなしすぎるからです。そのことが全てこの流れを作っていて、日本が一番の草刈り場というか、ラストリゾートという風な表現、最後の儲け所みたいな形になってきてはいないか。
その分、色々なリスクのあるものも、日本では表示を無くしても大丈夫だから、表示どんどん無くして食べてもらって広めてしまおうね、のようなことになっているのじゃないかと心配されます。
(深田)
確かイタリアでは、培養肉は禁止という動きになりましたね。ところが今日本で培養肉を推進していませんか。
(鈴木)
大推進ですよ。これもビックリしたのですけれども、一部の企業がこれからは普通の農業とか酪農、畜産、漁業を潰してと言っている。今年1月のダボス会議でも問題になりましたね、農業とか漁業はジェノサイドならぬエコサイドだとか、環境を破壊する大量殺戮罪みたいなものだと言うような発言まで出てきて。つまり農業を悪者にする。
今までは「環境にやさしい農業にしましょう」と言っているのかなと思っていたら、そうじゃないのですね。もう農業そのものを潰してしまわなきゃいけないという発言が露骨になってきている。
「それはまさに人工肉、培養肉、それから昆虫食みたいな所に繋げようとしているのじゃないか」と言うと、陰謀論みたいに言われるけれども、陰謀論じゃない。まさに日本政府自身が。
(深田)
そこに予算をつけて推進していますからね。
(鈴木)
そうなのです、例のフードテックで推進している。日本はフードテック投資が世界で遅れているから、ここを大推進しましょうと言っている。
その理由付けが、まさに今言われている「農業・畜産は地球温暖化の一番の諸悪の根源だから、これからは代替的食料生産に変えていく必要がある」ということです。昆虫食・人工肉・培養肉とかいうものを、なんと企業の利益につなげようとする動きを、まさに日本政府自身が旗を振って推進する。露骨に打ち出してきている。これは陰謀論どころか陰謀そのものですね、ビックリですよ。
(深田)
本当にビックリですし、やはり怖いですよね。こんなシャーレの中で細胞を培養すると、それがだんだんお肉になっていくなんて。それ食べるのは大丈夫なのですか。
(鈴木)
まあ直感的にも、これはもう大きな不安ですね。その為に色々なものを添加したりすることで、色々なリスクもまた高まるわけですから、そういう事についてきちんと評価しないといけない。
だからイタリアなどは、そういう意味ではやはり素晴らしいですね。そういうものをわざわざ推進する必要がどこにあるのかと言っている。
イタリアが本当に素晴らしいと思うのは、スローフードというのもイタリア中心に起こりました。本当に身近なところで作ったもの、それから獲れた魚とか、できるだけ地元で、小さな八百屋さんとかお肉屋さんとか魚屋さんとかで。レストランも地元のものをうまく使った美味しい料理をつくって、みんなで地域循環的にローカル自給圏を作って支え合えば、全体の自給率も高まるし、幸せな地域、そして国民の豊かさはそういうものによってもたらされるとある意味頑張ってやっている。
それが日本は完全に真逆の方向で潰されていく。これは本当に、今止めなければエライことになりますよ。
(深田)
本当に今止めないと、日本の食糧自給率がどんどん下がっている中で、そういう人工的な、まだ食の安全性の確認が取れないものだけしか買えない時代が、もう5年10年先に見えていますよね。
それに対して政府は日本の農業を潰し、人工食品を推進するという。なんだか、日本人を実験台にしているのではないかと思う。
(鈴木)
本当に、これはもう日本の農業農村地域そのものを原野に戻していくじゃないですか、そんなのだったら、人口が減るとは言え、それが東京大阪を中心に拠点都市にまた集中して、スラム街もできて、そういう所でその怪しい人工的なものを食べるか、輸入に頼る。でも物流を止められたら、そういうものも止まってしまうわけだから。そうなったらもう一気に都市部に集中した日本人が餓死して一巻の終わりになる。こんないびつな日本を、私達は子供たちに残していいのかが本当に問われていると思います。
(深田)
本当に今回も、鈴木先生からの非常に重大な問題提起ですね。私達の食料自給率が下がっていく中で、人工食品、安全性の確認が取れていないものが、政府によって推進されている。今後この国がどうなっていくのかわからない。ただし、そのような政策が推進されているのも、日本国民がおとなしく従順であるからこそ、それが推進できているわけです。
ここからは、やはり私たち日本国民もしっかりと政府に対して反対意見を述べていかなければならないということですね。
今回も東京大学大学院特任教授・鈴木宣弘先生にお話をいただきました。先生、ありがとうございました。