#94―田村秀男 × 深田萌絵「偽りの経済成長 中国崩壊は秒読みだ!?」

(深田)

自由な言論から学び行動できる人を生み出す、政経プラットフォームITビジネスアナリストの深田萌絵がお送りします。今回は産経新聞特別記者の田村秀男先生にお越しいただきました。先生、よろしくお願いします。今回は、中国経済が抱える6つの時限爆弾をテーマにお話いただきたいのです。全てお話しいただくとネタバレになってしまうので、今回は特別に3つだけに絞って概要をお話しいただければと思います。

(田村)

はい。代表的なものを挙げれば、不動産バブル崩壊です。単に不動産バブル崩壊にとまらず、いわゆる金融危機に発展していくのです。不動産に代わる景気・経済の牽引者として、電気自動車EVや太陽光電池を過剰生産しており、世界で貿易戦争が起こり中国へのバッシングになっています。

(深田)

先生、不動産バブル崩壊の兆しが見えているということですか。

(田村)

何をもって崩壊するかについてですが、まずは不動産の投資と価格相場の両方が2021年12月から下がり始め、最初の頃は「習近平政権が抵抗策を取るなりすれば持ち直すだろう」と言われていましたが、未だに全然止まらないのです。不動産投資も前年比マイナスで、相場もどんどんと下落していて、まだ今も底が見えないのですよ。

(深田)

「中国だけでなく、日本の不動産もバブルではないか」と声が上がっているのですが、

(田村)

日本の場合は、超円安がずっと続き、中国資本も然り、東京なんかはご存の通り、どんどん買われています。

(深田)

今、東京都内のマンションは平均1億円超えです。先日、日経平均も暴落しましたし、バブル崩壊は逆に「日本が先か」とも言われています。

(田村)

中国はバブル崩壊で大変と言っていたら、日本の方がやばいのですか。実はバブルの定義は非常に難しいのですよ。ドットコムバブル崩壊がアメリカでおきた2001年頃、ちょうど僕は、ニューヨークのど真ん中にあるイェール大学の綺麗なサロンにてOBやFRBの幹部と議論する機会がありました。当時のFRBのグリーンスパン議長が、日本の平成バブルの崩壊を参考に「ではドットコムはバブル崩壊なのか」と、スタッフをみんな集めて研究したのです。バブルの最中はバブルとはなかなか判断できず、崩壊して初めてバブルだとわかると結論しました。

(深田)

そうですよね。崩壊しないと分からないのですね。しかし、今の中国は確実に不動産バブル崩壊にあります。

(田村)

これはもう真っ黒ですね。

(深田)

真っ黒ということですが、金融市場の危機はどうなっているのですか。

(田村)

中国では、丁度一年前、最大手の信託が元利払いを止めて、今も知らんぷりしており、公安が盛んに「不正行為をなした」と言って、そのノンバンクの幹部たちを軒並みしょっぴいているのです。しかしお金は1円も返ってこないのが今の中国なのです。他にもいくつかのケースがあるようですが、中国という国は面白いところで、情報公開を一切しません。金融機関の経営破綻というのは、取り付け騒ぎが起きて、銀行やノンバンクはお金が入ってこなくなったらおしまいですから、ねずみ講のようなものです。

(深田)

そうですよね。

(田村)

ねずみ講とは、人様に金を出させて、配当を払うことです。中国の場合は、完全なねずみ講です。財務内容も一切明らかにしないのですよ。突如「元金がなくなりました。ごめんなさい。今、払えません」と言い逃れするのです。これが中国の金融危機なのです。不動産投資が盛んであり、不動産の相場が上がり、「配当の利回りが8%から10%もありますよ」と、ねずみ講をやっていたのですよ。

だから、今下がっているので、払いようがありません。

(深田)

ネズミ講が今、崩壊しつつあるのですね。

(田村)

ところが、みんな隠蔽してしまうのです。

先ほど申し上げたネズミ講はノンバンクの話ですが、では大手の銀行や地方銀行は大丈夫かというと、「大丈夫だ」と言っているのですよ。なぜなら、不良債権に全然分離しないのですよ。

(深田)

事実上の不良債権だと認めないのですか。

(田村)

普通、先進国の場合、不良債権(ノンパフォーミングローン)に分類されます。

(深田)

そうですよね。

(田村)

ところが、不良債権に分類しないから、中国の大手銀行の不良債権比率がむしろ下がっています。

(深田)

さすが中国。2011年、12年の頃、中国に行って、香港からバスで一時間、深圳を抜けた先に福田という地域があるのですが、そこに巨大なタワーマンションのゴーストタウンがすでにありました。2011年の時点で、あれほどのゴーストタウンのマンションが、都会である深圳の近くにあったのです。香港に近いここでゴーストタウンがあるので、中国は一体どうなっているのかと思いましたね。

(田村)

中国では鬼城というゴーストタウンが全土にあるのです。とにかく、この不動産バブル崩壊あるいは資産バブルの崩壊は最終的には金融機関にしわよせがくるのですね。金融機関が、信用を失ったり、不良債権がすごくあったりすると、貸出がもうできず、むしろ貸し剥がしをやるのです。今度はお金の流れが実体経済に回らなくなり、大不況になります。中国は一切そういう風にはさせず、中国人民銀行は依然としてお金を刷って、一般の銀行にお金を流します。今はさすがに不動産分野にお金を流しません。

(深田)

ただ、不動産分野にお金が流れないということは、中国のGDP成長をずっと支えた不動産投資にも回らなくなります。

(田村)

大体、GDPの多いときで7割8割ありました。

(深田)

インチキではありませんか。

(田村)

僕は未だに実質成長5%だと発表しますからね。日本に限らないのですが、欧米含めメディアがそのまま書いてしまいます。また、IMFも、中国の国家統計局の発表に沿った中国経済予測見通しを発表するのですよ。「ふざけるな」と言いたいですね。中国の国家統計局はまだ面白いところがあって、不動産なら不動産、それから他に家計消費の動向など個別の分野に関して、色んなデータを発表しており、GDPの計算は生産サイドと需要サイドの両方で数字を出して、一致させるやり方が普通ですが、中国のGDPの計算はものすごくデタラメです。

(深田)

そうですよね。

(田村)

各地方の付加価値生産、企業の粗利益を合計したものが中央の国家統計局に集計されるのです。それを合計して、「これだけ成長しています」と発表するのだけれど、こちらの数字はそもそも地方の共産党の幹部たちが派遣されていますから、管轄の地域政府の成長率目標が5%だとしたら、「私もちゃんと5%上げています」と報告します。

(深田)

統計局のそれぞれの部門にノルマが課されるのですよね。そしてその数字を作り上げるのが統計局の仕事なのですね。

(田村)

だからかわいそうなのです。みんな平気でやっているかもしれないのですが、それが嘘だとどうやって見抜くかというと、国家統計局が消費や不動産投資など分野ごとのデータを集計してGDPに置き直してみたところ、実質5%の成長と言っていましたが、実はマイナス2%から0%に下がるのです。

(深田)

昔中国のGDP発表は、12月29日、30日くらいの年末でした。

(田村)

それはまた早いですね。例えば昨年1年間のGDPは1月中旬ぐらいです。

(深田)

そうですよね。それでも早すぎますよね。2週間で集計できるわけありません。

(田村)

インチキしているからどうにでもなるということですね。需要サイドと消費サイド、投資などの数字をすり合わせるのですね。

(深田)

そうやって全部、鉛筆なめてやっているからこそ、年末に数値を発表してしまっていたのですが、そのことを有名な投資家に指摘を受けて、それ以来、翌年から1月の半ばに発表するようになりました。

(田村)

2、3週間伸ばしただけで、見え見えですよね。なぜか、統計の嘘を暴くアナリストが西側、というかアメリカの証券会社や格付会社、コンサルタント会社が一切やらないのです。

(深田)

かなり接待を受けていると思います。

(田村)

中国北京にとって不都合なことをレポートで出すような外資のコンサルタントは排斥されます。「出ていけ」となるのを怖がってやらないのです。

(深田)

今、中国のGDPを粉飾するのに利用されているのがEVや太陽光パネルだと思うのですが、最近はヨーロッパですら中国による太陽光パネルやEV車の過剰輸出がデフレを起こしているのだと叩いています。この辺りはどうですかね。

(田村)

政府が信じられない規模の補助金を出したり、優遇措置をどんどんしたりしています。また、帳簿もごまかしていますから、EVの価格もいくらでも安くなります。今1台あたりの輸出価格は2万米ドルを割っています。ヨーロッパやアメリカの標準ですと、3万米ドル切れば最安だったのですが、今の中国は2万米ドルも割っています。

(深田)

EVのリチウムイオンバッテリーの価格がものすごく下がっていると聞きましたが、どうでしょうか。

(田村)

リチウムイオン電池も作りすぎです。リチウムイオン電池やソーラーセル、太陽光電池も非常に下がっています。

(深田)

それだけでなく、単結晶もすごい暴落ぶりですね。

(田村)

太陽光電池にしても世界シェアは8割を超えています。そのうち世界中の太陽光電池は100%中国製になるのではないかと言われるくらいです。普通は独占の論理で、価格はもう下げず、むしろ上げるはずなのに、過剰生産・過剰供給によって下がっているのです。補助金をどんどん出すから、中国各地の業者が群がって生産してしまい、中国で価格競争がものすごく激しいのです。かなり安値になって、すごく暴落していますよね。2022年から比較すると、もう4割から5割くらい見事に下がっています。

(深田)

すごく下がっているのですね。

(田村)

だから僕は中国って面白い国だと思います。いくらなんでも身内同士で価格競争はやらないでしょう。

(深田)

そうですね。多分、彼らにとっては身内ではなく、他の省から来た人なのです。各地方豪族の戦いです。

(田村)

そうですね。各省ごとに共産党幹部が仕切り、それぞれ利権が発生します。地方政府は不動産バブルがまだ盛んだった頃は、収入源が不動産開発でしたが、今はそれがなくなって、みんなピーピー言って、困っています。そこで習近平総書記が「太陽光電池を大いに作れ」「EⅤ車、EⅤ電池、大いに作れ」と奨励し補助金を出したところ、みんなもう喜んでそちらに殺到しています。

(深田)

そのしわよせで、日本に輸出されてきていませんかね。

(田村)

日本でそれを喜んで受け入れているのが、自民党の某グループですね。

(深田)

神奈川県や

(田村)

東京都の小池さんです。

(深田)

そういったところが補助金で、どんどんと中国を助けてあげていますね。

(田村)

太陽光電池なんて、台風や南海トラフ巨大地震が起きたらエライことになりますよ。

(深田)

本当に大変です。太陽光パネルは落ちて破損しても発電するので、感電リスクがあります。

(田村)

台風で吹き飛ばされたときにもそういうリスクがあります。

(深田)

中国経済は今後崩壊していくかもしれないということで、6つのうち3つの時限爆弾を田村秀男先生にご紹介いただきました。田村先生ありがとうございました。

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