No.45―深田萌絵×田村秀男 『有罪評決のトランプ支持にウォール街の動き?』

(深田)

政治と経済の話を分かりやすく、政経プラットフォーム、ITビジネスアナリスト深田萌絵がお送りします。今回はウォール街の中国離れというテーマで、産経新聞特別記者の田村秀夫先生にお越しいただきました。先生よろしくお願いします。

今回は、ついにウォール街があれだけ大好きな中国に対する投資を引き剝がし始めているという話ですね。

(田村)

データを見れば確かに対中投資はどんどん減っていて、直接投資は昨年で8割減です。それからポートフォリオと言って証券等の金融関係の投資ですが、これも非常に低調なのですね。

これで習近平政権としては大変焦っているのですが、ウォール街もただでは転びませんから、このまま中国のマーケットから手を引くことはないでしょう。

要するに儲け専門ですからね。いわゆる強欲資本の塊がウォール街ですから、これからどうなるかは分かりませんよ。しかも中国はしたたかですから、逆に甘い餌をぶら下げて、ウォール街の投資ファンドや巨大金融資本を手懐けるかもしれない。

いまトランプ復活の可能性が十分ある状況になっていますが、トランプ政権の主要なポスト、例えば財務長官などのホワイトハウスの要職にウォール街の代表が何人も入り、そのウォール街の代表が実は中国と通じていることも、これまた十分にあり得るので、これから要注目ですね。

(深田)

いまは中国の景気が怪しいので、ウォール街の投資マネーがどんどん引き上げられているけれども、もしもトランプになったらウォール街がまた中国に帰って来ることがあるということなのですか。

(田村)

これは複雑な構造ですよね。例えば、産業界で一番中国のマーケットを頼りにしているのは、テスラのイーロン・マスク氏ですね。中国は中国で、テスラの優れたEVの技術が欲しいわけです。だから、ここで甘い餌を与えているのがひとつ。それにEVはいまかなり逆風が吹いていますから、テスラのイーロン・マスク氏にとってみれば、習近平政権から美味しい餌をいろいろ与えてもらうと、もう喜んでしまうわけです。

それから、中国のグローバルな影響が見逃せないポイントでして、例えば中東のハマスやフーシ派など、いろいろなテロの勢力がありますよね。スエズ運河から紅海のルートなどで輸送船が攻撃されることがありますが、中国関係の貨物船や運搬船に関しては攻撃するなというような話もあるようです。それに便乗してテスラ関係の部品や材料、製品が攻撃を免れるようなことも、あるように聞きますけどね。

それから金融の面ですね。ウォール街は、例えば中国の株価や証券、債券などがどんと落ちると、今度は儲けるチャンスなのですよ。

ウォール街で親中派の巨頭と言われたのには、ブラックロックという巨大資産運用ファンドがありますね。ブラックロックは、バイデン政権の財務副長官や国家経済会議などに全部送り込んでいるのですよ。

「バイデン政権は口では対中強行路線などと言っているけれど、あれは嘘だよ。実際は親中、対中融和路線だよ。」と、僕はいつも言ってきました。

バイデン政権は議会の突き上げもありますから、半導体やハイテクに関しては対中強硬と唱えますけれども、中国が1番弱いのは金融なのですよ。要するにドルの取引を禁じてしまえば中国は大変なことになりますが、バイデン政権は絶対にこれはしないのです。議会でそういう法案が出ようとしたら、大統領拒否権を行使してきたのですね。

(深田)

そうだったのですか。今までもアメリカ議会の中では、中国がドルを稼げないようにする封じ込め作戦はあったのですか。

(田村)

あります。昨年の秋などは、上院の外交委員会で、台湾に軍事進行したら中国に対して金融制裁をすると可決されたのです。ところがバイデン大統領は成立させない、拒否権を行使すると言うので、仕方なく取り下げた経緯があります。

今度トランプが仮に復活となると、財務長官に就任しそうな人の名前が何人か出ています。1人はロバート・ライトハイザーといって、トランプ前政権の時の通商代表ですね。この人が財務長官になるという噂もあります。

ライトハイザー氏は非常に強硬派で、この貿易では対中制裁関税をやると宣言しています。それから金融制裁もやる、つまりドルを渡さないぞということです。

ところが、最近そのライトハイザー氏に代わって、財務長官候補がウォール街から出始めたのですよ。ブルームバーグなど、あちらの外電で最近よく登場するようになったのですけれど、結局このブラックストーンやJPモルガン・チェース、それからヘッジファンド大手の代表、ジョージ・ソロスのヘッジファンドの関係も、トランプ政権に入るかもしれないなどと言われるぐらいですからね。

(深田)

たしかに、最近中国がバックにいるファンドのCEOが、トランプ前代統領にアプローチしていますよね。

(田村)

いや、もうすごいですよ。ブラックストーンのシュワルツマンという有名な代表がいますけれど、この人も、トランプ氏が例の裁判で有罪判決を受けても支持は揺るがないと言っています。それからウォール街の主であるJPモルガン・チェースの代表も、どうもトランプに傾いているのですね。それからヘッジファンドの代表も財務長官候補だというので驚きましたが、要するに単なる金儲けの大親分みたいな人なので、金儲けだけで考えるのであれば、中国はおそらくこの人たちを、チャンスだと思っているのですよ。

JPモルガンに至っては、中国の不動産バブル崩壊、昨年特にひどくなったのですが、この時に中国にいろいろとアドバイスをしていたのです。

はっきり言えば、こういう人たちは大統領選挙前の情勢を見て、どうやらトランプ氏が有利だと、しかもトランプ氏は裁判に負けてお金がなくて困っているので、その資金集めに協力することで彼を篭絡にかかっているわけです。

(深田)

たしかにトランプ氏も、TikTokなど中国の息がかかったソーシャルメディアに対しては強硬な姿勢を見せていたはずなのですが、バイトダンスに投資をしているファンドのCEOと1時間ぐらい話し合いをした後から、「バイデン大統領がTikTokを制裁するのは間違いだ。若い人たちはTikTokが好きなのだから、使わせてあげるべきだ」と言い出したりはしているのですよね。

(田村)

そうなりますよ。テスラのイーロン・マスク氏とトランプ氏は犬猿の仲だと言われていたのですが、最近どうやら仲直りをしましたね。

(深田)

そうですよね。テスラのイーロン・マスク氏と最近話し合いをして、今後、トランプ氏が大統領に就任した際には、彼が顧問として入る話をしているのですよね。

(田村)

メインストリートと言われる産業界の一角を担っているテスラと、金融のウォール街。この両方の流れがトランプ氏に向きつつあるのですよ。これはこれでアメリカらしいなと思いますけれども、やはり問題なのは、中国で荒稼ぎしたいという欲望の塊のようなウォール街の金融資本が、トランプ政権がもし成立したとすると要職に入り込んでしまい、事実上、対中政策を決めるようになることですよね。

(深田)

そうなると結構危ないですよね。イーロン・マスク氏は、バイデン政権が中国からのEV車の輸入に100%関税をかけようという話をしたことに、激しく反対しているわけですよね。

(田村)

それはそうですよ。テスラは習近平総書記から可愛がられていますからね。ただ、トランプ氏はいろいろな交渉の手段を持っていて、それで取引をするのが彼の基本的なパターンなのですね。

バイデン氏の場合は完全にウォール街の言いなりになっているので、特に金融面においては中国に打撃になるような政策は絶対やらないのです。

トランプ氏の場合は、ライトハイザー氏が非常に良い例です。あるいは安全保障の関係の、共和党の保守派の考えですね。1番の有効な方法は、金融面で中国に対して強硬策を取ることです。

トランプ氏本人はディール好きかもしれないけれど、周りの方は非常に一貫した対中強硬策の戦略を考えているわけです。なので、そう簡単に中国に対して転ぶことはないと期待したいのですけれど、トランプ氏としては安全保障上、戦略家たちの対中強硬策を基本にしながらも、おそらくウォール街からは個人的に政治献金が欲しいでしょう。

こういうのを組み合わせて、どういう風にするかですね。これは非常にアメリカらしいことなので、トランプ氏になったから中国に対して強硬策一本で行くぞ、となるかと期待してもいけない。

リアリズムで考えれば、おそらくトランプ流で、例えば「対中金融制裁をやるぞ。お前らにはドルを渡さないぞ。」というような相当の強硬策を口にしながら、台湾併合などの無茶なことはやらせない方向に持っていくのかなと見ています。

けれど日本の方は中国にやられっ放しで、自由貿易協定やりましょうというように言いなりになるでしょう。

(深田)

中国のペースに乗せられっ放しですよね。

(田村)

アメリカの場合はしっかり金儲けもし、同時に中国の封じ込めもやろうとなるので、日本とは訳が違うなと思います。

(深田)

やはり外交の観点からすると、日本はもう少し交渉をしないのかと思うぐらい中国の言いなり、アメリカの言いなりで、日本国民にとって何か良いカードを1枚でも引き出してくれたらいいのにといつも思うのですよね。

(田村)

アメリカの言い値通りに高い武器を買わされて、その言い値に従って何でも言うことを聞きますからね。岸田さんも先の訪米の時には「アメリカの議会で演説させてもらった。ああ嬉しい。」となりましたから。残念ながら、これがいまの日本の政治の現実だと言わざるを得ないのですが、だからといってアメリカが頼りになるかという原点ですよね。

岸田政権、それがダメなら別の政権となりますが、これは日本の政治の根本問題ですよ。とにかく自分が無い、アメリカの言いなりになる。中国に対しても非常に甘い。このまま行けば本当に日本国の安全も経済の成長もおぼつかないことになると、とても心配しています。

(深田)

本当に先生のおっしゃる通りだと思います。日本は自主的に外交戦略を立てて、いろいろな大国と付き合っていけるのか、いまの政権では期待できないので、次の政権に期待したいと思います。

(田村)

安倍政権の時と一番違うのは、外務省や経産省、財務省も日本銀行も、みんな自分の蛸壺に入ってしまっていて、自分たちの省益だけでやっているのですね。だから経済も全然うまくいかない、外交もうまくいかない。そういう意味で官邸のリーダーシップがとれていない。一体何を考えているのだと思います。

一本筋の通った国家戦略の下に、政府各部局が従っていくことが、非常にお粗末と言わざるを得ないですね。

(深田)

このお粗末な政権運営から自民党政権自身もかなり揺らいできて、このままだと岸田政権はもたないから、次の日本の顔となる総理は誰なのかもまだ決めかねていますよね。

日本が今後どのようにしていけば良いのかを、これからも注視していかなければならないと思います。

田村先生、今回もいろいろと示唆に富んだお話をありがとうございました。

政経プラットフォームでは毎回様々なゲストをお招きし、大手メディアではなかなか得られない情報を皆様にお届けします。日本を変えるため行動できる視聴者を生み出すというコンセプトで作られたこの番組では皆様のご意見をお待ちしております。また番組支援は説明欄のリンクからお願い申し上げます。

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