No. 48 深田萌絵×石田和靖 『新世界石油秩序で進む米ドル弱体化の未来』
【目次】
- 00:00 1. オープニング
- 00:38 2. ウクライナ戦争で石油とガスの重要性が増した
- 03:15 3. 世界中がドル依存の恐ろしさに気づき始めた
- 06:23 4. ブリックスが石油支配に乗り出した
- 09:48 5. もうドルの時代は終わる
- 13:35 6. 貧困まっしぐらの日本人の生き方
(深田)
政治と経済の話を分かりやすく政経プラットフォーム。ITビジネスアナリストの深田萌絵がお送りします。今回は越境3.0チャンネルの石田和靖さんにお越しいただきました。石田さんよろしくお願いします。久しぶりのご登場ですが、最近の中東の情勢が変化してきて、BRICS(ブリックス)が新世界石油秩序になりつつあるのではないかについて詳しく教えていただきたいと思います。
(石田)
『第三世界の主役「中東」』でも書いたのですけれども、中東の石油というテーマが世界から見直され、注目されています。特にロシア・ウクライナ戦争以降、世界中で、特にヨーロッパは石油とガスに困っています。
これまで西側諸国の新たなビジネスで、「二酸化炭素の排出量をなくそう、地球環境のために石油やガスを燃やすのをやめよう、これからは自然エネルギーだ」と言って、世界中が何かどんどん変な色合いになってきていた。
(深田)
そうですよね。G7が資源国を封じ込めにかかっているのかなと思っていました。
(石田)
それにプラスSDGsという名の下に作られた新たなビジネスです。そういう動きがあったのに、ドイツなどは石炭を燃やしていますからね。
(深田)
本末転倒ですね。
(石田)
ドイツは環境エネルギーの最先端を行っていたというが、ロシアからの安いエネルギーによって競争力がある高品質なものを作ることができた。この競争力がドイツ経済の源泉になっていたが、ロシアから安い天然ガスを止められて、高いエネルギーで物を作ったら競争力がなくなってしまい、今はアメリカから買わされている。
(深田)
アメリカの思うつぼですよね。
(石田)
日本も同じです。石油やガスがどれだけ重要なのかがロシア・ウクライナ戦争で露わになったわけです。その中で、深田さんがおっしゃっているBRICSは昨年G7の経済規模を追い抜いて、なおかつロシアに制裁を課していない国々を中心に「うちの国もBRICSに入りたい、入れてくれ」と言って、今は申請の順番待ちをしている状態です。
(深田)
日本を含めた西側諸国陣営のメディアでは、ロシアは制裁で孤立していて、仲間がいないというニュースがずっと流れているのだけれども、実はロシアは仲間が増えている状況なのですか。
(石田)
むしろ我々が孤立して、仲間がいなくなってしまうのではないかと思えるほど、今の岸田政権は世界の潮流に逆行している。BRICSが磁力のように色々な国をどんどん引き寄せているわけです。
さらに、バイデンはロシア・ウクライナ戦争で、一番やってはいけないことをやってしまった。それはドルの武器化です。ロシアをSWIFT(スイフト)から外して、ドル決済ができないようにすると、ロシア経済が弱ってプーチン政権が倒れるだろうとバイデンは踏んだわけですね。ところが、プーチン政権は倒れるどころか経済制裁でより一層強くなっているのです。
(深田)
確かにそうですよね。ドルが使えないなら別にドルでなくてもいいと、グローバルサウスチームは踏んでいる。
(石田)
ドル以外の通貨を使おうという動きになった。ロシアではアメリカや日本の企業が撤退した。そうなると例えばユニクロが撤退したが、ユニクロの洋服を着たいと考えるロシア人がいる。ロシア人の企業家がユニクロのような会社を作り、新たな商品やサービスが次から次へと生まれているのですね。これまで海外から輸入して海外の企業に利益をもたらしていたものをロシア人企業家が自ら作るようになって、地産地消を始めた。
(深田)
そうですよね、マクドナルドもどきとか。
(石田)
マクドナルドもバーガーキングもスターバックスもユニクロも作った。ロシアでは新たなビジネスが生まれて、経済がどんどん盛り上がって、起業家が育っている。
一方、周りの国々はアメリカがやってしまったドルの武器化で、ロシアがドルを使えなくなっているのを見ています。ドルは石油を買う時や食料などいろいろなコモディティを買う時に国際決済で取引に必要な通貨です。
たとえば、バングラデシュなどもサウジアラビアから石油買うわけですが、バングラデシュはバングラデシュタカという自国の通貨で石油代金を支払うといってもサウジアラビアは受け取ってくれない。ドルで売りますと言われるので、一旦、バングラデッシュタカをドルに両替して、サウジアラビアに石油代金を支払うという形で石油が取引されるわけです。世界中のほとんどの国がそういう状況です。
(深田)
みなさん強いドルに依存して、エネルギーを買っている。
(石田)
エネルギーだけでなく、ほぼ全てのコモディティと呼ばれるものはドルで取引される。あるいはユーロですが、ほぼドルです。
(深田)
世界はドルが中心なので、アメリカは今まで強気だった。
(石田)
しかし、バングラデシュのような国がもしもロシア制裁のように、ロシアみたいなことになったら、ひとたまりもなくなる。石油、大豆、トウモロコシ、天然ガスも何も買えない。国の経済を破壊してしまうので、ドルに依存するのは怖いと世界中の国々が考え始め、そういう状況が起きている。
グローバルサウスと呼ばれていて、ロシアに制裁をしていないグループがあります。こちらの図で黄色い部分がロシアに制裁している国のグループでG7です。日本や西側の国々です。それ以外のグレーの部分を見てください。こっちの方が圧倒的に多いですよね。
(深田)
グレーの方が面積も数も多いです。
(石田)
ロシアに制裁しても国益にならないどころか、自分の国に対して多大なる損失がもたらされてしまうと考える国々が、ほとんど世界中ですね。その中の赤い四角のラインがグローバルサウスと総称されるもので、その中心に立つのがBRICSなのです。ここに出ている名前の石油会社が新セブンシスターズと呼ばれている国際的に石油を支配する7社の石油メジャーです。
(深田)
今までのセブンシスターズではなく、新しくBRICS中心の新セブンシスターズが誕生してしまったっていうことなのですね。
(石田)
誕生は結構前なのですが、異様に力をつけてきた。これまでの古いセブンシスターズというのは欧米の石油メジャーで、BP(ブリティッシュ・ペトロリアム)、ロイヤルダッチシェル、エクソンモービルなどの7社がセブンシスターズと呼ばれていたのだけれど、それにとって変わる新たな新興国の7社の石油メジャーがこの新セブンシスターズで、ほぼBRICSの国だったのです。
ロシアのガスプロム、中国のペトロチャイナそしてブラジルのペトロブラス、インドと南アフリカを除くBRICSはこの新セブンシスターズの一角なのです。
今年、1月1日に新たにブリックスに加盟をした国々があります。サウジアラビア、イラン、UAE、エジプト、エチオピアで、サウジアラビアのサウジアラムコ、イランのイラン国営石油は新セブンシスターズの一角なのです。
(深田)
かなり強くなってきていますね。
(石田)
さらに今度はベネズエラで、国営石油PDVSAがあり、これもBRICSに加盟申請をしていて、つい先日加盟しました。新セブンシスターズはマレーシアを除く他の6社がBRICSであって、BRICSは石油支配に乗り出していくのだと思われます。
東南アジアのタイが10日前ぐらい前にBRICSに加盟申請しました。タイはASEAN諸国で初めてのBRICS加盟なのですね。タイが加盟するとおそらくマレーシアもブリックスに加盟するのではという話を、越境3.0チャンネルの動画で話しました。
タイとマレーシアの国際関係を考えると、共に中国との取引関係をすごく推進しているのですね。かつ隣国同士で両国の国境地点で一緒に経済特区を作り、かなり経済的な繋がりが深いです。協力はあるけれども、お互い意識をしているライバル国でもあります。そうしたら、大体10日後、マレーシアの首相がBRICS加盟ということを表明しました。
(深田)
ますます大きく強くなっていくBRICSですね。
(石田)
マレーシアに注目したのは、新セブンシスターズがマレーシアも含んで、BRICSの国々になったら、とんでもないことが起こるなということを漠然と感じていました。
(深田)
とんでもないことになるとはどのようなことですか。
(石田)
ひと言で言うとドル排除、ペトロダラー排除です。
(深田)
もうドルの時代は終わるということですね。
(石田)
ロシアへの経済制裁でドルの武器化をやったので、世界中の国々がドルへの依存を低めて下げなければならなくなった。
(深田)
ドルリスクを下げないといけないとなりますね。
(石田)
それでみんながBRICS、BRICSと言ってバーッと集まってきたわけです。
(深田)
ロシアのウクライナ侵攻が始まり、アメリカがロシア制裁を始めた後から、BRICSが急に再注目された。それまでBRICSなどという言葉は消えていましたよね。
(石田)
消えていたし、BRICSは一枚岩になりきれないのですね。ブラジル、ロシア、インド、チャイナ、サウスアフリカはそれぞれが、そこそこの経済規模があるし、人口も多く大きな国なのだけれど、みんな向かっている方向がばらばらなのです。ロシアと中国も今ほど仲良くなく、なかなか一枚岩になれず、向かっている方向もバラバラです。経済グループというよりはサークル的な割と軽い連合体みたいだと言われていたのだけれど、彼らを一枚岩にした大きな要因の一つがドルです。ドルの排除です。
(深田)
アメリカが今までジャイアン的に横暴な政治をしてきたので、それに対する反発は大きいですね。
(石田)
でもトランプさんの頃はまだ良かった。トランプさんの頃は外交政策ですから、大体色々な国ときちんとしたディールをやっていたのです。話し合いをして、取引をして相手の国に利益をもたらし、アメリカにも利益をもたらし、お互いウィンウィンのようなディールをやっていたのだけれど、これがバイデンになってディールではなくて圧力に変わったのです。特に産油国はものすごい圧力をかけられてきた。サウジアラビアはアメリカの圧力に屈しないと言って、あからさまにアメリカ離れを起こしています。
(深田)
トランプ政権の頃はサウジアラビアとアメリカとの関係は良かったと記憶しているのですけれど、バイデン政権に変わってから急に悪化しましたよね。
(石田)
そうですね、たった3年半でここまで変化したのかというぐらいバイデン政権は中東との関係が非常に悪化していますね。
(深田)
今後の日本はエネルギー問題を抱えていくことになると思うのです。
(石田)
それが日本にとって一番重要です。
(深田)
電気代が上がり、エネルギー料金が上がっていくということをヘッジしようと思うと、ここからは投資家的な観点になるのですけれど、第三世界の新セブンシスターズファンド的なものはあるのですか。
(石田)
我々が投資できるファンドはないと思います。新セブンシスターズの株が組込まれているファンドはないけれど、そういう企業が組み込まれているトータル的なファンドはあります。
(深田)
BRICSファンドみたいなものですか。
(石田)
BRICSファンドやミドルイーストファンドで、その中にアラムコが組み込まれている。新セブンシスターズ7社を丸ごと株に組み込んだファンドとかあったら面白いですね。
(深田)
そうです、面白いかなと思ったのですよね。私はこの番組を始めて、この国が良くなるような情報発信ができたらいいなと思っているのですけれど、その前に自衛をして自分の身を守らないといけない。日本が劣化していく速度の速さが岸田政権になってから半端ないです。
(石田)
貧困化に向かってまっしぐらですよ。しかも加速度的に。
(深田)
今まで政治の世界はもっとゆっくり変わってきていたのが、岸田政権になってから法案の通る速度がものすごく早くなった。
(石田)
しかも悪い法案ばかりです。
(深田)
よいものが一つもない。こんな政治の世界はあったのかというぐらい日本が悪化してきているのを見ると、どうやって自衛していけばいいのかなということが逆に気になりますよね。
(石田)
僕が講演会で提案しているのはインディペンデントです。どういう意味でインディペンデントかと言うと他人に依存せず、企業に依存せず、国家にも依存せず、自分と家族と仲間たちが楽しく豊かに暮らしていけるような仕組み作りです。
仕事も奴隷のようにこき使われてするのではなく、企業人や社畜になるのではなく、自分の好きなことだけをとことん追求する仕事のやり方とか、そういう仕事をどの国のどの場所に行ってもやり続けることができる環境を提案しています。
僕はそんなに大金がなくても楽しく豊かに生きられる方法を提唱しています。エネルギー危機や食料危機が起こるかもしれないけれど、日本の周りは海ばかりでいくらでも魚がいるし、山に行けば茸でも薬草でも何でも採れるわけです。だけど山登りに行って茸が生えていて、この茸は食べられるのか毒があるのかってわからないので知識が必要になってくると思う。食べられる茸かどうかという知識や魚を釣ってさばける知識など、そういうことができれば食い物には困らない。
誰に教わったのかというとアイスランド人です。アイスランドは2009年にアイスランドショックがあって、リーマンショックで一番先に影響を受けたのはアイスランドなのです。アイスランドショックでアイスランドクローナが大暴落し、メガバンクもみんな破綻して、持っている資産が紙屑になった。仕事を解雇されて、仕事がなくなった、経営している会社が破綻した。そんな人が続出したのです。
同じことが日本で起きたら、自殺者が出ますよ。日本人は自殺するが、アイスランド人は一人も自殺をしてないのです。心配になって知り合いの証券会社の会長に「どうですか、大丈夫ですか」とメールを送ったら、今家族と一緒にテントを持って田舎の方に来て、キャンプで生活をしている。こんなでっかいサーモンを釣ったと言って「2週間分の食料を釣ったぜ、イエーイ」なんて明るい笑顔の写真を送ってくるわけです。「アイスランド人、たくましいわ」と思った。
(深田)
そういう生き方、いいですよね。
(石田)
そのアイスランド人のアイデンティティがDo It Yourself、自分でできることは自分でやるDIYであって、「インディペンデントであれ」という考え方なのですね。
(石田和靖氏からのお知らせ)
『10年後、僕たち日本は生き残れるか』というタイトルで、~未来を開く「13歳からの国際情勢」~ということで、角川書店から7月31日に本を出します。私の息子が今13歳なので、息子に向けて当てた「こういう風に生きろよ、インディペンデントであれ」という父親の愛情というかメッセージです。先日アマゾンの予約が開始されて、予約に特典がついています。激変するサウジアラビアの写真集が特典の1つ目で、2冊以上のご予約いただくと、その写真集を著者が徹底解説した動画をプレゼントします。
政経プラットフォームでは毎回様々なゲストをお招きし、大手メディアではなかなか得られない情報を皆様にお届けします。日本を変えるために行動できる視聴者を生み出すというコンセプトで作られたこの番組では皆様のご意見をお待ちしております。また番組支援は説明欄のリンクからお願い申し上げます。