#40― 深田萌絵×安藤裕 『岸田政権が隠す消費税二重取り増税地獄とは!?』

(深田)

政治と経済の話を分かりやすく、政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵がお送りします。

今回は前衆議院議員で税理士でもいらっしゃる安藤裕先生にご登壇いただきました。先生よろしくお願いします。先日、インボイス制度の解説をしていただいて、よく考えたら「これは二重課税どころか、多重課税に繋がる制度なのではないか」と気がついてしまったのです。

(安藤)

あれだけでよく気がつきましたね。

(深田)

先生の解説があったからこそ、気がつけたのですけれども、その辺りをもう1度詳しくお話しいただいてよろしいでしょうか。

(安藤)

はい。前回は「消費税の正体とインボイス」についてお話ししましたので、今回はその復習も兼ねながら、深田さんが今おっしゃった「インボイスが入ることによって、消費者が払っている消費税額以上に国が儲かる」仕組みを説明したいと思います。

まず、インボイス制度で消費税の二重取りができてしまうインボイス制度の本質について説明します。ここは前回の復習ですが、インボイス制度とは「免税事業者に対する増税」と認識している人が多いですが、そうではなくて、「課税事業者で原則課税の事業者に対する単なる増税」です。ここも今日はおさらいをしつつやりたいと思います。

多くの国民の皆さんは、消費税に対して「まず適正な経費・原価に適正な利潤・利益が乗せられて、適正な売価が設定された後、10%の消費税が上乗せされた価格」が、「適正な販売価格」として設定されて、全ての取引が行われていると幻想を抱いています。だから、この幻想で消費税を捉えている方は、消費税を納めない免税事業者に対して、「お前、適正な利益を乗っけている上に、さらに10%消費税を上乗せして取っているくせに、それを納めないでポケットに入れている。お前は汚い」と言われます。

もし、このファンタジーが成り立つ社会であれば、赤字企業は存在していないはずです。「適正な利潤」が乗せられていれば、「適正な経費」が払われているのだから、赤字企業は存在しないし、低賃金労働者もいないのです。

(深田)

そんなファンタジーな世の中、果たしてあるのでしょうか。

(安藤)

そうなのですよ。だからファンタジーの世界ならば、成り立つ税金が消費税なのですが、現実社会では成り立ちません。しかし、皆さんはこのイメージで捉えているので、財務省に騙されたまま、「免税事業者がこれまで納めてこなかった消費税を払うだけだ」「益税を得ていた免税事業者はずるい」「適正な納税がなされるだけで、消費者には影響がない」と考えてインボイス制度を受け入れてしまいます。このイラストの人みたいに、皆さん騙されて目が虚ろになって思考停止状態になっていますね。

では、消費税の納税額の計算の仕方についておさらいです。ここをしっかり押さえていただきたいのですが、消費税の納税額の計算式は下記の順番の通りです。

①売上額にかかる消費税分を計算します。

「売上×10/110」

②消費税がかかっている取引に含まれる消費税額を算出します。

「課税仕入×10/110」

③売上にかかる消費税から仕入にかかる消費税を差し引いて納税額を算出します。

「課税売上×10/110-課税仕入×10/110」

③の式は、小学校の算数で習った通り、どちらも10/110をかけているので、括弧で括っても計算できます。

「(課税売上―課税仕入)×10/110」

ここで、注目してもらいたいのは、この括弧の中です。(課税売上-課税仕入)で、「課税売上」から「課税仕入」を差し引くと、「利益」と「非課税仕入」が残ります。つまり、(課税売上-課税仕入)は、実は(利益+非課税仕入)となります。「非課税仕入」の代表は人件費ですから、消費税は(利益+人件費)に課税しているのと同じです。つまり、「付加価値に課税している税金である」と言えます。

これまでは、経費の部分が「課税仕入」と「非課税仕入」に分かれていましたが、インボイス制度が導入されたことによって、これからは「インボイスのある経費」と「インボイスのない経費」に分類されることになります。法人税は利益だけに課税されますが、消費税は(利益+インボイスのない経費)に課税されますので、法人税よりも課税ベースが広い税制です。このような過酷な課税の仕組み故に、「消費税は第二法人税である」と言われることもあります。黒字の時ならば「大変なのね」で済むのですが、赤字でも課税されるので非常に過酷なのです。

消費税のファンタジーを信じている国民の皆さんは「赤字企業だったら当然払えない」という考えに行き着かず、「預かっている消費税を払わないなんておかしい」と考えるので、赤字企業が納税で苦しんでいることがなかなか理解されないのです。

(深田)

派遣の社員は、仕入税額控除の対象なのですが、社員の人件費は控除の対象ではないので、この点がちょっとおかしいですよね。同じ働いている人なのに、税制上扱いが違うところが、まず不公平ですよね。

(安藤)

そうですね。だから最近流行っているのは、今まで雇っていた人を雇用契約ではなく、外注契約にしたり、派遣にしたりして、とにかく消費税の課税対象の取引にしようとします。それに加えて、人件費は固定費になるので、これを変動費化させる動きも結構あります。

つまり、インボイスが導入されると、「課税事業者に対する増税」になるのです。これまでは(売上-課税仕入)の部分、要するに(利益+非課税仕入)の部分が消費税の課税対象になっていて、取引の内容によって「課税仕入」と「非課税仕入」を分類していました。免税事業者からの仕入も、取引の内容が消費税の課税対象の場合、課税仕入の方に入れることができました。

しかし、インボイスが導入されると、インボイスという領収書や請求書がないと、「インボイスのある経費」に入れられず、「インボイスのない経費」になってしまうのです。つまり、インボイス制度を導入すると、消費税の課税ベースが拡大しますから、「課税事業者に対する増税だ」というのが基本的な理解なのです。でも、この考えが、実は全然浸透していません。

(深田)

先生から解説してもらうまで、この基本のカラクリがあまり理解できていませんでした。

(安藤)

このように、色々なところで喋らせていただくと、「確かに、そうなっているよね」と反応があり、結構広がってきている手応えはあるので、すごく嬉しいです。

(深田)

税理士でないと、ここまで具体的に説明するのは難しいですよね。

(安藤)

税理士でも騙されている人は多いですからね。

(深田)

なるほど。税理士であり、且つ、元々国会議員として制度にも精通していらっしゃるからこそ見えてきた実態なのかなと思います。

(安藤)

やはり問題意識を持っていないと、経理処理も預り金としてやっているので、「消費税はただの預かり金だろう」と騙されてしまうのです。

(深田)

でも、ここの基礎を抑えると「あれ? インボイスがない請求書や領収書は税金を払うのか。この人が取引をしている元々の仕入にも『インボイスのない領収書』があるから、実は何回も税金を取られているのではないのか」と前回の収録が終わってから気がついたのです。

(安藤)

なるほど。インボイスを見て「どうなっているのだ、これは」と、自分だけでなく、さらにその前の人も増税されていることに気がついたのですね。

(深田)

「もしかして、二重課税以上やられてしまっているのではないか」と思ったのです。

(安藤)

課税事業者に対する増税策なので、対応策は3つあります。まず、売値を上げて消費者や取引先に押し付ける値上げ、次が自分で負担すること、3つ目が免税事業者へ負担させることです。この3つ目の選択肢ばかりクローズアップされており、「免税事業者が負担しているのだ」という話になっていますが、実は3つ対応策があります。

(深田)

今の状況で例えると、ここは小さいスタジオで、小規模事業者の外注さん何人かにお願いしているのですが、自己負担をするしかない状態です。

(安藤)

人間関係ができていると、「この人に負担させるのは気の毒だ」という気持ちになって、「仕方ない。自分で負担するか」となります。

(深田)

そうすると、こちらの利益はやはり減ってしまいます。

(安藤)

そうです。その話を具体的にやっていきたいと思います。要するに、負担の押し付け合いで、弱い者が負担せざるを得ないのです。

ここから本題なのですが、上の段の図が、国税庁の『消費税の仕組み』でよく説明されるものです。まず、製造業者が5万円でモノを卸売業者に売ります。その時、その5万円に消費税10%を上乗せします。製造業者は5万5000円のうちの消費税5000円を税務署に納めます。次に、卸売業者は5万円で仕入れたものを7万円で売ります。10%消費税が上乗せされているので、卸売業者は小売業者から7万7000円をもらうけれども、そのうちの7000円分が消費税です。仕入れの時に5000円を払っているから、7000円から5000円を差し引いて2000円を消費税として納めます。小売業者は7万7000円で仕入れたものを、今度は消費者に11万円で売ります。11万円のうち、1万円の消費税が含まれているので、この1万円から仕入れた時に払った7000円を差し引いて3000円の消費税を納付します。

つまり、製造業者が5000円、そして卸売業者が2000円、小売業者が3000円を税務所に納付しているから、合計1万円です。なので「消費者が負担しているとされる1万円と一緒でしょう。だから消費税は、消費者が事実上負担している税金なのです」と説明をしています。

けれども、今度インボイス制度が入ってくると、卸売業者が仮に免税事業者だった場合、また違う流れになります。下の段の図をご覧ください。まず製造業者は変わらず、5万円に5000円の消費税を上乗せされているので、5000円をそのまま消費税として税務所に納めます。卸売業者は、同じく仕入5万5000円、売上7万7000円ですが、免税事業者なので消費税を納めません。卸売業者は2万2000円の利益が出て、これが法人税や所得税の課税対象になるのですが、消費税は0円です。この免税事業者である卸売業者から小売業者が仕入れをすると、仕入が7万7000円です。今までは、仕入7万円と消費税7000円となっていましたが、インボイス制度では卸売業者が免税事業者なので、消費税を払ったことにならないのです。だから、7万7000円のモノを仕入れた格好になります。それで、小売業者が税務所に納める税金は、1万円を消費者から貰っているとしても、仕入れの時に払っている消費税はないので、1万円を丸々税務所に納めることになります。消費者は最終的に11万円で買い物をしているので同じです。

これで税務署に支払う消費税は、それぞれ製造業者は5000円、卸売業者は0円、小売業者は1万円を払っています。そうすると税務所に行く消費税は1万5000円になるのです。

(深田)

そうですね。増えていますよね。

(安藤)

増えているのです。「最初のよりもなんだか増えているぞ」となります。

(深田)

この制度を作ったザイム真理教の官僚の皆さんは、この二重課税は税法上のルール違反だとご存知ですよね。

(安藤)

しかし、これは二重課税にはならないのです。要するに、このインボイス制度は、消費税の仕入税額控除のルールなので、「仕入税額控除をしていいものを、インボイスのあるものに限定した」だけなのです。だから、これに対して課税をして、更に消費税を別のところでもう1度課すことにはならないのです。

(深田)

私はそこが理解できないのです。1度消費税は払っていても、間の人は払っていないので、もう1度払った時に余分に払っているのですよね。

(安藤)

そのような気がするでしょう。それは「消費税が間接税」と思っているから、そう感じるのです。消費税とは、消費者が払うものではなく、事業者に課せられている税金であり、「経費として引けるのはインボイスのあるものだけ」というルールになっているだけなのです。「インボイスのない領収書がいくらあっても、引いてはいけないルールにしたからね」というだけです。

(深田)

確かに事業者が直接納めているから、これは直接税なのですね。

(安藤)

そうです。消費者は関係ないのです。だから、その前の段階で「払っている」「払っていない」は関係ありません。

(深田)

もうとんでもないインチキですね。

(安藤)

そうなのです。インボイス制度によって、卸売業者の消費税の負担がなくなりますが、小売業者の人は3000円の納税で済んだものが、1万円の納税をしなくてはいけないので、7000円負担が増えるのです。政府はトータルすると5000円儲かります。

多分、これから問題になってくるであろうことを以前も少しお話しましたが、1人親方を抱え込む建設業者などは、1人親方に消費税負担をさせないで、自社側で負担するので消費税の納税額が増えるのです。建設業者が小売業者のような役割になります。

でも実は、このインボイス制度を導入したことによって、財務省も「失敗したな」と思っているのではないでしょうか。なぜかと言うと、消費税の正体がばれてしまい、「直接税だ」「第二法人税だ」と広まってしまったからです。だから、ネットのYahooニュースなどの「預かり金だ」「益税だ」というニュースのコメント欄を見ると、「嘘を言うな」みたいなコメントですごく溢れるようになってしまったのです。

また、ずっと「消費者が負担する税額と、事業者が納税した消費税の合計額が同じ」と説明されてきましたが、インボイス制度を導入してことで、それが成り立たなくなったので、「消費税は消費者が負担する間接税ではない」とここでもばれてしまったのです。そして、国民が賢くなってきたから、消費税廃止論が更に根強くなってきたと思います。

(深田)

先生、次の書籍のタイトル『消費税廃止論』はいかがですか。

(安藤)

『消費税の正体』でも良いですが、『消費税廃止論』も良いですね。

(深田)

「賢くなってみんなで消費税を廃止しよう」という帯にしたらいかがでしょうか。

(安藤)

良いですね。頑張りましょう。

財務省は今、インフルエンサーや有識者、タレント、経済学者などを使って、「消費税増税キャンペーン」をかなり強化しています。財務省のご用学者の人たちの集まりである「東京財団政策研究所」では、消費税の増税プログラムをしっかり考えて、「どうすれば消費税増税が実現できるか」を着々と進めています。そこにも相当予算が付いていると思いますし、消費税の正体がばれてしまったことに、できるだけ動揺しないようにして、今までのプログラム通りに「消費税増税」に向かって進んでいる感じです。

(深田)

前衆議院議員で現役の税理士でもいらっしゃる安藤裕先生による「インボイス制度は税金の取りすぎだぞ」「消費税を廃止してやる」という『消費税廃止論』、これから企画を上げるところなので、まだ発売の予定日は未定ですが、皆さん発売をお楽しみに! 

先生、本当に今回も素晴らしい解説で「インボイスインチキ」について暴いてくださり、ありがとうございました。

Visited 12 times, 1 visit(s) today

おすすめ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です