#650 〇月が運命の分かれ道?現役トレーダーが警告する「物流崩壊」と「計画停電」の危機 マイケル氏(仮)(2026.4.7)

(深田)
皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム プロデューサーの深田萌絵です。今回は電力会社の現役エネルギートレーダーのマイケルさんにお越しいただきました。マイケルさんよろしくお願いします。

(マイケル)
よろしくお願いいたします。

(深田)
前回はイラン戦争の影響で世界のエネルギーがどうなるのかという非常に不穏なお話をいただきました。今回は日本にフォーカスし、日本の現状や今後について分析を教えていただければと思います。

(マイケル)
了解いたしました。残念ながら厳しい内容になるかもしれません。それでも分かりやすくお伝えしたいと思います。
前回は世界全体についてお話ししましたが、今回は日本に焦点を当ててお話しします。

1.足元の影響は?(振り返り)

まず振り返りとして、現在世界でどのような影響が出ているのかを整理していきます。

(深田)
おさらいすると、第一次的なショック、そして第二次的な物流産業や電力供給への初期ダメージという段階があり、日本はまだ価格高騰や金融市場の混乱程度しか感じていない状況ですが、他の脆弱な国ではすでに物流や電力供給への影響、さらには経済全体や社会システムへの波及が始まっているということでしたね。

(マイケル)
その通りです。国ごとの温度差が非常に大きいのが現状です。特にアジアでは、SNSなどを見ても日常的にさまざまな問題が顕在化しているのが分かります。

2.油種別

(マイケル)
多くの方は今回の中東情勢に関連して、原油やLNGがいつ届くのか、日本は原油の備蓄が約250日分あるので大丈夫ではないかと見ています。

しかし実際には、我々の産業は原油がそのまま使われるわけではなく、ガソリンやジェット燃料、軽油、重油などに精製され、それらが輸送を支えています。さらにナフサは石油化学の原料となり、そこから多様な製品が作られます。この石油化学製品への転換が滞ると、社会全体が徐々に軋み始めるのが現状です。

(深田)
なるほど。ただ、原油があるなら石油化学製品の原料も確保できているのではないか思いますが、そこはどうなのですか?

(マイケル)
実は日本の石油製品の輸出入を見ると、ガソリンや軽油、重油は年間でほぼバランスを維持しています。冬場には灯油やジェット燃料の輸入が増えますが、年間では均衡していますので、原油さえあればある程度は対応可能です。問題はナフサで、これは石油化学の主要原料ですが、需要の約60%を輸入に依存しています。

(深田)
原油からナフサを作っているわけではないのですね。

(マイケル)
国内でも40%程度は生産できますが、日本の石油化学プラントは規模が大きく、それだけでは足りないのです。

(深田)
ナフサはプラスチックや化学繊維の原料になるなど、日本の産業にとって非常に重要ですよね。これが不足すると日本の製品の生産ができなくなる側面もありますよね。

(マイケル)
まさにその通りです。そしてナフサの主な供給元は中東であり、ほとんどをそこに依存しています。

(深田)
ナフサはほぼ中東から輸入しているわけですね。その中で世界が有事に向かうと、兵器に不可欠なカーボンファイバーの原料も影響を受けます。ナフサからアクリロニトリルを経て製造されるこれらの素材もできなくなるということですね。

(マイケル)
そういうことです。エネオスや出光、コスモといった石油会社は需要に応じて原油を調達し製品を生産しますが、原油の量が計画通りに入ってくることを前提に作るのですね。しかし今回、世界の約25%を占める中東からの供給が閉ざされました。日本も中東依存が高いため影響を受けており、有事(2月28日)から3週間がたって、最後に現地を出発したタンカーがようやく到着して、そこから入ってこないのです。

(深田)
それは徐々にダメージになりそうで怖いですね。

(マイケル)
石油会社としても代替調達を進めているとは思いますが、計画通りにはいきません。その結果、備蓄があっても長期的には減産せざるを得ず、現在すでに設備稼働率は約70%弱まで低下しています。近いうちに50%程度まで落とすと思います。

3.足元での影響(直近)

(マイケル)
石油が調達できなくなると石油製品の供給自体が減少し、自社の直営や既存契約先が優先され、余剰分を扱う卸市場への供給は止まります。

(深田)
確かに、世界中から需要が殺到しますよね。

(マイケル)
そうです。結果として輸出は停止し、国内でもいわゆるスポットの短期市場への供給が止まります。すでにその状況が現実に起きています。特にナフサは深刻で、減産あるいは一部で稼働を止めています。

(深田)
もう稼働を止めているのですか?

(マイケル)
はい。一部は完全停止、他は減産という状況です。そのためナフサ由来のエチレンなどの中間材が急騰しています。そこからポリエステルなどの樹脂製品が作られるので、関連する価格もどんどん上がっています。

一方ガソリン価格は、今の店頭値段はフォーミュラ(公式)で決まっているため原油価格の上昇がそのまま反映されます。日本では一定の計算式に基づいて1週間単位で価格に反映される仕組みです。戦争が起こった時に原油が1バレル120ドルまで上昇した影響が、現在の価格に反映されています。

(深田)
つまり価格は計算式に基づいて算出されているだけで、SNSで取り沙汰されるような恣意的なものではないということですね。

(マイケル)
そういうことです。急激に価格が上がったかと思えば、翌週にはやや下がりましたが、これは純粋に原油の国際市場価格を反映しているだけなのです。現在は国が補助金を投入してさらに価格を抑えていますが、僕はむしろ需要を抑制することが重要だと考えています。価格が上がれば自然と消費は減ります。

フィリピンでは「国家エネルギー緊急事態宣言」を出して「乗るな」と言っています。しかし日本では補助金をばら撒いて需要を維持し「多少高いけど安心して使ってください」と言っているのですよね。これは最大の愚策ですよね。

(深田)
逆の対応になっているわけですね。

(マイケル)
そうなのです。ガソリンの在庫切れを加速するだけです。補助金により兆単位のお金が消失するだけで、何もいいことがありません。さらに現在じわじわと影響が出ているのが中間留分、つまり灯油やジェット燃料、軽油といった物流を支える燃料です。

減産の影響で必要量が確保できず、調達できない事業者が増えています。それに伴い一部の運送業が業務を停止しています。航空分野でも地方空港での運航に支障が出る可能性が高まっています。

さらに重油も危機的です。これは発電用燃料として使われており、現時点ではまだ供給は維持されていますが、6月以降については不透明です。供給業者は「問題ない」と言っていますが、厳しくなると思います。そうなると重油火力発電の稼働を落とさざるを得なくなり、特に夏場の冷房需要が増える時期には電力供給が追いつかない可能性が出てきます。

船舶燃料もかなり深刻です。国内の港湾間で物資を運ぶ内航船はスポット市場で燃料を確保できなくなっています。特に西日本では先週あたりから顕著で、すでに物流に支障が出始めています。

(深田)
スポットで重油が買えない状況なのですね。長期契約分は確保できていても、さらに追加で調達しようとしてもスポットでは入手できない状況ということですね。

(マイケル)
そこがボトルネックで、追加供給が出てこない状況になっています。表には出にくい分野ですが、実際にはすでに起きている問題です。

(深田)
もう始まっているということは、電力不足が視野に入っているということですね。

(マイケル)
4月から6月は一年の中でも気候が落ち着く時期なので電力需要が低い時期であり、問題が表面化しにくい状況です。しかし夏場の猛暑時には、数年前に経済産業省が節電要請を出したような状況が再び起きる可能性があります。その際、LNGや重油の供給が不足していると、需給バランスが崩れる恐れがあります。電力会社の人間としては慎重に言うべき内容ですが、そういう可能性はあると思います。

(深田)
日本の火力発電は天然ガスや重油が中心ですか。石炭は使われていないのですか?

(マイケル)
石炭火力もあります。現時点ではLNGも含めて一定の調達は維持されており、例えばシェルやBPといったトレーダーが3か月程度の供給を確保しています。中東から出なくなっても代替手段が用意されているため、短期的には持ちこたえられる見込みです。ただし紛争が6月頃まで続いた場合、世界全体の供給計画が乱れ始め、バランスが崩れてくる可能性があります。

(深田)
つまり、そこから状況が変わるわけですね。

(マイケル)
はい。石炭については主にオーストラリアから輸入していますが、石炭そのものは問題ありません。ただしその採掘や輸送には大量の軽油が必要であり、オーストラリア自体は石油製品をほぼ輸入に依存していますから、軽油の供給が滞ると、石炭はあっても輸送できないという事態が起こります。

(深田)
オーストラリアは軽油を自給できないのですね。

(マイケル)
製油所が1つしかないためほとんど輸入です。原油やガスは輸出する一方で、石油製品や軽油は輸入に依存する構造です。その軽油の供給元である日本や韓国、シンガポールが輸出できなくなると、供給網全体が崩れます。結果として石炭があっても必要な場所に届けられなくなります。

(深田)
蒸気機関車に戻るしかないということですね?

(マイケル)
石炭焚きの船という手もありますね(苦笑)。

(深田)
非常に深刻ですね。

(マイケル)
要するに、資源はあっても、それを運ぶためのエネルギーが不足し、サプライチェーンが途絶するという現象が各所で起きる可能性があります。

(深田)
非常に現実味のある話ですね。日本もアメリカ・ウエストバージニアのようにそこで転がっている石炭をくべて火力発電をするような、産地直結型のエネルギー利用を考えるべきかもしれません。

(マイケル)
その必要性は高いと思います。

4.3か月以内の影響(想像より早い)

(深田)
今後の見通しはいかがでしょうか。

(マイケル)
あくまで個人的見解ですが、6月が一つの分岐点になると考えています。もしそれまで戦争が長引いていれば、日本へのエネルギー供給が途絶、あるいは極端に制限される可能性があります。石油会社や電力会社それに合わせた供給制限を行わざるを得ず、結果として発電制限、さらには夏場の計画停電の可能性もあります。また物流ネックによるありとあらゆる物価上昇はすでに始まっており、今後さらに顕著になるでしょう。

(深田)
そうですね。車の塗装をしようとしたら、塗料の溶剤が65%も値上がりしていて驚きました。

(マイケル)
まさにそのような現象が各所で起きています。中間材の価格上昇はすでに広がっており、調べればすぐに確認できます。一方で、日本政府が一番鈍く、節電要請などは現時点でほとんど出ていません。

(深田)
それは不思議ですね。

(マイケル)
非常に不思議です。この状況で「この自信は何だろう」と感じます。

(深田)
仮に節電を要請すれば「節電してください」「何故ですか?」「エネルギーが足りないからです」「それは日本がイラン戦争を応援しているからですよね?」と政策の失敗を認めることになりますよね。だから、やぶ蛇になるので、言わないと思うのですよ。

(マイケル)
そのようなプライドがある限り、みんなどんどん消費して、枯渇のタイミングを早めるだけになると思います。

(深田)
そうですよね。そうなると現在は高市政権下で、原発推進派が政権の中心にいますので、このタイミングで原発推進を押してくるのではないかと思います。

(マイケル)
そのような議論は出てくる可能性がありますが、現実には簡単ではありません。例えば柏崎刈羽原発のように再稼働したケースでも、長期間停止していた設備を動かすのは非常に難しく、いろいろなトラブルが生じています。北海道の泊原発など、まだ稼働していない施設もありますが、半年や1年前倒しでの稼働を求められても、現実的には難しいでしょう。

(深田)
原発はスイッチを入れればすぐに動かないのですか?

(マイケル)
動かないですね。安全性が最優先されるため、再稼働にはかなり慎重な手順が必要です。柏崎刈羽のケースでも長い準備期間を経て、安定稼働を確認してから本格運転に入っていますが、それでもトラブルの兆候があれば停止せざるを得ません。十数年停止していたリスクの高い設備を扱う人材も不足しており、運用経験のない世代が中心になることから、現場の不安も大きいと思います。

(深田)
長期間止まっていた設備を、経験の少ない人たちが扱うというのは、確かに不安でホラーでもありますね。

(マイケル)
その通りで、場合によっては6〜7割の人が未経験という状況もあり得ます。OBの支援はあるでしょうが、それでも一気に体制を整えるのは難しいと思います。

(深田)
今後、新しい原発を建設する議論も出てくると思いますが、それはどうでしょうか?

(マイケル)
2011年当時の日本のエネルギー基本計画では、原子力の比率が50%超で非常に高く設定されていました。輸入依存の高い日本にとって、脱化石燃料や安定供給を考えると原発しかないとなっていたわけです。その後の福島第一原発の津波問題で後退しましたが、今回のような事が起こると、原発以外に現実的な選択肢はあまりないと思います。

もう一つ重要なのは、悲しいことにエネルギー調達における日本のプレゼンスが低下しているのです。

(深田)
それは、日本が「エネルギー売ってください」と言っても、売ってもらえないということですか?

(マイケル)
そういうことです。

(深田)
どの国が強いのですか?

(マイケル)
中国とインドですね。購入量が増えており、金払いがいい。今後の需要拡大も見込まれるため、供給側から見て魅力的なお客様です。日本は石油会社を含めて、中東ではずっと良好な関係を維持してきて、いいお客さんではあると思います。

しかし、日本が契約を解消し「必要以上はいらないね」と購入量を減らしているので「はい、では並んでください」となった時には先頭には並べないのですよ。「列の後ろにちゃんと並んでくださいね」という立場になっているのですね。

(深田)
日本では効率化を重視して、株主資本主義に傾倒した結果、在庫を最小化してきたことが影響しているのかもしれませんね。

(マイケル)
そうですね。日本のエネルギーはやはり石油会社だけでなく商社も大切な役割を占めて、中東やアメリカなどいろいろな国と関係を維持してきたのですけれど、実は彼らのトレーディング機能がことごとく閉められているのですよね。

(深田)
つまり、商社も積極的に調達する力が弱まっているということですか?

(マイケル)
そうです。

(深田)
今回は、日本のエネルギー事情が非常に危ないということと6月が一つの分岐点になることについてお話しいただきました。日本のエネルギー事情の悪化が見えてくるので、皆さんも早めに備えておいた方がいいかもしれません。

ではマイケルさん、今後に備えて私たちができることは具体的に何があるのでしょうか?

(マイケル)
これまで我々の生活は、常に電力やエネルギーが当たり前にあるという前提でやってきたので、やはりそこを見直すということは必要ですね。

日本人は真面目な民族なので、政府が「こういう状況なので、節電節約しましょう」と説明すると、一部ではパニック起きるかもしれませんが、多分抑えられるのではないでしょうか。それは日本人の民度を信じて行動していくことかなと思います。また、欧米など世界情勢を適切な判断ができる人を育てることも重要だと思います。

(深田)
はい。現実をしっかり見て備えること、そして「政経プラットフォーム」を見ていただいて、正しい日本政府のプロパガンダではない情報もしっかり見ていただきたいと思います。本日は現役エネルギートレーダーのマイケルさんにお話を伺いました。ありがとうございました。

(マイケル)
ありがとうございました。

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