#646 来るのか食料危機!?世界が奪い合う中で「減産」を強いる日本政府の異常事態と輸入の罠 鈴木宣弘氏(20264.3)

(深田)
皆さん、こんにちは。政経プラットフォームプロデューサーの深田萌絵です。今回は東京大学特任教授の鈴木宣弘先生にお越しいただきました。鈴木先生よろしくお願いします。

(鈴木)
よろしくお願いします。

(深田)
前回はホルムズ海峡封鎖で実は日本の食が危ない、食料自給率は本当は9.2%切っているというところを教えていただきました。それに輪をかけて日本の政府は、酪農家さんをさらにいじめているところなのですが、どのようなことですか?

(鈴木)
これだけの状況になってもまだ余っている状況だから、もっと生産を減らせということです。

(深田)
お米だけではなく、酪農もそうなのですか?

(鈴木)
酪農もそういうことだと政府は言うわけです。さらに言うとサトウキビとかビートもそうですね。今、脱脂粉乳の在庫が非常に増えすぎているので、メーカーが処理しきれなくて困っている。それを牛の餌などにして処理するのにお金がかかるから酪農家が出せというのです。

(深田)
酪農家が出すのですか?

(鈴木)
基本的に政府はやらないという方向をまた強めて、酪農家さんにお金を出してもらう仕組みを今強化しているのです。これが今のホルムズ海峡だけではなく、世界の食料需給のこれからの中期的な見通しからも、どれほど逆行していて、間違った方向性なのかということです。

日本の進めていることをもっと大局的に整理しないといけないです。脱脂粉乳が余って、それを処理しないといけないからお金を出せとか、生産を減らせとか言っている場合ではないということを分からないといけないのです。

(深田)
そうですよね。

(鈴木)
今、インドの人口はすでに中国を超えて、15億人ぐらいになってきています。新興国中心に、まだまだ肉や乳製品の消費中心にどんどん食料需要が増えますよね。そうなると、日本では「余っているから作るな、搾るな」と言うが、世界情勢を考えると、食料はどんどん足りなくなってきます。

そういう状況をしっかりと見ないで、重箱の隅を突いて「脱脂粉乳が20~30万トン余り、処理をすると何億円もかかるから生産者が負担せよ」「来年はちょっと搾ってはいけない」と言われ、みんな右往左往しているわけですよ。

今はどんどん増産しないといけない。世界から入らなくなるのだから、日本の生産者の生産基盤を壊してしまうと、本当に足りなくなってくる。そういうことを全く見ていないということが酪農でも起こっているのです。

(深田)
確かにそうですよね。うちに来られるゲストの先生方も「食料品は輸入すればいいのではないですか」とおっしゃるのですよ。「日本の米は、国際価格と比較しても本当に高すぎて、あんなものを誰が食うのか。輸入米、輸入牛で十分なのだ」とおっしゃる方もいらっしゃるのですよね。バターはまだしも牛乳とかは輸入は無理ですものね。

(鈴木)
飲む牛乳は輸入できません。もちろんバターとか脱脂粉乳は輸入もできますが、今回のホルムズ海峡とかでも分かるように、輸入がストップする事態というリスクがどんどん高まっていることをどう評価するかですよね。

(深田)
あとは燃料が高くなると、輸入はどんなものでも値段が上がりますよね。

(鈴木)
そうですね。輸入品もコストが上がってきて、国産との差は非常に小さくなってきています。輸入品について、今言ったインドの人口がどんどん増えて、食料需要が高まって日本が買い負けする。紛争のリスクが間違いなく高まっている。それから異常気象で不作も生じるリスクが高まっています。

そういうことを考えると「輸入ルートを止められてしまう。輸入ができなくなる」というリスクはものすごく高まっているわけです。そうすると輸入に頼ればいい、その方が安いと言っていたら、止まった時に食べるものがなくなります。その時にみんなが餓死するリスクを考えると、そうならないために、少々高くても国内で作る必要世があるのです。

国防、安全保障を考えれば、国内で作る方が、実は安いのだということですよね。止まった時に命が守れなかったらそれほど高い代償はないわけですよね。

(深田)
酪農品の牛乳とかバターは国産品の方が安くないですか?

(鈴木)
実はそうなってきています。

(深田)
そうですよね。だからそこが何か不思議なのですよ。お米は明らかに国産米が高いじゃないですか。日本のバターを見ると、もともと200円台だったのが徐々に上がって今は300円超えてきていますけれど、それでもフランスのエシレバターと比較すると、日本産の方が全然値段も安いですよね。

(鈴木)
よく見ておられますよ。実は乳製品は日本の方がもう安くなってきているものが多いのです。日本はミニマムアクセスで、米は最低限77万トン枠を決めて輸入しないといけない。実はバターとか脱脂粉乳もそういう枠があるのです。

(深田)
えっ、あるのですか?

(鈴木)
生乳で換算すると13万7000トンは買わないといけないのです。

(深田)
それを買う時に何か補助を出すのですか?

(鈴木)
それは関税をほぼゼロで輸入するという枠なのです。

(深田)
それでは外国製品には補助金を出しているようなものではないですか。

(鈴木)
そういうことですよね。しかも絶対輸入しないといけない枠ではないのに、日本だけがくそ真面目に全量輸入しているのです。米も本当は77万トン輸入しなくてもいいのに、絶対に輸入をしないといけないと国会でも言い張ってきた。酪農も乳製品の生乳換算で13万7000トンは絶対に輸入しないといけないのだと言って、日本でどんなに余っていてもその輸入を止めないのですよ。

そんなことをしているのは日本だけです。他の国は、乳製品にも低い関税で輸入する枠を決めていますが、日本以上に他の国は乳製品の輸入をシャットアウトしています。牛乳・乳製品は欧米にとっては、やはり一番の子供たちを守るために、いざという時になくてはならない食料ですから「海外に依存してはいけない」とほとんどシャットアウトしているのですよ。

ミニマムアクセスと言って、消費量の5%については、低い関税で輸入するという枠が他の国にもあるのですよ。日本はたくさん輸入する枠があるのだけれども、他の国は何をやっているかというと、5%の枠のうち1、2%分しか輸入していないのです。

全量輸入しないといけないという約束ではないのに、日本だけがものすごい大量のパターや脱脂粉乳を義務として輸入して、国内を余らせて、それで国内減産しろと言っているわけですよ。

(深田)
おかしいですよね。日本で脱脂粉乳余っているのに、なぜ輸入するのですか?

(鈴木)
そうですよね。そもそも輸入を多くしているものだから余っているかのように見えるけれども実は、乳製品も日本の酪農の全体で言うと、飲む牛乳の部分があるので自給率は6割あるのですが、4割は輸入しているわけですよ。

(深田)
飲む牛乳もですか?

(鈴木)
飲む牛乳だけではなくて、他の部分も合わせて酪農全体です。それからチーズは9割ぐらい輸入しています。だからものすごく輸入が多いわけです。

(深田)
チーズは結構フランス、イタリアのチーズはおいしいですよね。でも最近日本チーズもおいしくなってきて、木次乳業の国産チーズもかなりおいしいと思いますね。

(鈴木)
よいチーズがたくさんできています。

(深田)
ミルクっぽいモッツァレッラチーズのブラッターチーズあるじゃないですか、あれも結構安くて美味しいので400円ぐらいで買えて、日本もチーズの技術上がってきました。

(鈴木)
間違いなく日本のチーズの技術は上がっています。だからわざわざ輸入する必要ないわけです。輸入が多すぎて国内が余っているのではなくて、輸入が多いということは、国産は足りてないということですよね。

(深田)
そうですね。

(鈴木)
そういうことですよ。輸入が止まったこと考えたら国産だけで、みんなの牛乳・乳製品を賄えないということですよね。つまり輸入が多いということは、国産は足りてないのだから、国産を増やして輸入を減らせておけば、いざという時にも困らないでしょう。

輸入が止まるリスクは間違いなく高まってきている。しかし、輸入に頼る構造をしなくてもいいのに輸入をしている。国内は余っているから脱脂粉乳を処理するために、酪農家さんにお金を出しなさいとか、来年の生産減らしなさいとか、そういうことをやっている場合ではないでしょう。

海外から入らないリスクが高まっているのです。酪農家さんは乳価も少し上がったけれども、コストも上がって、みんなまだ苦しくて次の牛や設備買えない、投資もできないと言っています。だから酪農さんの倒産は今一番で、米の比ではないのです。今でも酪農さんの倒産が一番多いのです。

輸入を増やして、輸入が止まったら、それこそ日本人は米や酪農も、国内で食べられなくて、みんな飢え死にするような事態にどんどん進んでいるわけですよ。国内で、みんな苦しんで生産が減っているのに、さらに減らせと言って輸入を増やして、それで作れる人いなくなって、世界情勢が悪くなって止まればおしまいという構造を分かってないわけですよ。

(深田)
日本政府は本当に分かってないのでしょうか。なぜかと言うと日本国内のその統計資料とか一番持っているのは政府ではないですか。その政府が本当に分からないことがあるのでしょうか。官僚の皆さんは優秀な方で、東大とか一流大学出ている方が多いですよね。

その政府が本当に農家の実態を分からずして、こういう愚策、間違った政策を続けているのでしょうか。あるいは、例えばアメリカから言われたら言うこときかないといけないので、そういう事情があって、分かっているのだけれどもやっているのでしょうか。どちらだと思いますか?

(鈴木)
どっちもありますね。

(深田)
どっちもあるのですか。

(鈴木)
バカもバカですよ。確かに現場知らないし知ろうともしない。頭の中だけで、しかも自分たちが受験勉強でやってきたような解き方が1つしかないような思考しかないのです。現場を見て何かやらないといけないかとか、そういうことに対する思考力というのが非常に少ない人が多いと思います。

もう1つは忖度の問題ですよ。戦後アメリカに言われて農業を弱体化して、アメリカの食料に依存しろと言われて、その流れの中で自給率を下げてきた。アメリカのものは買わないといけない。その流れが今でも続いています。

もう1つ大きいのは、アメリカも日本も大きな政治に金を提供できる企業大事なわけですよね。政治行政にとっては自分たちの出世と金です。それが非常に分かりやすくなっていますよね。今は、農家がいなくなるとか消費者が苦しんでいるとか、そういうことは関係なく、それはむしり取る対象なのです。

今だけ金だけ自分だけで、巨大企業がそこからむしり取って儲かればそれで政治に金は入るし、自分たちの天下りもできるという官僚の発想だけで動いています。それでは一部の企業だけが儲かって、日本の国民が疲弊して、地域も潰れていく。その時には誰も生き残れないということに頭がいかない恐るべき情けない状況です。

下手にアメリカとの関係を壊すようなことをやれば、自分の身も危ないではないですか。本来であれば我が身を犠牲にして国民を守らないといけない人たちが、国民を犠牲にして我が身を守る。この行動がものすごく強くなっているのです。

(深田)
やはりそういう傾向が強くなっているのですか?

(鈴木)
そうではないかと思います。本来の保守というか、国民を守る意識が強ければ、以前なら1人でもアメリカにも物を言っていました。

(深田)
そうですよね。昔は文句を言いに行く官僚もいましたよね。

(鈴木)
政治家もそうですよ。そういう人たちが、異常に潰されることもあるのですが、それでもやるという気概のある人がもっと出てくればいいのだけれども、そういう人たちは出てきません。とにかくアメリカには阿り、そして企業が儲かるようにして、自分だけが当面、利益を得ればいいというような構造が露骨に出ています。

政府が「これがいい」と言い、メディアがそれを持ち上げたら絶対裏がある。今、政府は「乾田直播」という田んぼに水を張らずに種を蒔くことをどんどん進めようとして、メディアも取り上げています。これを一番推進しているのは「日本の田んぼに水を張るな」と言ったモンサントという世界一の農薬会社を買収したバイエルです。

世界で農薬が売りにくくなっており、ああいう企業から、日本はラストリゾートと呼ばれています。何でも言うことを聞いてくれて、儲けられるのは日本だけです。日本の田んぼに水を張らなければ草が茫々になり、農薬が売れてしょうがない。それで規模拡大している方々が使って成功している。衛星を使ったスマート農業技術を提供しているのもバイエルなのです。全部繋がっているのです。

(深田)
しかも今スマート農業は国からお金が出ていますよね。

(鈴木)
そうです。農家の皆さんは、やってみると「使えるものは少ない」と大規模の農家でも言っている。誰が儲けているのかというと、売っているところですよ。そういうものを開発している企業が儲かるわけですよね。

(深田)
やはり使えないのですか?

(鈴木)
あまり使えないようです。

(深田)
そうですよね。

(鈴木)
スマート農業をやればバラ色だと言うけれども、実際に使えるスマート農業技術は非常に少ないと大きな農家でも言っているのですよ。植物工場もなかなかうまくいかないではないですか。

輸出といっても、農家の皆さんの手取りはそんなに増えてないですよ。儲かるのはやはり中間の商社とか、そこに関わる企業の利益の方が大きいわけです。だから自社の儲けのために農家を助けるようなふりをしているのです。全てがどこかに繋がっていて、それは政治には金になり、官僚には天下りになり、メディアにはスポンサー料が入る。前からそうでしたが、さらに状態が酷くなっています。

世界で何が起きているのか、そのためにどうやって食料や農業や国民の命を守るのかということを考えないといけないのに、目先の自分たちの利益・利権で繋がっている人たちだけを考える傾向が強くなりすぎています。そこを根本的に変えないともう日本は終わりますよね。

(深田)
そうですよね。どうすれば官僚にそういう日本国民を思う気持ちが芽生えくるのか。一番の問題は、公務員の人事に官邸が口出しをできるようになった2014年の公務員制度改革が問題だと思うのです。

(鈴木)
そうですね。人事を握られたのは大きいですよね。全て人事で握られたから、もう日本には三権分立もないではないですか。裁判の結果からも分かるように、こんな酷い国になっているわけですから。

(深田)
おっしゃる通りです。

(鈴木)
自分たちの力で地域から変えていく。まず自分も農業やるし、エネルギーも地域で自給できるような仕組みとか、食料も自給できるような仕組みを、そこに住んでいる人たちが生産者、消費者が一緒になって自分で作って自分で食べる。

みんなで作ってみんなで食べる仕組み作りで、ローカル自給圏をどんどん広げていくのです。国が動かなくても、日本全体で自立しているという状態で、草の根的に地域から一気にそれを広げていくような運動、活動が今一番求められているのかなと思います。

(深田)
そうですよね。ローカルエリア共和国という形で、そのように地域の人たちが集まって自分たちで食料とか、エネルギーを賄っていく発想をやっていかないといけない時代になりましたね。

(鈴木)
なってきましたね。まずそれが自衛策として、日本を変えるための一歩だと思います。

(深田)
はい、ありがとうございます。日本政府の政策に期待できないという中で、自分たちに何ができるのか、自分たち地域の人間が集まって、地域でエネルギーや食料のことを考えていく。それが、私たち国民が取れる具体的で現実的な策ではないかということを、東京大学特任教授の鈴木宣弘先生からお話をいただきました。

視聴者の皆さんも、是非ともどういう風にこの国を変えていけばいいのか、この国の政策の何がいけないのか、コメント欄にどんどん書き込んでいただければと思います。鈴木先生、どうもありがとうございました。

(鈴木)
ありがとうございました。

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