#644【嵌められたアメリカ】出口なきイラン地上戦。最強の経済・軍事集団「革命防衛隊」が狙う米軍自滅の計略とは? 宇山卓栄氏(20264.1)
(深田)
みなさん、こんにちは。政経プラットフォームプロデューサーの深田萌絵です。今回は、作家の宇山卓栄先生にお越しいただきました。宇山先生、よろしくお願いいたします。
(宇山)
よろしくお願いします。
(深田)
混迷を極めるイラン戦争ですが、トランプ大統領が、イランは停戦を望んでいるようだとの趣旨の発言をしているようですが、イラン戦争は停戦に向かうのでしょうか?
(宇山)
私は、ほとんどはったりのレベルではないかと思っています。
(深田)
はったりですか。イランは、何か言っているのでしょうか?
(宇山)
イランは「交渉は一切していない」と正式に表明しています。しかし、アメリカ側は「交渉が進展している」と言っています。現時点では、双方の主張が食い違っている状況です。
(深田)
そのようなことはあり得ますか。実際に停戦交渉をしていれば、イランも「停戦交渉をしている」と言いますよね。
(宇山)
実態としては、アメリカもイランとの間に何らかのパイプを持っており、話し合いの場は設けているのだと思います。少なくとも、何らかの連絡手段は持っているはずです。イランも「話くらいは聞いてやるぞ」というようなスタンスで、話ぐらいはしていると思うのだけれども、トランプさんは飛躍させて「停戦交渉のテーブルに我々はこれからつくぞ」という拡大解釈をしているのです。イランの側は「誰がテーブルにつくと言ったんだ。電話か何かで担当者同士が話をしただけだろう。何の合意もしていない」というようなことで、両者がお互い言うことが食い違っているのです。
(深田)
今回の日米首脳会談でも、日本側は「停戦するまでは自衛隊を派遣しない」と言っているのに、アメリカ側は「日本は自衛隊を出してくれるらしい」と言っていますものね。
(宇山)
日本としては、停戦後に艦船をホルムズ海峡へ派遣することはあり得ると言ったのですけれども、トランプさんは「いや、日本は支援してくれるのだ」と一点張りですね。「あれ?何かニュアンスが違っていませんか?」という感じで、トランプさん自分の都合のいいように拡大解釈して、色をつけたものを言うのですね。
(深田)
ポジティブシンキングの弊害のようなものですね。
(宇山)
そうなんです。イランとの交渉も、私ははったりの類いだと見ています。確かにトランプさんの思惑としては、ここまで戦争が泥沼化するとは思っておらず「しまった」ということだろうと思います。
(深田)
自分の失態をごまかしているのですよね。最近では、戦争長官のピート・ヘグセスに「ピート、お前がすぐに勝てると言ったじゃないか」というように、責任を押し付けていませんか?
(宇山)
そうなんですよ。見事に「君が最初に戦争をやろうと賛同してくれたよね」といった趣旨のことを言って、ヘグセスにこのツケを回そうという気が満々なのだと私は思います。つまり、トランプさんとしては、とにかくこの泥沼から手を引きたいのです。
中間選挙を控える中で、原油価格がどんどん高騰してきています。昨日もWTI(West Texas Intermediate、原油価格の基準として使われる代表的な銘柄の一つ)が96ドルまで上昇し、再び100ドルを目指す動きになっているわけです。
(深田)
原油価格は100ドルを超えそうなのですね。
(宇山)
そうですね。ついこの間も118ドルを超えました。もう一度100ドルを超えるような試し相場があってもおかしくないと思います。このような形で原油価格が上がれば、アメリカのインフレは避けられなくなります。インフレを抑えられなければ、国民生活は苦しくなり、中間選挙でも負けることになる。つまり、レームダック化するということです。まずはこの戦争から手を引こうというのが、アメリカの思惑だと思います。
(深田)
確かにそうですよね。
(宇山)
しかし、相棒であるイスラエルが「そうはさせないぞ」と言って、今いろいろと工作しているところなのですよね。
(深田)
ネタニヤフさんは、かなり強硬ですものね。
(宇山)
なぜネタニヤフがあそこまで強硬なのかと申しますと、彼は多くの汚職疑惑を抱えているからです。今は首相の立場にあるため、不逮捕特権によって収監を免れていますけれども、首相の座を降りた瞬間に収監されるのです。
(深田)
そこまで捜査は進展しているのですか?
(宇山)
進展しています。嫌疑もすべて上がっており、証拠もすべて押さえられているのです。
(深田)
『ネタニアフ調書 汚職と戦争』という映画になっていて、本人も登場していますよね。
(宇山)
そうです。本人の嫌疑も明らかで、何をしたのかということも世界中に知れ渡っている。そのような状況の中で、この危機をあおり、政権の求心力を高めていかなければ、自分が収監されてしまうのです。
(深田)
それでは、自分のための政治ではないですか。自分が逮捕されたくないからイラン戦争をやっているのですね。それだけではないにせよ、それが理由の一つだとすれば、悪質ですね。
(宇山)
もう一つ、イスラエル側にそのような行動を取る理由があります。ネタニヤフは、ある意味では被害者の側面もあるのです。イスラエルは、ハイテク関連企業によって成り立っており、それが軍事と結びついています。したがって、戦争が大きくなればなるほど、イスラエルの軍事企業が利益を得る構造になっているのです。
そのため、強硬派をあおっているスモトリッチ財務相や、ベン・グヴィール国家安全保障相などは、そうしたハイテク関連企業に支えられているわけです。ネタニヤフも、もちろんその構造の中にいます。
そして、さらに戦争を煽るのです。たとえイスラエル国内にミサイルが飛来し、自国民が何人亡くなろうとかまわない。自分の足元にどれだけ火が付いてもかまわない。それよりも、戦争をどんどん拡大していくことのほうが、イスラエルの政権にとっても、軍事産業にとっても重要なのです。
ハメネイ師も殺されましたね。ハメネイ師はいずれ交渉相手になるはずだったのです。それをイスラエルが先手を打って殺してしまったのです。
(深田)
どうして殺してしまったのですか?
(宇山)
交渉させないためです。
(深田)
確か、「核開発をやめろ」という圧力の中で、イランは「もう、やめようか」という雰囲気は出ていました。
(宇山)
さらに、その後も交渉役とみられていたラリジャニ氏も殺してしまったのです。つまり、交渉役となりそうな人物をイスラエルが次々に排除しているということであり、戦争を長引かせることが彼らの魂胆なのです。
そのため、イランの石油施設も狙う、核施設も狙う、そうしてどんどんイランを怒らせ、あおり、さらにアメリカもこの長期化した戦争の泥沼に引きずり込んでやろうというのが、イスラエルの思惑なのです。このような人間と一体となって動いている限り、トランプさんも簡単にはやめられないのではないかということです。
(深田)
しかし、最近はネタニヤフ氏とトランプ氏の間に、少し距離ができましたよね。
(宇山)
そうです。やはり今、トランプさんはネタニヤフに対して「軽率なことはするな、あまり無茶なことはするな」「核施設への攻撃もするな、我々は聞いていないぞ」「エネルギー施設への攻撃もするな」と抑えているのです。それに対してネタニヤフは、いら立っているので、両者の溝は深まっているのです。そして、肝心のイランの思惑はどうなのかということです。
(深田)
イランはどうなのですか。
(宇山)
このような局面で妥協するつもりは全くありません。イランは、長期戦を覚悟しているのだと思います。一時的な停戦は、今後もあるでしょう。とりあえず1か月、あるいは2か月といった一時的な措置は取るかもしれません。しかし長期的には、イランは必ずイスラエルを締め上げるのだという意思決定をしているのです。
(深田)
なぜ、そのような意思決定をしているように見えるのですか?
(宇山)
実は、イランには戦力が、まだ十分に残っていると私は見ています。多くの専門家は、今月のかなり早い段階から、イランは戦力を完全に破壊されたと言っていました。しかし、私はそのようなことはあり得ないと思っています。もっと地下の奥深くに隠されたミサイル戦力やドローンの存在を、よく見ておくべきだと申し上げているのです。
(深田)
あのドローンも、かなり安いらしいですね。
(宇山)
安いです。それを撃ち落とすために、高価な迎撃ミサイル、つまり億単位の兵器を使うわけです。
(深田)
300万、400万円ほどのドローンに対して、5億、6億円の迎撃ミサイルを使っているのですから、滑稽ですよね。
(宇山)
そうです。これをずっと続けていけば、イスラエルやアメリカの側は、お金が続かないだろうということを、イランもよく分かっているのです。それに加えて、ハメネイ師が殺され、さらに軍の幹部や革命防衛隊の幹部も、50人ほど殺されたわけです。そうなった以上、徹底して戦うというのが彼らの考え方なのです。
(深田)
それで、今イランで権力を握り、意思決定をしているのは誰なのですか?
(宇山)
モジュタバ師という人が後継者として最高指導者になりましたが、彼に何らかの意思決定権限があるわけでは全くありません。
(深田)
外からイランを見ていると、指導者が殺され、次に就いた人物も大けがをしていて、意思決定などできるはずがないように思えるのです。それなのに、イランという国は機能しているように見えます。しかも、かなり効率よく敵の急所を突いてきているので「ブレーンは生きている」という印象があります。
(宇山)
その通りです。実は、今の最高権力機関は「イスラム革命防衛隊」なのです。最高指導者が何かを直接決めているわけではありません。この最高司令官であるアフマド・ヴァヒーディーという人物がすべての決定権を今握っていると考えるべきですんr。
このイスラム革命防衛隊については、もう一度整理しておきたいのですが、国軍とは別の存在なのです。
(深田)
国の正規軍ではないのですか?
(宇山)
そうなのです。国防軍は国防軍として存在しているのですが、イランの場合、その中核となる軍事組織は、圧倒的にイスラム革命防衛隊なのです。なぜそのように二つに分けているのかと言うと、ホメイニ師がイラン・イスラム革命で政権を掌握した際、国防軍を信用しなかったからです。お前たちには、まだシャー、つまり国王への忠誠が残っているだろう、と見ていたのです。
(深田)
追放された側の人たちですね。
(宇山)
ホメイニ師は「お前たちは信用できないのだ、自前の軍隊を創設する」と言って、ホメイニ師が作ったのが「イスラム革命防衛隊」の始まりなのです。つまり、最高指導者に直属する軍隊で、おおよそ30万人ほどいるのです。
(深田)
兵士が30万人ですか。すごい人数ですね。
(宇山)
そして、その民兵組織の下部組織であるバシージが20万人ほどいます。合計で50万人です。
(深田)
かなりの人数ですね。人口はどれくらいなのですか。
(宇山)
人口は9,000万人です。
(深田)
非常に大きな規模ですね。
(宇山)
9,000万人に対して50万人の軍隊というのは、それほど大きいわけではありません。しかし、これとは別に国防軍も存在していることを比べると、やはり革命防衛隊の存在感は非常に大きいのです。そして、この革命防衛隊は単なる軍事組織ではなく、経済までも握っているのです。
(深田)
経済まで握っているのですか。どういうことなのでしょうか。軍産複合体のようなものですか。
(宇山)
まさにそのようなものです。銀行に参入し金融を握り、メーカーや製造業、物流も握っている。さらに、あらゆるサービスやインターネット分野まで、この革命防衛隊が掌握しているのです。イランのGDP、すなわち経済の約30%を、このイスラム革命防衛隊が握っていると言われています。
私は30%どころではないと思っています。関連企業まで含めれば、50%、あるいはそれ以上を握っていてもおかしくない。つまり、経済も握っている、軍事も握っている、もちろん政治も握っているというのが、このイスラム革命防衛隊の実態なのです。
私は今年の初めから、この番組でも何度も申し上げていますが、イランの体制は簡単には崩壊しないと言い続けてきました。1年半前に私はイランに入り、大統領選挙などを視察しながら、この革命防衛隊の実態についてもさまざまに学ばせていただきましたが、その存在は極めて強固です。
イランの経済から政治まで、すべてを握っているのです。確かに、この革命防衛隊が寝返るようなことになれば、体制は崩壊し得ます。しかし、そうでない限り、この体制が崩壊することはまずない。革命防衛隊が存在する限り、それは起こらないということを、私は断言し続けてきたのです。
今回も、たとえアメリカやイスラエルがハメネイ師を排除し、軍事攻撃を仕掛けたとして、それによって反乱の火の手が上がり、体制が崩壊するのだという見立てがありました。
(深田)
そうですね。それが、トランプ大統領の思い描いていたシナリオですよね。しかし、そのような動きはありませんでしたよね。
(宇山)
まったく起こっていないでしょう。
(深田)
どうしてなのでしょうか?
(宇山)
起こるはずがないのです。何だかんだ言ってイラン人はこのイスラム革命防衛隊やハメネイ師の体制を積極的に支持しているわけではありません。私が現地で話を聞いた時も、そのような体制を支持するという人は誰もいませんでした。しかし、あのような形で外国がいきなり侵攻、侵略してくることに対しては、誇り高いイラン人として「そんなことは許されないだろう、お前たちは何をしているのだ」という感情になるのです。そして一気に、体制側のもとに結束しているのが今の現状だと思います。
(深田)
そうですよね。私たち日本人でも、たとえ自民党が嫌いであったとしても、我が国の総理大臣がいきなりミサイルで殺されたら、それはさすがに違うだろうと思います。好きではないとしても、それでも今までの日本であってほしい、という気持ちになりますよね。
(宇山)
そうなると思います。たとえば石破茂という、非常に不評な人物がいたとします。みんなが石破茂を嫌いだとしても、その人物がミサイルで殺されたとなれば「おいおい、ちょっと待て」「さすがに可哀そうだろう」という話になりますよね。
(深田)
そうですよね。
(宇山)
それと同じです。ハメネイ師を支持している人など、実際にはほとんどいないのです。イラン人の大半は、今の革命体制など早く崩れてくれればよいと考えています。私自身も、あのような体制は崩れたほうがよいと思っています。しかし、あのような形で殺されてしまえば、そんなことは許せないという感情が先に立ち、結果として逆効果になってしまうのです。
私はこのことを1月以来ずっと申し上げてきましたし、この番組でも繰り返し話してきました。あのような攻撃によって体制が倒れるなどということは、まずあり得ません。むしろ、体制は余計に強化されてしまっていると思います。
さらに、この革命防衛隊の総司令官であるアフマド・ヴァヒーディーという人物が、どのような考え方をしているのかも重要です。この人物は、今のイランにおける最高実力者と言っても差し支えありません。かつてイスラム革命防衛隊の中には、コッズ部隊という精鋭部隊がありました。2020年、第1次トランプ政権の時に、ソレイマニ司令官がイラクのバグダードで暗殺されたことがあったでしょう。あれは6年前のことですが、彼はコッズ部隊の隊長でした。その特殊部隊であるコッズ部隊の礎を築いた人物が、現在の総司令官であるアフマド・ヴァヒーディーなのです。
この人物は大変有能です。かつてアフマディネジャド大統領から、ぜひ政権に加わってほしいと招かれ、国防大臣に就いた人物でもあります。さらに、前政権であるライシ政権の時には、内務大臣も務めました。もともと革命防衛隊では副司令官でもありましたから、軍にも顔が利く。さらに、政治にも強い影響力を持っている。そのうえで、非常に強硬な思想の持ち主なのです。
この人物は、2月28日に殺されたモハンマド・パクプール総司令官の副司令官を務めていた人物でもあります。パクプールは調整型でしたが、ヴァヒーディーはそれ以上に強硬な思想と考え方を持っています。したがって、アメリカと停戦交渉を行い、妥協するようなことを、この最高権力者が思い描いているとはとても考えられないのです。
さらにもう一つ、新たなキーパーソンが浮上してきました。
(深田)
まだプレイヤーがいるのですか?
(宇山)
もう一人、重要なプレイヤーがいます。それが、モハンマド・バーゲル・ガリバフ国会議長です。
(深田)
どういった役割なのでしょうか。
(宇山)
実は、その役割が非常に絶妙なのです。このガリバフ氏とヴァンス米国副大統領が会い、停戦交渉について話をするのではないか、と言われているのです。
(深田)
ヴァンス氏とガリバフ氏は、いわば調整役のような立場なのでしょうか?
(宇山)
調整役、あるいは話し合いの窓口として、イランが立ててきたのがガリバフという人物なのです。しかし、私はこの人選を見た時に、やはりイランには話し合う気も、妥結する気も全くないと思いました。
(深田)
あれ、調整しないのですか?調整はしない、話は聞いてやるけれども妥協はしないということですか。
(宇山)
そのような人選なのです。なぜかと言うと、このガリバフ氏は、保守派の中でも最強硬派だからです。アメリカを激しく罵倒している人物なのです。前回の2024年のイラン大統領選挙でも、候補者として出ていた人物でした。私もこの大統領選を現地で取材し、ガリバフ氏についてもいろいろ調べました。
大統領選でも、ペゼシュキアン大統領に対して討論会の場で「お前はアメリカの犬か」と言って罵声を浴びせていました。それぐらいの強硬派なのです。そのため、大統領選ではまったく支持を得ることができませんでした。得票率は12〜13%ほどだったと思いますが、保守派の中でトップだったのはサイード・ジャリリという人物です。こちらは調整役であり、外交の経験もある人物でしたから、ガリバフ氏はそこには及ばなかったのです。つまり、決選投票にも進めなかった人物なのです。そのような超強硬派を立てるという時点で、話し合う気がないのだということが分かるのです。
(深田)
そういうことなのですね。では、封鎖されてしまったホルムズ海峡はどうなるのでしょうか。ただ、アラグチ外相が「日本は連絡をくれたら通してあげるよ」と言っていましたよね。
(宇山)
言っていましたね。
(深田)
しかも、日本側は個別交渉はしないと言っていましたよね。
(宇山)
そうです。
(深田)
「しろよ、国益を考えるのであれば」と思ったのですが、そのあたりはどうなのでしょうか?
(宇山)
実は、日本はこの日米首脳会談の前に、9か国でホルムズ海峡の安定化に向けた共同声明を発出しているのです。その取りまとめ役を日本が担っているという点で、日本だけが先に抜け駆けするようにイランと交渉するという立場を取れないのです。
(深田)
つまり、抜け駆けはできないわけですね。では、イランの思惑はどこにあるのでしょうか。
(宇山)
攪乱作戦です。
(深田)
なるほど、賢いですね。
(宇山)
もちろん、アメリカと日本を離間させる、あるいはヨーロッパとも引き離し、西側全体を分断するために、アラグチ外相はこのような甘い言葉を日本に投げかけているのです。
(深田)
しかし、その甘い誘いには乗りたくなりますよね。自分たちの原油が低価格で入ってくるのであれば、ありがたいことです。
(宇山)
はい。実際に、このホルムズ海峡の封鎖、あるいは事実上の封鎖が長引くようであれば、そのようなことを検討しなければならない局面は出てくると思います。
最後にもう一つ、触れておきたい点があります。今、アメリカとイランの停戦交渉に、パキスタンが仲介すると言っているのです。この点が、今後の戦局を占ううえで、一つの重要なポイントになると私は見ています。
(深田)
それは、どういうことですか。
(宇山)
パキスタンと言われると、まるで第三者のように思われるかもしれません。
(深田)
イランの隣国ですよね。
(宇山)
そうです。なぜ、このパキスタンが急に手を挙げて、「自分たちが仲介する」と言い始めたのか。この点に、私は非常に注目しています。
(深田)
パキスタンは中国とも仲がいいから、中国も関係しているのですか。
(宇山)
中国とも、実は関係があります。しかし、それ以上に重要なのは、今、アメリカが実は「地上部隊を投入する」と言っていることなのです。もはや上空から空爆するだけでは埒が明かない、本当に核施設を破壊するためには、特殊部隊や地上部隊の投入を実際に検討しているのです。そうなると、どこに、どのように投入するのかが問題になります。
(深田)
そうですよね。イランは高い山に囲まれていて、北側からは入りにくいですし、アゼルバイジャン側からも来られないのですよね。そうなると、お隣のパキスタンが関係してくるのですか。もしパキスタンがそのために使われたら、自分たちが狙われてしまいますよね。迷惑な話ですよね。
(宇山)
そうです。まさに迷惑な話です。そこにお気づきになるのは、非常に鋭いと思います。もし地上部隊を投入するとなれば、最も有利な地点はどこかと言うと、アフガニスタンやパキスタンに接するイラン東部方面に部隊を投下することなのです。
(深田)
アフガニスタンも、大きな打撃を受けた末にアメリカが撤退しましたよね。だから、アフガニスタンは使えないのではないですか。
(宇山)
そうです。ただし、アフガニスタンとアメリカは、タリバン政権との間で交戦状態にあります。したがって、そこに地上部隊を投下したとしても、もともと敵対しているわけですから、特に新たな問題が生じるわけではありません。場合によっては、アフガニスタンやパキスタン周辺に投下する可能性もあるのです。
(宇山)
この地域は、テヘランの中央政府から遠く離れており、統治権が及んでいない場所なのです。
(深田)
そのような場所があるのですか。
(宇山)
パキスタンの横、アフガニスタンの横、そしてイラン東部、この一帯のことです。

(深田)
この3つの国境が交わるあたりは、意外にも統治が十分に及んでいないのですか?
(宇山)
おっしゃる通りです。このあたりは実効支配が十分に及んでいません。しかも東部は、民族が入り乱れているのです。バローチ人、アフガン系のパシュトゥーン人、トルコ系のトルクメン人など、さまざまな民族が混在しています。そのため、ここに軍を投下し、各少数部族に対して攪乱作戦を仕掛けながら、徐々にイランの奥地へ入っていくというやり方が、最も現実的で妥当な方法として考えられるのです。
(深田)
しかし、アフガニスタンが絡むと、今度はタリバンが後ろから攻撃してきそうですよね。
(宇山)
そうです。簡単な話ではありません。ですから、口で言うほど容易ではないのですが、それでもなお、ここが最も有力な地点になるのです。そうなると、今おっしゃったように、パキスタンの存在が非常に重要になってきます。そのような場所で攪乱作戦を仕掛けられたら、隣国であるパキスタンにとっては大きな問題です。しかも、現在アフガニスタンとパキスタンは対立状態にあり、2月からは戦争状態に入っているのです。
(深田)
もう戦っているのですか。
(宇山)
今、この両国は交戦状態にあります。アフガニスタンのタリバン政権がパキスタンに対してさまざまなテロを仕掛けているという疑いを受けて、パキスタンが空爆を行うといった形で、双方が衝突しているのです。
(深田)
しかし、やはり最前線をこちらとこちらの両方で抱えることはできませんよね。
(宇山)
できません。特にパキスタンにとっては、西部にバローチ人によるバローチスタンの分離独立運動があり、そこにこの問題が連動してしまうと、極めて深刻な事態になります。そのため、パキスタンとしては、まずこの戦争をとりあえず終息させたいということで、慌てて仲介に名乗りを上げているのです。
(深田)
迷惑な話ですよね。
(宇山)
そういうことなのです。ということは、やはりアメリカ軍は本当に地上部隊の投入しているのではないか、それを視野に入れているのではないか、ということです。私は、それはまったくの愚行だと思います。このような形で地上部隊を投入すれば、アメリカ軍に死者が出ることは十分にあり得るでしょう。
そうなれば、事態は完全に収拾がつかなくなります。しかし、どうも本気で、そのようなことが少なくとも検討はされているのだろうと見ています。だからこそ、この停戦交渉もその文脈の中で読み解かなければなりませんし、今後この戦争がどのような様相を帯びていくのかということも、徐々に輪郭が見えてくるのです。いずれにしても、簡単に終わるようなものではないということだけは、はっきりしていると思います。
(深田)
そうですね。終わりの見えないイラン戦争です。アメリカには、百害あって一利なしとしか思えない展開になっていますが、それ自体がイランの狙いでもあるのでしょうね。
(宇山)
そうですね。イランは、まさにそこを狙っているのだと思います。
(深田)
今回は「終わらないイラン戦争」について、作家の宇山卓栄先生に解説していただきました。宇山先生、ありがとうございました。
(宇山)
ありがとうございました。





