#638【厳しい〜!】日米首脳会談は30点の落第点!高市の媚米外交で得たディールと国益にならない重〜いツケ 八幡和郎氏(2026.3.26)
(深田)
皆さん、こんにちは。政経プラットフォームプロデューサーの深田萌絵です。今回は、政治評論家の八幡和郎先生にお越しいただきました。八幡先生、よろしくお願いします。
(八幡)
よろしくお願いします。
(深田)
今回、日米首脳会談が開催されました。その中で、私たち一般国民が最も懸念していた地政学上の問題で、イランのホルムズ海峡に自衛隊の派遣を避けられたので、今回の日米首脳会談は大成功だったとよく言われています。いかがでしょうか。今回の首脳会談を、先生は何点ぐらいと評価されますか?
(八幡)
30点ですね。
(深田)
落第ですか。
(八幡)
もちろんそうです。
(深田)
なぜ落第なのですか?
(八幡)
まず、良かった点があるとすれば、最悪の事態が避けられたことです。最悪の事態とは何かといえば、例えば、高市さんがトランプ大統領から嫌われて「お前はもう帰れ」と言われてしまうようなことです。
(深田)
ゼレンスキー大統領の時のようなことですね。
(八幡)
そうしたことですね。あるいは、できもしないのに高市さんが「自衛隊を出しましょう」と言ってしまうことも、最悪のケースです。しかし、そのようなことは普通は起こらないので、それが避けられたからといって、評価できるわけではないのです。むしろ、いろいろな意味で、これから重い宿題を背負うことになったということだと思います。
(深田)
重い宿題とは何でしょうか?
(八幡)
まず、第一に「日本は協力することになった」とアメリカ政府高官の間で言われているわけです。要するに、実際にはさまざまな制約があるにせよ、日本は自衛隊を出すことを承知したのだと受け取られている部分があるわけですよ。
(深田)
それは、日本の報道では「日本は自衛隊を派遣しなくてもよくなったから大きな成果だ」と言われているけれども「法律でできる範囲では実際に対応する」ということなのですか?
(八幡)
最低限のこととして言えば、茂木さんも言っているように「機雷を除去するようなことは、やるしかないのではないか」という認識はあると思うのです。ただし、それは停戦した後の話ですよね。しかし、それまでの間も、後方支援のような部分か何かは分かりませんが、もう少し手伝う余地があるように、アメリカは受け止めているのではないかと思います。
そもそも何が間違っているのかというと、高市さんは「トランプ大統領が平和を守れるただ一人の人だ」というようなことを言いましたよね。「世界に繁栄と平和をもたらすのはトランプ大統領だけだ」ということを世界に伝え、応援したいと言ったわけです。
ということは、トランプさんのこの戦争を支持したということなのです。ヨーロッパの首脳は、例えばスペインのサンチェス首相が最も強い言い方をしていましたが、「これは明らかに不法な戦争である」あるいは「うちは関係ない」と言っていたわけです。
それに対して高市さんは、これは正しい戦争だとまでは言っていないけれども、事実上そう言ったに等しい。ただし「憲法の制約などいろいろあるから、なかなかやりにくい」という言い方をしたわけですよね。これが正しい対応なのかと言われると「他の国は協力すべきだ」ということに等しいのです。
実際、トランプさんも「NATOの連中、ヨーロッパやカナダは非協力的だけれども、高市さんは違う、ただし憲法が障害になっているようだ」と受け止めている可能性があります。それがアメリカの押しつけた憲法だと、彼がどこまで認識しているかはともかくとして、高市さんは「やりたいけれどもやれない」と言っているように見えるわけです。
そうなると、NATO諸国だけでなく「韓国はなぜやらないの?韓国は法律上できないわけではないでしょう」「オーストラリアはどうなの?インド、中国はどうなの?協力しなさいよ」ということを高市さんは言ったに等しいわけです。
だから、ヨーロッパの国からすると、背中から鉄砲を撃たれたような話ですよね。なぜあの人たちは協力しないのか、という話になるわけですね。それが一つです。
そして、本来はやるべきだが、憲法のためにできないということになると、では代わりに何かをやる。例えばお金を出す、あるいは何かのプロジェクトに協力するという対応は免れないでしょう。
さらにもう一つは「憲法改正をやるべきではないか」という議論が当然出てくるわけです。そうすると、アメリカに協力すべきだったのに、こういう時にできないではないか、それなら憲法改正だ、という話になってしまうではないかということです。
総選挙で大勝ちしたのでしょう、というようなことも言われるでしょう。内容的には、例えば安倍さんの時代に言われていたような、非常に慎重な形、すなわち第9条の第1項、第2項には手をつけないけれども、例えば憲法9条の2を作るとか、あるいは憲法第5章の中で自衛隊のことを明記するよりも、さらに踏み込んだ憲法改正へと追い込まれていくのではないかという懸念があるわけです。
(深田)
確かにそうですね。
(八幡)
そこが心配なのです。ウクライナ戦争の時も同じでしたが、日本はウクライナの問題について、ロシアではなくウクライナに味方することに、特別な義理があるわけではないのです。ただ、ロシアが国際法違反であることは間違いないので、我々の同盟国であるアメリカやヨーロッパが戦っている時に「ある程度はバックアップしなければならない。そこには対応します」と言うべきだったのです。
ところが、ヨーロッパと同じような立場でロシアはけしからんと言ってしまったために、結果として日本は滅茶苦茶にお金を取られたわけじゃないですか。
(深田)
そうですよね。
(八幡)
それから、湾岸戦争の時もそうです。思い出してください。湾岸戦争というのは、国連も含めてイラクは許し難いとなって、国連が認めた戦争でした。その時、日本は残念ながら憲法上できませんねという説明だったわけですよね。
それに対してイラク戦争の時は、アメリカが勝手に始め、アメリカ側はブッシュ(子)大統領、イギリス側はブレア首相でしたが、大量破壊兵器をため込んでいるなどという嘘の情報に振り回されて始めた戦争でした。それに対して小泉総理は、自衛隊は出せないけれども、世界各国が「この戦争は少しおかしいのではないか」と言っていた時に、全面的に支持すると言ったのですね。
ある意味では、最初に支持を表明したことによって、日本は湾岸戦争の時ほどひどく非難されなかったのは事実です。しかし、本来やるべきでなかったイラク戦争をブッシュ大統領が進めるにあたって、日本が非常に強い後押しをしたことにもなったわけです。今回も同じで、日本はこのような戦争はやってほしくないわけですよ。
(深田)
その通りです。国民感情としては、なぜイラン戦争が始まったのか理解できないです。
(八幡)
それもありますし、あそこで戦争を始められると、当然ホルムズ海峡の問題もあるわけですから、日本やアジア諸国にとっては、ヨーロッパに比べてはるかに打撃の大きい戦争なのです。だから、日本としては「それはやめてください」という立場であるべきですよね。それを「大いに結構ではないですか」と、なぜ言わなければならないのですか。
おかしいという認識があっても、日米同盟の趣旨からアメリカ軍に「日本の基地を使うな」とまでは言えないと思います。これは将来の台湾有事の場合でも同じですが、日米同盟の下で、しかもアメリカ軍が世界規模で基地を運用している中で、日本の基地を使うなと言えば、アメリカとしては困ってしまいます。その点は仕方がないでしょう。
スペインの場合は、それすら拒否したわけですが、私はそこまでは求めません。しかし、消極的に協力する以上のことはやるべきではないと思います。安倍元首相であれば、積極的に仲介に動いたと思います。
(深田)
その通りです。イランと日本は、もともと100年近く友好関係にあるのに、友好的な国に対して、突然攻撃したアメリカの戦争を支持するとなれば、イランと日本の関係に影響が及びますよね。
(八幡)
もちろんそうですし、一部の人で飯山陽さんはそうだと思いますけれど「イランが親日だなんて嘘だ」と言う人もいますが、そんなことはありません。いろいろな経緯はあるのだけれども、イラン・イラク戦争の時も、日本は欧米と違ってイラクを後押しするようなことはしませんでした。それから、イランの革命政権との協力についても、アメリカがやるなと言う以上、仕方がないので、イランとの協力プロジェクトはできないという形でこれまで推移してきたわけです。
また、窓口がないのかと言われれば、アラグチさんという日本人のような名前ですが、外務大臣がかつて駐日大使で、東日本大震災の時にも、みんなが東京から離れてしまった中で、現地に乗り込んで頑張ってくれた人です。よく、あの時に台湾が頑張ってくれたと言われますが、イランもそうなのです。
(深田)
しかも今回、日米首脳会談の翌日だったと思うのですが、アラグチ外相が「日本の船はホルムズ海峡を通してあげるから、個別に連絡してください」とおっしゃっていたのに、なぜか日本政府側は個別交渉しないと発表していましたよね。
(八幡)
実際には何らかの形でやっているのだと思うのですよ。ただ、NHKの支局長が拘束されているとか、いろいろありますからね。
とはいえ、安倍さんはテヘランへわざわざ行って、ハメネイ師に会って会談まで行ったわけです。そして、「あなたはいい人だけれども、だからといってアメリカを信用するわけにはいかない」と体よく断られて帰ってきた。
その後、日本のタンカーが襲撃されたとも言われていますが、これはよく分かりません。一説には、イラン政権内部の対立だという人もいれば、いや、やったのはイスラエルではないか、という人もいて、さまざまな説があります。
ともかく、あの時はきちんと対応していたのに、なぜ安倍氏の後継を称する高市さんにはそれができないのか。そこはおかしいですよね。
(深田)
そうですよね。ですから、やはり高市さんは安倍さんの後継者なのだというブランディングで安倍元総理の名前を使ってはいるけれども、実際にやっていることはかなり違うということですね。
(八幡)
それはそうですね。まず何よりも、安倍さんは自公連立政権について、ともかく公明党、創価学会はよくやってくれていると、言葉を尽くして評価していましたし、実際、非常にきちんと運営していたわけです。
それから、中国に対しても、第一次安倍内閣の時、最初の訪問国はアメリカでもどこでもなく、中国でした。小泉さんが関係を悪化させたからです。第二次政権の時も、最後には習近平さんに、国賓として来てほしいと言って辞めているのです。
しかし高市さんは中国と喧嘩し、自公連立をやめた。経済運営についても、安倍さんは積極財政に傾くことはあっても、決定的に非常識なところまでは踏み込んでいなかったわけです。そうした点を全部放り出して強硬路線を進めながら、安倍さんが本当はこういうことをやりたかったのだ、と勝手に言っている。しかし、安倍さんもいくつも顔を持っていたわけで、安倍さんの路線を言うのであれば、現実に行っていた政策をもとに論じるべきですよね。
(深田)
安倍さんが掲げていた理念には近いところはあるけれども、行動は全く違うということですね。
(八幡)
安倍さんは保守派を基盤にしていましたから、そこは共通する部分もありますが、現実には非常にリベラルというか、中道的な立場とのバランスを取りながら政権運営をしていたわけです。その点も全く違うのだと思います。
(深田)
先生、今回の日米首脳会談の評価が30点で、赤点以下だとおっしゃっていましたが、他にはどういう点が減点ポイントだったのでしょうか?
(八幡)
ですから、最悪の事態を避けたという点を評価しろと言われれば、そうなのだけれども、一言で言えば、トランプの間違った戦争を支持したということです。この戦争は世界から非難されている戦争なわけですね。
本当に、どうすればトランプ氏を抑えられるのかということで、アメリカの人たちも困り果てています。江戸時代風に言えば「殿ご乱心」で、何とか押し込められないか、というような状況です。アメリカ国内でももちろんそうですし、サミットの場でみんなで押さえ込めないかといった話も含めて、本当にどうしてよいか誰にも分からないわけです。
アメリカの中間選挙は、おそらく民主党が勝つでしょうから、弾劾手続きが始まるのではないかと思います。それが分かっているから、トランプさんは必死になっているのだと思うのです。けれども、トランプさんの言う通りにやればいいのだ、という態度は恥さらしですよね。だから私は、日独伊三国同盟の松岡洋右以来の大失敗だと言っているのです。
それから、例のハグの件については、いろいろな評価があると思いますけれども、高市さんとしては思いつくことがあのようなことしかなかったのでしょう。しかし、あれが日本の首相でなかったら「よくやるよ」という程度の話ですが、私は明らかに品を欠くと思います。
これについて私もいろいろ研究してみたのです。メローニさんというイタリアの首相が、トランプ氏とどう接しているのか、またメローニさん以外の例ともいろいろ比較してみたところ、明らかに違うのです。どこが違うかというと、メローニさんは、体の上半身の軸線のようなものを、トランプさんに極端に近づけることを絶対にしていないのです。
(深田)
普通の女性であればあのようなことをしないも思います。
(八幡)
例えば顔の向け方一つを見ても、トランプさんが近くにいる時に、にこやかな表情を見せることはあっても、毅然とした態度は決して崩していません。ところが高市さんは、ハグといっても、自分の方から抱きつくような形になったり、あるいはしなだれかかるように見えたりする。それは普通に見て、あまり品のよいものではなく「よくやるよ」という話になるわけです。
ともかく、トランプさんの行動に世界中が困っているのに、それを後押ししてどうするのかということです。日本は「NATOの人たちは冷たい、ヨーロッパの人たちはみんな冷たい」というような言い方をして乗り切ったわけですが、それではだめです。
そもそも、中東をめぐる日本の利害は、アメリカやヨーロッパとはまったく異なります。中東の歴史については『現代地政学』にも詳しく書いているのですが…
(深田)
先生、中東の話に入ると長くなってしまいますので、詳細は『現代地政学』を読んでいただくとして、先生、今回、日米共同声明が発表されなかった点は、どのように評価されますか?
(八幡)
トランプさんは、あの通り気まぐれな人ですから、共同声明をまとめるというのは非常に難しいのです。これまでも、いろいろな国が対応してきましたが、何が起こるか分からないので、事前に協議していても、急にトランプさんが変なことを言い出すということの繰り返しじゃないですか。共同声明が出せなかったことは、そういうことだと思います。
それから、なぜ議会演説ができなかったのかという点ですが、これは高市さんとしてはやりたかったのでしょう。ただ、韓国などは大統領ですから、国家元首として演説できるわけです。ところが、日本に限らず、国家元首ではない首相というのは、なかなかそのような機会を与えられません。そのため、やりたかったのでしょうけれども、それは仕方がないことです。
ただ、なぜこんな時に行って、例のお金のプロジェクトについて「あれもやる、これもやる」と約束させられたのか。例えば、南鳥島でレアアース開発をやるといっても、21世紀中に実用化するかどうかも、よく分からないようなプロジェクトです。
それから、アラスカの原油についても、日本として高い石油を多少買うことはあってよいと思いますが、それが果たして日本国民の利益になるのかどうか、いささか疑わしい話ばかりなのです。
(深田)
そうですね。今回の日米首脳会談は、あまり評価すべき点がなかった、最悪の事態を避けたという点以外は評価できない、というのが八幡先生のお見立てでした。今回は、政治評論家の八幡和郎先生に日米首脳会談についてお話を伺いました。
八幡先生、どうもありがとうございました。
(八幡)
ありがとうございました。





