#628 イランが仕掛ける政権転覆?!アゼルバイジャンが守り抜く「自由」と宗教に縛られない国家利益 アリベイ・マムマドフ氏(2026.3.16)

(深田)
みなさん、こんにちは。政経プラットフォームプロデューサーの深田萌絵です。
今回は、在日アゼルバイジャン人で「アリベイチャンネル」を運営されているアリベイさんにお越しいただきました。アリベイさん、よろしくお願いします。

(アリベイ)
深田様、皆様、よろしくお願いします。

(深田)
アリベイさん、前回は、イランがアゼルバイジャンに対してドローン攻撃を仕掛けた件についてご解説いただきました。そこで今回は、そもそもイランとアゼルバイジャンの間に宗教的な対立があるのかどうか、その背景について教えていただけますか。

(アリベイ)
はい、分かりました。まず、アゼルバイジャンもイランもイスラム教のシーア派です。

(深田)
同じシーア派なのですね。

(アリベイ)
その通りです。現在、イランが攻撃を仕掛けているアラブ諸国の多くは、基本的にスンニ派です。宗派の違いがあり、宗派間の対立や歴史的な戦争については、皆さんもよくご存じのことと思います。しかし、アゼルバイジャンの場合は少し事情が異なります。最近はトルコとの関係が深まり、その影響でスンニ派も増えていますが、人口比で見れば、アゼルバイジャンの人口の9割以上がムスリムであり、60%はシーア派です。宗派としてはイランと同じでイランの歴史的な影響もあります。

さらに歴史を振り返ると、19世紀の帝政ロシアと20世紀のソ連を除けば、アゼルバイジャンは長くイランと良好な関係を保ってきました。もともと同じ国であり、昔から同じ国民であったという認識もあります。1813年のグリスタン条約、そして1828年のトルコマンチャーイ条約という二つの条約が当時ロシアとイランの間で締結され、北アゼルバイジャンはロシア領、南アゼルバイジャンはイラン領となったと、私たちは学校で学びます。そのため、イランの影響は非常に強かったのです。

ではなぜ同じ宗教、同じ宗派のアゼルバイジャンが、イランよりも、むしろイランの大敵であるイスラエルと良好な関係を築いているのか、とよく質問をされます。これは不思議に思う人も多いでしょう。しかし、その大きな理由の一つは、イランが同じイスラム教徒、しかも同じシーア派であるにもかかわらず、アゼルバイジャンが30年間も不法占拠されてきたカラバフ戦争で、アゼルバイジャンではなくアルメニアを支援したことにあります。

(深田)
イランはアルメニアを支援したのですか。アルメニアはキリスト教国ですよね。

(アリベイ)
そうです。ですから、宗教は関係ないのです。これは国の利害によるものです。イランは、アゼルバイジャンがあまりにも強くなることを脅威と見ているのです。なぜなら、イラン国内にも多くのアゼルバイジャン人が住んでおり、彼らにとってアゼルバイジャンは希望を託す場所なのです。将来的に北と南のアゼルバイジャンが一つになるのではないかと、イランは恐れているのです。

(深田)
イラン側に住んでいるアゼルバイジャン人からすれば、アゼルバイジャンと一緒になることで、自分たちはより自由にお酒を飲み、より自由に学び、女性も自由に働けるようになり、経済的なメリットが大きいと考えている人も多いのですか?

(アリベイ)
多いです。さらに、アゼルバイジャンはカラバフ戦争(※1)において、イランからほとんど支援を受けませんでした。逆にイランはアルメニアに武器を運んでいました。また、イラン人がアゼルバイジャンの領土を不法に占拠して、アルメニア人に100ドルや500ドルを払って、アゼルバイジャン人が避難した家の窓ガラスや天井、石材に至るまで、あらゆるものをイランへ持ち出していたのです。これは合法的な行為ではありません。これは有名な話です。
※1)ナゴルノ・カラバフ紛争:アゼルバイジャン領内のナゴルノ・カラバフ(NK)自治州の帰属を巡るアルメニアとアゼルバイジャン間の紛争。

アゼルバイジャンのカラバフ地方で、アルメニア人とイラン人が一緒になって麻薬を栽培し、それを売っていたこともよく知られています。こうしたことを、アゼルバイジャン人は忘れていません。

さらに、2001年には大きな事件がありました。実は1998年に、イギリスのBP社とアゼルバイジャンの国営石油会社が契約を結び、カスピ海のアゼルバイジャン側海域で石油と天然ガスを採掘しようとしました。しかしイランが、そこはアゼルバイジャンの領海ではなくイランの領海だと主張して、イラン軍が攻撃に出てきて、アゼルバイジャンの石油・天然ガス開発のための調査船を封鎖し、追い出したのです。

(深田)
旧ブリティッシュ・ペトロリアムの方々ですね。

(アリベイ)
そうです。完全に封じ込めてしまったのです。そのため、BP社も、イランがあまりにも強く反対しているので、ここでは事業を続けられないとして、大規模な投資プロジェクトは白紙になってしまいました。

さらに、イランはアゼルバイジャンに攻撃し続け、アゼルバイジャンの領空や領海を次々に侵犯してきました。中国が尖閣諸島周辺で行っていることと同じような行為です。これに対し、当時のアゼルバイジャンのヘイダル・アリエフ大統領は、もはや自国だけでは対応できないと判断し、トルコに支援を求めました。

その結果、トルコの防衛大臣がアゼルバイジャンを訪れ、トルコの戦闘機が支援の意思を示すためにバクー上空やカスピ海上空を飛んだのです。つまり、もしイランがアゼルバイジャンを攻撃すれば、トルコはアゼルバイジャンを守るというメッセージを出したのです。そこまで踏み込んだ理由は、イランは外相や防衛大臣などが侵犯を抑えようと動きましたが、国が応じなかったからです。

また、イランから見れば、現在のアゼルバイジャン共和国も歴史的にはイランの領土だという認識があります。1991年にソ連が崩壊し、アゼルバイジャンが独立した時にも、イランはかなり遅れてアゼルバイジャンを国家承認しましたからね。

(深田)
そうですか。

(アリベイ)
アゼルバイジャンから遠いルーマニアやパキスタンなども早い段階で国家承認したのに、イランはかなり遅れました。それは、国として認めたくなかったからです。つまり、現在のアゼルバイジャンを自分たちの歴史的領土だと見ているのです。

また、アゼルバイジャン側も逆に、イランに対して同じ見方(イランのアゼルバイジャン州は歴史的にアゼルバイジャン共和国の領土である)をしています。そうした歴史的な認識の違いがあるので、領土に対する意識そのものが異なっているのです。

さらに、2020年の第二次カラバフ戦争では、アゼルバイジャン側がイスラエル製とトルコ製の自爆ドローンや攻撃ドローンを大量に投入し、21世紀型の戦争を展開しました。その結果、アゼルバイジャン軍は猛スピードでカラバフに入り、アルメニア側の武装組織を次々に排除して領土を解放していったのですが、その時に、イラン軍がアゼルバイジャンの領土内に侵入したのです。

(深田)
そのようなことがあったのですね。

(アリベイ)
イラン軍がアゼルバイジャンの領土に入り、アゼルバイジャン軍の進攻を一日遅らせました。これも歴史的事実です。アゼルバイジャン政府やアゼルバイジャン国民から見れば、到底あってはならないことです。イランは、他国であるアゼルバイジャンの領土に立ち入ったわけですから。

その後、状況そのものは収束しましたが、その過程でも、イランがアルメニアに石油や武器を運び、さらに第三国の武器がイランの領土や領海を経由してアルメニアに届けられていたことを、私たちはよく知っています。

さらに、アゼルバイジャンが2020年の44日間戦争、すなわち第二次カラバフ戦争で勝利した時、一部地域にはなおアルメニア人が残っていました。しかし、その地域はアゼルバイジャンの法的にも領土である場所です。そこに、アゼルバイジャンに無許可で、イランはトラックなどでアルメニア側からその地域に入り、石油や武器を運び込んだのです。要するに、アルメニアがアゼルバイジャンに報復できるよう、その準備を助けていたのです。

同じイスラム教のシーア派であるにもかかわらず、そのような行動を取られたのです。そうであれば、なぜ今、私たちがイランを応援しなければならないのか、という話になってしまいます。このように、私たちは長年にわたって裏切られ、被害を受けてきました。さらに、2023年には、イランにあるアゼルバイジャン大使館に対する襲撃事件も忘れていません。

(深田)
そのようなこともあったのですか。

(アリベイ)
3年前、イラン国籍の人間がアゼルバイジャン大使館に侵入し、カラシニコフ(AK-47、自動小銃)で1人を殺害し、2人を負傷させました。アゼルバイジャン側から見れば、これは当然テロです。大使館が攻撃されているのですから。

(深田)
そうですよね。

(アリベイ)
実際に人が亡くなっているのです。ところがイラン側は、攻撃した人物はイラン国籍ではあるものの、これはテロではなく私的な問題によるものだ、と訳の分からない説明をしたのです。そのため、アゼルバイジャン側が強く反発するのは当然です。何を言っているのだ、ということです。

最終的には、アゼルバイジャン側の圧力によって、その人物は逮捕され、死刑になったと思いますが、対応はかなり遅れました。さらに、それに加えて、先日のアゼルバイジャンの民間施設に対するドローン攻撃です。

アゼルバイジャン側には、これまでイランから一度も支援を受けたことはなく、むしろイランは常に妨害してきたのです。

一方で、イラン側は、アゼルバイジャンがイスラエルと非常に親しくしており、アゼルバイジャンの領土内にイスラエルの軍人などが入り、そこからイランに対する攻撃が行われていると考えているのです。だから、自分たちはこうした対応を取っているのだと主張します。

アゼルバイジャン側は何度も繰り返し、自国の領土、領海、領空を使わせて、イスラエルやアメリカを含む他国にイラン攻撃させないと約束してきました。実際に、そのようなことは一度もしていません。

それでもなおイランがそれを信じず、さらにアゼルバイジャンへの攻撃を続けるのであれば、同じイスラム教シーア派であっても、アゼルバイジャンとしては自国を守らなければなりません。状況によっては、やむを得ない事態に至る可能性もあると、私は考えています。したがって、この戦争に宗教は関係なく、国の利益なのです。国家利益です。

(深田)
そうなのですね。別の国の方のお話を伺うと、異なる見方が出てくるものですね。パキスタンのムガールさんは、今回、アメリカがイランに攻撃を仕掛けたものの、その背後にはイスラエルがいるというのです。

これはイスラエルとイラン、すなわちユダヤ教国家とイスラム教国家との宗教戦争であって、聖書にアルマゲドンと書かれている以上、ある意味では避けられないのだ、という趣旨のことをおっしゃっていました。

しかし、その一方で、イランは「アゼルバイジャンが歴史的に自国の領土である」という意識から、同じイスラム教シーア派のアゼルバイジャンを攻撃し、キリスト教国アルメニアを支援するのですね。何か複雑な関係ですね。

(アリベイ)
非常に複雑です。本当に複雑で、国際政治外交論は極めて難しいです。もちろん、パキスタンの方がおっしゃっていたように、聖書にそうした記述があることも事実ですし、宗教的な要素があると思います。

しかし、今の戦争は、宗教が直接の原因ではなく、地政学的な要因によって引き起こされているのです。さらに言えば、イラン国内でも、現在の体制を支持していない人の方が多いのです。おそらく半分以上の人が、1979年以前の体制に戻りたいと考えているのではないかと思います。

(深田)
その頃までは、イランの方々も、女性が普通にスカートを履いたり、髪を出したりしていましたものね。

(アリベイ)
その通りです。ですから、そうした時代に戻りたいと思っている人は多いですし、男性も自由にお酒を飲みたい、自分の好きなことをしたいと考えています。女性も当然、自由な服装を選べるべきであり、服装を理由に裁かれるのはおかしいということを法律で明確にすべきです。だから、イランは民主共和国になるべきだと私は思っています。

ただし、単純に昔の王政に戻るのではなく、現代の時代にふさわしい新しい憲法を整える。それは、アゼルバイジャンの憲法を参考にしてもよいと思います。アゼルバイジャンの憲法も、近年のヨーロッパやアメリカなど各国の憲法を研究した上で作られたものですから、参考にできます。

信仰は自由にすればよいのです。しかし、国家としてイスラムでなければならないとか、例えば男性が短パン姿で街を歩いただけで死刑になるということは、あまりにもおかしいです。

(深田)
短パンそのものにはあまり賛同していないのですけれども、それでも死刑にする必要はありませんよね。

(アリベイ)
その通りです。死刑にする必要は全くありません。人には自由がありますから、仮に好ましくないと思うのであれば「申し訳ないが、次からはやめてください。この場ではよくないので、服を着替えてきてください」と言えば済む話です。

(深田)
そうですね。

(アリベイ)
そうなのです。さらに、イランはこれまで繰り返しアゼルバイジャン国内で宗教革命を起こそうとしてきました。

最近の事例として最も有名なのは、ナルダラン事件です。ナルダランとは、バクー郊外にある村の名前です。そこには、イランのシーア派と非常に密接な関係を持つ人々やその家族が多く住んでいました。アゼルバイジャン政府を嫌い、アゼルバイジャンをイランのような国にしたいと考える人が数多くいた場所なのです。そこへ最終的にアゼルバイジャンの警察が強制的に踏み込み、ほとんどの人を逮捕しました。

これまでにもイランは何度もアゼルバイジャンで政権転覆を図ってきたのです。アゼルバイジャンをイランのようなイスラム共和国にしようとしてきたわけですが、アゼルバイジャンは毎回万全に準備をして、警察が徹底して監視していました。

一昨日も、スパイ行為で数名が逮捕されました。このように、イランが次々に仕掛け、それに対してアゼルバイジャンが力で対抗するということが、この30年間続いてきたのです。したがって、隣国であり、同じイスラム教シーア派でも、必ずしも非常に親しく、良好な関係を築いているということにはならないのです。

(深田)
なるほど。これは本当に驚きました。今回の戦争は、宗教戦争だという見方もありましたが、実際にはそうではなく、アメリカ側も別の事情でイランを攻撃し、またイラン側もアゼルバイジャンに対して、宗教上の理由ではなく、国家として政治的都合から、さまざまな工作活動やテロを行っているということなのですね。

(アリベイ)
その通りです。もちろん、私はこの戦争がイランの責任だとは思っていません。これはアメリカとイスラエルが仕掛けた違法な戦争です。アメリカもイスラエルも、イランを違法な形で攻撃しており、国際法違反であると考えています。しかし一方で、イラン国内に多くの問題が存在していることも否定できません。何とかして、解決しなければなりません。

(深田)
なかなか着地点が見えない状況ではありますが、今後も国際情勢から目を離せない状態が続きそうです。最後に、アリベイさん、今後イランとアゼルバイジャンの間の紛争が続いた場合、アゼルバイジャンワインにはどのような影響が出るのでしょうか。

(アリベイ)
非常に大変な状況です。先月注文した商品も、ようやくジョージアから黒海に出て、安心したところでしたが、石油価格も上昇しています。それに加えて、日本円が安くなり、ドルが高くなっています。

まず私たちはアゼルバイジャンへ送金しなければなりません。さらに、商品が到着した際には、日本の税関で関税、消費税、酒税などを支払う必要がありますが、これらはすべてドルベースなのです。ドルに対して円安が進めば、日本円で事業をしている私たちは、より多くの円を支払ってドルを買わなければならなくなります。そうなると、私はワインですが、すべての輸入業者が大きな負担になります。

さらに、アゼルバイジャンの場合、イランがBTCパイプライン、すなわちバクー・トビリシ・ジェイハン石油パイプラインを狙って攻撃し、世界経済に打撃を与えようとしているとも言われています。もしそのような事態になれば、アゼルバイジャン国内の政治環境も悪化し、ワインを輸出している場合ではないという状況にまで発展しかねません。

そのため、ワインについては、大幅な遅延が生じる可能性だけでなく、一定期間、あるいは無期限に輸入が止まる可能性があるので、私はそこを視野に入れて活動しています。現在、アゼルバイジャンワインは日本市場で非常に貴重な存在になってきていますので、今後さらに減少し、手に入りにくくなることも十分考えられます。

(深田)
それを聞くと大変ショックです。私も早めにアゼルバイジャンワインをまとめて購入しておこうかと思います。

(アリベイ)
ぜひお願いします。

(深田)
近日中に注文しますので、よろしくお願いします。今回は、在日アゼルバイジャン人のアリベイさんに、イランとアゼルバイジャンの長年の確執と、その歴史的背景について教えていただきました。アリベイさん、ありがとうございました。

(アリベイ)
ありがとうございました。

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