#625【これが最終戦争なのか】イラン・イスラエル戦争の正体:日本人には理解し難い聖書を台本に進むアルマゲドンの全貌 フマユン・ムガール氏(2026.3.11)

(深田)
皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム プロデューサーの深田萌絵です。今回は在日パキスタン人ジャーナリストのフマユン・ムガールさんにお越しいただきました。ムガールさん、よろしくお願いします。

(ムガール)
よろしくお願いします。

(深田)
前回はイラン戦争についてお話をいただきました。この戦争の本質は、アメリカが喜んで主導しているというよりも、むしろイランとイスラエルの宗教的な対立に由来しているということでした。私たち日本人は、ユダヤ教とイスラム教について理解が深くないので、聖書の観点から、なぜこの戦争が始まり、根深いものなのかについて、ご解説いただければと思います。

(ムガール)
聖書は旧約聖書と新約聖書の2種類あり、イスラム教にはコーランがあります。この戦争は最近始まったものではなく、歴史をさかのぼると約4000年前から続いているものなのです。

(深田)
4000年ですか!?

(ムガール)
はい。その根っこが分かると、この戦争は理解しやすくなると思います。約4000年前、アブラハムという人物がいました。彼には二人の妻がいました。一人はサラ、もう一人はサラの召使いだったエジプト人のハガルです。サラには子どもができなかったので、最初の子どもはハガルから生まれました。それが長男のイシュマエルです。ハガルからは10人の子どもが生まれ、アラブ人の祖先となったとされています。

その後、子どもが成長した頃、サラに神様から「お前にも子供生まれるよ」と言われ、彼女にも子どもが生まれます。その子がイサクで、腹違いの次男です。そこからさらに多くの子孫が生まれ、ヤコブをはじめ、イエス・キリストへと続く預言者の系譜が生まれました。つまり二つの民族の流れがここから分かれていくわけですが、その争いの根底には、いわば「相続問題」があります。

(深田)
ハガルはエジプト系、つまりアラブ系ですね。サラは何系なのですか?

(ムガール)
ユダヤ系でヘブライ人です。そのため聖書はヘブライ語で書かれています。やがてモーゼが現れ、そこからイエス・キリストに至るまで、長い歴史が続きます。長男の方は預言者は生まれてこなかったのですが、約1400年前にはムハンマドが生まれます。イスラムでは預言者はムハンマドだけが生まれました。ユダヤは多くの預言者がいます。

もともとこの問題の背景には相続の問題があり、聖書にもサラとハガルが戦ったことが記されています。アブラハムは困り、長男イシュマエルを現在のサウジアラビアの地域へ連れて行き「ここで暮らしなさい」と言いました。そこが現在のメッカです。

(深田)
イスラエルの土地に行ったのは、どちらの子どもなのでしょうか?

(ムガール)
ハガルの息子であり長男のイシュマエルです。まずイスラエルに来て、そこを経由してアラブへ移りました。一方、サラの子どもである次男イサクの子孫からユダヤ民族が生まれます。現在のイスラエルや、聖書で「約束の地」と呼ばれるカナン(※1)、つまり現在のパレスチナの地域は、まさに聖書に登場する土地です。
※1)カナン:旧約聖書の中で神様がイスラエルの民に与えた場所

イスラエルも地理的には中東に属しています。ではなぜ争いが起きるのかというと、先ほどの相続問題に加え、昔は石油ではなく「水」をめぐって争っていたのです。井戸があり、「これは我々の祖先の井戸だ」と水を巡って互いに殺し合っていたのです。やがて時代が進み、今度は石油が出てきたのです。中東を見れば、イラン、サウジアラビア、UAE、カタール、クウェートなど、石油が豊富に出ます。しかしイスラエルには油田がありません。

(深田)
確かにイスラエルにはありませんね。

(ムガール)
そのため「先祖の土地から石油が出るのなら、俺たちの取り分はどうなるのか」という問題が生まれました。石油は世界の動きを左右する資源で、イランも含め、中東の石油をめぐって争いが広がっていきました。第二次世界大戦にも、こうした背景が関係しています。

ユダヤ人の中からは、約2000年前にイエス・キリストが生まれました。イエス・キリストはメシア(救世主)だったとされています。ユダヤ人はメシアであるイエスを信じたらよかったのですが、逆にイエスを十字架にかけて殺してしまったのです。

聖書の中には、十字架を背負っているイエスを見て泣いている女性たちに対し、イエスが「私のために泣くのではなく、自分と子孫のために泣きなさい」と語る場面があります。映画にもなっているので、『パッション』や『ナザレのイエス』を見ていただくと分かりやすいでしょう。

4000年の間、ユダヤ人は放浪の民族として国家を持てず、各地で迫害を受け続けました。そして最終的にはヒトラーによって約600万人が殺害されたのです。そこでアメリカは同情し「この民族を救わなければならない」と見方をするようになったのです。アメリカも比較的新しい国で、ヨーロッパで迫害を受けたキリスト教・プロテスタント派の人々が築いた国です。

ヨーロッパのキリスト教とは少し異なる背景を持つため、ユダヤ人を保護し、支援する立場を取りました。それで、1947年にはパキスタンが誕生し、1948年にはイスラエルが誕生したのです。つまり宗教の名のもとに誕生した国家が、パキスタンとイスラエルの二つなのです。

(深田)
そういうことなのですね。

(ムガール)
イスラムの世界では信仰の自由が十分に保障されていない面もあり、その中でアメリカなどが支援しました。国を作るにはアメリカなどの大国の力が必要です。アメリカ、イギリス、フランスなどが第一次世界大戦や第二次世界大戦を経て国際秩序を作る中で、建国を認められました。

結果として、強引にイスラエルという国が作らせたのです。ユダヤ人はその土地を購入していたとも主張しています。私自身もイスラエルで取材をしましたが、ユダヤ人は「この土地は自分たちが買ったのだ」と言います。確かに土地を購入していた面はありますが、その地に国家を作ったことで、パレスチナとの問題が生まれました。

そこでイスラエルとパレスチナの対立が広がり、今ではイランとの対立にもつながっています。この歴史が分からないと、現在の戦争を理解することは難しいのです。突然起きた戦争ではなく、長い歴史の延長上にあります。さらに聖書には「終末が来る」とか「大きな戦争が訪れる」という記述もあり、“ハルマゲドン”という言葉も出てきます。イランなども、こうした終末思想を意識している面があるのです。

(深田)
それは旧約聖書だけにアルマゲドンが来ると書かれているのではなく、コーランにも書かれているのですか?

(ムガール)
はい、イスラム教にもあります。そこでは「裁きの日」が来るとされています。そのとき、預言者ムハンマドも予言しているのですが、ムハンマドの弟子の一人であるマハディという人物が現れるとされています。マハディが現れ、イスラム教の思想とともに「神の国」を築くというのです。

同じようにユダヤ教にも、メシアが現れて神の国を作るという思想があります。そして三つの宗教の中心になる場所が、イスラエルのドームです。そこではイエスが降りてきて、最終的に戦争を終わらせ平和をもたらすとされています。このイデオロギーは、イスラム教、ユダヤ教、キリスト教の三つに共通しているものです。

(深田)
つまりアブラハムの末裔の宗教であるユダヤ教、キリスト教、そしてイスラム教は、いずれも最終戦争が起こり、最後に救世主が現れるという共通の思想を持っているのですね。

(ムガール)
そうです。実はそのことをトランプも語っているのです。彼は「We are waiting for Messiah(我々はメシアを待っている)」とスピーチで述べています。なぜこの戦争が続いているのかという問いに対し、「メシアが来ないと、この戦争は終わらない」という考え方です。つまりメシアを待つための戦争だという認識なのです。

(深田)
え、でも戦争を起こしているのはトランプさんではないのですか?

(ムガール)
トランプさん自身も、救世主が現れることを待っているという立場です。彼は自分のメッセージの中で、「We are fighting for Messiah. Maybe Jesus is coming(我々はメシアのために戦っている。おそらくイエスがやって来る)」といった趣旨のことを語っています。これは非常に宗教的な考え方で、日本人には理解しにくいかもしれません。我々はイスラム教徒ですからよく分かりますが、アメリカがなぜこの戦争を仕掛けるのか、イスラエルがなぜ行動するのか、そしてイランがなぜ強く反発するのか、その背景には宗教思想があるのです。

(深田)
なるほど。現在イスラエルのネタニヤフ首相は、いわゆる「グレーター・イスラエル」の思想を持っていると言われています。つまり「神様から与えられた本来のイスラエルの姿を取り戻す」という方向に向かっているということですよね。

(ムガール)
そうです。そのグレーター・イスラエルを進めるために、アメリカを中心として進められたのが2020年のアブラハム・アコード、つまりアブラハム合意という国交正常化合意です。これは新しいイデオロギーとも言えます。最近、トランプさんが平和を実現するための取り組みとしてさまざまな動きをしています。「私たちは皆アブラハムの子孫なのだから、仲良くしよう」という考え方です。

この枠組みにはサウジアラビア、イスラエル、UAEなどが参加しています。だから、アラブ諸国の多くがイスラエルに全面的に反対をしないのです。エジプトも同様です。互いに兄弟だという考え方です。イスラエルはこの40年ほど、こうした外交を非常にうまく進めてきました。さらにトランプさんの娘婿のクシュナーさんがユダヤ人であることもあり、彼が中心となってアブラハム・アコードを推進しました。平和を作ろうという考え方ですが、イランはこれに従いません。「我々はアブラハム合意には参加しない。我々は独自に進む」と言っているのです。

(深田)
つまり中東の中でも、アブラハムの末裔だと考えるハガルの系統とサラの系統が「同じ祖先なのだから協力しよう」としているわけですね。トランプさんの娘婿であるクシュナーさんがアブラハム・アコードを提案し、その周辺の国々はある程度歩調を合わせている状況である。しかしながら、イランだけは違う、なぜならペルシャ系で、アラブ人ではないというわけですね。

(ムガール)
イランは「アブラハム合意はごまかしだ。騙されている」という主張です。そして「本当のイスラムは我々だ」と主張しています。シーア派はイデオロギーが非常に強く、宗教への信仰が深いのです。他のアラブ諸国はそこまで宗教中心ではなく、ビジネスを重視する傾向があります。サウジアラビアもクウェート、カタールもアメリカとの同盟関係にあります。パキスタンも同様です。ただ、あまりにも強い宗教権力国家を作ろうとする動きは問題になります。例えばアフガニスタンではタリバンがそうした体制を作ろうとしています。

(深田)
タリバンが作ろうとしているのですか?

(ムガール)
そうです。それをパキスタンは許していません。そのためパキスタンは現在、アフガニスタンに対して軍事行動を行っており、空爆も行われています。よく見ていただくと分かりますが、イランとアメリカの対立とは別に、もう一つの戦争がすでに始まっています。

(深田)
2月から、アフガニスタンのタリバンとパキスタンが戦っているということですか?

(ムガール)
戦っています。空爆も行われ、双方で多数の死者が出ています。ただトランプの立場としては「これはパキスタンの問題であり、アメリカは介入しない。好きに対処してよい」という姿勢です。アフガニスタンにはかつて米軍基地がありましたから、それを再び取り戻したいという思惑もあるのではないかと思います。

(深田)
アフガニスタンからは米軍が撤退しましたよね。

(ムガール)
撤退しましたが、その際に多くの武器や装備が現地に残されました。それらをタリバンが手に入れ、現在パキスタン軍に対して使っているのです。そのためパキスタン軍はそれを許さず、軍事行動を取っています。ニュースを調べてみてください。アフガニスタンへの空爆が続いています。

(深田)
過去に米軍が訓練したアフガン国軍(旧政府軍)はタリバンが戦っていたものの、タリバンも同じアフガニスタン人で、旧政府軍も「なぜ自分たちはアメリカのために同胞と戦っているのか」と疑問を抱いたことが米軍がアフガニスタンから撤退した原因だと言われています。タリバンはもともとCIAがソ連と戦うために育てた勢力だったという指摘があります。つまりアメリカが作り出した落とし子が、今はアメリカの武器でパキスタンを攻撃している状態でしょうか?

(ムガール)
その通りです。パキスタンとしてはそれを許すわけにはいきません。自爆テロも起きています。先月もパキスタン国内で大規模な自爆テロがあり、何十人も亡くなりました。そうした状況の中で、軍事的に対応するしかないと考えて、タリバン政権を倒そうという動きが出ています。アメリカがイラン政権を倒そうとしているのと同じように、現在パキスタンはアフガニスタン政権を倒そうとして戦争を行っているのです。

(深田)
でも原因を作ったアメリカは、今は知らんぷりですか。

(ムガール)
はい。アメリカは「自分たちは知らない。勝手にやればいい」「我々は関わらない」と言っている状況です。

(深田)
そもそもアフガニスタンでアメリカが戦争をしていたのは何が契機だったのでしょうか?

(ムガール)
もともとは約70年前、ロシアと戦うためにタリバンを育てたことが始まりです。共産主義がロシアから広がることを防ぐためでした。タリバンはイスラム教の立場から「神の戦い」であるとして、ジハード、つまり聖戦の思想で戦いました。アメリカはそのために彼らを支援し、資金や武器を与えました。

しかし戦争が終わると、アメリカは撤退してしまいます。撤退したとき、タリバン側は大きな不満を抱きました。これだけ資金や武器を与えられたのに、なぜ自分たちは置き去りにされたのかという恨みが生まれ、その結果として9.11の事件が起きたという見方もあります。タリバンやアルカイダによる行動です。

結局、過去にアメリカが蒔いた種が形を変えて現れているとも言えるでしょう。本来ならアメリカはそれをうまく刈り取る必要がありますが、強硬な空爆などで潰すような対応すれば、それが新たな恨みや憎しみを生み、また報復の連鎖につながります。歴史を見ても、第一次世界大戦や第二次世界大戦のように、戦争は報復の連鎖で拡大していくものです。戦争のない歴史というものはほとんどありません。

(深田)
確かにそうですね。

(ムガール)
本当に第三次世界大戦になってはいけません。そのためには、どこかで歯止めをかける必要があります。今はイギリスやフランスも動き始めていて、これまでのようにアメリカを単純に支持するのではなく、むしろ「止めるべきだ」と言う必要があります。フランスやイギリスがアメリカに対して強く働きかけなければ、アメリカは止まらない可能性があります。

(深田)
確かに、今の世界の状況を見ると、アメリカが他国にかなり深く介入している印象があります。イランとイスラエルにはアルマゲドン思想があり、「最終戦争の後に救世主が現れる」と考えているので、ある意味では最終戦争に突入しても構わないという側面もあるのでしょうか?

(ムガール)
そうですね。特にイランはそう思っています。指導者が死んでいっても、戦いをやめないのです。父親が死んでも次には息子がでてきて、その次には孫など、親族が次々に後を継いで戦い続けます。簡単にギブアップしない民族です。その理由は、アルマゲドン思想やマハディ思想、メシア思想といった宗教的イデオロギーがあるからです。

イスラエルも同様で、「グレーター・イスラエル」という思想があり、聖書の記述を根拠にしています。聖書を台本にして戦争を進めています。次の構想もあり、ガザやレバノンなどで、順番にやっています。今回の状況はコーランを理解する必要があります。日本人は新興宗教のイメージから、宗教自体に距離を置く傾向がありますが、歴史として宗教を勉強する必要があります。

(深田)
確かにそうですね。戦争が起きるたびに、ユダヤ教やイスラム教の歴史を少しかじるのですが、シーア派やフーシ派、スンニ派など、すぐに混乱してしまいます。それから、なぜイスラエルがあれほど独自性の強い国家なのかなど、疑問も多いです。結局のところ、日本人は宗教についての勉強が足りないということですね。

(ムガール)
そうだと思います。間違いなく重要なポイントです。萌絵さんもぜひ旧約聖書を勉強してみてください。

(深田)
はい、わかりました(笑)。

(ムガール)
もちろんユダヤ教の信者になる必要まではありませんよ(笑)。コーランを読んだからといってイスラム教徒になる必要もありません。知識として学べば、なぜこのような世界情勢になっているのかが見えてくると思います。

(深田)
分かりました。今回は、在日パキスタン人ジャーナリストのフマユン・ムガールさんに、イランとイスラエルの対立の背景にある宗教的歴史について解説していただきました。本日はありがとうございました。

(ムガール)
ありがとうございました。

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