#601 「非常時」という魔法の言葉に騙されるな!国が地方を支配する、思考停止の地方自治法改正の恐怖 山本ひろこ氏(2026.2.15)

(深田)
みなさん、こんにちは。政経プラットフォーム・プロデューサーの深田萌絵です。今回は、目黒区議会議員の山本ひろこ先生にお越しいただきました。山本先生、よろしくお願いします。

(山本)
よろしくお願いします。

(深田)
今回の解散総選挙で自民党が圧勝したことで、この後、高市総理は憲法改正に挑まれるのではないかと見られています。その場合、緊急事態条項が盛り込まれる可能性があり、そうなると、地方自治体はどうなっていくのか、懸念をお話しいただけますでしょうか。

(山本)
はい。これは私が2024年、約1年半前に「自由経済研究会」で発表したテーマです。当時はまだ高市政権もなかったし、緊急事態条項ができる可能性は低かったのですが、その始まりと受け止められるような法改正が行われました。その時に私が気になったところを少しお伝えしたいと思います。

(深田)
地方自治法の改正が話題となりましたね。

(山本)
そうなんですよ。2024年にあったのですよ。

これが「非常時」を理由にあっさりと通ったことに私はすごく危機感を感じました。ホップステップジャンプであっという間に憲法改正、緊急事態条項成立となってしまうかもしれないという危機感を感じたのでお伝えしようかなと思います。

これは2020年6月でした。「補充的指示権」というと分かりにくいのですけれど、要するに非常時には国が地方自治体に指示を出すことができるという内容です。

(深田)
なるほど。

(山本)
ではどういう時が「非常時」なのかというと、ここの条文の例では「大規模な災害や感染症など要するに国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、または発生するおそれがある場合」とかなり抽象的なわけですよね。さらには閣議の決定だけで、地方自治体に「あれをせよ、これをせよ」指示ができる内容になったんですよね。

この改正案が出た時には賛否が分かれました。賛成派は基本的に憲法改正に賛成する人たちであり、改憲に反対する人たちが条例改正にも反対するという、いわばイデオロギーによって分かれた印象がありました。本質的なところを見ていなく、すごく残念だなと思うのです。

例えば、クルーズ船で大規模な集団感染がありました。当時、横浜市だけでは対応できず、近隣自治体と連携しなければ対処できなくなった時にさまざまな課題があったとはいえ、最終的には現場で何とかなったではないですか。

こうした場面において、お願いベースでの調整では迅速性が確保できないのではないか、そこは国が強い指示を出せばスムーズに行くのではないかということで、地方自治法改正をしたわけですよ。

(深田)
でも、それは逆な気がするのですよね。中央の担当者は地方のことを知らないので、いきなり行ってもわからないですよね。

(山本)
そうなんですよ。現場を見ていないのに、指示を出すのです。

(深田)
現場を知らず、地名や町名すら十分に把握していない人が、永田町から突然来て、いったい何ができるのかということですよね。

(山本)
そうなんです。だからむしろ私は自治体の裁量でなんかなんとか対応した方がいい解決になる気がするのですが、逆ですよね。中央から指揮権を発動して「あれをせよ、これをせよという改正案が、あっさり通ったのですよね。

(深田)
びっくりですよね。地方議会の議員さんたちはこれに反対してなかったのでしょうか。地方自治法を改正されると閣議決定で全て地方自治体の権限を奪うという形になるわけですよね。そうなると、地方議員の存在意味がなくなるということですよ。

(山本)
議員もそうですが、そもそも、自治体なのにもう自治ができないということですよ。非常事態になると「自治を許さない、国が全部仕切ります」ということになるのです。私は「それは違う」と思いました。法改正が通ってしまったので、地方の議員は法律の賛否に何もできないのです。それでも、通った後、私は議会に意見書を出したのですよね。

せめてこの指示権の運用にあたっては「自治体からの『要請』がない限り発動しないでほしい。こちらから困って要請した場合にのみ発動してほしい」という内容です。それ以外は勝手に上から強権活動をしないでほしいということです。さらに、こういう制度は上乗せ改正が行われやすいので、追加改正によって強制力がさらに強まることはやめてほしいという意見も付けました。

もっとも、意見書にどれほどの効力があるのかという問題はありますが、それでも声を上げないといけないと考え、提出しました。しかし、目黒区議会では賛成少数で否決されました。

反対した議員の主な理由は「非常時だから、このような法律改正でもいいじゃないか」というものでした。「非常時」という言葉がマジックワードですよ。「非常時だから仕方がない」「非常時には指示権がなければコントロールできないよ」と、その言葉に強く影響されるのです。

また、改憲派の人たちの中には、憲法改正に賛成なので緊急事態条項にも賛成するというイデオロギーでまとまっている人が多く、本当のリスクをもう少し考えてほしいと思っています。

(深田)

戦後80年の間にもさまざまな非常事態があったと思いますが、それでも中央に統制権を渡さなくてもこれまでなんとか対応してきたわけですよね。

(山本)

そうなんですよ。一度強い権限が発動されれば、それを元に戻すことは非常に難しいので、怖いなと思っています。

2024年には、まず非常時における国の指示権拡大を盛り込まれた「地方自治法改正」が成立しました。その後、パンデミックのような非常時のために感染症対策として「新たな政府の行動計画」が閣議決定されました。さらに、コロナのようなことがまたあったら困るからと早急に「緊急事態条項」の条文化を検討するための協議体が設置されました。

当初はそれほど動いていませんでした。2025年に入り、WHOが全会一致でパンデミック条約を採択しました。2026年に批准されるかどうかは不明ですが、こうした強権的なことが世界的に推進されている状況にあります。

さらに10月には、自民党と維新が連立合意をして、緊急事態条項の条文化に向けた協議会を設置し、2026年度中の国会提出を目指すと表明しました。そして今回選挙に圧勝したわけです。これは本当に憲法改正がされるのではないかと、もう恐怖ですよね。

憲法改正はもともと自民党の党是であり、そこに「非常時」という言葉が重なります。コロナ禍を経験したことで、みんな「非常時」と言われると揺らぐのですよね。「非常時はしょうがないよね」「非常時だからそういうのもいるんじゃない」と言って、それがすごく怖いです。「非常時」とはすごく曖昧なわけですよ。

地方自治法改正の条文でも「国の安全に重大な影響をおよぼす事態」とあります。では「これは安全に重大な影響を及ぼす」とも言ってしまえば、そうなってしまうじゃないですか。基準がないのです。

(深田)

そうです。WHOがパンデミックを宣言しましたが、その定義が曖昧であり、解釈次第でいかようにも拡張できると言えます。

(山本)

そうなんですよ。どの程度であれば、どのような種類であれば該当するのか「非常時」とか「緊急時」は定義しきれないのです。したがって、必然的に曖昧にならざるを得ません。だから、なおさら恐ろしいのです。強権に傾きやすい危険性があるからです。

この強権とは何かと言うと、先ほどの地方自治法改正で言えば、国が自治体に対して指示権を発動する点です。しかし、緊急事態条項となれば、国が個人、すなわち国民に対しても強制力を発動できることになります。基本的人権も「尊重に留まる」ということですから、どのような事態が生じるのか、想定しきれないのです。

緊急事態条項について、諸外国ではどうかといえば、導入している国もあります。OECD38か国中30か国にありますが、アメリカやイギリスなど、ない国も8か国あります。したがって、他国にあるから作るべきだ、ない国があるから不要だという議論ではないと思います。日本は同調圧力が強いので、そこまで強権しなくても「こうしましょう」と言えばみんな従うじゃないですか。

(深田)

そうですよね。基本的には皆さん決まり事を守るのがお好きですものね。

(山本)
だから、そもそもこのような強権を設定する必要はないと思うのです。強権は思わぬ時に発動されるのですよね。緊急事態条項が発動されることが直ちに独裁を意味するわけではありませんが、例えばドイツのワイマール共和国でも、ナチス政権以前から緊急事態条項は多用されてきました。その後政権がヒトラーに変わって悪用されたわけです。

このような強権があると、政府に権力を拡大する方向に使われかねないという危険性があります。例えば、積極財政が進められる中で、一部の経済評論家からはハイパーインフレの危険があるという話があります。ハイパーインフレが社会秩序の混乱に該当すると言い出すと、海外送金の禁止や通貨の切り上げ、預金封鎖という措置が、緊急事態条項の一部としてできなくないわけですよね。

どのように用いられるか分からない以上、こうした強権の設定は本当に慎重に検討すべきだと思います。

地方自治法改正のときに起こったことが、そのまま繰り返されるのではないかと思っています。今回お伝えしたいのは、二つあって、一つ目は憲法改正に賛成か反対かという議論とは別にして、緊急事態条項を単独で検討してほしいのです。

(深田)
そうですね。一緒にしないでほしいですよね。

(山本)
そうなんです。イデオロギーとは別だというのが、2024年に思ったことです。もう一つは、「非常時」という概念が本当に曖昧であるということです。「非常時だからしょうがない」と言い始めるときりがないので、そこは一歩踏みとどまって「非常時には何でもできる」と設定するのは危険なのです。そのリスクを冷静に認識する必要があります。

今後、憲法改正の発議があるかもしれない。それが現実味を帯びてきたからこそ、2024年の地方自治法改正の時に遡る必要があります。あの時本当にあっさり決まって終わっってしまいましたから。「こんなものはおかしい」ということが一部では議論になりましたが、多くの国民の知るとことにはならなかったのです。このままでは、同じように十分な議論がなされないまま成立してしまうのではないか。それが怖いなと思っています。

(深田)
法改正の時にいつも思うのは、改正案を読んでいる人が意外に少ないということです。憲法改正も、推進派は「日本らしさを取り戻そう」「自衛隊を明記して、まともな国家になろう」といいことを言うので、私も当初は賛成でした。

しかし、改正案の条文を読むと、基本的人権や言論の自由がなくなる。今まで日本人として当たり前に思ってきた権利が全部なくなって、その上、財産権や移動の自由まで制限されるような緊急事態条項が入っているので、多くの人にしっかり見てもらいたいなと思います。

(山本)
本当ですよね。これがあっさり通過することがないように、2024年の法改正の二の舞を演じないように、注目してほしいと思います。

(深田)
私も、この地方自治法改正は憲法改正とリンクしているのではないかと疑っていたのですよね。

(山本)
私も布石だと考えています。絶対そうですね。

(深田)
本日は、山本ひろこ議員から、緊急事態条項を含む憲法改正の危険性についてお話いただきました。山本先生、ありがとうございました。

(山本)
ありがとうございました。

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