#571 龍馬幻想が国を壊す?石丸伸二の源流、松下政経塾の「大いなる勘違い」出井康博氏(2026.1.16)
(深田)
皆さんこんにちは。政経プラットフォームプロデューサーの深田萌絵です。今回はジャーナリストの出井康博さんにお越しいただきました。出井康博さんよろしくお願いします。
(出井)
よろしくお願いします。
(深田)
この2回は松下政経塾についてお話を伺ったのですけど、松下幸之助さん自身の思想ですよね。そこについて少しお話を伺いたいのですが、そもそも池田大作大先生とすごく仲が良かったとか、そういうあたりはどうなのでしょうか?
(出井)
仲は良かったですよね。実際、政経塾を出て公明党の方に行っている1期生の方で、結婚を機に創価学会に入って、現在も市議をされています。公明党で議員になった方もいて、その方が選挙に出る時は、松下幸之助氏が池田大作氏と会って「よろしく頼む」みたいな話もあったということです。
野田佳彦氏(現立憲民主党代表)が、民主党政権で総理になった時には、同じ1期生なのでね、立憲民主党と公明が合流するではないかという話もあったということを聞いています。創価学会がオカルトとは言いませんが、幸之助さんは少しオカルトチックなところもある経営者ではありましたよね。
(深田)
特にどういう部分でそういうのが見えたのですか?
(出井)
そうですね、松下幸之助氏の奥さんの弟で三洋電機の創業者である井植歳男さんは「兄貴のところは宗教やから」と言っていました。今は違うのかもしれないですけど、松下電器は、みんなが幸之助氏を教祖のように仰いでいました。松下電器の販売店の人たちは、みんなで年に1度合宿をするなど、井植氏の言葉を借りると新興宗教ということになりますがそういうところもあります。
(深田)
占いにもはまっていたのですか?
(出井)
占いにはまっていたというか、皆さんもご存知かと思いますが藤田小女姫(ふじたことひめ)という歴代の総理の指南役になっていた占い師がいましたよね。
(深田)
何か「千里眼少女」として一時期有名だった方ですよね。岸信介元総理が「安保は通るのか?」と質問した時に「おやりなさい。必ず通ります。ただしあなたの政権は長くは持ちません」と言ったらその通りになったとか、朴正煕(韓国元大統領)暗殺を当てたとかいろんな逸話がありますよね。
(出井)
幸之助氏は藤田小女姫とも親しくて、一時期自分の茶室に住まわせて、経営の判断を仰いでいたとか、本当かどうかは知りませんけどそんな話も聞いていますよね。
(深田)
では占いとか宗教には傾倒していたのですね。
(出井)
今日のテーマは「政経塾」ということなのですが、前の2回でお話ししたとおり政治家養成機関なので、メインはやはり政治家を生み出すということが目的だったわけです。しかし一部にはそれ以外の道に行っている人たちもいて、政経塾の人たちの間では「セミナー系」と言われる人たちがいるのですよ。
(深田)
セミナー系ですか。
(出井)
いわゆる自己啓発セミナーですよね。
(深田)
政治塾では多いですよね。
(出井)
そうなのですよね。いろいろな人たちを集めて、自分が講師になって人生論からいろいろなことを説く人も中には一部いますよね。
(深田)
それが今活躍している若手の政治家にもどんどん繋がっているのですか。
(出井)
そうなのですよ。例えば1期生の方なのですが、林英臣さんという面白い方がいるのですが、1期生は、東大を始め学歴エリートが揃っていたが、林さんは鍼灸の学校を出て政経塾に来たというちょっと変わった方です。
(深田)
非エリート系ですか。
(出井)
非エリートの面白いおじさんなのですけど、この方が政経塾を出た後に「政経塾はぬる過ぎる。松下幸之助に代わって自分が坂本竜馬を生み出すのだ」と言って、自分で「林英臣政経塾」を作り、今でも運営されています。実は林さんのプロジェクトから出てきたのが、参政党の神谷宗幣代表なのです。神谷さんを始め、結構な数の議員を生み出していますよね。
(深田)
すごいですね。確かに神谷さんは「竜馬プロジェクト」をやっていらっしゃいましたものね。
(出井)
そうです。そこは林さんの影響もあるのだと思います。神谷氏が坂本竜馬なのかどうかはまだわからないですけどね。自分が国会議員・政治家になっていくパターンも政経塾にあるのですけど、そうではないものもあります。セミナー系と言っていいのかわからないですが、幸之助氏の遺伝子を別の方法で受け継がせようとしている人もいますよね。
(深田)
先日、東京都知事選に出られていた石丸伸二さんなどはどうなのですか?
(出井)
そうですね。石丸氏のところにも、政経塾の4期の方で奥さんが自民党の国会議員の娘さんだという方応援した人がいました。今、東京都内でお坊さんをされていますが、この人は自民党だったのですが自民党ではぬるいと感じたのでしょうね。東京都知事選で石丸氏の事務局長になって、応援しましたが、結果として石丸氏は票が伸びなかったですね。
(深田)
しかし、ぽっと出で100何十万票だからすごいですよね。当時うちの番組にも出てくださっていた藤川晋之助さんが、選挙プランナーをされていました。
(出井)
藤川さんと一緒にされていて、名前を出すと小田全宏さんですね。この方も面白い人ですね。今都内のお寺のお坊さんをされていますね。
(深田)
その藤川さんに石丸さんの選挙プランニングを願いしたのが、学会のドトール名誉会長だった鳥羽さんだったのですが、その辺も何か関わりあるのですかね?
(出井)
小田さんは仏教の方の方なので、学会とどういう付き合いなのかは、私は存じあげていませんが、毛色の変わった方が政経塾にはいるということですね。
(深田)
この政経塾がよく日本をだめにしたと言われていますが、その最たるものは何でしょうか?
(出井)
一言で言うと、やはり坂本竜馬を生み出せなかったことだと思うのですね。
(深田)
坂本竜馬を目指すことの意味がよくわからないです。
(出井)
その通りですよね。この時代に明治維新というのは、確かに時代錯誤ではありますよ。
(深田)
むしろグローバリズムの始まりが明治維新だったのかなと思います。今はいろいろなところで外国人問題が紛出をしていて、受け入れ側の日本もちょっと外国人が多すぎると感じている方がいらっしゃる。一方で、来日外国人も奴隷労働をさせられて、その間で中抜きしている政治家と企業だけがおいしい思いをして、両者が不幸になっている部分あると思うのですよね。そういうグローバリズムを始めた坂本竜馬を目指すというのが、そもそものゴールの設定が間違っているのではないかなと思うのですよ。
(出井)
松下幸之助さんはそこまで深く考えてなかったのだと思うのですよ。表現はよくないですが、単純に明治維新、要するに司馬遼太郎の世界に憧れていたのだと思うのですね。だから深く別に考えていたわけではない。
ただ幸之助氏をかばうのであれば、このままではだめだ、なんとかして崩れゆく日本を救いたい。結果としては、それは大いなる勘違いで大迷惑だったかもしれないのですよ。おじいさん、余計なことをしなくていい。実際政経塾を作った時には「お前金持ちの道楽だろ」「何勘違いしているんだ」「うまく行くわけねえじゃないか」と言われました。
それは大いなる勘違い、大迷惑、大顰蹙かもしれないのだけれど、やはりリスクを負って、政経塾という摩訶不思議な世界にないものを作ったのですよ。お金は余っていましたよ。だけど今の企業家、財界人でそういう人がいるのですかね。
トランプさんと仲良くしている人がいる。自民党と仲良くしている人がいるというのはわかるし、それによって日本が良くなればそれでいいのだけれども、何か自分で政党を作って政経塾を作って、日本をひっくり返してやろうなんていうことをやれば迷惑かもしれないですよ。大迷惑かもしれないけど、でも何か面白くなりませんか?
(深田)
質はともかく量はすごいですものね。人数は立派ですよね。輩出した議員の数とか政治家の数からすると、質はともかく量は確実に目標達成していると思います。
(出井)
何にもないところから、今国会議員だけで33人、首相も2人生み出した。それはもうすごいとしか言いようがないのだけれども、ただ松下幸之助さんは、数にこだわっていたわけではく、たった一人の本物の坂本竜馬出したかったのでしょういね。
(深田)
今、必要ですか?
(出井)
日本人は坂本竜馬が好きなんじゃないのですかね?
(深田)
坂本竜馬というよりも、身ひとつで成功したというサクセスストーリーですよね。そういうサクセスストーリーは、世界中の人が憧れると思うのですよ。ところがそのサクセスストーリーは果たして本当なのか。「Appleがガレージから始まったよ」みたいなセルフブランディングのストーリーを信じて飛び込んで、自滅していく人はたくさんいるわけですよね。
(出井)
その通り。坂本竜馬だって、司馬遼太郎が見てきたように書いた坂本竜馬なわけですから、実際にどこまで、坂本竜馬がどういう人だったかというのもわからない。
(深田)
裏でどこと繋がっているかわかりませんからね。
(出井)
けれども維新幻想みたいなものが日本人はやはり好きですよね。
(深田)
はい。好きですね。
(出井)
でも、いい加減卒業する時ではありますよね。
(深田)
そうなんですよ。だから焼き直し、焼き直しで自分の国がどこに行くのかということが、明確でないわけですよね。だからはっきりと何を目指すのか、グランドデザインを明確にするべきなのではと思います。
(出井)
その通りですね。それが結局今でもよく言われますけど、民主党政権のトラウマがやはりあるわけですよね。あの時、私も選挙を取材していたのですけども、政権交代一辺倒でしたよね。とにかく政権交代だと、その時の流行語にもなりましたが、政権交代してどんな国を作るのだっていうものが全くなかったわけですよね。だから今も同じかもしれないですよね。今政権交代が起こるような状況でもないですが、自民党がすごく弱くなっています。
(深田)
自民党が延命するために、最悪の売国政党と組むという最悪のシナリオが進行しているという状態だったら、無能な野党政権の方が、日本が悪化する速度が低下するので、それはそれでましなのかもしれないなと色々思うところありますね。
(出井)
今後はもう連立の時代になってくるでしょう。だからこそ問われるのは、理念だと思うのですが、さっきから言っている坂本竜馬ではないですが、やはり一人のヒーローが出てきて、日本を根本からよくしてくれるみたいな発想は、もうそろそろやめた方がいいかもしれないですね。
(深田)
そうですね。何か北斗の拳の救世主伝説のようなことが起こることを日本人は期待しているのですけど、アメリカも同じですよ。何か救世主、メシア思想みたいなものがあるので、それは民主主義とはかけ離れたものなので、我々有権者が一つ一つしっかりと政治を見ていくということですね。
(出井)
日本の過去30年を振り返えると、例えば細川護熙さんが出てきて、新党ブームを作って、次に2000年代には小泉純純一郎さんが出てきてブームを作って、その後は橋下徹さんがちょっとそれっぽいことになって、次は安倍さんで今は高市さんも非常に高い支持率だけれども、どうなのでしょうね。
(深田)
そうですよね。メディアで持ち上げられる人というのがこの国をどういうふうにしてきたのか、どう導いたのか私たちはしっかりと歴史を振り返える必要があると思います。今回は、ジャーナリストの出井康博先生に日本をだめにした松下政経塾、そして松下幸之助さんの思想とはどういうものかということについてお話をいただきました。どうもありがとうございました。
(出井)
ありがとうございました。





