#565 【宇山先生ごめんなさい】トランプ政権の「力による現状変更」ベネズエラ分析の答え合わせをさせていただきます! 宇山卓栄氏(2016.1.10)
(深田)
皆さん、こんにちは。政経プラットフォームプロデューサーの深田萌絵です。今回は、作家の宇山卓栄先生にお越しいただきました。宇山先生、よろしくお願いします。
(宇山)
よろしくお願いいたします。
(深田)
最近のトランプ大統領は、結構物騒になってきています。アメリカが、ベネズエラの船舶がフェンタニルを乗せているということで、何度も船舶攻撃をしています。フェンタニルを密輸している方が悪いのですけれど、このことについてどう思われますか?
(宇山)
ベネズエラがフェンタニルの不正な輸出をしている。だから「麻薬の輸出元であるベネズエラを叩くんだ!」という話になっているわけです。しかし、私はベネズエラがフェンタニルを直接輸出しているという話を聞いたことがありません。
(深田)
私も初めて聞いて「ベネズエラだっけ?」と思ったのです。
(宇山)
これはメキシコですよ。
(深田)
メキシコですよね。
(宇山)
私はメキシコという情報には接しております。そうじゃない部分があるのかもしれませんけれども、基本は中国から日本です。名古屋の問題がありましたよね。フェンタニルが日本を経由してメキシコに到達して、メキシコからドローンでアメリカとの国境の壁を越えて運ばれていくことは、私は知っております。
ベネズエラがフェンタニルとどう結びついているのかがよく分からないのだけれども、トランプ大統領が言うのは「ベネズエラがフェンタニルを持ち込んでけしからん。だから、攻撃をしてやる、侵攻をしてやる」という話です。ただもうひとつ「コカインを輸出している」と言っています。それは私も知っております。ベネズエラから、コカインが不正に持ちこまれている。そして、その船を爆破するということも9月に起こったわけです。
今、アメリカの空母ジェラルド・フォードなどを中心とする大規模な空母打撃群がベネズエラ沖に展開をしているわけなのです。そして、ベネズエラのニコラス・マドゥロ政権に対して、圧力をかけている。その侵攻があるのか、あるいは軍事衝突があるのかどうかというところが、この年末年始にかけて大きく注目されているわけです。
(深田)
イメージだけですけれども、ベネズエラは弱そうじゃないですか?
(宇山)
そうです。最貧国です。
(深田)
マドゥロはタクシーの運転手でしたよね?
(宇山)
そうです。ウゴ・チャベス政権の時に、のしあがってきた人物なのです。ベネズエラは、人口が2600万人程度で、一人当たりのGDPは世界で最も貧しい国のひとつであるけれども、石油埋蔵量は世界1位なのです。
(深田)
えっ!?
(宇山)
ベネズエラ沖に巨大な石油が眠っている。
(深田)
過去にベネズエラは埋蔵量を担保にして仮想通貨を出すみたいなことがありましたよね。その後どうなったのか追ってないのですけれども。
(宇山)
はい。石油が出る国で、その石油を輸出して、ラテンアメリカの中では、ぐんぐん高度経済成長をしていた優良国家だったわけです。チャベス大統領の時に共産主義政策を打ち出していたが、それが失敗して国が破綻しました。ハイパーインフレーションになり、今やめちゃくちゃな状態になっています。
しかし、石油の埋蔵量は十分にあるので、その利権をアメリカは狙っているのだろうと指摘されているわけです。
(深田)
我が国も危ないですね。東シナ海にあります。
(宇山)
たくさん資源が眠っていて、日本が採掘しようとすると、アメリカが邪魔をするのですよ。
(深田)
これまで採掘しようとしたことあるのですか?
(宇山)
何度もあります。ところが、その度にアメリカからストップがかかるのです。なぜ、自分たちのものなのに、アメリカが横から嘴を容れてくるのかという話です。
(深田)
そういえば、我が国は元々石炭をたくさん掘っていましたよね。それが、戦争が終わったらなくなりましたよね。
(宇山)
そうですね。石炭自体は、だいぶ少なくはなってきているらしいのですが、海底の資源はいろいろなものが豊富に眠っています。日本側がそれを存分に採掘できないのは一体なぜなのだろうかというところにアメリカの問題が大きく作用しているのです。
ベネズエラのことをお話しします。ベネズエラとはどんな国なのか?私は何とかして行きたいと、3年前に私はベネズエラの首都のカラカスに乗り込もうとしました。世界一危険な地域、都市とされているのです。その危険で荒廃した場所が、一体どういうものか何としても見てみたいと思い、隣のコロンビアに入って情報収集をして、満を持して「さぁ行こう!」と準備を整えていました。
いろいろな人に相談をしました。特にコロンビア人に相談をしたのですが、あの凶悪なコロンビア人が「ベネズエラ人だけは最凶悪だから気をつけろ」と注意されて「やめておけ」と言われました。
(深田)
最近、ナイジェリアの方がYouTubeで「ナイジェリア人に比べるとクルド人が可愛く思えるぞ」言っていましたよね。
(宇山)
それと一緒です。
(深田)
恐ろしい話ですね。
(宇山)
実際、そうなのです。コロンビアの首都ボゴダに、私は長く滞在したことがあるのですけれども、その時に現地のコロンビア人が「とにかくあのエリアにだけは立ち入らないようにしておけよ。そうでないと、お前何をされるか分からないぞ。あそこはベネズエラの移民たちが住んでいるエリアで、事実上の無法地帯だ。コロンビアの警察もあの地域には入って行けない」ということでした。
やはりベネズエラ人がとにかく無茶苦茶なことをするのだということです。ベネズエラは経済制裁を受けていますから、現地でATMからお金を引き出すことはできません。だから、カラカスに行くためには必ずドルを自分で持参して、それを旅行資金に充てるしか方法がないのです。
(深田)
それも危険ですね。
(宇山)
コロンビア人たちに「お前、必ず空港のチェックのところで調べられて銭を抜かれるぞ。間違いない」と言われたのです。それなら「靴の底やパンツの裏に隠すとか、何とかするよ」というと「その手はやり尽くされている。お前日本人だろう。日本人が行って、そういうことをして金を抜かれているんだよ」と言われました。
運よく空港のチェックを通り抜けたとしても「タクシーに乗るだろう。タクシーに乗ったら運転手がギャングとつるんでいて、訳の分からないところに連れて行かれて、身ぐるみ剥がされるぞ」と教えられました。「命まで取られなかったとしても、身ぐるみ剥がされて帰って来られなくなるオチが待っているぞ」と皆さん口々におっしゃる。私は危険なところに随分行っていますけれども、さすがにベネズエラだけは、全く状況が異なります。
(深田)
コロンビア人が怖いというのですね。
(宇山)
怖いと言うくらいですからね。危険な旅系ユーチューバーがカラカスに行って、こんな危ないこういうところだとYou Tube でやっていますけれども、もの凄く危なくユーチューバーたちに警告も与えられているくらいわけが違うようです。
(深田)
レベルが違う。レベチの危険地帯ですね。
(宇山)
危険地帯です。ラテンアメリカには危ないところが多数あるけれども、ベネズエラだけは状況が違う。それほど社会が崩壊しているので、ベネズエラの移民が何百万人という規模で周りの国々を占拠することがあり、アメリカにも移民が渡ってきています。アメリカで凶悪犯罪をする人の国籍はベネズエラなのです。
(深田)
そうなんですか。
(宇山)
圧倒的にベネズエラ人が凶悪犯罪を起こしている。彼らのやり方は、スリで物を取るというのではなく、店舗ごとガラスを叩き割って、店舗の中の物を根こそぎ略奪していくのがベネズエラ式なのです。
(深田)
ベネズエラ式なのですね。私が最後にベネズエラの話を聞いたのが、多分10年ぐらい前に内藤陽介先生のベネズエラ解説でした。チャベスが倒れて、マドゥロになったけれど、このマドゥロがとんでもない奴だとおっしゃっていましたが、それから10年たって悪化の一途ですか?
(宇山)
その通りです。マドゥロは何ひとつ国を立て直すことができないのです。2024年も不正選挙をして、大統領に再選した状況で、国民からも恨まれているわけです。だからアメリカが手助けをしてやろうという話ですが、それを全面に出すわけにはいかないので、攻め込むための方便に使っているのがフェンタニルやコカインだと言っているわけです。
麻薬犯を取り締まるために、これだけの空母打撃群を展開するのかという話なのだけれども、最後は体制転覆をして親米政権に入れ替えることが、トランプ政権の目論見なのでしょう。実際にトランプさんが地上侵攻をベネズエラにするということは、私はほとんどあり得ないと思います。
(深田)
そうですよね。無理ですよね。
(宇山)
無理です。ベネズエラも国家が破綻しているとはいえ、いろいろな民兵組織等々もあります。そういう人たちがゲリラ化して闘争していけば、泥沼に引き込まれることだってあり得るわけです。マドゥロ政権を倒したからといって、すぐにベネズエラの人民たちがアメリカに従順になるのかというと、そんなことは全然ないわけです。さらに強烈な反米政権を打ち立てると言うこともあり得ます。侵攻をして、その果実を得られるのかと言うことは何の保証もないわけです。かくなる上はエアストライク(空爆)でマドゥロをピンポイントで暗殺をするかです。私が一番考えられるのは、トランプさんはディール(取引)をしようとしていると思います。
(深田)
トランプ流ですよね。
(宇山)
圧力を強くかけて「お前このままだったら命の保証はないぞ」とマドゥロに圧力をかけて、様々なディールを引き出していく。「石油をよこせよ。民主化をしろよ。不法移民たちを送るのをやめろよ」といろいろなディールを引き出せばトランプ大統領の外交得点になります。そして、中間選挙に向けても弾みになる。こういう手段でベネズエラをネタにしているのだろうと思うのです。
(深田)
確かに、中間選挙対策でいろいろやっていますよね。
(宇山)
今、ウクライナ問題が膠着状態で、中東もイスラエルとガザの和平合意が前に進まない。どれをとってもトランプ政権は、全く外交的にうまくいっていないのです。そこで、ベネズエラに圧力をかけて、そこから何か譲歩を引き出して、自分の得点に繋げていこうという目論見の中でやっているけれども、ちょっと危険すぎます。火遊びがすぎる部分があると思うけれども、それでも私はトランプ大統領に一定の成果を上げてほしいと思うのです。
(深田)
どういう点ですか?
(宇山)
なぜかというと、今ラテンアメリカは中国の進出の拠点になっているのです。
(深田)
何かそうですよね。
(宇山)
アルゼンチンを除いて、ラテンアメリカのそれぞれの政権が、ブラジルのルラ大統領とか、コロンビア、チリ、ペルー、エクアドル、そしてベネズエラもそうです。全部、真っ赤の親中政権なのです。
これらの政権が中国にベッタリで、特にマドゥロのような政権が生き長らえることができるのは中国に安い石油を大量に売って、それを政権の財源にしているからです。国家の経済があれだけ破綻しているにもかかわらず、なんだかんだと生き長らえているのは中国が支援しているからです。ロシアが支援している部分もあるけれども、圧倒的に中国が支援をしている部分が大きいのです。
中国の本拠になっているベネズエラ、コロンビア、あるいはパナマのような国が、全部レッドグループになっていくと、今やカナダも諜報工作などでレッドグループなっているので、アメリカが上下、南北からレッドグループに挟み撃ちをされて、身動きが取れなくなってくるのです。
アメリカにとってラテンアメリカは、自分の目と鼻の先、庭先のようなものです。そのラテンアメリカが中国にこれほど進出をされていることをアメリカがみすみす見逃しておいて良いのかという話です。バイデン政権は、これに対する手当を全くしてこなかったのです。
(深田)
我関せずです。
(宇山)
今その歪みが溜まってきているので、何とかしなければならない。確かにトランプ大統領が自分の外交得点に繋げたいという目論見があり、リスクもあろうかと思います。それでもここで何らかの風穴を開けて、アメリカがラテンアメリカの中国化を阻止していかないと、アメリカの長期的な安全保障の利益にならないと私も考えます。
アメリカが動きを取れなくなると、日本も国益を毀損することになってくるわけです。だから私は、ベネズエラ問題を何らかの方法で突破していただきたいと思います。
あともう一点、このようにベネズエラと軍事衝突になってきた時に、日本が対岸の火事で済むかというと、済まないのです。
(深田)
どういうことですか?ベネズエラは何か関係があるのですか?
(宇山)
地球の裏側でしょう。あんな遠く離れた国とは何も関係がないと多くの人が思うかもしれないけれども、実はパナマ運河が大きな影響を受けるのです。
(深田)
パナマ運河と関係があるのですか?
(宇山)
ええ、ベネズエラは位置的にすぐ隣です。ベネズエラで軍事衝突が起こったらパナマ運河の通行料、保険料が莫大に引き上がるわけです。そうすると日本はパナマ運河からLNGガスなどを輸送していて、これがぐんと引き上がり必ず燃料高に結びついてくる。ベネズエラの石油輸出でも、それなりのインパクトがありますから、そこが止まることになると原油価格にも影響が出る可能性があるでしょう。
それから何といっても日本にとって、私はここが重要なところだと思うのですが、アメリカが力によって小国のベネズエラをねじ伏せるという話で、力による現状変更です。それについて日本は絶対に「アメリカの軍事手段を支持します」とベネズエラに対して表明します。
(深田)
そうですね。
(宇山)
そうすると「アメリカがベネズエラを叩くのは良いのに、中国が台湾を叩くのはだめだというのは、一体どういう理屈だ?」と中国側から「合理的な説明をしてみろ」と迫られた時に、日本側が何と説明をしますか?その答えの用意はできていますか?国際社会がダブルスタンダードだと非難します。
その時に、どう答えるのかよく考えておかなければなりません。そういう意味で、台湾問題とも直結してくるので、ベネズエラの軍事衝突は日本にとっては対岸の火事ではないということです。
ひとつ付け加えますが、今、力による現状変更という話をしました。私はこの言葉が大嫌いなのです。こんな偽善的な言葉が他にありますか?高市さんの周りの人たちが「力による現状変更は認めません」と日本政府が言います。岸田も石破もそうです。今までの歴史を見てください。全ての事案は力によって変更されてきたのです。
(深田)
「力による現状変更は常識です」と言ってほしいのですね。
(宇山)
ええ。これが歴史であり国際政治の本質なのです。
(深田)
確かにそうですよね。
(宇山)
力を持っているものが、弱いものをねじ伏せるというのが、国際政治の常識なのです。国際政治における国と国とのパワーのぶつかりあいでは、綺麗事は全く通じません。でも、日本政府はアホみたいに「力による現状変更は認めません」と鸚鵡返しのようにいつも言うでしょう。
そんなことを原理原則として掲げたとしても中国はやる時はやるのです。「そんなものは糞食らえだ」とドーンと突っ込んでくるわけなのです。国際政治は原理原則ではないということです。パワーとパワー、力によるぶつかりあいこそが国際政治の本質であり、トランプ大統領がやる気になればベネズエラの1国くらい潰すことは簡単なことですよ。
それこそ中国が本気で台湾を併合しようと思えば、これとてできるわけなのです。パワーとパワーのぶつかり合いの中で、そうさせないようにするには、どうしたらいいのか話をしなければならないのです。それをバカみたいに「力による現状変更は認めません」という偽善論、原則論をただ掲げるだけの日本人(政府)はお花畑だと言わずして何と言おうかということです。
(深田)
「遺憾の意を表します」
(宇山)
二言目には、そうでしょう。
(深田)
遺憾の意を表明するって、子供の頃から、この言葉は何なんだろうと思っていました。
(宇山)
「何もしません」と言っているわけです。
(深田)
本当に意味がわからないと思っていました。
(宇山)
結局、事を荒立てたくない。自分たちで何か物事を前向きに対処したくない、事なかれ主義の表れじゃないですか。
(深田)
何も言わないと、国内的に文句言われそうだから、意味のないことを何となく言ってみるということですね。
(宇山)
そうです。本当に意味のない事です。
(深田)
遺憾砲より、文春砲の方が強いですからね。
(宇山)
そういう事です。もっと国際政治の現実を知っていただきたいたいと思います。
(深田)
ありがとうございます。今回は作家の宇山卓栄先生にベネズエラの現状についてお話をいただきました。先生どうもありがとうございました。
(宇山)
ありがとうございました。





