#557 新年早々すみません!トランプ政策でドルと円が共倒れの近未来とは!? 吉田繁治氏
(深田)
皆さん、こんにちは。政経プラットフォームプロデューサーの深田萌絵です。今回はシステムズリサーチ代表の吉田繁治先生にお越しいただきました。先生、よろしくお願いします。
(吉田)
よろしくお願いします。
(深田)
吉田繁治先生のYouTubeで「お金の価値がなくなる時代」という動画を拝見しました。これはこれからこの世界で本当に起こるのではないのかというぐらいの説得力があったので、うちの視聴者さんにも是非ともお話を聞いていただきたいと思いました。吉田先生はなぜ「これからお金の価値がなくなるかもしれない」とお考えになったのか教えていただければと思います。
(吉田)
今回は『通貨価値の希薄からのインフラの時代マネー戦略2026』ということでお話ししたいと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=qwlRx8hw4nU

この通貨価値の希薄化を一言で言いますと2008年以来、リーマン危機の後増刷されたマネーが1単位の価値つまり1万円とか100ドルの価値がどんどんどんどん希薄化していると、計算しますと年率で3.1%実は下落しているのですね。
通貨価値が下落するということは物価が上がることなのです。例えば、仮に1000円で買えたものが1100円になるとしますよね。そうすると10%通貨価値は下落しているのですよね。ですから通貨は名目数字が同じですから同じように見えるのですが、実は通貨の価値は、物の購買力なのですね。それがどんどん低下してきたということからお話しします。
(深田)
お願いします。
(吉田)
戦後の世界経済は1940年から80年経っているのですが、ドル基軸体制では平均3.1%のインフレだったっていうことなのですね。1940年から1971年まではいわゆるブレトン・ウッズ体制(※1)と言って、金準備制の通貨体制だったわけですね。
※1)ブレトン・ウッズ体制:米ドルを資本主義国の基軸通貨とし、金1オンス=35ドルと定め、ドルと金との兌換を保証し、各国は自国通貨を米ドルに対し固定する「金為替本位制度(金ドル本位制度)。円は、1ドル=360円で設定された。

それを経て1973年から今度は変動相場制になったわけです。その一貫して、ドルの価値、つまり購買力は3.1%ずつインフレで低下しているのですね。その中で、日本はドル基軸通貨体制の中にあります。だからいつもドル円がどうなったのかと言っています。
その中で1990年の資産バブル崩壊後、1997年から日本の金融危機は、銀行が例えば21あった都銀が今メガバンク3行に統合されました。あれは銀行が不良債権で倒産して、それを統合したということですね。それが1997年だったのです。
1997年から約25年間、金利ゼロで物価も上がらないデフレ経済だったのですね。25年間、日本人は通貨の価値下落がインフレであることをずっと忘れていたのです。
(深田)
確かにそうですよね。
(吉田)
物価も上がらず、通貨価値も同じだと思い、それで預金をいっぱい貯めてきたわけです。それが2021年までの日本だったのですね。
(深田)
私たちは「デフレが悪いことでインフレの方が良いのだ」とちょっと勘違いした時期ですよね。
(吉田)
そうですね。インフレというのは、通過価値の下落で物価が上昇することですね。何よって起こるかというと、経済に対して通貨を余分に増刷する。正確に言うとGDPの実質増加率よりも余分に通貨を増刷した場合は、その分が物価の上昇となってインフレとなります。通貨の側からいえば、通貨価値が下落したことなのですよね。これがインフレです。インフレは通貨の増刷によるものであるということです。
日本もコロナ後の2021年から円安が主因のインフレになった。コロナの時、日本では、1人当たり10万円配りましたよね。総額で100兆円です。アメリカでは5兆ドル、1世あたり100万円近く配りました。それで通貨が増刷されて、一旦は預金になったのですけど、それが購買力になって、同時に日本は円安になりました。円安が主因のインフレになったのが2021年からなのです。
日本のインフレは、ドルに対して49%の円安による輸入物価高騰から起こったのです。1921年の1ドルは105円だったのですが、現在155円ぐらいですよね。49%くらい円の価値がドルに対して下がっているわけです。日本は海外から年間で、資源エネルギー、食糧を輸入していますね。その輸入物価が、実は1.5倍に上がったのです。輸入物価が1.5倍に上がるということは、企業は仕入れ原価が上がったことに等しいわけで、それが物価に転嫁されたわけですよね。それが49%の円安による輸入物価高騰なのですね。
原因は2つで、通貨の増刷と円安という原因によって、日本円は下落することになったわけですね。それが結果として今の物価上昇なのです。一方、賃金の上昇は平均すると今は大体2%ですね。上場企業に勤めている上位10%の人は大体3%くらいなのですね。定期昇給が2%、ベアが1%ぐらいで、2026年は3%から4%上がると言われていますが、平均すると物価上昇の3%に対して賃金上昇は2%付近です。
今世帯の平均預金は、実に多くて日本は世界一で1100兆円あるのですよ。それを5300万世帯で割ると1世帯あたり2000万円の預金があるわけです。「うちには2000万円の預金ないよ」とおっしゃる方が多いのですが、この世帯には、例えば医者や弁護士など自営業の人も入っているのですね。農家も入っています。サラリーマン世帯でいうと、1000万円くらいです。
今、定期預金の金利が1年で0.2%です。ということは物価3%が上昇すると、賃金と預金資産は2%以上ずっと目減りしているのですね。これをデータで見ていきます。

ここにあるリーマン危機はアメリカの金融危機でデリバティブ(※2)の危機だったのですが、その時アメリカが行ったのは、通貨を増刷するという対策だったのですね。デリバティブの危機に対して銀行救済のために通貨を増刷したのです。
※2)デリバティブ:金融派生商品。先物取引、オプション取引、スワップ取引などの総称
それ以降ずっと増刷を続けまして、FRB(Federal Reserve Board、アメリカの中央銀行)は、2008年には8000億ドルだった通貨を5兆8000億ドルと7.5倍増刷しています。ECB(European Central Bank、ヨーロッパ中央銀行)は2008年が1.4兆ユーロ、現在6兆ユーロで4.3倍増刷しています。ユーロはアメリカよりはちょっと少ないですね。日銀は2008年に100兆円通貨を発行していて、現在7.0倍の695兆円になっています。2025年は2008年に対して、FRBアメリカは7.5倍、ECBは4.3倍、日銀は7.0倍の通貨を増刷したわけです。
(深田)
これはすごい量ですよね!
(吉田)
通貨は、GDPつまり商品として使われるものと金融資産の購入で使われるものであるわけですが、リーマン危機以降の通貨増刷は、金融経済と言って金融資産の方に行って、過剰流動性(※3)になったのですね。
※3)過剰流動性:中央銀行などによる大規模な金融緩和や信用供給拡大によって、市場への マネーサプライ(資金量)が実体経済の資金需要を大幅に上回っている状態。
これに対照して、インフレ込みのGDPですが、これは商品生産と所得と需要です。これはアメリカでも、15兆から32兆ドルまで2倍しかなってないわけですね。通貨は7倍増えたのに、GDPは2倍にしかなっていないですね。ヨーロッパでは12兆ドルから19兆ドルの1.6倍しかなってない。日本では5兆ドルが変わらず1.0倍なのです。1.0倍というのはドルベースで見ているのですが、ドルベースで見るとこの間に50%の円安があっために1.0倍と全然ドルベースは伸びてないのですよね。
これが実体経済、いわゆる商品の生産と需要と所得の経済で、所得と言い換えてもいいです。GDPは生産=所得=需要です。その中で、通貨の価値、通貨の指数、つまり相対的な通貨指数、対世界通貨に対して、ドル円は円とドルの関係だけですが、そうではなくて世界の通貨平均に対する指数です。どうなってきたかというと、ドルは1.3倍に上がっているのです。ユーロは、1.1倍で通過価値を維持したわけですね。円は、0.6倍に価値を減らしたのです。つまり円安になった。
(深田)
こんなに減っているのですね!
(吉田)
減ったのです。だから、円で見るとGDPは増えたように見えるのですけど、ドルで見ると全く増えてないということになる。もう17年間増えてないということになるわけですね。円の価値は世界の通貨に対して0.6倍になったということです。
過剰流動性になって、日米共に自社株買いに向かいました。アメリカで45%、日本で35%です。自社株買いにより流通している株を減らしたのですよね。減資と同じで、1株あたりの純益は上がったようになります。例えば自社株は45%としますと1株あたりの純益は45%上がるわけです。
さらに運用額9000兆円のファンドの株買いで、例えば日本ではNISAをやっていますが、あれはファンドに預託することですよね。そのように世界中から集まったマネーが、アメリカのファンド20社で9000兆円もあるのです。これが株を買っている。全部ではなく3000兆円ぐらい買っているのでしょうか。
ファンドの株買い増加でPERは2倍の株価高騰になったというのですが、PERとは株価を純益で割ったものです。それは150年間の平均で17倍なのです。現在、それが40.4倍なのですね。つまり、株価評価が2倍に上がっているのですね。ということで、このお金は株に行ったわけです。株価指数はS&P500で7.8倍になっている。ユーロ株50で2.8倍、ユーロがそんなに上がってないのは、ユーロはそんなに通貨増刷していませんよね。日本でも通貨を7倍増刷してから株価6.1倍に上がっています。つまり、過剰流動性によって上がったわけですね。
同じようにして金もそうです。金も、1オンスがドルで5.5倍に上がって、1グラムで円では7.6倍に上がり、現在2万3000円ぐらいですね。直近では2万5000円だから、8倍ぐらいに上がっている。金がドルに対してよりも円でより金額が上がったのは円安になったからなのですね。
まとめると、通貨が増刷されて、GDPの中の通貨として流れる分がオーバーフローして株価とか資産価格に行ったのですね。それでこちらが増加したように見えるわけです。今日本のGDPは名目で650兆円、実質で571兆円と言われますが、その所得は増えていない。過剰流動性から金融経済の株価、金、資産価格が高騰したということなのです。
(深田)
お金をたくさん刷って、そこにお金がほとんど流れていった。そういうことですね。
(吉田)
通貨の増刷は個人の所得にはならず、銀行のマネーの増加になったわけですね。銀行のマネーの増加が株や金、資産に流れたわけです。
(深田)
私たち個人にはお金は流れてこなかったけれども、日銀が一生懸命刷ったお金が全部銀行やファンドに流れて、私たちは恩恵を受けていないということですよね。
(吉田)
例えば日銀は7倍(2008年比)通貨を増刷していますよね。これに対して世帯の所得は7倍に増えているでしょうか、ほとんど増えてないですよね。つまり世帯は素通りして、金融機関やファンドの方に流れていったわけですね。これを過剰流動性というのですね。
リーマン危機以降は、GDPに対する過剰流動性が発生したということです。それで資産価格が上がって通貨価値は資産価格に対して暴落したわけですね。物価に対しては、3割下がったわけですけれども、通貨価値は、資産価格に対して例えばS&P500に対して通貨は、7.8分の1になっているのです。金に対しては5.5分の1になっているのですよね。このように通貨価値は急落しているわけです。
(深田)
怖いです。
(吉田)
どういうことになっているかというと、例えば深田さんが2008年に金を買っていたとすると金の価格は、所得は同じでも今7.6倍になっていますよね。それを金や株に投資しなかったら全然増えてないということですよね。

日本の場合、日本のインフレは、コロナ後2021年に始まっていました。世帯の実感で日銀の生活意識調査という行動経済学の調査があります。つまり世帯でどれくらい物価が上がったのかというと、物価は10%上昇しているのです。これはスーパーの物価です。昨日実は、正月の買い物でデパ地下に行ったら、いろいろ正月用の食品などが、昨年の1.5倍ぐらいになっていました。
(深田)
私は今アメリカにいるのですが、アメリカのコストコでお肉の値段を見ると、1年で1.3倍から1.5倍ほどに上がっています。
(吉田)
そうですね。私の長女はアメリカのマイアミに住んでいるのですが、2、3年前に行った時は卵が10ドルだったのが、今は30ドルぐらいになっています。日本の場合、ずっとデフレで上がっていなかったですよね。それが2021年から上がっていたのですが、これは統計のあやで、出ていないのです。
(1997年比で)米欧のインフレで、アメリカは1.9倍、英国は1.9倍、ドイツも1.7倍になったのですね。年平均で米国2.6%、英国が2.6%、ドイツも2.2%です。ところが日本では、商品物価は1.1倍にしかなっていないのですね。G7で最も低い。ただし日本の食品は21年から急上昇していたのですが、それが見えなかったのです。
物価上昇に関して、2021年は、菅内閣の時に日本のスマートフォンは世界の2倍高く、世界で4000円から5000円なのに、日本は8000円から1万円もするということでスマホ料金を半分に下げたのですね。菅首相がスマホの料金を2分の1に命令したのです。スマホ料金も消費者物価ですから、これが下がったために、実際の物価は3%ぐらい上がっていたのに、上がっていないように見えていたのですよ。
それで2022年から上がったように見えたわけですよね。だから、日本は2021年から、政府も日銀もインフレ認識に1年半ぐらい遅れたのです。日本の物価は2021年から2%インフレだったのですね。その後3%にすぐなったわけですが、これで気づかなかったのですね。
スマホは、結構高くて8000が4000円になりました。1世帯で2.4万円が1.2万円に下がったのです。食品支出は8.5万円ぐらいですから、携帯電話の支出はかなり大きいので、世帯も物価の上昇に気がつかなかったのです。日本の円安インフレの認識は、1年半くらい遅れ、利上げに遅れが出て、現在ドル買いと株価バブルに来ているということですね。
その次の説明に行きます。日本の最近5年間のインフレは74兆円あったのだということですね。
(深田)
金額で見るとかなり大きいですね。
(吉田)

すごいですよ。日本のインフレは先ほど言った「円の価値下落」です。実質GDPとは商品の数量に換算したGDPです。名目GDPとは物価に換算したGDPです。通貨では紙幣の数字とその購買力の区分が大切なのですが、我々はこれを区分していません。1万円はいつまでも1万円の価値を持っていると思っているのですが、実はそうではないのですよね。
2025年9月時点の日本の円安インフレの正体を、2020年を基準にした時は、実質GDPで561兆円ですが名目GDPで635兆円なのです。つまり円安インフレ分が74兆円です。
(深田)
なるほど。
(吉田)
名目GDPの635兆円というのは74兆円上がった商品価格で見ているわけです。こちらは商品数量で見ているのですよね。74兆円がどのように上がったのかというと、エネルギー資源、食品など輸入の必需材の円安からの上昇が60兆円分あります。つまり2020年時点の輸入価格は、輸入は100兆円ぐらいだったのが今は160兆円です。つまり60兆円分が輸入の支払いとして、日本からマネーが海外に流出してしまったのです。
(深田)
流出ですか。
(吉田)
それで価格は74兆円上がり、これが円の価値下落です。円の価値下落は、国内で需要が増加によって物価が上がったのではなく、実は輸入物価が高騰することによって円が海外に出てしまったということです。つまり、ドル買いで出てしまうことによって円所得が少なくなった。この60兆円分を負担したのは全部世帯(個人)です。というのは企業が、輸入物価が上がると価格を上げるので、その分だけ利益が増加したのです。ところが世帯の方は、商品を買って支出したわけですね。
(深田)
私たち個人ばかりが損しているということですね。
(吉田)
それはそうです。例えば、ユニクロもニトリも、輸入しています。円安になっても円安分を価格に転嫁しているのでユニクロやニトリは損をしていないのですよ。損をしたのは高くなったものを買う世帯なのですね。これが60兆円です。
2020年の1万円の価値は、5年間で13%下がって8700円になったのですね。では外為市場でどうなったかというと、ドル円のレートは、2020年が105円で、2025年が156円になって49%下がっています。これは日本円の価値下落を示しているわけです。だから米国の物価は49%の円安により日本から見れば49%上がったようになったのです。
(深田)
ええー。
(吉田)
これが円安インフレでハワイのラーメンが3000円、スイスのラーメンが5000円になるのですよ。アメリカに住んでいるとわかると思いますが、とんでもないことです。では、ハワイのラーメンは日本のラーメン1000円よりも3倍美味しいのかというとそんなことないですよね。スイスのラーメンは5倍美味しいですか?同じですよね。
(深田)
そうですね。不味いかもしれないですよね。
(吉田)
不味いかもしれないですよね。日本の方が美味しいかもしれない。これは何を意味するかというと、日本の円の価値がこれだけ下がったということなのですよ。日本の価値はドルに対して5年間で49%下がり、スイスフランに対して5年間で68%下がっているのです。私は、スイスフランを持つことを10年ぐらい前から薦めていて、結構利益を出している人がいます。円は、35%インフレのトルコリラを除き世界一価値を減らす通貨になったのです。これが事実です。
(深田)
ああ、そう思います。最近結構いろいろな人が言っているのですけれど、両替をしてもらえない時があるのですよ。
(吉田)
ドルを円に?
(深田)
いろいろな海外に行って、円を現地通貨に交換してもらえないのです。ドバイやアフリカ、フランスでも断られたという方がいらっしゃって、円が嫌われ始めているなと思いますね。
(吉田)
それは、1973年にアメリカがドルの交換を停止して、アメリカの通貨がどんどん下がった時に、ヨーロッパのお店はドルで商品を売らなくなったという時期が1970年代にあったのです。それと同じ現象で、円の価値下落ですね。

では、ドルはどれくらい価値が下落したのか。1913年にFRBが設立されていますが、ドルの商品の購買力はその時の価値を1000とすると現在31です。円はそれよりも下落しています。
(深田)
えっ、そんなに下がっているのですか!?
(吉田)
そうです。当時1000ドルだった通貨の価値が現在31ドルです。
(深田)
3%ぐらいしかない。
(吉田)
1920年代は『グレート・ギャツビー(※)』の時代で、グレート・ギャツビーが着ている服がありますよね。今50万円ぐらいすると思います。その当時は3.1%なので1万5000円ぐらいですよ。
※)グレート・ギャツビー:1925年フィッツジェラルド著。恋を成就させるために巨万の富を築いた男の物語。
(深田)
確かに昔のそのブランドの服、サンローランの1900何十年代のぐらいの値段を見ると100ドルとか200ドルと書いてあって驚きますよ。今50万、60万するサンローランのジャケットが、1万5000円とか3万円ぐらいで買えた時代があったということですね。
(吉田)
住宅も金価格も同じようにして、つまりドルの価値が1000から31に、年平均で3.1%下落していますね。つまり100ドルの数字は同じでも、FRBが設立された時の100ドルは2025年の購買力の実質レート3.1ドルであるということです。
原因はGDPの増加以上のドル増刷です。これはFRB自身が購買力をこのように出しているFRBの表です。原理としては、通貨はその国のGDPの増加率以上に増刷されると1単位の価値が下落する。米国の100年のGDPの実質増加は3%であって、名目では6%、名目とはインフレ込みですね。ですからドルは毎年3.1%余分に増刷されて、112年間で実質GDPは1.031の112乗=31倍ドルが増刷されたからドルの価値は1000分の31になったということなのです。

(深田)
ああ、もうぴったり合っているのですよね。
(吉田)
ぴったり合っています。最近「ドルは価値下落しなかった。円は下落した」というのですが、そうではなく、ドルそのものが下落しているのです。円の実質・実効レートで、実質とは物価に対してということで、実効レートとは、世界の通貨に対してということです。だから円の実質実効レートは、ドル円だけではなく、1995年からの30年で3分の1に下落しています。これを示すのがハワイのラーメン3000円なのです。1995年にはアメリカではラーメンが1000円だったのです。
(深田)
確かにそうですよね。そうでないとこんな値段にならないですよね。
(吉田)
円の実質実効レートの推移を見ると、1970年から1995年までは円はずっと価値が上がってきたのです。80から190まで上がったのですね。2倍以上に上がったのですが、1995年からずっと下落しています。下落した最大の原因はアベノミクスでの通貨増刷です。通貨をGDPの増加よりどんどん増刷したから、それはドル買になって海外に行って円を下落させたのです。
円安はどれくらいになっているかというと、その時点(1995年)から円が3分の1に下がっています。1995年は、あまり知られてないのですが、金融ビッグバンといって、この時外貨購入が自由化されたのですね。ですから日本円の金利は0.0%、ゼロ金利の円でドル買いをして累積買い越しが400兆円海外に出ているのです。
結果として1990年以降の30年間も円の購買力が世界一大きく低下したということを示しています。一番上がったのが人民元で、日本円が一番下がっていますよね。トルコリラよりも下がっています。
(深田)
トルコリラよりも日本の円の価値が下がって、中国人民元の方が、価値が上がっているということですか?
(吉田)
そうです。2005年の5月末から2025年の5月末の20年間の数字です。日本円が一番下がっています。トルコリラより下がっている。アルゼンチンペソより下がっているが、このデータを政府は出しませんよね。都合が悪いからですね。
(深田)
そうですね。
(吉田)
同じように金の価値も株の価値も通貨ではなくて、商品の価値もこのようになっているわけです。だから円の賃金と預金は世界一購買力が低下したということですね。

まとめです。外為市場は基軸通貨のエレベーターの中にある。例えば円から人民元に変える時は、円からまず基軸通貨のドルに変えてドルで人民元を買うという形なのですね。必ずドルが媒介通貨になるわけです。そのドルが下落しために円はそれ以上に下落したわけですね。だから全体のエレベーターが下落した。その中で、租税回避地を持つスイスフランですね。それから人民元はBRICS連合20か国で金・コモディペッグ暗号通貨を作って、ドル基軸通貨から逃れようとしていますよね。ということで、この2つの通貨は上がっているわけです。他の通貨は全部下がっていますね。
(深田)
なるほど。
(吉田)
円が一番下がっているわけです。2008年から2025年世界は通貨を大増刷した。これはMゼロ(※5)という通貨で、7.5倍、ユーロは4.3倍、円は7.0倍だからこれが下落しています。GDPの増加率よりも通貨の大きな増刷だから、世界の通貨の実質・実効レートは下落しているのです。ただ日本はドル円だけで見ますからドルに対して下がったような感じしか分からないのですね。ところがドルそのものが下がっていますから、円はそれ以上に下落したわけです。その結果として、例えば世界の株価は時価総額が1.6京円になりました。S&P500が7.8倍、ユーロ株50が2.8倍、日経平均225が6.1倍です。
※5)Mゼロ:紙幣や硬貨を含む経済で流通している現金の合計額
金の価格は5.4倍に、円では7.6倍になり円は対ドルに対して49%下がり、住宅は米国で2.7倍、東京は1.7倍、ロンドンは2.3倍になり、原油は1.1倍の価格になっているのですね。原油が上がらなかったのは、資源は価格が上がると増産されるのです。資源は、増産できない金のようには上がらないのです。LNGなども例えばアメリカではシェールガスが生産されたため逆に0.26倍に下がっています。
資源のインフレはなかったのですが、資産価格のインフレがあったのです。資産価格の高止まりだったのですね。象徴的なのが、ビットコインで2020年から11.3倍になっています。しかし、2025年10月から23%下落しました。原因はトランプ人気の剥落です。トランプは強力にビットコインを支援していましたからね。中央銀行の通貨にするとまで言っていました。それでトランプ自身もトランプコインを発行していますよね。
実は今、トランプ人気が急落して石破前首相の37%ぐらいに支持率に下がっている。それで下落したのがビットコインなのです。それは通貨価値の下落であるということですね。

2025年から2028年はトランプ時代の4年はさらに世界の通貨は、この後どうなるのか?世界の通貨に対して実効レートでドル安は確実であるということと、ドル円が155円を続ければ円の実効レートも、ドルに連れて円安になるということですね。
(深田)
うわあ、怖いです。
(吉田)
1ドル150円を守ったとしてもトランプ利下げによってドルそのものが下がります。したがって、ドル円と通貨安が起こって、さらにインフレになって、通貨価値の下落が2025年から2028年で想定される。
他方で、中央銀行は準備通貨として金を買い増して、価値を上げているのですね。語られないこと、決して言われないことは、金価格の高騰は「貿易通貨としてのドルのリセット」を示しているのです。中央銀行は、金を「無国籍の国際通貨(=貿易通貨)」としている。
金は中央銀行が買っているから上がっているのであって、個人が買っているから上がっているのではないのです。なぜ金を上げるのかというと、ドルの代わりの国際通貨にしようとしているのです。これをドルのリセットと言います。
中央銀行は元々安全通貨しか買わないのですね。だから金を安全通貨と見ているわけです。例えばBRICSの中央銀行はドルを売っていますよね。リスク通貨と見ているわけです。今、貿易通貨でドルのリセットが起こっているのです。なぜかかというと、ドルは米国経済のトリプル赤字の国のインフレ通貨である。これトリフィン(※)という人が言っていたのですね。貿易も赤字、財政も赤字、経常収支も赤字であるということは通貨を増刷することを意味するわけです。
※)トリフィン・ジレンマ:ドルが準備通貨として世界に供給される時、世界経済が米国経済を上回るペースで成長すると、それに伴って大量のドルを供給する必要があり、米国の国際収支が悪化し、財政収支と経常収支が継続的に赤字を余儀なくされる。
(深田)
そんな状態では円とドルの運命は一蓮托生ということですよね。
(吉田)
ですから、日本はドルを売ればいいのです。今1.2兆ドルの外貨準備を持っていますから、それを売ればいい。中国人民元みたいに売れば日本は脱出できます。だけど日本はそれやらないでしょう。ドルと一緒に下がりますよ。

ここで大事なことは、アメリカは貿易赤字が1兆ドル、財政赤字が2兆ドル、経常収支の赤字が1.2兆ドルあるので、ドルは年間合計で4.2兆ドル増刷されるのです。ということはドルの価値は下がっていくのですよね。世界の通貨ということだから、その次はどうするかということですね。今日はここまでにいたしましょうか。
(深田)
はい、分かりました。怖いですね。このように理論的に見ていくと、円の価値が下がっているだけではなく、ドルの価値がどんどん下がってきているという現象です。日本は外貨準備高のドルをたくさん溜め込んでいますから、日本円とドルは一蓮托生ということですよね。
(吉田)
そういうことですね。政府だけでなくGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も125兆円のドル国債とドル株を持っていますね。政府も1.2兆ドルのドル国債を持っていますね。それを売れば日本はドルから脱出できるわけですね。それをやらないでしょうかね。やることを僕は勧めようと思うのですね。
(深田)
おそらく、日米合同委員会に支配されているので、それをやると言った瞬間に、我が国の首相の首が飛んでいってしまうかもしれないですものね。
(吉田)
ただ、トランプは貿易赤字だからドル安をやろうとしているのです。トランプは支離滅裂なこと言うのだけれど、関税をかけるということはドル安政策なのですよ。だから「日本からの輸出価格が高くなるように、ドル安にして円高にしたらいいよ」ということです。それには、財務省が介入して「ドル国債を売れば円高になってドル安になるからいいのではないか」と言えば、トランプは同意するのかもしれません。
(深田)
はい。確かにそうですね。アメリカ様のお許しをいただければ日本もドルを売ることができるかもしれない。ただし私たちは老後の資金を今貯めているところなのですけれども、円の価値が下がり、頼みの綱のドルまで価値が下がっていく。次回は「私たちはこれからどのようにサバイバルすればいいのか」という資産防衛術について、吉田先生からお話をいただきたいと思います。
今回はシステムズリサーチ代表の吉田繁治さんにご解説をいただきました。先生、どうもありがとうございました。
(吉田)
どうもありがとうございました。





