#536 愛国=改憲は米ネオコンの都合!アメリカ押し付け憲法論をぶった切れ! 内海聡氏
(深田)
皆さんこんにちは。政経プラットフォームプロデューサーの深田萌絵です。今回は、DDClinic院長の内海聡先生にお越しいただきました。先生、よろしくお願いします。
(内海)
よろしくお願いします。
(深田)
今日は、今話題の憲法改正議論です。緊急事態条項(※1)が入って、急速に憲法を改正するという方向で進んでいるのですが、いかがでしょうか。これは成立しそうですか?
※1)緊急事態条項:現行憲法にはない条項で、自公案では第98条に新設。
自公案:第98条(緊急事態の宣言)
1 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
3 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
4 第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。
(内海)
分かりません。ずっと昔から憲法を改正したいという政治家がいて、それを表明してきたわけだけど、実践されていません。今回も表明はするけれども、民意なり周囲の圧力などで、できなくなる可能性はあると思いますが、やるかもしれません。ただ、今回の憲法改正の中身は酷いので私は強く反対します。
(深田)
その憲法改正の中身が酷いというのはどういうことですか?
(内海)
振り返れば、都知事選とか衆院選の参戦の時から、僕は憲法改正をすごく反対しています。愛国とか保守とかの話になりますが、そういう人たちは「愛国=憲法を変える」みたいな勝手な定義になっているわけですよ。
(深田)
今、愛国と憲法改正がセットになっていますよね。
(内海)
そもそもの考え方は、多分アメリカ押しつけ憲法という考え方がベースにあって、アメリカに無理やり押しつけられた憲法だから、自分たちの憲法を作るあるいは戻すというところから考えているのだと思います。アメリカ押し付け憲法というのは、憲法を普通に勉強すれば分かりますが、9割が嘘です。
確かに占領国のアメリカが違う憲法を作るというのはありましたが、そもそも憲法研究会(※2)というのがあって、そこのトップの人の名前はちょっと今忘れたが、調べればすぐ出てくる人です。その日本人が憲法研究会を中心に草案を作って、それをGHQが確認した後、国会に戻されて幣原喜重郎元首相が9条の話などを入れ込んでできたものです。
※2)憲法研究会:1945(昭和20)年10月29日、高野岩三郎の提案により、民間での憲法制定の準備・研究を目的として結成された。研究会内での討議をもとに、憲法史研究者の鈴木安蔵が最終案をまとめ、12月26日に「憲法草案要綱」として、同会から内閣へ届けられた。
これは、歴史書に載っているレベルのことで、一般の本屋さんで取り寄せられる“憲法が作られた歴史の本”に出ていて、陰謀論でも何でもないです。それをただ「アメリカ憲法だ」と言っているということは、歴史的な認識もすでにずれています。
戦争の反省からそういうことができたというところがあるわけです。今の憲法を戻したいとか変えたいと言い人がいますが、憲法改正により日本国民がもっとより助かるとか、国がもっと豊かになるのであれば、少しは検討の余地はあると思うのですよ。
(深田)
そうですよね。良くなるのかな?
(内海)
よくなっていない。内容が全くなってないですよね。
(深田)
なってないのですか?一つもないのですか?
(内海)
一つもないと思いますね。多分、愛国と言う人たちは、軍国主義的思想を強く持っていて、軍隊を持っていれば強いというイメージしかない人々だから、戦前の日本に対しての回帰思考があるのだと思うのです。あとは天皇崇拝かなというようなものがあって、そこに戻っていきたいからと、変えたいとなっているのだと思う。
天皇の話ぐらいだったら、別に何というのか思想的には、右翼の人がそれを戻したいというのは分かります。しかし、例えば自公の改憲草案は、統一教会の悲願である改憲案の内容と全然変わらず、内容は全く国民のためではなく、権力者がさらに権力を持って横暴なことができる。あとは宗教団体とか宗教法人がより影響力を強く持つことができるという憲法改正の中身になっている。
(深田)
えっ、宗教法人がもっと力を持てる?
(内海)
憲法改正で、後で出てくると思いますが、1条と9条の話で、1条では国家元首に天皇が戻る。9条は、武力放棄と軍隊放棄の話ですが国防軍を持てます。そもそも自衛隊が今存在し、自衛隊は現実的には軍隊であり、その自衛隊を僕は否定する気はない。
9条に関しては、国防軍と認めると軍国主義にまた戻ってしまうから、共産主義者はそれも全部否定しているかもしれませんが、僕は国を守るために自衛権の発動は、全然問題ないと思っています。9条の改正内容で問題は付帯条項(※3)なのですよね。
※3)付帯条項:自公案は第9条と第10条の間に第9条の2(国防軍)、第9条の3(領土等の保全等)を追加している
現憲法:条文になし
自公案:第9条の2 第3項 国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
(深田)
付帯条項?
(内海)
後で追加された別の条項で、国民の安全を守るために国防軍ができて、そこに文章が付け加えられました。「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に強調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命もしくは自由を守るための活動を行うことができる」と。
これは聞こえがいいように思うかもしれませんが、国際的な活動を公の秩序とか国民を守るために行うことができるということになると、もっと強い他の国の命令などによって、海外に派兵することができるようになる。
(深田)
確かにそうですね。
(内海)
これはアメリカの2軍、3軍として扱われるようになっても何の不思議もない、という内容です。
他の条文にも問題があり、憲法改正がもう国民の権利を奪い取るような内容になっていて、権力者がより強くなるという内容になっています。
例えば18条は、奴隷的拘束と国からの自由という条文なのですけれど、そもそも昔憲兵みたいな時代があって、その反省から作られたのです。秘密警察みたいな憲兵が来て「お前、逆らっているから連れていく」といって、奴隷的拘束とか強制労働みたいなことをさせられることがありました。
その反省から現憲法には18条で「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」ということになっているのです。それが憲法改正案では「何人も、社会的または経済的関係で身体を拘束されない。(18条第1項)」というように変えられたので、つまり政治的拘束はOK、奴隷的拘束はOKというようになった。
(深田)
ああ、恐ろしいですね。
(内海)
だから国に逆らう非国民は、奴隷的拘束してもいいという内容になっているのです。
(深田)
憲法が改正されると(内海先生が)最初に連れて行かれますね。
(内海)
いやいや、深田萌絵さんには敵わない気もします (笑)
(深田)
私など、まだ八王子警察と築地警察から追われているだけです(笑)
(内海)
それでも予備軍でしょう。
21条(※4)は集会結社表現の自由という有名な条文で「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障し、検閲してはならない。通信の秘密侵さない」という内容になっているのが、これも憲法改正では「公の秩序を害することを目的とした活動」が除外になっています。国に逆らう者は通信の秘密を検出してもOKみたいな内容になっています。とにかく全部「国が全てだ」という内容になっている。
※4)第21条〔集会、結社及び表現の自由と通信秘密の保護〕
現行憲法:1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
自公案:1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。
3 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。
(深田)
いやいや、憲法は、国家が国民を守るものであって、国民が守るものではないですからね。そこの原則からひっくり返っていますよね。
(内海)
66条(※5)の総理大臣の話ですけども、これも軍人が成れる内容になっています。軍人が退役すると総理大臣になれる。
※5)66条:内閣総理大臣の指名
現憲法:66条2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
自民改正案:66条2 内閣総理大臣及び全ての国務大臣は、役の軍人であってはならない。
(深田)
1条の改正(※6)の質問なのですけど、天皇が国家元首である。国家元首は何をやるのですか?
※6)第1条:〔天皇の地位と主権在民〕
現憲法:天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
自公案:天皇は、日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。
(内海)
国家元首は国王みたいなもので、昔から議会があって、国王と周りの貴族などで政治を決めていた。日本は明治時代には貴族院と衆議院がものごとを決めていたというのがある。
その流れはそこまでは変わらないかもしれませんが、世界の歴史で王様が暴君になって暴走したことがあり、もし天皇がそうなったら、誰も彼もがみんな言うことを聞かないといけない。天皇がどんなに暴君だろうが、日本の国家元首でなければ、それ(暴走)をやることができない。しかし、この憲法案の内容では、やることができるということになる。
(深田)
軍の統帥権は、どこに行くのですか?
(内海)
軍の統帥権は、最終的には天皇になるのではないですかね。
(深田)
国家元首になりますよね。イギリスはエリザベス女王が持っていましたよね。
(内海)
それと同じになるのではないですか。今はエリザベス女王の次の人(チャールズ3世)で、あまり政治的なことはやっていない。象徴的な形にはなっていると思うので、そこはそこまで変わらないと思うのですけれども、ただ王様に戻るような形になると、愛国とか言っている人たちは喜ぶのではないですか。僕は別に全然それを求めてはいないです。
(深田)
国家元首になるということは、王様になれるということなのですか?
(内海)
左翼の思想は、共産主義のようにみんな平坦で、全員貧民とも言えます(笑)。右翼思想は、もう本当にヒエラルキーに基づいて、トップをむしろ崇め奉るという思想です。トップが権力を取り戻すと基本的に思想的には喜び、そこに追随していきたいという人々がまた出てくる。
(深田)
今の天皇陛下のままではいけないのですかね?
(内海)
僕はそれが一番いい。歴史的な流れを汲んだ上での必然であり、今世界の王族は、裏では何をやっているか私も知りませんけれども、表向きは政治的というよりは歴史の象徴みたいな扱われ方になっている。その方が現実的ではないかなと思っています。だから今のままでいいと思っているのです。しかし「今のままでいい」と言うと「反天皇の左翼のアナキストだ!」みたいな感じで言われますよね。
(深田)
そうなのですね。今のままではだめなのですかね?
(内海)
多くの日本人は、天皇は今のままでいいと思っている。わざわざ憲法改正をして変えるよりも、まず「俺たちの生活をなんとかしてくれ」と思っている。増税、物価高、食料生産とか、そういう普通のこと、移民の問題もそうで、そういう身近に問題が山積している。治安の悪化とか、そういうことをまず何とかしてくれと思っていると思うのです。
愛国と自称している人たちは、そんなことはどうでもいいという発想になっているのではないですかね。教祖を崇め奉るという方を優先する思想になっているのではないかなと思います。
それから憲法改正の中身では77条(※7)です。これは弁護士とか最高裁判所の話ですけれど、これまた憲法改正案の中身は「弁護士がその他裁判に関わるものは最高裁判所の定める規則に従わなければいけない」と。今までは検察官だけだったのですが、弁護士という言葉をつけたので、国に逆らう弁護士など、結構まともなことをやる弁護士も、最高裁判所から国の言うこと聞かなければは、弁護士資格を取り消しができるようになっています。
※7)第77条〔最高裁判所の規則制定権〕
現憲法:77条2 検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
自公案:77条2 検察官、弁護士その他の裁判に関わる者は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。
(深田)
やばいじゃないですか。国家損害賠償とかできなくなる。
(内海)
そう、そう。国倍ができなくなると思いますね。
現憲法の97条(※8)は基本的人権の本質というものですが、(自公案は)重複だと言って消しています。基本的人権は11条に書いてあるのだけど、96条と98条の間にわざわざ持ってきて、もう1回確認のために書かれているので、それを消すということ自体、意図がある。もう「基本的人権、君たちにはありませんよ」という意図を持ってこれ消していると思うのです。
※8)第97条〔基本的人権の由来特質〕
現憲法:97条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
自公案:97条 すべて削除
(深田)
基本的人権が全部なくなってもいいから憲法を改正したいという人たちは、国に対する信頼感もすごいですよね。
(内海)
やはり保守とか愛国という人たちは、人民とか国民とか一般大衆という人それぞれの人権よりも「人間は国に尽くして奴隷のように死ぬものだ」というイメージからまず入っている。
(深田)
自分の言いたいことを言っても、警察や検察に追われたことがない人は、国家を信頼していると思うのですよ。でも「あの人中国人だよ」とか「萩生田さん、ちょっと脅迫状送られてきましたよ」と言っただけで、警察から追われた身からすると、現行憲法の『言論の自由』が保障されてなかったら、私は憲兵隊に連れていかれていますから。
(内海)
そうですね。(深田さんは)非国民代表ですからね(笑)
(深田)
いやいや、二番手(内海先生の次)です(笑)
(内海)
本当に、そういう内容になっていて、自公案の99条(緊急事態の宣言)は国民と国の関係性になっていますけど、これは国優先であるかのような条文にしています。本当に全ての思想が、国が全てなのです。国民はその下僕ということになっています。
(深田)
やはり、これはカルト宗教が作った憲法改正案だからカルト的になるのですかね?
(内海)
宗教は、新興宗教であってもレトロな宗教であっても、教祖と信者がいて、これは結構ヒエラルキー関係ですから、その宗教自体が保守という扱いになっている。統一教会が保守という扱いなのが不思議ですけれど、過去にいわゆる『国際勝共連合』という流れを汲んでいますから、それで保守と扱われるわけです。参政党の党首が、統一教会を保守だと言っていたのは、宗教はヒエラルキーやトップを崇める姿勢があって、統一教会に限らず創価学会であっても、全部保守だという認識なのです。
(深田)
確かに、保守派の団体は結構カルト宗教の連合隊みたいになっていますよね。
(内海)
なっています。
(深田)
何かいろいろ入っていて、根は反日をやっているカルト宗教なのに、なぜ普通に神社本庁などと連携して保守を気取っているのだろうとすごく不思議です。
(内海)
お金を持っているから、そこで資金提供をして、そこに自分たちの思想を売り込みに行っているというか、浸透させにいっているところがあるのではないですか。
(深田)
自民党は完全に統一協会にやられていますものね。
(内海)
本当に、そういう意味でも「保守=反日、愛国=反日」みたいに、それぐらいなんか意味がわからないような関係になっていて、その国家、信者、ヒエラルキー形態みたいなものを綺麗に訴えていれば、信者というばかが引っかかると思って、愛国という精神性を広げているみたいな形になっていると思います。率直に言うと靖国神社もそうですよ。靖国神社は明治時代から始まったものですから、別に昔からの古い神道の神社ではないですからね。その辺りを言い出すと大炎上するからあまり言いません。
(深田)
これ以上燃えるのはご勘弁願いたいです。
(内海)
憲法改正で絶対に言っておかないといけないのは、今伸びているオレンジの参政党という政党の創憲です。これは触れておかないといけません。内容が公開されているので、多くの憲法学者や弁護士が指摘していますが、参政党の創憲という憲法草案の中身は、自公政権の改憲の中身よりももっと酷いです。むちゃくちゃです。本当に「どれだけ極右なの?」というぐらいです。
草案は日本国憲法よりも、すごく短いのですね。2年間、時間をかけて弁護士も法律の専門家も入れて、ゆっくり作ったというようになっていますが「平和」みたいな言葉はありません。基本的人権もなく、国からの自由とか奴隷的拘束という言葉もない。表現の自由も通信の自由もない。とにかく、我々日本人が憲法を習った時に、一般的に学んだ国民の保護や権利などの言葉が一切ないのですよ。代わりに教育勅語とか、そういう言葉はいっぱい書いてある。
(深田)
浜田聡さんの新しい政党である「日本自由党」も新しい憲法案があったのですが、学問の自由すらありません。統一教会以下だなと思いました(笑)
(内海)
僕はこのようなことを言ったことで、左翼と言われるのだったら、左翼でいいと思っています。
(深田)
でも左翼から嫌われているから行くとこないでしょう。ただの非国民ですね。
(内海)
ただの非国民、本当に下翼です。
(深田)
右翼の国にも左翼の国にもいけない。下層階級ですね。
(内海)
僕は普通に国民が、自由とか自分でやりたいこととか生活が保障されているという状態が、それなりでいいので、そういう国であれば、それでいいだけです。それが保たれなくなってきているから政治的活動をやっているだけなのに、それを言うだけで「反日」のように言われる。
(深田)
なるほど、視聴者の皆さんいかがでしょうか。この非国民の憲法改正反対案、是非とも内海先生に一言言いたい方は、どんどんコメントを書いてください。炎上させていただいて全然構いません。私のことはディスらないでくださいね。よろしくお願いします(笑)。
今回はDDClinicの院長内海聡先生に、憲法改正についてご解説いただきました。どうもありがとうございました。
(内海)
ありがとうございました。





