#507 環境省がデータ隠ぺいで政策決定!?総理と大臣を騙す「災害激甚化」トリックの真相とは? 杉山大志氏

(深田)
皆さ(深田)

皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム プロデューサーの深田萌絵です。今回は、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の杉山大志先生にお越しいただきました。先生、よろしくお願いします。

(杉山)

よろしくお願いします。

(深田)

高市(早苗)政権が始まりました。保守派の星として、どれだけトランプ大統領のように「化石燃料を掘りまくって、燃やしまくれ!」路線に行くのかなと期待していたところですね。

(杉山)

高市さんのお話を聞いていると「災害が激甚化している」とか、これまで役人が言ってきた嘘にすっかり嵌ってしまっている感じです。温暖化の話に関しては、役人が書いてきた作文をそのまま読み上げているだけですよね。

(深田)

そうなんですか?あの政策通と呼ばれた高市早苗さんですよ。

(杉山)

今のところ、他の分野の話を見ても、役人がこれまで書いてきた作文を読み上げているものが多いです。好意的に捉えれば、これからいろいろバトルが待っているので、少数与党として、これから総選挙を打って出て勝たないといけない。そうなると、いきなり全部を敵に回せない。

(深田)

一個一個潰していくということですね。

(杉山)

とりあえず財務省には戦う姿勢は見せています。そのために「あっちこっちを敵に回すわけにはいかん」ということでしょう。好意的に考えればそういうことですが、そうでなかったら困りますね。

(深田)

そうでなかったら、いつもの自民党のままですよね。

(杉山)

そこは、やはり世論からもプレッシャーをかけていかないといけないかな、と思っているわけです。

(深田)

今日は圧をかけに来たと?(笑)

(杉山)

深田さんにお願いしに来ただけなのですが(笑)。

(深田)

いやいや(笑)。片山さつき大臣、そして高市総理が、しっかりとやってくれたらいいですね。

(杉山)

片山さんも「南の島が沈むからかわいそう。だから温暖化対策をやらなきゃいけない」みたいなことをテレビで言ってましたけれど、あれも嘘なんですよね。

(深田)

嘘なんですか!?

(杉山)

それで、本の宣伝をするように出版社に言われてきました。

(深田)

『データが語る 気候変動問題のホントとウソ』(2025年4月 出版:電気書院)という本ですね。最新データも載っていますね。

(杉山)

そうですね。入手できる最新のデータで、今年私が出しましたので。きょうはこれのデータをお見せしながら説明していきます。

(深田)

わかりました。総理も大臣も『災害の激甚化』を信じているのですね。

(杉山)

自民党内でも、かなりの人が信じているみたいですね。それとも信じてはいないけれどレクチャーを受けたからその通りに口走っているのか、あるいは役人の作文をそのまま読んでいるのか。役人も信じている人が多いですね。今は「災害が激甚化だからグリーンエネルギーだ!」と言って経済産業省は予算を取っています。

(深田)

グリーントランスフォーメーションですね。

(杉山)

「防災投資もしなきゃ」と言って国土交通省も災害激甚化と書いて喜んでいる。農林水産省も「暑くても採れる米を作る」と予算を取っている。都合が良いのですよ。これまで財務省がくれなかった予算を「いや、新しい理由があるんです。災害が激甚化するから予算がいるんです」と言って取るのです。

防災への投資は必要だと思うのですが、嘘をついて取るのはよくないですね。財務省は「これは嘘だ」と理解した上で「災害の激甚化で…」と言ってきたら、その予算を全部落とすくらいのことをやらないといけないと、私は思います。

(深田)

「高市首相、片山さつき大臣、災害の激甚化はフェイクです」ということで、本題に入りたいと思います。

(杉山)

まず台風のデータです。災害の激甚化で筆頭に挙がるのは台風です。台風が来るたびに「温暖化のせいだ」と言われます。

では、その台風は強くなっているのか?これは「強い」以上の発生数ですが、風速33メートル以上になると政府は「強い」という分類にするのですね。折れ線が毎年の数、太い線が前後5年の平均。過去50年くらいを見ると、風速33メートル以上の台風の数はずっと横ばいなのです。10個と15個の間くらいで、増えてないです。

もし「激甚化している」と言うなら右肩上がりにずっと増えていないといけないけれど、まったく激甚化していない。激甚化しているグラフなど、実際はどこにもないのです。

(深田)

そうなんですか?

(杉山)

台風に関するデータはたくさんありますが、どれを見てもずっと横ばいです。

(深田)

なるほど。何をもって激甚化と言っているのでしょうね。

(杉山)

今度は「大雨が激甚化だ」と言ってグラフを見せてくるのです。雨量のグラフを基に、某大手経済新聞は「大雨が激甚化している」と言うわけです。

(深田)

でも、この大雨のグラフは右肩上がりになっていませんか?

(杉山)

右肩上がりですが、これは1975年から2022年にかけてのデータで、全国にあるアメダス1300カ所で雨量を測り、1日に300ミリ以上になった地点が年間でどれだけあったか、その延べ日数を書いたものです。棒グラフが毎年の数、折れ線が前後5年の平均、直線が全体の回帰直線です。確かに過去50年で見ると増えています。これを見て「激甚化だ!」と政府も言い、某東大教授も言っています。

でも、これは間違いです。これは過去50年だけのデータで、1980年くらいからだけを見ると確かに右肩上がりです。しかし、その前のデータはどうなのかというと、1950年代は、ものすごく雨が多いのです。その前、1930年代くらいはまた少ない。そして、その前の1900年代くらいは多い。

(深田)

雨が多い時期と雨が少ない時期が、どうも交互に来ている。

(杉山)

しかも、CO₂ が出だしたのはわりと最近で、猛烈に出るようになったのは1980年あたりです。要するに、雨量は自然に大きく変わるものなので、この過去50年ぐらいの「雨が増えている」という部分だけで「CO₂ のせいだ」「人間のせいだ」というのは間違いです。50年なんて期間は短すぎて、雨の長期傾向として語るには無理があるわけです。

(深田)

サンプルとする期間が短すぎるわけですね。うまいグラフの切り出し方ですよね。

(杉山)

切り方というより、たまたま、アメダスの観測網を全国1300地点に作ったのが1975年ぐらいからです。その前は全国で50か所ぐらいしか測っていなかった。これは無人の計測所でしょう? 昔は、そのような無人計測ができなかったのです。たまたま、このデータでそのように見えますが、騙されてはいけませんよ。昔から雨量を測っている全国51観測地点(いわゆる測候所)のデータを見ると、大昔からこんなに変動している。これを CO₂ のせいにするのは、嘘つきなんですよ。

(深田)

うーん、なるほど。

(杉山)

もっとけしからん話はこれです。このデータは綺麗な右肩上がりに見えるでしょう?

(深田)

これは『世界全体の大災害による保険損害額の推移』ですね。でも、昔は、保険はそんなに普及してましたか?

(杉山)

その通りです。これは環境省の『環境白書』からの出典ですが、毎年このグラフだけ載せているのです。私が今お見せしてきた、激甚化していないとわかるグラフは、環境白書には載せない。毎年載せるのはこのグラフだけで、このグラフは金額だけを載せているのです。つまり、世界のハリケーンやサイクロンといった被害による金額のグラフですね。

この間に、世界で何があったかといえば、人口が増え、経済成長して家が建ち、道路ができ、保険も普及した。さっき見たように、台風は強くなっていない。ハリケーンもサイクロンも強くなっていない。しかし、金額だけが増えているのは、単に資産が増えたからです。昔より高価なものが増えているから、損害額も増えて見えるだけなのです。

(深田)

そうですよね。しかも保険会社が世界各国に進出して、くまなく保険を掛けられるようになったからですよね。

(杉山)

だから、これは災害の激甚化のグラフではなく「経済成長のグラフ」なのですよね。

(深田)

確かにそうだと思います。

(杉山)

そんなものを見せて、「災害が激甚化したから、脱炭素をしろ」と言い続けてきたのが環境省の出す『環境白書』なのです。

(深田)

いろいろなインフラが整ってくると、被害額が上がっていくのは当然ですよね。

(杉山)

そうです、上がりますね。だから、私は、こんなものを見せて「災害の激甚化だ」と言って脱炭素に誘導する環境省のやり口は、大変けしからんと毎年批判していました。そうしたら、効果があったのでしょうね。最新の環境白書からは、この図も消えてしまいました。

(深田)

消えたのですか? おめでとうございます(笑)。

(杉山)

でも今は、データを一切見せない環境白書という恐ろしいものが今出回っています。

(深田)

ははは!それ最悪じゃないですか!(笑)

(杉山)

データは見せないけれど「お前ら脱炭素をやれ」という感じです。

(深田)

ところで、高市総理が石原宏高環境大臣へ出した指示書を見ると「2050年にカーボンニュートラルを実現しなさい」と書かれていました。

(杉山)

まあ、今のところは、これまで役人が書いてきたものをそのまま読み上げているだけですよね。

(深田)

そうですよね。消費税に関しても、最初はもう少しオリジナリティのあることをおっしゃっていたのですが、最近になると石破前首相と同じことをおっしゃっています。

(杉山)

総裁選の間は「メガソーラーはけしからん」とか「補助金を大掃除する」と結構振り切ったことを言っていましたよね。所信表明演説でも「安定的で安価なエネルギーにします」といいことを言っていました。この安定的で安価というキーワードには、結構こだわりが見えました。

(深田)

原発推進ということですかね。

(杉山)

そうなのですが、原発だけでは安定的で安価にはならないです。この『グリーン』という“あほ”なキーワードと太陽光や風力を大掃除しないといけないのに、そっちにはまだ全然切り込めていないですね。

(深田)

多分「火力に戻る」とは言わないと思います。「カーボンニュートラルを実現する!」とおっしゃっていますよ。

(杉山)

でも、だいぶトーンは下がってきていて「エネルギー安全保障・グリーン」みたいな言い方にはなっています。高市さんの本音としては「グリーン最優先」ではないのはないかと思います。

とにかく「災害激甚化は嘘っぱちだぞ」ということを皆さんにはよく理解してほしいです。

先ほどのデータでは、保険被害金額が増えているのですが、世界のGDP当たりの被害金額にすると、むしろ下がっているのです。

(深田)

なるほど、GDPあたりに換算すると、パーセンテージとしては同じだということですね。

(杉山)

そうです。資産が増えたのだから、被害額が増えるのは決まっているわけですよ。だからGDPで割ると、むしろ横ばいで災害に強くなっている。

(深田)

むしろ災害に強くなっているのですね。

(杉山)

まあ当たり前なんです。天気予報や防災技術が発達して、水辺に堤防も作りました。農業頼みの経済では天気が悪くなると大変だったけれど、今は、農業のGDP割合は大きくなく、工業とサービス業が大きいので、経済全体としては災害に強いのです。

もう1つ、片山さつきさんが「南の島が沈んでしまうのは大変だから、温暖化対策が必要です」と言っていた件です。

(深田)

どうなんですか?沈むのですか?

(杉山)

これも嘘なんですよ。

赤道付近のマーシャル諸島にある島を上空から撮った航空写真を見てください。周りの白い部分が砂浜です。サンゴ礁のきれいな砂で、近くで見ると本当に綺麗ですよ。赤い線が1943年で、白い線が最近の海岸線で、この島はむしろ大きくなっています。

(深田)

島の面積が広がっていますね。

(杉山)

海面が100年で20㎝上昇したというのですが、世界中の島をこうして写真で調べると、増えた島もあるし、減っている島もある。全体数としては変わっていないのですよね。

(深田)

こっちが増えたら、こっちが減って、みたいな状況ですね。

(杉山)

なぜ減らないのかというと、理由は結構簡単です。この白い砂はサンゴの砂なのです。サンゴ動物の貝殻で、普通の貝やハマグリと同じで、サンゴは中に動物がいて殻をつくる。それが砕けて砂浜になっているのです。つまり、砂浜は生き物が作っているわけです。

だから、海面が20㎝上がったら、その生き物が生きる高さも20㎝一緒に上がるだけで沈まないのです。これは10年以上前から論文がいくつも出ていて、科学としては完全に決着しているのですよ。

(深田)

イタリアのベネチアが沈みそうだともずっと言われてますよね。

(杉山)

そうですね。今日ニュースで見たのですが「ツバルが沈んで大変だから、移住したい人いますか?」とオーストラリアが募集したら、住民の9割が「したい、したい」と言って、そのうち200人くらいが実際に移住すると言っていましたね。

(深田)

ツバルはどこにありますか?

(杉山)

ツバルというのは、太平洋のフィジーからさらに1000キロぐらい離れた絶海の小さな島です。絶海の孤島に1万人ぐらい住んでいます。

なぜそんなところに人が住んでいるかというと、昔はイギリスの植民地だったのですね。ところが植民地がお荷物になってしまい「援助するから独立しなさい」と言って独立させた。でも、独立しても、そんな絶海の孤島で経済が成り立つわけがないです。

実際は、海外からの援助頼みなのです。その一部は「島が沈んで大変だ」という、気候変動対策の名目の援助なのですよ。だけど、小さな島で援助頼みでずっと生きていても、人生の先が見えないですよね。だから、みんな移住したくてたまらなかった。

これまではオーストラリア側が「そんなに来られても困ります」と止めていたのですが「温暖化で沈む」という理由で移住を認めることにしたら、10人のうち9人が移住したいと言った。すると今度は「そんなに来られても困る!」というデモも起きているです。

(深田)

ツバルの人口はどれぐらいですか?

(杉山)

全部で1万人ぐらいですね。

(深田)

1万人の9割と言ったら9000人?ちょっと多すぎますね。

(杉山)

本当に「温暖化で沈む」と思い込んでいる人がどれくらいいるのかは知りません。でも、そもそも沈まないのです。それなのに、オーストラリアもこういう話が好きなんですよ。特に今の政権は左派なので「沈んだら大変だ。かわいそうだ。人を移住させよう」みたいな感じですね。

(深田)

でも実際は「沈んでません」ということですね。

(杉山)

はい、沈んでないです。

(深田)

高市総理、片山大臣、災害の激甚化は嘘です。そして南の島も沈んでおりません。今回はキヤノングローバル戦略研究所の杉山大志先生にご解説いただきました。先生、どうもありがとうございました。

(杉山)

ありがとうございました。ん、こんにちは。政経プラットフォーム プロデューサーの深田萌絵です。今回は、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の杉山大志先生にお越しいただきました。先生、よろしくお願いします。

(杉山)
よろしくお願いします。

(深田)
高市(早苗)政権が始まりました。保守派の星として、どれだけトランプ大統領のように「化石燃料を掘りまくって、燃やしまくれ!」路線に行くのかなと期待していたところですね。

(杉山)
高市さんのお話を聞いていると「災害が激甚化している」とか、これまで役人が言ってきた嘘なのですが、ミームにすっかり嵌ってしまっている感じです。温暖化の話に関しては、役人が書いてきた作文をそのまま読み上げているだけですよね。

(深田)
そうなんですか?あの政策通と呼ばれた高市早苗さんが、ですか?

(杉山)
今のところ、他の分野の話を見ても、役人がこれまで書いてきた作文を読み上げているものが多いです。好意的に捉えれば、これからいろいろバトルが待っているので、少数与党で、これから総選挙を打って出て勝たなきゃいけない。そうなると、いきなり全部を敵に回せないから。

(深田)
一個一個潰していくということですね。

(杉山)
とりあえず財務省には戦う姿勢は見せています。そのために、あっちこっち一斉に敵に回すわけにはいかん、ということでしょう。好意的に考えればそういうことですが、そうでなかったら困りますね。

(深田)
そうでなかったら、いつもの自民党のままですよね。

(杉山)
そこは、やはり世論からもプレッシャーをかけていかないといけないかな、と思っているわけです。

(深田)
今日は圧をかけに来たと?(笑)

(杉山)
深田さんにお願いしに来ただけなのですが(笑)。

(深田)
いやいや(笑)。片山さつき大臣、そして高市総理が、しっかりとやってくれたらいいですね。

(杉山)
片山さんも「南の島が沈むからかわいそう。だから温暖化対策をやらなきゃいけない」みたいなことをテレビで言ってましたけれど、あれも嘘なんですよね。

(深田)
嘘なんですか!?

(杉山)
それで本の宣伝をするように出版社に言われてきました。

(深田)
『データが語る 気候変動問題のホントとウソ』(2025年4月  出版:電気書院)という本ですね。最新データも載っていますね。

(杉山)
そうですね。入手できる最新のデータで、今年私が出しましたので。きょうはこれのデータをお見せしながら話していきましょう。

(深田)
わかりました。総理も大臣も『災害の激甚化』を信じているのですね。

(杉山)
自民党内でも、かなりの人が信じているみたいですね。それとも信じてはいないけれどレクチャーを受けたからその通りに口走っているのか、あるいは役人の作文をそのまま読んでいるのか。役人も信じている人が多いですね。今は「災害が激甚化だからグリーンエネルギーだ!」と言って経済産業省は予算を取っています。

(深田)
グリーントランスフォーメーションですね。

(杉山)
「防災投資もしなきゃ」と言って国土交通省も災害激甚化と書いて喜んでいる。農林水産省も「暑くても採れる米を作る」と予算を取っている。都合が良いのですよ。これまで財務省がくれなかった予算を「いや、新しい理由があるんです。災害が激甚化するから予算がいるんです」と言って取るのです。

防災への投資は必要だと思うのですが、嘘をついて取るのはよくないですね。財務省も「こんなの嘘だ」と理解した上で「災害の激甚化で…」と言ってきたら、その予算を全部落とすくらいのことをやらないといけないと、私は思います。

(深田)
「高市首相、片山さつき大臣、災害の激甚化はフェイクです」ということで、本題に入りたいと思います。

(杉山)
まず台風のデータです。災害の激甚化で筆頭に挙がるのは台風です。台風が来るたびに「温暖化のせいだ」と言われます。

では、その台風は強くなっているのか?これは「強い」以上の発生数ですが、風速33メートル以上になると政府は「強い」という分類にするのですね。折れ線が毎年の数、太い線が前後5年の平均。過去50年くらいを見ると、風速33メートル以上の台風の数はずっと横ばいなのです。10個と15個の間くらいで、増えてないです。

もし「激甚化している」と言うなら右肩上がりにずっと増えていないといけないけれど、まったく激甚化していない。激甚化しているグラフなど、実際はどこにもないのです。

(深田)
そうなんですか?

(杉山)
台風に関するデータはたくさんありますが、どれを見てもずっと横ばいです。

(深田)
なるほど。何をもって激甚化と言っているのでしょうね。

(杉山)
今度は「大雨が激甚化だ」と言ってグラフを見せてくるのです。雨量のグラフを基に、某大手経済新聞は「大雨が激甚化している」と言うわけです。

(深田)
でも、この大雨のグラフは右肩上がりになっていませんか?

(杉山)
右肩上がりですが、これは1975年から2022年にかけてのデータで、全国にあるアメダス1300カ所で雨量を測り、1日に300ミリ以上になった地点が年間でどれだけあったか、その延べ日数を書いたものです。棒グラフが毎年の数、折れ線が前後5年の平均、直線が全体の回帰直線です。確かに過去50年で見ると増えています。これを見て「激甚化だ!」と政府も言い、某東大教授も言っています。

でも、これは間違いです。これは過去50年だけのデータで、1980年くらいからだけを見ると確かに右肩上がりです。しかし、その前のデータはどうなのかというと、1950年代は、ものすごく雨が多いのです。その前、1930年代くらいはまた少ない。そして、その前の1900年代くらいは多い。

(深田)
雨が多い時期と雨が少ない時期が、どうも交互に来ている。

(杉山)
しかも、CO₂ が出だしたのはわりと最近で、猛烈に出るようになったのは1980年あたりです。要するに、雨量は自然に大きく変わるものなのですよ。したがって、この過去50年ぐらいの「雨が増えている」という部分だけで「CO₂ のせいだ」「人間のせいだ」というのは間違いです。50年なんて期間は短すぎて、雨の長期傾向として語るには無理があるわけです。

(深田)
サンプルとする期間が短すぎるわけですね。うまいグラフの切り出し方ですよね。

(杉山)
切り方というより、たまたまアメダスの観測網を全国1300地点に作ったのが1975年ぐらいからです。その前は全国で50か所ぐらいしか測っていなかった。これは無人の計測所でしょう? 昔は、そのような無人計測ができなかったのです。たまたま、このデータでそのように見えますが、騙されてはいけませんよ。昔から雨量を測っている全国51観測地点(いわゆる測候所)のデータを見ると、大昔からこんなに変動している。これを CO₂ のせいにするのは、嘘つきなんですよ。

(深田)
うーん、なるほど。

(杉山)
もっとけしからん話はこれです。このデータは綺麗な右肩上がりに見えるでしょう?

(深田)
これは『世界全体の大災害による保険損害額の推移』ですね。でも、昔は、保険はそんなに普及してましたか?

(杉山)
その通りです。これは環境省の『環境白書』からの出典ですが、毎年このグラフだけ載せているのです。私が今お見せしてきた、激甚化していないとわかるグラフは、環境白書には載せない。毎年載せるのはこのグラフだけで、このグラフは金額だけを載せているのです。つまり、世界のハリケーンやサイクロンといった被害による金額のグラフですね。

この間、世界で何があったかといえば、人口は増え、経済成長して家が建ち、道路ができ、保険も普及した。さっき見たように、台風は強くなっていない。ハリケーンもサイクロンも強くなっていない。

しかし、金額だけが増えているのは、単に資産が増えたからです。昔より高価なものが増えているから、損害額も増えて見えるだけなのです。

(深田)
そうですよね。しかも保険会社が世界各国に進出して、くまなく保険を掛けられるようになったからですよね。

(杉山)
だから、これは災害の激甚化のグラフではなく「経済成長のグラフ」なのですよね。

(深田)
確かにそうだと思います。

(杉山)
そんなものを見せて、「災害が激甚化したから、脱炭素をしろ」と言い続けてきたのが環境省の出す『環境白書』なのです。

(深田)
いろいろなインフラが整ってくると、被害額が上がっていくのは当然ですよね。

(杉山)
そうです、上がりますね。だから、私は、こんなものを見せて「災害の激甚化だ」と言って脱炭素に誘導する環境省のやり口は、大変けしからんと毎年批判していました。そうしたら、効果があったのでしょうね。最新の環境白書からは、この図も消えてしまいました。

(深田)
消えたのですか? おめでとうございます(笑)。

(杉山)
でも今は、ついにデータを一切見せない環境白書という恐ろしいものが今出回っています。

(深田)
ははは!それ最悪じゃないですか!(笑)

(杉山)
データは見せないけれど「お前ら脱炭素をやれ」という感じです。

(深田)
ところで、高市総理が石原宏高環境大臣へ出した指示書を見ると「2050年にカーボンニュートラルを実現しなさい」と書かれていたのですよね。

(杉山)
まあ、今のところは、これまで役人が書いてきたものをそのまま読み上げているだけですよね。

(深田)
そうですよね。消費税に関しても、最初はもう少しオリジナリティのあることをおっしゃっていたのですが、最近になると石破前首相と同じことをおっしゃっています。

(杉山)
総裁選の間は「メガソーラーはけしからん」とか「補助金を大掃除する」と結構振り切ったことを言っていましたよね。所信表明演説でも「安定的で安価なエネルギーにします」といいことを言っていました。この安定的で安価というキーワードには、結構こだわりが見えました。

(深田)
原発推進ということですかね。

(杉山)
そうなのですが、原発だけでは安定的で安価にはならないです。この『グリーン』というあほなキーワードで、太陽光や風力を大掃除しないといけないのに、そっちにはまだ全然切り込めていないですね。

(深田)
多分「火力に戻る」とは言わないと思います。「カーボンニュートラルを実現する!」とおっしゃっていますよ。

(杉山)
でも、だいぶトーンは下がってきていて「エネルギー安全保障・グリーン」みたいな言い方にはなっています。高市さんの本音としては「グリーン最優先」ではないのはないかと思います。

とにかく「災害激甚化は嘘っぱちだぞ」ということを皆さんにはよく理解してほしいです。

先ほどのデータでは、保険被害金額が増えているのですが、世界のGDP当たりの被害金額にすると、むしろ下がっているのです。

(深田)
なるほど、GDPあたりに換算すると、パーセンテージとしては同じだということですね。

(杉山)
そうです。資産が増えたのだから、被害額が増えるのは決まっているわけですよ。だからGDPで割ると、むしろ横ばいで災害に強くなっている。

(深田)
むしろ災害に強くなっているのですね。

(杉山)
まあ当たり前なんです。さらに天気予報や防災技術も発達して、水辺に堤防も作りました。農業頼みの経済では天気が悪くなると大変だったけれど、今は、農業のGDP割合は大きくなく、工業とサービス業が大きいので、経済全体としては災害に強いのです。

もう1つ、片山さつきさんが「南の島が沈んでしまうのは大変だから、温暖化対策が必要です」と言っていた件です。

(深田)
どうなんですか?沈むのですか?

(杉山)
これも嘘なんですよ。

赤道付近のマーシャル諸島にある島を上空から撮った航空写真を見てください。周りの白い部分が砂浜です。サンゴ礁のきれいな砂で、近くで見ると本当に綺麗ですよ。赤い線が1943年で、白い線が最近の海岸線で、この島はむしろ大きくなっています。

(深田)
島の面積が広がっていますね。

(杉山)
海面が100年で20㎝上昇したというのですが、世界中の島をこうして写真で調べると、増えた島もあるし、減っている島もある。全体数としては変わっていないのですよね。

(深田)
こっちが増えたらこっちが減って、みたいな状況ですね。

(杉山)
なぜ減らないのかというと、理由は結構簡単です。この白い砂はサンゴの砂なのです。サンゴ動物の貝殻で、普通の貝やハマグリと同じで、サンゴは中に動物がいて殻をつくる。それが砕けて砂浜になっているのです。つまり、砂浜は生き物が作っているわけです。

だから、海面が20㎝上がったら、その生き物が生きる高さも20㎝一緒に上がるだけで沈まないのです。これは10年以上前から論文がいくつも出ていて、科学としては完全に決着しているのですよ。

(深田)
イタリアのベネチアが沈みそうだともずっと言われてますよね。

(杉山)
そうですね。今日ニュースで見たのですが「ツバルが沈んで大変だから、移住したい人いますか?」とオーストラリアが募集したら、住民の9割が「したい、したい」と言って、そのうち200人くらいが実際に移住すると言っていましたね。

(深田)
ツバルはどこにありますか?

(杉山)
ツバルというのは、太平洋のフィジーからさらに1000キロぐらい離れた絶海の小さな島です。絶海の孤島に1万人ぐらい住んでいます。

なぜそんなところに人が住んでいるかというと、昔はイギリスの植民地だったのですね。ところが植民地がお荷物になってしまい「援助するから独立しなさい」と言って独立させた。でも、独立しても、そんな絶海の孤島で経済が成り立つわけがないです。

実際は、海外からの援助頼みなのです。その一部は「島が沈んで大変だ」という、気候変動対策の名目の援助なのですよ。だけど、小さな島で援助頼みでずっと生きていても、人生の先が見えないですよね。だから、みんな移住したくてたまらなかった。

これまではオーストラリア側が「そんなに来られても困ります」と止めていたのですが「温暖化で沈む」という理由で移住を認めることにしたら、10人のうち9人が移住したいと言った。すると今度は「そんなに来られても困る!」というデモも起きているです。

(深田)
ツバルの人口はどれぐらいですか?

(杉山)
全部で1万人ぐらいですね。

(深田)
1万人の9割と言ったら9000人?ちょっと多すぎますね。

(杉山)
本当に「温暖化で沈む」と思い込んでいる人がどれくらいいるのかは知りません。でも、そもそも沈まないのです。それなのに、オーストラリアもこういう話が好きなんですよ。特に今の政権は左派なので「沈んだら大変だ。かわいそうだ。人を移住させよう」みたいな感じですね。

(深田)
でも実際は「沈んでません」ということですね。

(杉山)
はい、沈んでないです。

(深田)
高市総理、片山大臣、災害の激甚化は嘘です。そして南の島も沈んでおりません。今回はキヤノングローバル戦略研究所の杉山大志先生にご解説いただきました。先生、どうもありがとうございました。

(杉山)
ありがとうございました。

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