薬物オーバードーズにハマる若者の実態!機能不全家庭が生み出す社会の闇とは? 鈴木傾城氏 #480
【目次】
00:00 1.オープニング
00:36 2.病んでる女子が増えている
10:29 3.壊れた家庭が増えている
12:29 4.今の時代は「愛」教育が必要
17:16 5.精神の拠り所を何処に求めるか
(深田)
皆さんこんにちは。政経プラットフォーム、プロデューサーの深田萌絵です。
今回は作家の鈴木傾城さんにお越しいただきました。鈴木さんよろしくお願いします。
(鈴木)
よろしくお願いします。
(深田)
こちらは鈴木さんの新刊『圧倒的「病み垢」女子』ですね。

『圧倒的「病み垢」女子』四汐舎、2025年8月
(鈴木)
そうなのですよ。やっと出せました。
(深田)
以前から、病んでいる界隈で「病み垢の中の病み垢」と言われる「病み垢」女子に取材を重ねていると伺っていましたが、「病み垢」女子とは何なのですか?
(鈴木)
病み垢というのは、病んだ人たちが集まるアカウントの集合のことを病み垢と言います。
(深田)
それはどのSNSですか?インスタグラムなどですか?
(鈴木)
インスタもあるのですが、だいたいX(旧Twitter)ですよね。Xの中でオーバードーズ(薬品の過剰摂取)などの単語で集まってくる子どもたちです。
(深田)
子どもたちですか?
(鈴木)
未成年、あるいは20代の女の子が多く、その子たちを病み垢女子と言うのですよ。
(深田)
病み垢女子たちを取材されているのですよね。その人たちは精神的にかなり病んでいるのですか?
(鈴木)
本当に病んでいます。私自身が病みそうになるぐらい病んでいます。
(深田)
どのように病んでいるのですか?
(鈴木)
希死念慮と言うのですが。
(深田)
希死念慮とは何でしょう?
(鈴木)
希死念慮とは死にたいという気持ちですね。彼女たちは死にたいという気持ちがすごく強いのですよ。最初は存在すら知らなかったのですが、トー横(新宿)の子どもたちを取材していると、リストカットや根性焼き(※1)、オーバードーズをやっている子ばかりなのですよ。
(※1)根性焼き:たばこなど火がついた部分を皮膚に押し当てること
(深田)
自傷行為に走っている子どもたちですね。
(鈴木)
そういう子どもたちは女の子も結構多く、最初に目にとまったのがリストカットですよね。リストカットは結構手に傷跡がつくので、見た瞬間に「切っているんだ。病んでいるんだ」とわかる。なぜ、こういう子がたくさんいるのかと疑問に感じたわけですよね。
(深田)
あれはやはり助けてほしいというSOSですよね。
(鈴木)
そうですよね。そういう感情もあるし、もともと家庭が壊れていた、あるいは学校でいじめられて、自分自身の存在価値がないと考えている子がたくさんいるのです。
(深田)
すごくわかります。
(鈴木)
昔はその子たちが精神的に病んでいるというのを隠していたのですが、それがSNSで繋がるようになってきたのです。繋がっているので「実際に会おうよ」となって会う。そこがトー横界隈やグリ下界隈などです。
(深田)
グリ下とは何ですか?
(鈴木)
大阪道頓堀のグリコの看板の下のことです。あとは福岡市の警固公園です。そこにどんどん集まるようなってきて、これが病み垢界隈という世界になってきています。最初はそういう界隈があることすら知らなかったのですが、取材をしているうちに興味が出てきて、それをまとめたのがこの本です。
(深田)
この本は、オープニングから衝撃的な言葉が並んでいるのですが「適当に薬やっています」というようなことが書かれていて、すごいですよね
(鈴木)
彼女たちは、オーバードーズが日常になっているのですよね。オーバードーズして幻覚を見ることもあります。幻覚の内容は、たとえば見えない子が見える。自分の家に帰ると、家の中に小学校の女の子が立って、待っていてくれる。奇妙にもそういう幻覚と話ができるのです。
(深田)
小学校の時に、薬なしでそういうことをやっている子がいましたが、それとはまた別物なのですね。
(鈴木)
他に言っていたのは、ここに深田さんがいますが、薬をやっていて混乱していると、深田さんの顔が他の人の顔にすり替わって誰なのか分からないのです。目の前にいる人が誰なのか分からなくなるという幻覚もあります。
(深田)
怖いです。
(鈴木)
彼女たちは、そういう幻覚を身体で試しながら、どんどん深みにはまっていく人たちですよね。彼女は救急車に20回ぐらい乗ったと言っています。
(深田)
大変ですね。それは誰が呼ぶのですか?
(鈴木)
たまたま一緒にいた友達が、様子がおかしすぎるというので呼んだり、あるいは彼氏がちょっと危ないぞとなって呼んだりして、自分では呼ばないらしいです。自分では当たり前と思っていても、周りから見ると明らかに様子がおかしいのです。
(深田)
彼氏はオーバードーズを止めないのですか?
(鈴木)
一緒にやっていますから、止めません。
(深田)
何か救われないですね。考えてみると、自分はそのようにはまっている人と付き合いたくないですものね。
(鈴木)
彼女は「自分は今オーバードーズして、こういうことにはまっています」とオープンにしているので「それが嫌なら来なくていい。共感してくれるのなら来てください」という立場なのです。
(深田)
共感する人が集まることは、実はよくないのではないのかと思うのですよ。
(鈴木)
そうですよね。逆に新たな情報が入ってきます。この薬はもっと効くとか新たな情報がどんどん入ってきます。
(深田)
私もそう思うのですよ。基本的にあまり共感しないようにしていて「分かる、分かる!」と寄り添うと、仲間ができたと思って、その人は悪化するではないですか。なぜさっさと解決しないのでしょうか?解決を促すと、もっと傷ついて離れていくのでしょうか?
(鈴木)
そのようにして次第に社会との接点が切れていくのですよね。自分がやっていることに大半の人は、やめた方がいいと反対するわけですよ。それで多くの人と関係が切れるわけで、最後残ったのは自分と同じ立場で同じことをやっている仲間たちだけですよ。その仲間だけで付き合うわけなので、強固になってきます。
(深田)
それが普通の状態になるのですよね。
(鈴木)
それが自分の人生になり、その考え方が自分では当たり前になってくる。だから、私のような部外者が話を聞きに行くと警戒されます。
(深田)
警戒されますよね。
(鈴木)
この本を書くのに2年ぐらいかかりました。
(深田)
仲良くなって信頼してもらうのに、時間がかかるのですね。
(鈴木)
信頼というかきちんと喋ってもらうために、結構時間がかかったのかもしれないですね。
(深田)
それにしても、すごいですね。そこまで一生懸命説得して話を聞くというモチベーションは何なのですか?
(鈴木)
私は元々裏社会の人たちが大好きなのですよ。
(深田)
自分の中にそういう部分があるからですか?
(鈴木)
そうかもしれませんね。20歳ぐらいからそういう社会の裏の人たちとずっと付き合っていて、私の中ではそちらの方が日常なので、社会に理解されない人たちは好きなのですよ。
(深田)
私も、ある意味理解されてないのですけれど。
(鈴木)
私の中では、こういう子(病み垢女子)は初めてでした。病み垢系というのを知らなかったし、そういう世界があることも知らなかったので、ある意味新鮮ではありました。ただ、自分とは全然別世界でした。
今、このような子が日本の社会にどんどん広がって増えていき、それこそオーバードーズが当たり前になっているのです。
(深田)
私は奈良で育っている時は何も気づかなかったのですが、就職して大阪という都会に出てくると、この手の少し病んでいる若い女の子に出会いました。ティーンエイジか中学生ぐらいからおじいさんに売春をしていて、親がヤクザで家に帰れないから、ずっと家出をして売春している。あとは私の世代で多かったのは親がカルト宗教でした。
(鈴木)
オウム真理教とかそういう類のものですか?
(深田)
そうです。教義に合わないといって、ものすごい大罰を受けるのですよね。その中の一人が私の自殺マニュアルを1冊、無断で持ち去り慌てたのですが、結局、彼氏を見つけてちゃんと生きていますね。親子関係がおかしく、親からの愛が十分でないと、やはり人間の心は育たないということでしょうか。
(鈴木)
彼女もそうですが、家庭が壊れて機能不全なのです。その機能不全家庭が今の日本の社会で増えていると思うのですよね。
(深田)
それ本当に思いますよ。
(鈴木)
こういう機能不全家庭が増えると、こういう子が増えるわけですよ。やはり親の愛を受けられず、学校でもいじめられて、自分の居場所がない。居場所がないから「死にたい、今日はリストカットした」などとSNSで書くわけです。そうするとどうしても繋がってしまい病み垢界隈ができるのです。
(深田)
それが良し悪しですよね。私の世代ではそういう子は孤立してつながるところがなかったのですが、今は繋がって友達ができて良くなることもあれば、共鳴しすぎて新しいものにはまっていき、共存関係に入っていくとかいろいろな面がありますよね。
(鈴木)
繋がることによって深みにはまり、どんどん状況が悪化していきます。しかも一つの界隈になると、可視化できるわけですよね。今まで興味がなかった若者が、こういう世界もあるのだという好奇心で来るわけですよ。そこで、オーバードーズのやり方を教えてもらうと、最初は関係なかったのに取り込まれてしまい、そういう子が、どんどん増えているのですよね。これが病み垢女子です。その中でも圧倒的にすごかったのが彼女です。
(深田)
かわいらしい女性ですよね。本当にきれいな女の子なのにもったいない。
(鈴木)
そうですよね。やはり家庭が壊れていて、愛されなかったという喪失感が強いのですよね。自分はもう生きている価値はないのではということが、自分の中にあって全てに対して冷めています。だから彼女は30歳に死にたいと言っています。
(深田)
もったいないです。
自殺マニュアルを読むと『死ぬのはこんなに大変なのだ』と思って、死ぬのを諦めるぐらいの威力がありました。本当に人間は簡単に死なないですよ。そう思うとやはり、いかに省エネで、あまりエネルギーを使わずに生きていくのかということを一生懸命考える方が、意外と楽なのではないのかなとか思うのですよね。
今、世界的に性教育の話しをしていますが、性教育の前に愛について教育しないといけないと思うのですよ。
(鈴木)
確かに、それはいいですよね
(深田)
「家族の時間がありますか?親子で会話がありますか?両親は愛し合っていますか?」というようなことですね。多分、冷めているのでしょう。両親が愛し合っていたら、子供も愛されているはずなので、両親の関係が崩壊しているから子供にまで愛が届かないのでしょうね。
(鈴木)
家庭の役割はすごく大切で、家庭が壊れている場合は子どもも壊れている。彼女たちを取材していると、家庭が本当に中心になっているということがわかりますね。今の日本の社会の家庭の壊れ方は大変ではないですか。
(深田)
本当に大変だと思います。男女関係のあり方の理想モデルを押し付けてはいけないですが、本当に愛しているならば、恋人に売春して金稼いで来いとか言わないし、相手のことをすごく大事にしてくれます。病気になったら看病をしてくれるし、毎日一緒にご飯を食べるものです。性の話をする前に、そういう当たり前のことを話さないといけない時代になったのかなと思います。
(鈴木)
今、そういうのが欠けていますよね。精神的に厳しい社会になってきていると思います。子どもたちにも大人にも厳しい社会になってきています。経済的にも厳しい社会になってきているので、はっきり言うと、どん詰まりです。
未来が見えない状況で自分の居場所もなかったら「もう死んだ方がいいのだ」という感覚になってきますよね。
(深田)
そうですよね。1990年代はすごくカルト宗教が流行っていました。今はそれにとって変わるようにスピリチュアルが流行って、そのスピリチュアルの裏側にカルトが潜んでいるのですよね。
(鈴木)
これは上祐史浩氏(旧オウム真理教幹部)と対談した時に聞いたのですが…
(深田)
上祐氏と対談したのですか?鈴木さんはどれだけすごいのですか。
(鈴木)
彼は「昔は厳しい修行をして、精神状態を鍛えたけども、厳しい修行をしたくない人がスピリチュアルに行き、手軽に心の安堵を得ようとしている。手軽に得ようとしている考え方が間違っている」と言っていました。
(深田)
お前に言われたくない(笑)。
(鈴木)
スピリチュアルに頼り、手軽に心の安堵を得ることと全く同じで、薬で心の安堵を得ているのが彼女たちではないかと思っています。
(深田)
スピリチュアルの方がましな気がします。スピリチュアルをやっている人は無農薬米とか食べていそうです。異常な健康志向、自然志向なので、多分スピリチュアルの方が健康にはいいのかもしれないですね。
(鈴木)
健康にはいいかもしれません。
(深田)
スピリチュアルもいろいろあるので、カルトとつながってなければいいのですけれどね。
(鈴木)
そうですよね。簡単に手に入れることができる安楽、心の安静が今は薬で手に入れられるという考え方です。
(深田)
やはりそこは考え方だと思うのですよ。これは修行なのだと割り切ることですね。
(鈴木)
修行ですか?
(深田)
修行です。東京地方検察庁や国税丁から追われ、今はアメリカの証券取引委員会から呼び出されているのです。
(鈴木)
誰が?
(深田)
私です。
(鈴木)
あっ、そうなのですか?
(深田)
2000億円の資金洗浄の疑いをかけられました。
(鈴木)
2000億円ですか?
(深田)
当然、持っていないのですが、日本政府が、当社の納税申告書(京橋税務署提出)に記載した200万円の現預金を 2000億円と虚偽の翻訳をして、アメリカのIRS(米国歳入庁)に送ったのです。
IRSは当社を2000億円の資金洗浄の疑いでFBI(米国連邦捜査局)と一緒に捜査をして、この8月に証人尋問でワシントンDCに行ってきたのです。アメリカ司法省の弁護士から140個の証拠を見せられて10時間にわたり尋問されました。全部英語で答えて、終わって安堵していたら、今度はアメリカの証券取引委員会から召喚ですよね。
(鈴木)
何かもう雲の上の話ですね。
(深田)
そうなのですよ。もう途方に暮れて、ショックで泣く時もあるのですけど、これは修行なのだと受け止めました。
(鈴木)
すごい修行ですね。
(深田)
これを通り抜けたら、多分、人生の次のステージがあるのですよ。魂の次のステージが来るのですよ。
(鈴木)
そういうふうに考えている人は、病み垢女子にはならないですよね。
(深田)
いえいえ、病んでいます。だから、病み垢女子の気持ちはすごく理解できますよ。でも、誰も大事にしてくれないからこそ、自分で自分をいじめてはいけないですよ。世の中は厳しいので、自分で自分のことを徹底的に守らないといけないのです。
(鈴木)
今は厳しすぎますよね。
(深田)
これ以上自分を責めると生きていられないので、これは修行なのだと割り切って頑張っていきましょう。ところで、こちらのご著書『圧倒的「病み垢」女子』はいつ発売ですか?
(鈴木)
もう発売されていますので、ぜひ買ってください。
(深田)
今回は作家の鈴木傾城さんにお越しいただきました。ありがとうございました。
(鈴木)
ありがとうございました。





