建築界のノーベル賞受賞者山本理顕氏が責任者を名指し批判! 大阪万博はカジノ利権に狂わされた。山本理顕氏 #466

【目次】
00:00 1.オープニング
01:40 2.日本は官僚型ファシズム国家
05:41 3.維新の会の利権のために大阪は利用されている
10:09 4.大阪万博の立地は海外の国々に対して失礼
14:52 5.大阪万博リングの建築費344億円の根拠は不明
17:54 6.自分の事しか考えない体質が日本の建築家に蔓延している
(山本)
ここから見るともう全部(美術館内)見えます。
(深田)
全部見えますね。

(山本)
ここは無料で、誰でも入れるところなのです。
(深田)
ここまでは誰でも入れるところ。外の空間とプライベートの空間を一体化させ、逆に繋いで、分断しないということですね。
(山本)
美術館がこの空間を独占してはいけないのですよ。お客さんたちは美術館に来る人もいるけれど、この景観を楽しみたい人も来る。美術館は展示をしているので有料なのは当然なのですが、同時にこれは公共建築なので、多くの人たちがこの建築を楽しむことができるように、やはり公共側は考える必要があると思うのですよね。
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(深田)
皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム、プロデューサーの深田萌絵です。
今回は、横須賀美術館にお邪魔して、建築家の山本理顕先生にお話を伺いたいと思います。先生、よろしくお願いします。
(山本)
よろしくお願いします。
(深田)
先生、今回はファシズム化する建築というテーマで、大阪万博のことをお話しいただきたいのですけれども、いかがでしょうか?
(山本)
今、深田さんがファシズム化する建築とおっしゃいましたが、注意が必要です。『ファシズム』という言葉は、元々ドイツ、イタリア、日本の同盟国が第二次世界大戦を戦った時に、その3国に対して「ファシズム的な政権である」と言われたことが発端なのですが、3つの国々は事情が全く違います。
ファシズムという言葉が正しいのかどうか、少し分かりにくいのですが、具体的に言うと全体主義あるいは国家主義という意味です。そこに住んでいる人々の意見よりも、国家の意見が優先する政策を取っている国のことを全体主義国家と言います。
かつて、ハンナ・アーレントは「全体主義国家を象徴していたのはナチスドイツとスターリンのソビエト連邦だ」と言っています。その2つの国を、アーレントは全体主義国家と名付けました。
日本はどうかというと、アーレントは「日本はファシズム国家ではない」と言っています。君主制という政策を取って、天皇に権力が集中しているような体制でしたが、実質的には天皇は権力を行使できない状態だったわけですね。誰が行使したのかと言うと、日本はその当時、非常によくできた官僚制国家だったので、官僚であったと言っていいと思います。それはある意味では日本もファシズムです。
(深田)
官僚型ファシズムですか?
(山本)
そうですね。全ての決定権が、政治家ではなくて官僚にあるというような国を日本は作った。ですから軍部という官僚が暴走したのです。軍部は官僚組織の一部ですからね。それを全体主義と言います。ファシズム化するとおっしゃったのですが、日本全体は非常に強い官僚制国家になりつつあります。かつてないほど強いと言っていいと思います。
(深田)
そうですよね。いろいろな地域で開発が行われ、公共建築や、国が誘致した工場が立てられています。しかし、その地域の住民の声が全く上げられない、聞いてももらえないということが各地で起こっています。
(山本)
官僚制国家は地方自治を嫌います。国家主義的な政治の仕組みを作っているので、例えば日本では、議会が最も強い権力を持つことになります。議会は一つの権力しかないのです。その場合、日本は非常に強い党派制なので、一つの党が議会を独占すると、その党派が独占する国家になります。
安倍晋三内閣が典型的で、自由民主党という党派が、完全に日本全体の権力の中心になるような国家を作り上げることに成功しているのです。今はその遺産のために、本当に困ったことになっています。他の国と比べると、日本は地方自治がきちんとした国だったのです。
(深田)
“だった”という過去形ですね。
(山本)
まず地方自治を壊していった。例えば大阪都構想と言っている人たちがいますが、あれは市区町村の地方自治を壊そうとするもので、その方が合理的だと馬鹿なことを言っているわけですよ。行政は合理的になってはいけない。市民に対するきめ細かいサービスを行わないといけないのですが、行政が手間を省く、楽をしようとするのが、合理化という意味なのですよ。
橋下徹という人が都構想ということを言いましたが、あれほど危険な思想はないです。そういうところで博覧会が計画されたのです。その時は、維新の会が大阪の府も市も過半数を占めていました。
知事も市長も維新の会の政治家が務めるという完全な独占体制ができた時に、彼らは『IR構想』を打ち出して、大阪で最も価値が低い土地をそこにあてがい、IRを誘致しようとしたわけですね。
彼らはIRを誘致することで、大阪全体を豊かにするというようなことを言っていましたが、それは嘘です。IR誘致して上手くいった都市は世界中一つもありません。多くの国がカジノ誘致をしていますが、どこも成功していません。シンガポールもIRを作りましたが、今は完全に方向転換しています。
(深田)
そうなのですね。
(山本)
ベイエリアに作ったものの、むしろ、ほとんどお客さんが集まらなくなりました。シンガポールは全体主義国家ですが、すぐ方向展開をして、今は『教育立国』にしようとしています。
(深田)
教育立国?なるほど。
(山本)
それでIRのすぐ横に植物園を作ったのです。植物園の方が海外からの観光客を集めることができることがすぐ分かり、素晴らしい植物園を作りました。いかに環境に配慮する国かということを世界に向けて、今、発信している。キューガーデンというイギリスの庭園を参考にして、蘭の栽培では世界一の庭園があります。
シンガポールは教育や環境に完全にシフトして、シンガポール大学を世界でも有数の大学に育てあげたのです。周辺国の人たちは、日本に留学するよりもシンガポールに留学する人が圧倒的に多く、アメリカよりも多いです。シンガポールは国の未来を完全に方向転換しています。
世界はそうなっているにも関わらず、大阪はIRを誘致しようとしているのです。
(深田)
そうですよね。世界中のカジノは儲かってないですよね。
(山本)
儲かってないです。
(深田)
そんな中でなぜIRを作るのですか?
(山本)
それは、日本維新の会の利権だけです。そのような場所に作って、そのために博覧会を誘致しようとしたのですよ。
(深田)
IRを作るための投資ですよね。地盤などのインフラ整備のためのお金を中央から引っ張るために、博覧会を利用したということですよね?
(山本)
おっしゃる通りです。元々あの場所は、博覧会用地に適しているから選ばれたわけではないのです。あの場所を中心に開発すれば、未来の大阪がより発展していくと考えて、あの場所に決めたわけでもないのです。
ただのゴミ捨て場で、どうしようもないので、あの場所を選んだだけです。参加してくださる海外の国に対して、これほど失礼なことはありません。
建物も立てられないような敷地をわざわざ選んで、多くの国が、軟弱地盤で大変な苦労しているのに、それを手助けもしない。ですから多くの国は、パビリオンを作るためのお金がかかりすぎて、当初の予算では収まらなくなっている。だから今未払いが出てきてしまうのです。
(深田)
未払い問題がひどいですね。
(山本)
深田さんたちも非常に問題視されていますけど、本来、参加してくださった国が悪いわけではないのですよ。軟弱地盤なので、お金がかかるのは決まっているではないですか。それに対して何のサポートもしない。
私は、スイスの建築家から「スイスがパビリオンを作るので、どうしたらいい?」と相談を受けました。問題はそういう場所にあると助言すると、スイスは力があるので、自分たちで全部解決しました。すごく頭がいいのですよ。仮設建築を専門とする会社を呼んで、そこに作らせました。
(深田)
仮設住宅を作っている会社ですか?
(山本)
仮設と言っても、スイスの仮設会社は桁外れで、スタジアムを作ってしまうのです。
(深田)
仮設でスタジアムですか?すごいですね。
(山本)
そういう会社がスイス館を作った。要するに力のある、技術力もある、お金のある会社は問題がありません。アンゴラやセルビアは、お金がないのに参加してくれたのですよ。大阪の人たちの「博覧会をやろう」という心意気に賛同して来てくれたのです。
これらの国の人たちに対して、何の手助けもしない。これはもういじめですよ。だから「アンゴラにお金を払え」というのは、行く方向が間違っています。
そこではなく、全体の会場計画をした藤本壮介に向かうべきです。
(深田)
万博プロデューサーの藤本さんですか?
(山本)
彼が総責任者です。
(深田)
建築の分野の総責任者は藤本さんなのですね。あのリングを設計された人ですね。
(山本)
そうです。「そういう問題が起こっているので、何とかしろ」というのは、藤本荘介に言わないといけない。あるいは博覧会協会に対して「なぜそんな場所にきちんと手当てしないのだ?」と言いに行かないといけない。アンゴラに言っても困るだけです。
あえて言いますが、ファシズム的体質を持った維新の会が、IRのついでに博覧会を企画すると、このようになってしまうのです。
(深田)
IRのついでに企画した博覧会だから、いい加減になっているのですね。
(山本)
問題は建築家たちが大喜びで参加していることです。もし主催者が間違っていたら「あなたのやり方間違っていますよ。大阪市民のためにはこういう方にやったらどうですか?」と提案するのが建築の専門家の役割なのですよ。ところが建築家協会も何も言わない。
(深田)
結局、政府はクレームをつけられるような建築家や芸術家ではなく、高い予算をつけるために「この人は有名だからみんな納得するでしょう」とシンボリックな存在として有名人を据えて、批判をかわしたいと言うことだと思うのですよ。
(山本)
構図はもっとひどく、建築家の側も進んでやりたがるのですよ。博覧会に参加することは、建築家にとって非常に名誉なことなのですからから、参加したいのです。頼み込んで参加させてもらっていると言ってもいいですよ。
藤本さんは、博覧会協会から指名されて、プロデューサーになっています。彼は責任を果たすつもりでプロデューサーになったのだと思います。博覧会協会と藤本荘介がどのような契約をしているかが問題です。もうひとつ言うと、前にも話しましたが、リングの設計は藤本壮介ではあありません。
(深田)
そうなのですか?
(山本)
東畑建築事務所と梓設計の二つの事務所の合体が基本設計をして、コンペに参加しました。審査員は藤本壮介で、彼らを選んだのです。したがって、設計は藤本ではありません。藤本は基本設計そのものを東畑、梓に丸投げしたのです。もし壊れたりしたら東畑、梓の責任です。あるいは実施設計を受けたゼネコン3社で、そこの設計部がやっています。
そうすると、設計と工事をするのが同じ会社になった。何が起こると思いますか?
(深田)
チェック・アンド・バランス機能が働かなくなります。
(山本)
おっしゃる通りです。設計者は見積りを取って、内容をチェックします。自分たちが社内で見積もりしたものと、工事会社の見積りの違いを比べながら、最終的に工事金額を決めるのです。
リングは大林組、清水建設、竹中工務店の3社が、それぞれの工区を請け負って、3社の設計部が実施設計をしています。その実施設計をする人たちが、自分たちの力で見積りを取らないといけない。設計部門の中に見積り部署も持っています。僕らも見積もりできない時は、見積もり専門の事務所があり、そこに外注して見積もりを取ります。
見積りは設計事務所の最大の責任なのです。その見積りが正しいかどうか、工事会社が見積もった見積もりが正しいかどうかをチェックするのが設計事務所なのです。それが同じ会社の中にある。
(深田)
そういうことですか。そのリングの見積りは400億円でしたか?
(山本)
344億円かな。ただ、その根拠がわからないのです。
(深田)
わからないのですね。
(山本)
わからないままです。誰がそれ見積もりをチェックしたか誰もわからない。藤本荘介がプロデューサーとしては最終的にチェックをしないといけない。それをやっているかどうかはわからないです。どこにも公表されていません。344億円の根拠はどこにもないのですよ。それでリングができ上がっている。344億円は膨大な数字ですよ。
(深田)
そうですよね。
(山本)
博覧会がすでに計画を進み始めている時に、途中でリング案を藤本が持ってきた。
(深田)
それでまた予算追加ですよね。
(山本)
それで予算が追加になった。予算追加してもいいのですよ。そのリングを作ったことによって素晴らしい博覧会になるのだとしたら。
(深田)
でも、その説明責任を果たさないといけないですよね。
(山本)
今に比べればもっとよいアイデアで、博覧会場が計画されていたのです。その博覧会計画が素晴らしいということで、ビッド・ドシエ(立候補申請文書)と言うのだけれど、国際博覧会協会は大阪に決めたという経緯があります。それを全部やめて、リング案にしてしまい、元々あった案とは、全く違うものになってしまったのです。
それで、今のような問題が起きています。予算が足りないのであれば、博覧会協会に「予算をなんとかして欲しい」と藤本さんがかけ合わないといけないのです。
(深田)
そうですよね。少なくともその未払い事業者に対する救済措置は出さないと、今回こんな博覧会協会のような公の仕事で未払いになるのであれば、日本国内の建築業者は国を信用できないし、一歩引いてしまう。
(山本)
元々、建設会社は参加したくなかったのです。多くの建設会社も参加していません。それで頼み込んで、地元の業者などに頼んでいるので、パビリオンを作っている建設会社は、必ずしも優れた建設会社とは言えないのです。中小の建設業者は大阪市を信用して仕事を受けた。大阪市と長い付き合いがあって、仕事もらっているわけです。
(深田)
京都や千葉などいろいろな所から来ているようです。
(山本)
大阪市や大阪府、国から仕事をもらっている人たちが、仕方ないというので参加してくれたのだと思います。
(深田)
そうですよね。政府の公の仕事だと思っているのに、いざとなったら民民(民間対民間の取引)だと言って責任を放棄されて、今の事態に至っている。
(山本)
それは博覧会協会の問題です。これは国家事業ですよ。民民であるはずがないです。
(深田)
そんなはずないですよね。
(山本)
それを保証するのは、プロデューサーである藤本壮介で、彼がきちんとその整理をしないといけない。しかし、やらずに、逃げているだけです。
(深田)
そうですね。日本の建築の未来を考えるのであれば、未払い問題も含めて建築の未来を考えてくださいということを、伝えていきたいと思いますね。
(山本)
それだけじゃなくて、自分のことしか考えない、こういう体質が、今の日本の建築家全体に蔓延しているような気がします。今回の藤本、あるいは安藤忠雄のような人は日本の国のリーダーにならなくてはならない人ですよ。
(深田)
悲劇ですね。
(山本)
その人たちに対して僕は本当に落胆しています。多くの若手建築家たちがほとんど巻き込まれるような形で博覧会に参加することになって、彼らにも迷惑をかけています。今回の問題は、実は建築家という専門家集団の問題なのです。自分たちの責任を全く果たそうとしない今の建築たちに対して私は本当に落胆しています。
(深田)
はい。わかりました。ありがとうございます。今回は、山本理顕先生から、ファシズム化する建築、そして建築家の社会に対するコミュニティに対する責任とはというところについてお話をいただきました。先生、どうもありがとうございました。
(山本)
ありがとうございます。取材をしていただいてありがとうございます。