中国6000億円軍事演習の脅威! 元空幕長田母神俊雄が語るその裏側とは!? 田母神俊雄氏 #451

(深田)
皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム、プロデューサーの深田萌絵です。
今回は元航空幕僚長の田母神俊雄先生にお越しいただきました。先生、どうぞよろしくお願いします。

(田母神)
よろしくお願いします。

(深田)
先日、中国で史上最大規模の軍事パレードが行われ、最新鋭の兵器が投入された非常に危険に見える行事だったようですが、どのようにご覧になりましたか?

(田母神)
基本的には認知戦だと考えています。中国は「これだけ準備している。これだけ強い」ということを示して「我々と戦うのは無駄だ。負けるから諦めた方がよい」と中国軍(中国人民解放軍)の強さを認めて「中国の要求を受け入れろ」と言いたいのだと思います。

(深田)
単なる脅しですか?

(田母神)
はい、単なる脅しに過ぎません。

(深田)
6000億円かかったといった報道もありますが。

(田母神)
戦争を実際に行う費用と比べればたいへん安上がりですからね。現時点で、中国は台湾に軍事侵攻を行う意思はまだないでしょうし、日本に攻め込む意思もないと私は見ています。
要するに台湾人や日本人に「諦めなさいよ」と伝えたいのです。中国は「これだけ強いのだから対抗するのは無理だ、中国の言うことを聞いて上手くやった方がよい」といったメッセージを発信するためのパレードです。

(深田)
では、単なるブラフだということですね?

(田母神)
はい、単なるブラフです。

(深田)
これに対して「中国があれだけ軍備を整えたのだから、日本も増強が必要だ」という反応が出ているのですね。

(田母神)
自民党や政府が「中国に対抗しよう」と考えても「あれだけ揃っているので対抗は難しい。諦めて中国の要求を聞こう、仲良くした方が得だ」と思うように、中国は画策しているのでしょう。

(深田)
すでに現状、日本政府はかなり中国の言いなりになっていますよね。

(田母神)
親中派の国会議員が多いので、そうなっていますね。以前にも申し上げたかもしれませんが、戦争は準備なしではできません。「腹が立った、明日から攻撃だ!」と行えません。そのような即応性を持った軍隊はありません。

(深田)
攻撃を行うとなれば、各部隊を適切に配置する必要がありますものね。

(田母神)
航空で言えば、相手の詳細な地理情報を把握しておく必要があります。どこにどのような施設や建物があるのかといった情報を地図上で正確に掌握しなければなりません。地理情報と同時に必要なのが『脆弱性情報』です。

(深田)
脆弱性情報とは何でしょうか?

(田母神)
例えば「あの施設にはミサイルを10発撃ち込めば壊れる」とか「爆弾20発で破壊できる」といったような情報です。単に撃っても何の変化もなければ意味がないでしょう。イスラエルのパレスチナ攻撃のように建物がミサイル一発で大きく崩れる映像がありますが、普通の鉄筋コンクリートの建物はミサイル一発で簡単に潰れません。

(深田)
潰れないのですか?ミサイルが一発当たるとすぐにボロボロと崩れるものだと思っていました。

(田母神)
航空自衛隊は年に2回、演習場で爆弾破裂実験を行います。場所は、北海道の矢臼別や宮城県の王城寺原、大分県の日出生台など陸上自衛隊の演習場です。
飛行機から投下された爆弾は地上に落ちると1~2メートルほど地中に潜ってから爆発します。爆弾は地上で爆発しても、破壊力はほとんどありません。破壊力が出るのは地下に潜ってそこで破裂し、土砂や石を吹き飛ばして初めて破壊力を発揮するというメカニズムだからです。

(深田)
そういう仕組みなのですね!

(田母神)
コンクリートの上にミサイルを爆発させても「破裂したな」という程度です。

(深田)
爆弾は上に向かって爆発するので、下ではなく上に対象物がある方が、破壊力が増すということですね。

(田母神)
その通りです。航空自衛隊が毎年2回行う実験では、爆弾を地中2メートルほどに埋め、空から落下させて潜り込ませたものと想定し爆発させます。実験では30メートル離れた場所にテレビやパソコンを置き、50メートル先に車、200メートル先にトラックなどを配置して破壊状況を調べます。しかし200メートル離れていれば、トラックが壊れることはほとんどありません。この実験を毎年2回行っています。

(深田)
では、爆弾が落ちてもトラックの中に逃げれば大丈夫、ということですか?

(田母神)
コンクリート造りの建物内にいれば、例えば50メートル先にミサイルが落下しても死ぬことはありません。

(深田)
そうですか⁉

(田母神)
しかし「大きなミサイルが来れば皆死んでしまうのではないか?建物も全て壊れるのではないか?」と不安を煽られるので、多くの国民はそう思い込んでいるかもしれません。

(深田)
私もそう思っていました。ミサイルが1発当たれば、映画のように大爆発を起こすのだと考えていました。

(田母神)
そんなことはありません。だからこそ『脆弱性情報』が重要なのです。「この施設はミサイル10発で破壊できる」「あの建物は爆弾20発以上が必要だ」といった情報を基に、どのように複数の攻撃を行うのか計画しなければならないのです。

(深田)
つまり建物ごとに破壊計画を立てなければならないのですね。

(田母神)
その通りです。航空攻撃ではエア・タスキング・オーダー(ATO、航空任務命令)と呼ばれる細かい計画を立てます。「どこでもいいから攻撃してこい」というわけにはいかないのです。

(深田)
つまり標的の情報や脆弱性分析が整っていなければ、攻撃はできないということですね。

(田母神)
その通りです。分かりやすく例えると、ホテルで300名規模のパーティーを開くとしても、明日すぐにできるわけではなく、2〜3ヶ月の準備が必要です。

(深田)
確かにそうですね。

(田母神)
まして戦争は300人どころではなく、何万人もの兵士が動き、何百機もの戦闘機、何百隻もの艦船が動きます。そんなことが無計画にできるはずがなく、綿密な計画が不可欠です。

(深田)
ということは、中国が仮に台湾に侵攻するならば、何か月も前から準備をしないといけないのですね。

(田母神)
その通りです。攻撃準備の着手は衛星や通信などで把握できます。

(深田)
つまり部隊の動きが見えるということですね。

(田母神)
私が自衛隊にいた頃も四半期に一度情報ブリーフィングがあり、毎回「中国は台湾侵攻の準備を始めたか」と確認しましたが、答えは常に「ノー」でした。準備が始まっていないということは、半年以内に攻撃が発起することはないという意味です。準備には半年以上かかりますから。

(深田)
なるほど。しかし、メディアではよく「台湾有事」と盛んに言われていますよね。

(田母神)
そのように煽った方が視聴率が上がり、評論家もテレビに呼ばれるのです。私のように「半年以内に侵攻はない」と言っても面白くないので呼ばれません。

(深田)
「田母神さんは面白くない」と思われてしまうわけですね。

(田母神)
しかし現実的には、私が言っていることの方が正しいのです。

(深田)
今回、中国史上最大規模で6000億円が投入されたパレードの中に、台湾の退役軍人の部隊が参加していて、一部で物議を醸しているようです。

(田母神)
どういう経緯で参加したのかは私には分かりませんが、おそらく「台湾も中国に協力している」と印象づけ「逆らっても無駄だ」と訴える狙いがあるのだと思います。

(深田)
なるほど。以前、確か日経新聞だったと思いますが、「台湾の退役軍人の多くが退役後に中国人民解放軍に転職し、高い給料を得ている」という記事を読んだ記憶があります。

(田母神)
それはあります。それは日本でも同様です。

(深田)
えっ、日本でもあるのですか⁉

(田母神)
自衛官が行っているわけではありませんが、防衛産業の人々が定年退職後に誘われるのです。60歳で退職すると、日本では子会社に天下るか年金暮らしになるのが一般的です。しかし「現役時代の給料の2倍を出すから中国で技術支援をしてほしい」と誘われれば、心が動く人もいるでしょう。そうしたことは現実に行われています。

(深田)
自衛隊からも行っているのですか?

(田母神)
自衛官は行っていません。しかし防衛産業に携わっていた人にはそうした事例があります。

(深田)
なるほど。嘆かわしいことですね。

(田母神)
防衛産業などで技術開発に携わってきた人々は、定年になると放置されて、国が面倒を見ない体制が問題なのです。結局、日本が受け皿を用意しないので中国がそうした人材を取り込み、まだ十分に能力を発揮できる人たちが中国のために利用されてしまうのです。

(深田)
本当にその通りだと思います。今どきは60歳でも70歳でも皆元気ですからね。

(田母神)
私も77歳ですが元気です。どう見ても76歳にしか見えませんが。

(深田)
先生もとてもお元気ですよ。(笑)

(田母神)
話を戻すと、軍事パレードは認知戦です。「中国に逆らっても無駄だ。言うことを聞いて仲良くした方が皆さんのためだ」と周辺諸国に発信するためのものです。

(深田)
それに引っかかってはいけないということですね。
ところで以前、台湾で通信機器の製造企業に発注をした際、社長から「うちの機器は台湾海軍でも使われている」と自慢して「あまりに性能が良いので中国人民解放軍も同じものを使っており、同じ周波数帯で運用している」と聞いて驚きました。そうすると台湾海軍と中国海軍が筒抜けになってしまうではないでしょうか。

(田母神)
台湾国民は親日ですが、台湾軍はもともと国民党軍が大陸から来たものですから、中国軍と心理的に近い部分があります。そのため、台湾軍の人々は一般国民ほど親日ではありません。

(深田)
えっ⁉台湾軍は親日ではないのですか?

(田母神)
比較的親日ですが、一般国民の方がはるかに親日的です。ですから自衛隊が台湾軍と接触する際には、そうした背景を考慮する必要があります。

(深田)
自衛隊の中ではその認識を共有しているのですか。

(田母神)
そう思います。もっとも日本と台湾は正式な国交がないため、現役の自衛官を派遣することはできません。そこで退官した将官を交代で派遣し、台湾に事務所を設置して情報収集を続けています。

(深田)
それは日本政府の仕事として行われているのですか。

(田母神)
そうです。本来なら現役軍人を派遣するのが望ましいのですが、国交がなく中国への配慮もあり、退官者を派遣しているのです。

(深田)
なるほど。それによって日本は台湾をある程度守っているのですか。

(田母神)
守るというより情報収集が目的です。それは今も続いています。私は誰が関わっているかも大体把握しています。

(深田)
そのように日本は台湾の状況を常に監視しているのですね。

(田母神)
本来は日本政府が方針を明確にして「中国とは関係ない」といって、台湾と堂々と付き合うべきだと思います。

(深田)
私が不思議なのは、外務省は「台湾は国ではない」と言いながら、台湾パスポートは認めていて、輸出規制などを見ると中国より台湾がかなり緩く、優遇しています。ビザの扱いでも同様です。政府の建前と実際の政策に矛盾がありますよね。

(田母神)
日本政府が中国に対してはっきり物を言えないために、そうした矛盾が生じるのです。靖国問題などにしても「そのようなことを言われる筋合いはない」と突っぱねればよいのに、そうしないから台湾とも中途半端な関係になるのです。日本が毅然とすれば、台湾の対応も変わってくるでしょう。
しかし現実には日本はどっちつかずで、アメリカはその状況を歓迎しています。アメリカは日本と台湾、日本と韓国が仲良くなることを全力で妨害しています。アメリカ外交の基本方針は「分断」です。“Divide and Conquer”や“Divide and Rule” (分割統治)といった考え方で、地域諸国が団結してアメリカに対抗することを絶対に許さないのです。

(深田)
確かに日本、韓国、台湾、中国が一体となればアメリカにとっては不都合ですものね。

(田母神)
だからアメリカは中国の言い分をある程度受け入れつつ、日本や韓国、台湾が過度に仲良くならないように仕向けています。日韓の慰安婦問題なども、背後にアメリカの影がある可能性は否定できません。

(深田)
日本はそうやってずっと操られてきたということですね。恐ろしいです。

(田母神)
国際社会は本当に腹黒いのです。

(深田)
軍事演習一つとっても、実態は単なる脅しに過ぎないのですね。

(田母神)
だからこそ日本政府はその点をしっかり理解しておくべきです。

(深田)
『戦争はすぐには起こせない。どんなに巨大な軍事パレードであっても単なる脅しにすぎないので、乗せられてはいけない』ということを元航空幕僚長の田母神俊雄先生から伺いました。本日はありがとうございました。

(田母神)
ありがとうございました。

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