#441 裁判長が告発!「日本は既に核武装国家で標的は日本人」その真相は? 樋口英明氏×深⽥萌絵
(深田)
皆さま、こんにちは。政経プラットフォーム・プロデューサーの深田萌絵です。
今回は、元裁判長の樋口英明先生にお越しいただきました。どうぞよろしくお願いいたします。
(樋口)
よろしくお願いいたします。
(深田)
本日のテーマは「保守派のための原発入門」です。一般的には「原発反対」というのはリベラルの主張という印象がありますので、私はてっきり樋口先生もリベラルのお立場かと思っていました。実際のところ、ご自身ではどのような立場だとお考えでしょうか。
(樋口)
私はリベラルではまったくありません。むしろ、かなり保守派だと思っています。
(深田)
そうなのですね。
(樋口)
はい。私自身、この問題が起きるまでは、つまり東日本大震災の前までは一貫して自民党を支持していました。自民党支持者でしたから、どう考えてもリベラルではありません。
(深田)
なるほど、よく分かりました。
(樋口)
なぜ私が自民党を支持していたかといえば、この事故が起こるまでは、日本の存立や国防を真剣に考えているのは自民党だと信じていたからです。ところが、あの事故を契機に「本当に国の防衛を考えているのだろうか」と疑念を抱くようになりました。そこで改めて「国とは何か」を考えるようになったのです。
国にはいくつかの要素が必要です。まず「国土」が必要であり、次に「国民」が必要です。この二つまでは誰でも答えられるでしょう。しかし、三つ目は人によって異なります。歴史学者なら「歴史」と答えるでしょうし、文化人類学者なら「文化」と答えるかもしれません。法律家は「主権」が欠かせない要素だと考えます。このように、立場によって答えは変わるのです。
では、3.11の東日本大震災で何が起きたのでしょうか。原子炉を冷却できなかったために暴走が起こり、あの深刻な事故に至りました。東日本壊滅の一歩手前まで行ったのです。福島第一原発の吉田所長は「東京は人が住めなくなる」と考え、菅直人総理は「東日本は壊滅するだろう」と覚悟しました。その時、外国が介入する可能性すら意識されたのです。
原発事故は、国土と国民を失わせ、文化や歴史をも奪いかねません。さらに外国の介入を招けば主権も失われます。すなわち、原発事故とは国のすべてを喪失させる危機なのです。
(深田)
確かに、その通りですね。
(樋口)
短期間のうちに国を滅ぼし得る要因は、戦争か原発事故の二つしかありません。経済評論家は「経済政策を誤れば国が滅ぶ」と言うことがありますが、それは誇張です。経済政策の失敗によって国が貧しくなることはあっても、国家そのものが滅亡することはありません。
本当に国を滅ぼす可能性があるのは、原発事故か戦争かのいずれかです。だからこそ、その観点から物事を考えなければならないのです。私はかつて、自民党がそうした視点を持ち、国を守ると信じて支持してきました。しかし、実際には十分に考えていなかったのだと痛感しました。
また、3.11の時に東日本が壊滅しなかったのは、数々の偶然や幸運が重なった結果にすぎません。本当に紙一重の状況だったのです。とはいえ、それでも300平方キロメートルを超える地域が立ち入り禁止や居住制限区域に指定されました。300平方キロメートルと言われても実感しにくいかもしれませんが、東京ドームに換算するとおよそ7200個分の広さに相当します。
(深田)
東京ドーム7200個分ですか。本当に途方もない広さですね。
(樋口)
私は三重県に住んでいますが、この辺りで最も大きな都市は名古屋市です。その名古屋市に匹敵する面積が、原発事故によって実際に人が住めなくなっているのです。
(深田)
それは想像もしていませんでした。
(樋口)
そうでしょう。失われた面積は、尖閣諸島の何倍、いや何十倍にもなります。おそらく50倍程度の広さでしょう。それほどの面積が現実に居住不可能となっているのです。
(深田)
その居住禁止区域にいた方々は、現在どちらに移っておられるのですか。
(樋口)
避難された方々は全国に散らばっています。最も多いのは、福島市やいわき市といった県内の比較的大きな都市に移られた方々です。しかし、中には沖縄に移住された方もいます。このように全国各地に移られ、いまだに元の場所に戻れていないのです。
(深田)
その際の補償は、国が行ったのですか。それとも東京電力が負担したのですか。
(樋口)
補償の原則は東京電力が担うことになっています。しかし、東電は今回の事故で25兆円もの損失を出しました。これはどういうことかというと、東電の年間売上はおよそ5兆円で、利益率は約5%です。つまり、年間の利益はおよそ2500億円にすぎません。その規模の会社が、一度の事故で25兆円の損失を出したのです。要するに、100年分の利益が一瞬で吹き飛んでしまったわけです。
しかも、これは福島第一原発の場合です。仮に同規模の事故が茨城県の東海第二原発で発生した場合、被害額は660兆円に達すると試算されています。東海第二は東京に近く、土地の価格も人口密度も福島よりはるかに高いからです。660兆円というのは国家予算の約6倍に相当し、その時点で日本は破綻します。
さらに深刻なのは、福島第一原発2号機の格納容器についてです。当時の吉田所長は「吹き飛ぶかもしれない」と覚悟していました。もし本当に格納容器が破損していたら、その損害は2400兆円に及ぶと試算されています。
この数字を聞けば、もはや単なるエネルギー政策の問題ではないことは明らかです。これは日本という国家の存続そのものに関わる問題なのです。
(深田)
確かに、その通りですね。
(樋口)
ある方が「原発とは自国に向けられた核兵器だ」と表現しました。まさにその通りで、原発はあらゆる攻撃に対して脆弱です。ミサイル攻撃を受ければひとたまりもなく、空爆されれば終わりです。ドローンによる攻撃でも破壊されかねず、テロにも極めて弱い。そうした施設を、我が国は54基も海岸沿いに並べているのです。その時点で、すでに国防力を自ら失っていると言わざるを得ません。
(深田)
確かにそうですね。海岸沿いにあるということは、最も狙われやすい場所に置いているということですものね。
(樋口)
そうなのです。これはどうしようもない状況です。我が国は、どの国と戦争をしても勝てない体制に陥っています。国防の出発点そのものが欠けているのです。重要なのは、原発を「エネルギー問題」として捉えないことです。原発は間違いなく「国防問題」なのです。
ところが、エネルギー問題と位置づけるために議論が矮小化され、「代わりの電力をどうするか」といった論点ばかりが強調されます。しかし、国の存続を守るという観点に比べれば、それは取るに足らない問題です。真に問われるべきは「国が存続するかどうか」です。そして、その危機は戦争のような大事ではなく、停電といった単純な事態によっても引き起こされ得るのです。
(深田)
停電だけで起きてしまうのですか。
(樋口)
その通りです。停電が起きるだけで、原発事故は発生するのです。なぜなら、原子炉は常に冷却を続けなければならない構造になっているからです。水の供給が止まればメルトダウン、電力が途絶えてもメルトダウン。原発とはそうした性質をもつ施設なのです。この事実を多くの人が正しく理解すれば、原発に対する結論は自ずと導かれるはずです。
(深田)
確かにそうですね。停電一つでそこまで深刻な事態になるという認識は、私たちにはあまりありません。
(樋口)
「全電源喪失」という専門的な言葉を使うから、多くの人が「難しい事態が起きた」と誤解してしまうのです。
(深田)
そうですね。「全電源喪失」と聞くと、日常的には起こり得ない特殊な出来事のように思ってしまいますね。
(樋口)
そうです。単なる停電、全面的な停電で原発事故は起こります。もちろん、原子炉とつながるパイプが破損しても終わりですし、水道管が切れても同じです。冷却の仕組みが一つでも途絶えれば、それだけで東日本壊滅につながりかねないのです。
それほど危ういものが、今もなお稼働しているのです。そして、その稼働の根拠はといえば、「この原発敷地に限っては強い地震は来ない」という説明に過ぎません。
(深田)
つまり、原子力委員会がそう言っただけ、ということですね。
(樋口)
まさにその通りです。それだけの根拠で稼働を認めてしまっている。そして、それを容認しているのは他ならぬ保守政権であり、保守政党です。私には到底信じられません。私は長らく自民党を信じてきましたが、「一体あの信頼は何だったのだろう」と、強い失望を覚えています。国を守る、国防を真剣に考えているはずの自民党が、実際にはまったく国防を考えていないという事実に。
(深田)
私も同じような感想を抱いたことがあります。かつて自民党の右派を支持する雑誌で記事を書かせていただいたのですが、その際に感じたのは、自民党の右派は「中国と対峙している、反中だ、国防だ」と声高に語ってはいるものの、実際の行動は必ずしも国防を重視していない、という現実でした。私は「彼らはよほど国防問題に関心を持っているのだろう」と思い、たとえば「半導体は日本企業で生産しなければならない。外国企業に任せれば技術が流出する」と訴え続けました。
しかし、最終的には外国企業に助成金を出した方が利権を生みやすく、それによって選挙に勝てる構造になってしまうのです。利権を作るために外国との癒着を進め、その結果、日本の国防に深刻な穴を開ける。しかも、それを率先して行っているのが、自民党の「愛国政治家」だという現実を目の当たりにし、私は愕然としました。
(樋口)
まさにその通りです。今回も、参政党が批判しているように「中国人が東京の土地を買い占めているのではないか」という問題が取り上げられています。もちろん、それが良いか悪いかは議論すべきことであり、出発点としての問題提起は理解できます。
しかし、自民党の石破氏が何と言っているかといえば、「これから調査します」と述べているのです。それを聞いて、私は「一体何をやっているのか」と強い失望を覚えました。
(深田)
それ以上に深刻だと感じるのは、外国人による日本の土地買収が、すでにかなり以前から始まっていたという点です。しかもそれが、保守の中核を担っていた安倍政権下において、何の政策的対応も講じられなかったという事実です。私はむしろ、この放置こそが問題ではないかと思っています。
(樋口)
特に、中国の脅威を声高に訴えていながら、そうした事態に無頓着であったというのは、やはり大きな矛盾を感じますね。
(深田)
ところで先生、今回の選挙でも核武装についての議論がなされましたが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
(樋口)
私は、すでに日本は核武装していると思っています。なぜなら、自国に向けられた形で原子力発電所を54基も保有しているのですから。
(深田)
おっしゃる通りですね。つまり、いつでも「自爆」できる状態にあると。
(樋口)
そう、まさにいつでも自爆可能です。
(深田)
なるほど、非常に象徴的な締めくくりになりました。「日本は核武装すべきか」という問いに対し、「すでに自国に向けた核武装状態にあり、いつでも自爆できる」とのお話を、元裁判長の樋口英明先生から伺いました。
本日は誠にありがとうございました。