#434 億ション価格がさらに倍!中国人転売ヤーに翻弄される日本人に買える不動産なし!? 牧野知弘氏×深⽥萌絵
(深田)
皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム・プロデューサーの深田萌絵です。
今回はオラガ総研の牧野知弘社長にお越しいただきました。牧野社長、どうぞよろしくお願いいたします。
(牧野)
よろしくお願いいたします。
(深田)
これまで外国人による不動産取得の問題についてお話を伺ってきましたが、最近はマンション価格の高騰が顕著です。いわゆる「マンション価格が倍になってしまった」という状況です。これもやはり、外国人が購入していることが要因なのでしょうか。
(牧野)
外国人だけに限ったことではありません。外国人投資家と日本人投資家が、ともに転売によって市場を過熱させているのです。本来、マンションは居住のための施設であるはずです。しかし、近年とりわけ目立つのは「マンションが完全に金融商品化している」という現象です。
(深田)
すでに金融商品になってしまっているのですか。
(牧野)
その通りです。金融商品と化しているため、購入しても実際には住まず、最近では賃貸として運用することすらしないケースが増えています。
(深田)
貸し出しもしないのですか。
(牧野)
そうです。いわゆる「転売ヤー」と呼ばれる存在が増えています。
(深田)
不動産の転売ヤーということですね。
(牧野)
はい、そのとおりです。これが今や大流行しているのです。例えば、2023年に分譲された港区三田の「三田ガーデンヒルズ」という高級マンションがあります。この物件は非常に高額で、販売価格は坪あたり1300万から1400万円という、驚くほど高額な価格設定でした。
(深田)
坪あたりですか? 坪あたり1400万円ということですか。
(牧野)
そうです。例えば120平米ほどの3LDKであれば、およそ5億円前後になります。つまり5億円です。
(深田)
ええ、本当にそうなのですか?信じられませんね。
(牧野)
実は昨年、中国人向けの投資ツアーに呼ばれたことがありました。これは、非居住の方々が旅行のついでに日本で不動産を購入して帰るというものです。その際、東京のマンション市場について講演してほしいと依頼され、話をしました。ちょうど三田ガーデンヒルズの分譲が終わった時期だったので、その物件の内容を紹介したのです。そこで半分冗談で「この中で三田ガーデンを購入された方はいらっしゃいますか?」と尋ねたところ、一人の方が手を挙げ、日本語で「私が買いました」と答えました。
(深田)
そうでしたか。
(牧野)
面白かったので「どのタイプの、どの棟を購入されたのですか」と尋ねたところ、「今牧野さんが話した120平米、5億2000万円の部屋を購入しました」と答えられました。さらに「キャッシュですか、それともローンですか」と聞くと、「キャッシュです」との返事でした。
(深田)
すごいですね。
(牧野)
そこで「なぜ購入されたのですか」と理由を尋ねると、「安いから」と答えられました。
(深田)
安いのですか?
(牧野)
その方は「上海や北京のマンションのほうがもっと高い」と言うのです。私は驚きました。「では、三田ガーデンの立地や建物の仕様についてはどう思いますか」と聞くと、「まあまあ良い」との評価でした。
(深田)
それは高く評価してもらっていますね。
(牧野)
その方が「実は一番大きな理由は別にある」と言うので、興味を持って尋ねてみました。「それはなぜですか」と伺うと、「同胞の人が多かったからだ」と答えました。
つまり、「自分は外国人なので、周囲が日本人ばかりだと居心地が悪い。しかし、このマンションは多くの同胞が購入しているので、安心して買うことができた」というのです。
(深田)
つまり、中国人ばかりということですか。
(牧野)
そこで私はさらに突っ込んで、「ちなみに、このマンションを購入した中国人の方はどのくらいの人数かご存知ですか」と尋ねてみました。すると、その方は「正確には分からないが、自分の知っている限りでは100人はくだらない」と答えたのです。非常に衝撃的でした。
(深田)
そのマンションの戸数はどれくらいなのですか。
(牧野)
かなり規模の大きなマンションで、総戸数はおよそ1000戸、分譲されたのは950〜960戸ほどです。そのうち大体1割が中国人による購入ということになります。
(深田)
なるほど。
(牧野)
もちろん、その方の言葉が正確かどうかはわかりません。しかし「100人はくだらない」と、さらりと答えていたのが印象的でした。
(深田)
それではやはり、中国人による爆買いが相当な規模で進んでいるということですね。
(牧野)
そうなのです。現場に立つと、その影響の大きさを実感します。実際、メディアの記者も大手デベロッパーに対して「外国人に売りすぎではないか」「どのくらい外国人が購入しているのか」と当然取材します。しかし、私もかつて大手デベロッパーに在籍していましたが、正確な数字は把握できないのです。
(深田)
分からないのですか。
(牧野)
はい、正確には分かりません。もちろん「おそらく5%から10%程度ではないか」といった回答はしますが、それ以上は言えないのです。しかし実際には、中国人だけで10%を超えている可能性があり、さらに香港や韓国などからの購入者も加われば、もっと多いと容易に予想できます。
では、なぜ把握できないのかというと、購入者が必ずしも「自分は中国人です」と名乗って買っているわけではないからです。
(深田)
なるほど、ステルス的に購入しているということですか。
(牧野)
その通りです。例えば、日本国内にペーパーカンパニーを設立し、その法人名義で大量に購入している事例が数多く存在します。
(深田)
やはりそうなのですね。
(牧野)
そうです。そうした仕組みを通じて転売が行われています。さらに、日本人の中には自分の名義を貸し、中国人に物件を転売して手数料を稼いでいる人も存在します。
(深田)
つまり、仲介的に名義を貸して手数料を得ているということですね。
(牧野)
その通りです。そして現在のマンション業界は、都心のタワーマンションのような高額物件しか売れなくなっています。大手デベロッパーは財務基盤が強固なので、建築工事費や土地代を含め数百億円規模の投資を行いタワーマンションを建設できます。しかし、中堅以下のデベロッパーにはその財務力がなく、同じことはできません。
では、郊外で一般庶民向けのマンションを建てようとするとどうなるか。現在は建築費が高騰しており、価格が跳ね上がってしまい、買い手がつかないのです。
(深田)
確かにそうですね。コロナ前と比べると、建築資材の価格は倍近くになっていますよね。
(牧野)
はい、本当に倍に近い水準にまで高騰しています。
(深田)
やはりそうですよね。
(牧野)
そのため、中堅以下のデベロッパーは採算の合う事業ができず、経営が立ち行かなくなってしまいます。では、彼らはどうするかというと、大手デベロッパーが建てたタワーマンションを20戸や30戸といった単位でまとめ買いしているのです。
(深田)
中堅デベロッパーが、ですか。
(牧野)
そうです。ファイナンスは可能ですから、大手が建てたマンションについて「20戸まとめて購入するから融資してほしい」と申し出れば、金融機関も貸してくれます。そうしてまとめ買いした物件を転売するのです。その販売先には当然、中国人も含まれます。
このようにして中堅デベロッパーは生き残りを図っているのです。つまり、大元の売り主である大手デベロッパーにいくら取材しても実態は分かりません。実際の買い手は外国人と直接やり取りしているわけではなく、ペーパーカンパニーや日本人名義を通している場合が多いからです。
(深田)
確かにそうですね。
(牧野)
中堅以下のデベロッパーが一度購入し、その後誰に転売したのかなど、まったく把握できないのです。
(深田)
以前、千代田区が新築マンションに関して「外国人への販売は1割以下に抑えてほしい」と要請したことがありましたよね。
(牧野)
ええ。ただ、あれほど“やっている感”だけを演出した報道はないと私は思いました。千代田区としては「この問題を認識しています」と示したかったのでしょうが、言われた側のデベロッパーは困惑するだけです。
例えば、私が萌絵さんにマンションを販売したとして、萌絵さんがその後5年間転売しないかどうかを監視できるでしょうか。
(深田)
無理ですね。
(牧野)
そうです。事実上、不可能です。したがって、あのような取り組みには実効性がほとんどないでしょう。さらに、メディアも大手デベロッパー、すなわち建設主体ばかりを取材したり、登記簿謄本を取得して「中国人名義かどうかを確認しよう」と試みます。しかし、登記上の名義は多様であり、さまざまに偽装されているため、実態を把握するのは極めて困難なのです。
(深田)
確かにそうですね。ペーパーカンパニーを介した購入、日本人を表に立てる形での購入、さらには日本国籍を取得した方による購入など、さまざまなパターンがありますよね。
(牧野)
そのとおりです。そうした状況から、現場では実態をまったく把握できないのが実情です。
(深田)
私自身が住んでいるマンションでも、居住者の3〜4割ほどが外国人になってきています。
(牧野)
そうしたケースでは、管理組合の総会で中国人の組合員が「なぜ資料が日本語だけなのか。組合員の半分は中国人なのだから、中国語の訳を付けるべきだ」と主張することもあります。実際、総会資料が中国語で届くようになり、日本人が内容を理解できなくなる可能性も出てきます。そして、理事長が中国人になることも十分にあり得るのです。
(深田)
確かにそうですね。理事長が中国人になるというのも現実味があります。
(牧野)
ええ。実際にそうなっても、まったく不思議ではありません。
(深田)
最近、私が住んでいるマンションでも、スリッパに短パン姿で、ヴィトンの100万円ほどするバッグを持って歩いている中年男性が増えてきました。そろそろ治安に不安を感じるようになっています。
(牧野)
きっとお金持ちなのでしょう。ヴィトンのバッグを持っているくらいですから。
(深田)
しかし「なぜ短パンにスリッパなのか」と思ってしまいます。せめて服装のコーディネートは整えてほしいですね。
(牧野)
さて、話を三田ガーデンヒルズに戻しましょう。この物件は分譲が行われ、今年の春、3月に引き渡しが完了しました。驚いたのはその直後です。引き渡しから1か月後、何気なく中古販売サイトを確認したところ、三田ガーデンヒルズの売り物件がずらりと並んでいたのです。
(深田)
つまり転売されていたということですね。それはいくらくらいで出されていたのですか。
(牧野)
分譲時には坪単価1300万から1400万円でしたが、転売希望価格は坪2500万から3500万円でした。まさに宝くじのようなものです。倍率も高かったこのマンションを購入し、引き渡しと同時に売却すれば、大きな利益が得られる仕組みになっていました。
(深田)
つまり、ほぼ倍の値段になっていたということですね。
(牧野)
そうです。これを楽しむ、いわば投資というより“ゲーム感覚”なのです。
(深田)
晴海フラッグよりは売れそうですよね。
(牧野)
ええ、晴海フラッグよりは確実に売れると思います。もちろん、価格がどこまで高騰に耐えられるかという問題はありますが、そもそも1300万から1400万円という最初の販売価格自体が「安い」と捉えられている時点で、すでに転売ゲームの格好の材料となっているのです。
(深田)
しかし、そうした転売ゲームが続くと、日本人が普通に購入できなくなってしまいますよね。
(牧野)
確かに、一般的な日本人が三田ガーデンヒルズに住むことは難しいでしょう。私は、あのような物件はある意味で放っておくしかないと思っています。ただし、この転売ゲームが本当に今後も続くのかについては、やや疑問を感じています。
(深田)
そうなのですか。
(牧野)
私はJ-REITの社長を務め、不動産投資に長年携わってきましたが、明らかに理論的におかしな水準にまで価格が上がってきています。例えば、三田ガーデンヒルズについて賃貸サイトを見てみると、実に多くの物件が並んでいます。つまり、居住目的ではなく、運用目的で購入した人が多いということです。
不動産は、5年以上所有すると譲渡税の税率が下がります。そのため「5年間は賃貸運用し、税率が下がったところで売却する」という投資家が少なくありません。そこで、賃貸物件として多くの部屋が市場に出回っているのです。家賃はおおむね月額150万円から200万円程度となっています。
(深田)
あれ? そのくらいなのですか。
(牧野)
ええ、私は十分高額だと思います。
(深田)
高い水準なのですね。
(牧野)
そうです。坪単価で換算すると3万5000円から4万5000円、なかには5万円という例もあります。坪5万円であれば、20坪の物件でも月額100万円になります。三田ガーデンヒルズは30坪から40坪の大きな部屋が多いので、結果として150万から200万円程度の賃料になるわけです。
(深田)
それで、利回りはどの程度になるのですか。
(牧野)
現状の賃料で貸し出すと、大体4%半ば程度です。投資としては「まあまあ」と言える水準で、借り手さえ確保できれば4.5%で回るわけです。立地も良く、富裕層が集まるエリアですから、確かに魅力的だと思います。
しかし、これを坪単価2500万から3500万円という中古価格で購入する人がいる。つまり、最初の価格の倍で買うわけです。その場合、運用利回りは一気に下がり、1.5%から2%程度になってしまいます。それでも購入している人がいるのです。
(深田)
「賃料を上げればいい」という、中国的な発想に近いですね。
(牧野)
確かに賃料を上げることができれば、利回りは3〜4%に戻るかもしれません。
(深田)
その場合、家賃は月額400万円ということになりますね。すごい水準です。
(牧野)
そうなのです。シミュレーションを重ねていくと、確かにそのくらいになります。さらに、将来的にその物件を転売しようとした際、「利回りがもっと低くても構わない」という買い手が現れれば、家賃を800万円に設定しないと成り立たない状況になるかもしれません。
(深田)
家賃が800万円ですか……。
(牧野)
はい。単純に掛け算や割り算をしていくと、最終的に家賃がどんどん上がっていく日本という未来像を前提に、この投資ゲームは進んでいるのです。もっとも、ゲームである以上、必ずゲームオーバーが訪れます。どの時点でそのオーバーが来るのかを想像すると、私はつい苦笑してしまうのです。
(深田)
ただ、中国人の感覚では「日本にはさらに5000万人は移住できる余地がある」といった見方をしているようですね。
(牧野)
これを日本市場だけで考えると矛盾が生じます。不動産の売買は「投資」ですが、賃貸は本来「実需」です。借りる側は居住目的ですから、「たとえ数百万円の家賃でも、このマンションに住みたい」という人が継続的に存在することが前提になります。そうした人が一定数いれば、利回りも維持できます。
しかし、日本人でそのような高額家賃を支払える人は、もちろん一定数はいますが、極めて限られています。
(深田)
私の知り合いでも、家賃800万円の物件に住んでいる人はいません。せいぜい100万円から200万円が上限ではないでしょうか。
(牧野)
おっしゃるとおりです。したがって、分譲時に購入した人にとっては投資として成功でしょう。現状でも運用すれば4%前後の利回りが出ますので、今の日本の市場でも借り手はいると思います。
ただし、これが「利回りが2%に下がったから家賃を倍にしよう」とか、「さらに1.5%に落ちたから800万円に設定しよう」という理屈になると、少なくとも日本国内では成立しないと考えています。
(深田)
そうですね。そもそも北京や上海に、そうした高額家賃を払う人がいるのか疑問です。アメリカでも家賃800万円という水準は、ほとんど聞いたことがありません。
(牧野)
ニューヨークでも、そこまでの家賃はないように思います。
(深田)
確かに、耳にしたことがありませんね。
(牧野)
つまり、現在の日本のマンション市場は、すでにそうした「異次元の領域」に入りつつあるのです。
(深田)
本当に、かなり異次元な状況ですね。
(牧野)
ですから、私は8年前に湾岸のタワーマンションでシミュレーションを行ったことがあります。すると非常に興味深い結果が得られました。
当時、坪単価はおよそ350万円で、25坪の物件は約8700万円でした。これを坪あたり1万5000円で賃貸に出せば、利回りは約5%となり、投資として十分成立していました。
しかし現在では、坪単価が600万円にまで上昇しています。その結果、当然ながら利回りは低下し、現行の賃料のままでは3%程度にまで下がってしまいます。
さらに今後、金利が上昇し、仮に国債金利が0.5%上がったとすると、リスクプレミアム分を考慮して調達コストに0.5%上乗せする必要が出てきます。そうすると、投資家が求める「期待利回り」は一気に4%となります。
この場合、「4%を確保できなければ投資家は買わない」という状況になるため、物件価格は坪単価450万円まで下落するのです。
(深田)
ああ、なるほど。
(牧野)
実に単純な計算なのです。そこで、家賃を坪1万5000円から2万円に引き上げ、例えば月額50万円で貸せる市場になれば、利回り4%を確保したうえで坪600万円の価格でも成立します。
ところが、実需の借り手がいなければ成り立ちません。さらに金利が上昇していけば、その分だけ投資家が求める期待利回りも上昇します。すると、販売価格を下げなければ投資として成立しなくなるのです。
(深田)
なるほど。ということは、マンション価格の高騰は、たとえ外国人が大量に購入しているとしても、そろそろ危険水域に入ってきているということですね。
(牧野)
そうです。三田ガーデンヒルズのような物件なら、まだある程度は夢を見ることができるでしょう。しかし、湾岸エリアなど過熱してしまった地域では、賃料が実態に追いついていません。晴海フラッグはまさにその典型です。
(深田)
確かにそうですね。日本人の実需は、確実にこの価格高騰には追随できていないと思います。
(牧野)
おっしゃる通りです。それが、現在のマンションマーケットの未来像です。残念ながら、あまり明るい未来ではありません。
(深田)
そうですね。決して明るい未来ではありませんが、現状はすでに外国人によって不動産が大きく買い上げられており、「このままで良いのだろうか」と懸念していました。しかし、過熱したマンション市場も、そろそろ行き止まりが見えてきたのではないかと思います。
(牧野)
利上げがその転換点になるかもしれませんし、過去に行われた外国人による不動産取得への規制のような措置が再び導入されることも、きっかけになり得るでしょう。
(深田)
本日は、オラガ総研の牧野知弘社長にマンション投資の未来についてお話を伺いました。ありがとうございました。